最近は、とんと見たことの無い、年末のNHK紅白歌合戦である。
この紅白の紅組の特別ゲスト?として歌ったのが、あの英国の素人歌手コンクールで惜しくも準優勝し、その後見事にプロ歌手としてデビューした、あの風貌とは裏腹の美声の持ち主であるスーザン・ボイルさんだったらしいのだが・・・。
その彼女のギャラが1日500万円だったようで、巷間色々と物議を呼んでいるようだ。
彼女を突然招聘して、それもNHKだけの出演に限定させ、さっさと帰国させたのは、あまりにもそっけ無いとのマスコミの酷評が目に付くが、在留資格のプロとして申し上げるのならば、さすが法令を遵守する国営放送局と申し上げたいのである。
http://npn.co.jp/article/detail/69609091/
http://warasoku.blog18.fc2.com/blog-entry-1282.html
http://sankei.jp.msn.com/entertainments/entertainers/100111/tnr1001110848002-n1.htm
なぜかって?
おそらく、スーザン・ボイルさんの日本入国時の在留資格、つまりビザはノンビザの関係から短期滞在、いわゆる観光ビザで入国している筈なのである。
本来は、こういった歌手や俳優などは、「興行」の在留資格認定証明書を事前に東京入管より取得して、イギリスの日本大使館で「興行」のビザを発給して貰わなければならない。
ところが、おそらくボイルさんの出演が決まったのは12月になってからの話であると想像できる。
ところが、この在留資格認定証明書は、申請してから交付されるまで約1か月ほどかかるのである。たとえ、NHKが特別な配慮をして貰ったとしても、2週間はかかるであろう。
その上、その在留資格認定証明書を英国に国際クーリエ便で送付したり、現地日本大使館で、「興行」の査証を受ける手続き日数も別途4~5日はかかろう。
そうすると、下手をすると12月29日とか30日の来日に間に合わない恐れがある!
さ~てどうしましょう! とNHKの担当プロデューサーは考えたはずである。
観光ビザで入国して歌手の活動をすると、ボイルさんは不法就労、NHKは不法就労助長罪になってしまうのである。
国営放送であるNHKが不法就労助長罪を犯したら、国会で追及されることは勿論、おそらくNHK幹部は、歴史と伝統のある年末番組であるこの紅白歌合戦の打ち切りを決断せざる得ないであろう。
そんなリスクまで犯して、たかが素人上がりの外国人歌手を呼ぶことはなかろう、と幹部の編成局長さんあたりが言ったかもしれない。
ところが、そこでプロデューサー氏曰く、
「実は入管に相談に行きましたら、統括審査官なる責任者の人にこう言われたんですよ、局長!」
「入管法では、確かに短期滞在資格、つまり観光ビザで入国して、歌手の活動をすれば、資格外活動となって不法就労となってしまうのですが、入管法第7条第1項第2号の基準を定める省令、いわゆる基準省令なるのものがあるそうでして・・・。」
「まあ、いってみれば法律の一種なんですが、その省令の法別表第1の2の表の項の下欄に掲げる活動の1のイに次のよう書かれているらしいんですよ」
【ただし、興行を行うことにより得られる報酬の額(団体で行う興行の場合であっては当該団体が受ける総額)が1日につき500万円以上である場合は、この限りでない。】
「ですから、我々がボイルに支払うギャラが1日につき500万円であれば、短期滞在、つまり観光ビザで入国して歌手として活動しても問題はないと言うんですよ。今回の紅白歌合戦出演予算は、旅費、宿泊滞在費、通訳費などで150万円で、ギャランティーが250万円ですから、こういった費用込みでの500万円の報酬の契約をすれば、まったく問題は無いらしいのですよ!」
「それと、他の民放のTV番組やラジオ番組などにその他の報酬を伴う出演を別途させなければ入管法違反にはならないと言われましたから、紅白終わったら、ちょっと観光でもして貰って、さっさと帰しちゃえば良いらしいですよ!」と入管に言われたどうかは、飽くまでも想像に過ぎないが、あり得ない話ではないのである。
「てな訳で、予算は400万円ですが、ここは込み込みで500万円でOKを出して下さいよ!局長も、永田町や霞ヶ関から文句言われるご心配もまったく無い訳ですし!」なんて、プロデューサーが上司に言ったかどうかも、当然定かでは無い。
まあ、こんな風に舞台裏のやりとりを想像してみると、紅白歌合戦も満更つまらない番組でも無いのである。
【お詫び】
1日500万円以上の報酬の場合、在留資格「短期滞在」をもって本邦にて興行行為ができるように書いてしまいましたが、全くの間違いでしたので深くお詫び致します。
但し、映画やCDの宣伝活動の為に「短期滞在」資格で来日して来る大物俳優や大物歌手が今でも多数おり、これらの俳優や歌手は日本国内では報酬こそは受領していないものの、実態として宣伝促進費として称して、高額な費用がプロモーター経由で支払われている現実があるようです。
このように、「興行」の在留資格は、入管行政の中でも今もって極めて不透明で、不明瞭なところが多いことは過去のフィリピン人ダンサーと称して来日していたホステス達の例でも明らかです。
更に聞くところによれば、短期滞在で入国してアルバイトをしているファッションモデルが未だに多数いることは公然の事実のようです。