「経営資源の集中による経営効率化」。
事業の特定の分野に経営資源を集中することで経営を効率化させ、業績向上を図る企業が増えているようだが、その実態は企業の不採算部門からの撤退やこれらの事業の切り離しによるリストラで、昨今よく使われるフレーズである。
いわゆる、アングロサクソン系である米英企業によく見られる経営手法である。効率の悪い事業を廃止又は売却して、その時点で収益率の高い事業に資本を集中投下しようという考えだ。
この手法がすべて悪いとは言わないが、どうも疑わしい経営手法にしか思えない。米英企業では、その株主達は別な事業や主に金銭投資に鞍替えしているのであろうから、資本家から見た観点ではきっと正しい理論なのかもしれない。しかし、現実はどうなのであろうか?
世界一のフィルムメーカーであり、デジタルカメラを開発した当事者でもある、名門コダック社が経営破綻に追い込まれたのである。
医療関連事業や化学関連事業を収益率が悪いという理由で売却し、当時は収益率ではまだ高かったフィルム事業に経営資源を集中したのだった。また、自らが開発したデジタルカメラ部門でも収益の柱とする事ができなかったのである。
一方、ライバルであった日本の富士フイルムは、フィルム事業で得た様々な関連技術を生かした液晶テレビ保護フィルムや化粧品事業など化学関連事業へと逆に多角化して行き、2010年度のフィルム事業が売上げのわずか1%と、富士フイルムという名前であることさえが不思議な程、事業の多角化に成功させたのである。
実は、こうした多角化によって生き残った企業は日本には多々存在する。繊維業界の東レ、テイジン、カネボウなどはその典型である。また、カメラのニコンや口銭中心だった収益源を企業への投資や買収、資金調達、或いは巨大プロジェクトの管理運営などを収益源に変えていった総合商社もある意味では多角化して成功を収めた企業の典型なのかもしれない。
一般的には、多角化はボトムアップ、つまり一般社員達から上がってくる事案であるが、集中化はトップダウン、つまり経営トップ達の判断で行われる。
従って、コダックのようにトップ達の判断を誤るとその企業は衰退する。例えば、一時は世界最大の航空会社であったパン・アメリカン航空やUSスチールなどがその典型である。
日本でも、山水電気、日本ビクターなどがあるが、どちからいえば希な事例といえよう。
しかし、経営資源の集中化で巻き返した企業もまったく無い訳ではない。例えば、食料品などへ進出して多角化しようとして失敗したユニクロは、得意分野の衣料品に戻って特化することで、一時不振に陥っていた業績を急回復させ、今現在も驀進中である。
思うに、優秀な経営者(アップルやグーグルなどもそうかもしれません)がいる間は良いとしても、そのスーパーマン的な経営者が居なくなったら、「皆転けた!」というようにも見えるのである。
今後、家電メーカー、自動車メーカーでも、遅かれ早かれこういった経営判断に迫られることであろう。いや、既にいくつかの小さい事案では、こういった経営資源の集中化や多角化が行われている。
しかし、今後はコダック社や富士フィルム社のように、会社の未来を左右する大きな決断を迫られる事案が出てくるであろう。
さて、どうなりますか? 我が日本企業の将来!
ところで、我々行政書士業界のみならず、士業業界全体でも同じような問題が実は起こっているのである。
次回、このテーマについても考えてみたい。
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