もう5年以上も前の事であろうか。 東京の中野区役所の外国人登録課での出来事で、到底許し難い出来事があったからである。
当時中野区にお住まいであったある日本人女性の方が、同居中の在留資格無しの外国人の方、いわゆる不法在留者との婚姻の為に、ご主人の外国人登録を行うにあたっての出来事である。
私は、職業柄こういった在留資格の無い外国人の方々の外国人登録や婚姻を都内の多くの区役所、市役所は勿論のこと、神奈川県の川崎市、横浜市、厚木市、大和市、伊勢原市などの市役所・区役所、或いは埼玉県、千葉県、茨城県などの市町村役場などでも手がけてきた多数の実績がある。
しかし、これら市区役所や町村役場では、当該外国人の入国に関しての概要の説明や資料は提出するものの、入管局警備部門に出すような、プライバシーにまで踏み込んだ尋問調書に匹敵するような申告書を要求された事などは一度も無かったのである。それは、区役所にそのような権限がそもそも無いからである。
ところが、何を勘違いしているのか、中野区役所は入管局警備部門が出頭者に提出させる申告書と全く同じ内容の申告書の提出を公然と要求したのである。(おそらく、区内の同業行政書士から入手したのであろうか。)
これには、同行した私は大変驚き、
「ここにあるような内容は、既に入管に提出済みです。何の権限があって、こんな質問書の提出を要求するのですか?」 「これは、義務なのですか?」 「そうでなければ、外国人登録を中野区役所は受け付けないのですか?」と、私は猛然と抗議したのでありました。
窓口の男性職員は、「提出頂かなければ、外国人登録は受け付け出来ません!」と平然と言いのけたのであった。
「そんな事はありません!何を根拠に、何の権限でこの様な入管局の警備部門が行うような内容の質問書の提出を要求出来るのですか、責任者を出して下さい」と食い下がったのだった。
そこで、出来てきた年配の女性の、確か戸籍係長だったと思う。
「中村さん、そんな事ご存じでしょう。入管からの指導ですよ。」
「それは、東京入管ですか、本省ですか?初めて聞きましたね。中野区役所のような地方自治体が、こんな入管局警備部門に既に提出した物とほぼ同じ内容の違反調査をする権限がいつからあるのですか?また、そんな必要性も無い筈です。」
横柄な態度であった、年配女性戸籍係長は、驚くなかれ更に次のような言葉をほざいたのであった
「まあ、私達には逮捕権はありませんが、不法滞在者についての調査権や調査義務はありますからね!」と横柄な態度で開き直る始末なのであった。
「では、具体的に入管のどこの部門のだれからの指示だったか説明して下さい!その指示だか通達の文書があったら出して下さい。口頭による指導であったのであれば、どこの誰からの指示であったのかを説明して下さい。到底納得は出来ませんし、こんな質問書など提出する義務や必要性など全くありません!中野区役所の越権行為であり、人権侵害です!」と、猛烈に抗議したのでした。
そこでやっと、一番奥にいる座っている上司なのでしょうか、こそこそと相談を始めたのであった。
勿論、依頼人の奥様は不安で一杯の表情をされていたのでした。
「XXさん、この中野区役所という自治体は、私の知る限り最も低俗で最低の役所です。区役所に入管に提出したのと全く同じ内容の質問書を出す義務も必要性も無いのです。これは、明らかな越権行為であり、人権侵害行為ですからとことん争いましょう!」と述べたのだが、明らかに困惑されていたのだった。
そう、依頼人は、ご主人の正規の在留資格さえ取れれば良いのである。当然ながら、我々は飽くまでも依頼人の利益を考えなくてはならないのである。つまり、この件を大新聞や弁護士会などの公器に伝えれば当然、中野区役所は非難、断罪されるのは明白なのだが、一方で住人である依頼人の奥様やこの段階で在留特別許可を貰っていない不法滞在者である配偶者である外国人の方に有形無形の不利益や大なり小なりの迷惑が降りかかることも十分あり得るのである。
依頼人の奥様の不安そうな顔を見てしまって、困ったことになってしまったと、今度は私が苦悩しているところへ、
「書ける箇所だけ書いて頂ければ結構ですから、それを提出して頂けないでしょうか」と、担当者が折れて来たのである。
ここで強行に拒否し、争ったとしても依頼人の不利益になるので、やむを得ず一部のみを記入して提出することにしたのである。
とにかく、こんな理不尽な越権行為と人権侵害を許す訳にも行かず、
「XXさんには決してご迷惑はお掛けしませんから、法務局の人権擁護部に相談に行かせて下さい。」と依頼人に断りを入れて、今回の件について人権擁護部に行ったのだったが・・・。
結論からすると、私の言うことは十分に理解をして頂いたものの、法務局としては中野区役所への指導はできないとの結論であったのだ。つまり、役所が犯す人権侵害行為には法務局の人権擁護部は全くの無力であることを認めたのだった。
私は、後日依頼人に言ったのだった。
「私の今までの行政書士経験で、こんな酷い区役所は他に経験はありませんでした。XXさんは中野区にマンションをお持ちで、簡単に転居することは難しいのでしょうが、こんな最低な区に今後も居住され続け、住民税や固定資産税を払い続けることは是非お辞めになるべきです。こんな、恐ろしい自治体に今後もお住まい続けることは、XXさんとご主人にとって大変不幸な事だと思うからです。」
私は、依頼人の利益の為に、中野区役所から不当な嫌がらせや、目に見えない不利益行為をされる恐れを避ける為に、ずっと沈黙を守って来たであった。しかし、依頼人は今は中野区に所有されていたマンションを売却し、中野区から転出したのである。勿論、ご主人は、この騒動直後に在留資格を得ることが出来、今では永住許可も取得しているのである。
そこで、このデタラメで呆れた中野区役所外国人登録課の実体を、今回白日の下に晒したいと思って、このブログに書いたみたのである。
とにかく、私の知る限りこの様な中野区役所という地方自治体の例がある限り、地方に中央省庁の権限を過大に委譲する事は本当に恐怖を感じるのである。
多くの市区役所、町村役場は問題は無く、良い自治体が殆どであろうかと思う。多分、中野区役所だけが極めて例外だと思う。しかしながら、このような自治体が一つでも現存するという事が、一市民として過度な地方分権には賛成出来なくなってしまうのである。
それは、少なくとも中央官庁で、この様な理不尽で根拠のない人権侵害行為を平然と起こすような中央官庁の役所は、今のところ私は一つも知らないからである。
