ダイヤモンド・プリンセス号乗客の下船が始まったが、本日は「鬼、人でなし」と痛罵されることを承知しての所感である。
下船は乗客にとっては居住環境の一部改善と喜ぶべきであろうが、報道される一部乗客の「被害者意識むき出し」の発言には違和感を覚える。彼等が隔離されたのは、不特定多数の国民を感染から守るために必要な措置であり、我々にとって彼等は加害者または加害者となり得る存在でしかないと考える。乗客は自分の行楽(享楽)の目的のもとに自分の意志で乗船したもので、今、国や自治体が公金で行っているのは「個人的行楽の尻ぬぐい」にほかならず、隔離・拘禁は自分が他人に害を与えない又は害を与える危険性を局限するための措置として甘受することが、社会人としての義務ではないだろうか。船内での感染拡大を許した政府・関係官庁の対応には問題があるとしても、これまで想定しなかった未曾有の事態であり、やむを得ないと受け止めざるを得ないと思う。医療設備の整った船内で、4・5分歩けば病院(医務室)があり、冷めた弁当であっても無料で出前が届く環境は、十分に耐え忍べるもので、更には重症化や致死率がインフルエンザ程度であることを思えば、居丈高に不平・不満を叫ぶのは如何なものであろうか。隔離当初には、常備薬が切れかかったり、食事時間が不規則であった不具合もあったであろうが、想定を超える事態にあっては起こり得ることで、2~3日で改善されたものと思う。その間に払われた関係者の努力に対する感謝の言葉があまり伝えられないのは残念である。10代20代の隔離者の失われる時間、好意的に見ても40代までのそれには同情するものの、60代以上にあっては諦観とともに事実を客観的に受け止め逍遥と隔離に従って世論の鎮静に寄与する大人の対応が欲しいと思う。致死率1%以下の新型肺炎の隔離でこの騒ぎ、もし致死率70%を超えるエボラ出血熱や原因不明感染症のパンデミックが起きた場合には、考えるだけでも恐ろしいパニックが予想される。
ハワイまで2週間、PKOでは20日間も艦内生活を余儀なくされることを当然とし受け容れていた者として、半月程度の不自由生活で音を上げることが実感できないことに起因する所感と思うが、乗客にはもう少し冷静な判断と言動を願うところである。繰り返しになるが、乗客は被害者を標榜すべきではなく、自分の行楽の尻ぬぐいに公金と労力を費消させる加害者であり、他人に害を及ぼさないように予防拘禁された身と自覚すべきであると思う。それ以上に、今回の下船が更なる感染拡大の引き金にならないことを祈るのみである。