スリランカ(我々世代にはセイロン)で同時多発的な大規模爆破テロが起き、日本人(1名死亡、4名負傷)を含む多くの死傷者が発生した。
現時点では、どの組織からも犯行声明が出されていないが、6か所で自爆テロが行われたこと、教会(復活祭)や高級ホテルが攻撃対象であること、80個近い爆発物が押収されたこと、犯行に関与したとして24名が拘束されたこと、何より外国の情報機関から10日以上前にテロの危険性が通報されていることから、国際的なテロ組織(IS若しくはアルカイダ)の関与が推測される。テロ攻撃を受けたスリランカは直ちに夜間外出禁止令を出し翌日には国家非常事態を発令したが、内戦の再燃を懸念する声も聴かれるので、スリランカの内戦について勉強した。スリランカは多民族国家で宗教も各民族ごとに特徴的であり、人口(2100万人)うちシンハラ人(70%:主に仏教徒)、スリランカ・タミル人(15%:主にヒンズー教)、イギリス植民地時代にプランテーションの労働力としてインドから移住させられたインド・タミル人(5%:主にヒンズー教)、ムーア人(9%::主にイスラム教)とされているが、キリスト教信者には民族的な特色は無いようである。内戦は、1983年からスリランカ政府とタミル・イーラム解放のトラ(LTTE:毛沢東主義)によるもので、2009年にスリランカ政府軍がLTTE支配地域を制圧して26年にわたる内戦は終結した。原因は、イギリスが植民地経営の常套手段である「少数の民族(階級)を優遇して多数を制御させる」政策でタミル人を優遇してきたために、独立後もタミル人が優遇されていたことに多数派のシンハラ人が分離独立を要求したことに端を発しており、その後は、スリランカへの影響力を維持したいインドと中国の代理戦争の様相を帯びて混迷し長期に亘ったものであると理解した。宗教を否定する中国が加担したことでも明らかなように内戦自体には宗教対立の色合いは無く、近年になり仏教徒とキリスト教徒の衝突は伝えられるものの、イスラム教徒に対する特段の排斥や差別は起きていないようである。以上のことから今回のテロは、スリランカ国内での民族対立や宗教対立ではなく、攻撃対象や規模から考えても国外のイスラム原理主義組織が計画・支援・実行したものとみて間違いはないだろうと推測できる。
スリランカでのテロは日本にとっても参考とすべきであり、イスラムとまァまァ共存できている現状からテロの危険性が少ないと考えるのは危険である。攻撃は防御の甘い国や防御の盲点を衝くのが常識であり、警戒心・水際防御能力・監視能力においては脆弱と思われる日本は格好の攻撃目標となり兼ねない。共謀罪法と呼ばれたこともある組織的犯罪処罰法(テロ等準備法)が正常に機能するとともに、外国の情報機関からもたらされたテロ情報が政局優先の官僚・大臣の机上に放置されることがないことを望むものである。