大阪刑務所(堺市)で受刑者が自費で購入できる日用品が、市価よりも割高であることを知った。
報道では、大阪刑務所の受刑者がこの問題に関して弁護士会に救済を申し立てて、弁護士会が刑務所長に改善を申し入れたとしているが、割高として記事で例示されているのは、ティッシュ(1箱800枚)/594円、ブリーフ/702円である。自分の周囲にに照らしても、ヤャ上等な保湿ティッシュで3箱/500円、ブリーフは2枚/1000円くらいであり、薄利多売の量販店とは一律に考えられないとは思うが、割高感は否めない。受刑者に対しては必要な日用品は十分とは言えないだろうが官費で支給していることから、自費購入の日用品は一種の贅沢品であるのかもしれないが、受刑者が所内の刑務作業で得られる報奨金が月額4500円程度であることから見れば、割高感はさらに高まる。何やら刑務所関係者が関係しているのでは?と思いながら記事を読み進むと、日用品の値上がりは委託販売業者を刑務官OB等でつくる財団法人から大手商社系の会社に変更した後に始まっており、予想とは逆の結果であった。自分は刑罰・懲戒という観点から、受刑者が外泊できたりテレビ完備の個室で暮らせる北欧の刑務所のような環境に受刑者を置くべきではないと思っているが、受刑者に高額の日用品を売りつけることには疑問である。たとえ少額であっても刑務報奨金は出所後の当面の生活を支える貴重な原資で、可能な限り受刑者に残すべきであり、それをピンハネするかのような商行為は違法ではないにしろ商道徳上許されるべきではないと思う。一昔前は、労働者を囲い込んで高額の食費や住居費を給与から天引きする職場を「タコ部屋」と呼んでいたが、今回の図式は「官営のタコ部屋」と称してもよいのではないだろうか。法務省矯正局が「可能な限り安くしており、勧告は受けたが価格の見直しは予定していない」とコメントしたことも納得できない。財団法人が安く提供できていた背景には、価格を抑える努力もさることながら、受刑者に対する少なからぬ愛情・同情が込められていたものと思う。契約業者変更がどのような理由であるのかは報じられていないが、少なくともこれまでは「報奨金のピンハネ思想」は無かったのではないだろうかと推測するものである。同様な救済申し立ては、川越少年刑務所や横浜刑務所からも出されており、「愛情不要。儲けんかな」の根は深いのではとも思われる。
受刑者の矯正と刑余者の社会復帰については、官民ともに責任を負うべきであるとはかねてから指摘されている。自分はこれまで刑余者と働いたこともなく、刑余者と関係を持ったこともないために応分の責任を果たしているとは思えないので大きなことは言えないが、法務省矯正局のコメントと割高日用品の販売には再考の余地があるものと考える。