もうチョットで日曜画家 (元海上自衛官の独白)

技量上がらぬ故の腹いせにせず。更にヘイトに堕せずをモットーに。

福島瑞穂議員が社民党首に返り咲き

2020年02月23日 | 野党

 福島瑞穂議員が無投票で社民党党首に返り咲いたことが報じられた。

 福島議員の党首就任は、7年ぶり、通算では6期・10年以上となる。改めて社民党の歴史を振り返ると、公党が凋落する典型とも感じられる。社民党は長らく低迷を続けていたものの反米・反軍(自衛隊)には共鳴するが共産党にまでには至らないという根強い左派支持者に支えられていたが、村山富市党首が自衛隊合憲として自民、さきがけと連立政権を組んだことで大きく票を減らし、拉致問題は公安の捏造としていた土井たか子党首の主張が小泉・金正日会談で覆ったことによって党首までもが選挙区で落選するという大敗を喫した。跡を継いだ福島氏は起死回生の便法として反米・反軍に先祖返りしたものの、民主党との連立に当たって自衛隊は「違憲状態」と表現を改めた。しかしながら、普天間基地の辺野古移転の閣議決定には閣僚としての署名を拒否して閣僚を罷免され連立からも離脱することになったが、署名拒否の背景には、署名することによって牙城である沖縄選挙区を失うとの危機感が大きな理由とされる。具体的な政策や代替案を持たないまま政府提案の全てに反対する姿勢から「何でも反対党」と揶揄されながらも支持していた有権者も、政権(権力)にすり寄るためには一丁目一番地である反米・反軍の看板を下ろすという身勝手さ・手前味噌には愛想尽かししたものであろう。公職選挙法では、比例区に候補者を立てたり、政党交付金を受け取れる「政党」は国会議員5人以上若しくは直近の衆院選か2回の参院選での得票率が2%以上と定めらている。現在の社民党は衆参合わせて4名の議員しか擁していないが、先の衆院選と参院選でかろうじて2%強の得票を得たために2025年までは政党として存続できるとされている。立憲民主党への合流に消極的ともされる福島党首であるが、この先も社民党として党勢を拡大できる秘策を持っているのだろうかと興味は尽きない。取り沙汰される野党合流については立憲民主党が欲しいのは社民党が持っている地方組織だけであり、頑なな原理主義者4名や何でも反対の旗頭など欲しくはないのは明らかであることを考えれば、有利な身売り・嫁入り先が他にあるとも思えないのだが。

 辻元議員が長期政権の弊害として「鯛は頭から腐る・・・」と悪態をついたが、野党でも立憲民主党には党首の任期や交代の手続きすら定めてなく、社民党は多選・長期の福島党首を選び、共産党は20年以上も志位氏が委員長の座にある。時代に適応できずに旧態依然の老舗「社民党」の消滅劇をリアルタイムで鑑賞することになるのは間違いのないところであろうか。


無期懲役服役者の損害賠償に思う

2020年02月22日 | 社会・政治問題

 獄中死した星野文昭無期懲役囚(73歳)の遺族が損害賠償を求めて提訴したことを知った。

 提訴は、収監された刑務所(実際は東日本成人矯正医療センターに収容中に癌で死亡)での医療過誤が原因として国に5500万円の損害賠償を求めていると報じられている。犯行は昭和46(1971)年の沖縄返還協定反対闘争で警察官を殺害したもので、昨年5月に死亡するまで48年間服役していたことになる。刑法改正まで有期刑の上限は懲役25年であったと思うので、上限を20年以上超えても仮釈放されなかったのは、改悛の情はもとより中核派としての武力闘争(革命)の意志が衰えていなかったことが原因であろうと推測する。犯行については警官殺害の実行者として7人が特定され、星野受刑者を含む6人が逮捕・起訴され、6人は収監先で死亡した者、刑期を終えて出所した者と様々であるが、首謀者とされる大阪正明被告は2017年5月に潜伏先の広島で逮捕されるまで、支援者の庇護を受けて50年近くも逃げおおせている。犯行後50年間も武力闘争の意志を変えない闘士にも驚きであるが、大阪被告が警官殺しの首謀者であることを知りながら匿った支援者が存在することの方が驚きである。犯人隠避の容疑で送検された者の中には地方議員もいることから、裏の顔を隠した活動家が、平和な市民、正義感あふれる弁護士、柔和な老人として隣人にもいるのかも知れない。現在も”大坂同志を解放せよ”””日帝・国家権力を獄内外一体となった闘いで必ず粉砕”との主張がネット上にも散見されることから、彼等の闘争意欲はいささかも衰えていないどころか、老人に変わる新たな若い支持者も存在するようである。主題に戻って、5500万円の損害賠償にも驚きである。医療過誤として刑事告訴することは無理と考えた遺族(支援弁護士)が、ハードルの低い民事訴訟を起こしたものであろうが、損害賠償額は原告が平均余命まで生きたと仮定してその間の逸失利益を基に算定されるものと思っていたので、73歳の無期懲役囚である男性が仮釈放されて後10年存命したとしても5500万円は稼げないだろうと思うところである。まして仮釈放が認められない場合には逸失利益はないと考えられる。弁護士には別の算定方法があるのだろうが、なんとも不思議な金額に思われる。星野徒刑囚の犯罪は国家転覆罪がある中国や反逆罪を設けている国にあっては死刑に該当するもので損害賠償請求など思いもよらないだろう。同種の法律がない日本では警官殺害という罪一等を加算された無期懲役で済まされ、しかも損害賠償請求が許されている。その体制を覆そうとした者が体制の法律に縋ろうとするレトリックがそもそも理解できない。

 「晩節を汚す」「驎騏も老いぬれば駑馬に劣る」と格言があるように、老人・老境にあるものには世情に迷惑を掛けない密やかな矜持を以て生きなければならないと思う。星野徒刑囚や大阪被告は、夢に描いた政体が全世界で破綻した事実と、その政体が永遠に実現しないことも理解していると思う。革命家の矜持としては理解できるものの、永遠に実現できない理想(妄想)を後世に託そうとする妄執には賛成できかねる。ダグラス・マッカーサーが表舞台から身を引くときに「老兵は死なず、ただ消え去るのみ」と述べたが、国に尽くした兵士としての矜持は保ち続けるがひっそりと生きていく覚悟を述べたものであろうとおもえば、現在の日本の全ての老人が瞑すべき言葉に見えてくる。


トリアージを考える

2020年02月21日 | コロナ

 新型肺炎で3人目の死亡が報じられた。

 特に、80代の女性について病院に搬送した時期の是非を問う声が高い。疑問視されているのは、女性が2月5日に発熱、6日に船内で受診、12日にウイルス検査・入院、13日感染判明、20日死亡という経過をたどったが、発熱後1週間にわたり船内に留め置かれていた点である。発熱後も1週間船内に残されていたことの是非や識者の後付け論評の適否を考証できる知識はないが、患者の収容については「トリアージ」の手法が採られたものかと思って、改めてトリアージを勉強した。ウィキペディア(抄訳)によると、「トリアージ」は、事故や災害など多数の傷病者が発生した際に救命の最大効率を得るため、傷病者の重症度と緊急度によって治療や搬送の順位を決定する標準化手続きで、一般的に直接治療に関与しない専任の医療従事者が行う」とされている。判定は多くの要因を総合的に判断して行われているようであるが、単純化すれば「助かる見込みのない患者あるいは軽傷の患者よりも、処置を施すことで命を救える患者を優先する」という点に尽きることであると知った。また、平時では最大限の救命処置を得て救命し得るような傷病者も、人材・資材が絶対的に不足する状況では全く処置されず結果的に死亡する場合もあることが特徴であるともされている。日本では、阪神・淡路大震災以後知られるようになったが、トリアージと云う言葉が一般的でなかった時代でも、野戦病院では「爾後の戦闘に役立つか否か」が処置の優先順位を決める最大の基準であったと聞いている。このことから、戦闘組織の骨幹をなす指揮官や参謀が最優先され、次いで兵士として戦線に短期間で復帰できる軽傷者が治療され、その他の傷病者は後回しと云うのが当然であったとされている。一般社会にあっては、判断を決定するのは傷病者の重症度と緊急度であり社会に役立つか否かの判断基準はないと信じているが、傷病者数が医療体制(収容・治療の能力)を超える場合には、老人よりも若年者を優先治療すべきという考えが決定者の脳裏をよぎることは避けられないのは当然であろうと考える。また、避難所トリアージという概念もあって、そこでは大量の避難者で避難所が大幅に不足する場合は、自宅を失った人、高齢者、障害者などを優先して受け入れるという弁別手法もあるそうである。

 昨日、電車内で外国人らしい若者に席を譲られた。有難く席に座らせてもらったが、今回の新型肺炎等の事態にあっては若者に治療の席を笑顔で譲ることが、先の見えた老人の美徳・義務であるのかも知れない。今回の死亡例を、その程度の死生観は持ち、保ち続け得る気力・気概・覚悟を持って余生に当たるべしという教訓と受け取った。新型肺炎の犠牲者に合掌。


ダイヤモンド・プリンセス乗客の下船始まる

2020年02月19日 | コロナ

 ダイヤモンド・プリンセス号乗客の下船が始まったが、本日は「鬼、人でなし」と痛罵されることを承知しての所感である。

 下船は乗客にとっては居住環境の一部改善と喜ぶべきであろうが、報道される一部乗客の「被害者意識むき出し」の発言には違和感を覚える。彼等が隔離されたのは、不特定多数の国民を感染から守るために必要な措置であり、我々にとって彼等は加害者または加害者となり得る存在でしかないと考える。乗客は自分の行楽(享楽)の目的のもとに自分の意志で乗船したもので、今、国や自治体が公金で行っているのは「個人的行楽の尻ぬぐい」にほかならず、隔離・拘禁は自分が他人に害を与えない又は害を与える危険性を局限するための措置として甘受することが、社会人としての義務ではないだろうか。船内での感染拡大を許した政府・関係官庁の対応には問題があるとしても、これまで想定しなかった未曾有の事態であり、やむを得ないと受け止めざるを得ないと思う。医療設備の整った船内で、4・5分歩けば病院(医務室)があり、冷めた弁当であっても無料で出前が届く環境は、十分に耐え忍べるもので、更には重症化や致死率がインフルエンザ程度であることを思えば、居丈高に不平・不満を叫ぶのは如何なものであろうか。隔離当初には、常備薬が切れかかったり、食事時間が不規則であった不具合もあったであろうが、想定を超える事態にあっては起こり得ることで、2~3日で改善されたものと思う。その間に払われた関係者の努力に対する感謝の言葉があまり伝えられないのは残念である。10代20代の隔離者の失われる時間、好意的に見ても40代までのそれには同情するものの、60代以上にあっては諦観とともに事実を客観的に受け止め逍遥と隔離に従って世論の鎮静に寄与する大人の対応が欲しいと思う。致死率1%以下の新型肺炎の隔離でこの騒ぎ、もし致死率70%を超えるエボラ出血熱や原因不明感染症のパンデミックが起きた場合には、考えるだけでも恐ろしいパニックが予想される。

 ハワイまで2週間、PKOでは20日間も艦内生活を余儀なくされることを当然とし受け容れていた者として、半月程度の不自由生活で音を上げることが実感できないことに起因する所感と思うが、乗客にはもう少し冷静な判断と言動を願うところである。繰り返しになるが、乗客は被害者を標榜すべきではなく、自分の行楽の尻ぬぐいに公金と労力を費消させる加害者であり、他人に害を及ぼさないように予防拘禁された身と自覚すべきであると思う。それ以上に、今回の下船が更なる感染拡大の引き金にならないことを祈るのみである。


インドの地方選挙結果に触発されて

2020年02月18日 | 社会・政治問題

 インドのデリー首都圏議会選挙で政権与党(委員度人民党)が地域政党に大敗した記事を読んだ。

 インドに関する自分の知識を列挙すると、紀元前3000年のインダス文明、東インド会社による英国の搾取、ガンジーの非暴力抵抗、チャンドラ・ボースの独立運動、パキスタン分離、カシミール紛争、核保有国程度であるので、ウィキペディアの関連項目を斜め読みした。インドは中国に次いで第2位(13億人)の人口を持ち、近い将来には人口抑制策によって増加が鈍化した中国を追い越すことは確実視されている。政治的には28の州と9つの連邦直轄領、およびデリー首都圏で構成される連邦国家で、間接選挙で選出される大統領を元首としている。人種的にはインド・アーリヤ族,ドラビダ族,モンゴロイド族等の多人種・多民族国家と認識されているようであるが、比較的に早くから混血が進んだために、人種間の対立よりも人種に付随して発生したカースト制度による分断・対立の方が根深いとされている。連邦公用語はヒンディー語であるが、憲法で公認されている言語が21あり、おもな言語だけで15を超えるためルピー紙幣には17の言語が印刷されているそうである。憲法では連邦公用語はヒンディー語に統一し、憲法発布後15年で旧宗主国(イギリス)の公用語である英語を廃止するとしているが、現在でも英語教育が廃れることはなく、ニューデリーの公立学校やインド各地の私立高校では初等教育から英語で教育が行われているようである。このため、核保有や火星探査衛星の打ち上げ等の高度な技術を保有し、医術・IT開発等で海外で活躍する「印僑(華僑に倣って)」が全世界で増殖しているそうである。2000年代以降著しい経済発展を遂げたBRIC(ブラジル、ロシア、インド、中国)の一員としてG7に迫る勢いのインドであるが、経済成長急進国の例にもれず貧富格差や腐敗は深刻で、国民全体の識字率は70%強、1日65ルピー(100円弱)未満で暮らす貧困人口は3億人、屋内トイレは不浄とする教義にも起因するが40%の人間が屋外で用を足し、反汚職組織の調査では1年間に賄賂を支払った経験が19万件も存在するとされているが、これらの統計は中国以外には厳しい目を向けるユネスコや人種差別撤廃委員会のデータであるので、盲目的には信頼できないものかも知れない。

 昨年の総選挙で2/3の圧倒的な議席を得た政権与党であるが、今回の選挙で大敗した原因は、現政権のヒンズー重視政策と経済成長の恩恵が実感できないことが挙げられているが、最大の要因は地域政党が掲げた「医療費の無料化」公約であるとされている。今回の選挙結果で、現政権に陰りが見えたとの観測もあるが、医療費無料化という甘言に靡いた民衆も、国防や外交が問われる国政選挙では違った選択をするものと考えている。何しろ3桁の掛け算を暗算でこなす民族である。