一寸の虫に五寸釘

だから一言余計なんだって・・・

津軽な弁護士

2006-03-10 | 法律・裁判・弁護士
ちなみに「気軽」「手軽」の誤植ではありません。
また、「三味線」「冬景色」(失礼!)という話でもありませんので念のため。



先日某弁護士事務所(ローファーム系でなく一般民事)の若手の弁護士先生に電話したところ、「今日は一日中弁護士会館にいます」ということでした。

ちょうどその日は日弁連の選挙の日だったそうで、若手先生は事務所のボス弁(注1)が弁護士会の派閥(注2)の幹部のため、ちゃんと投票にきているかをチェックする役を仰せつかっていたそうです。

「先生、それじゃまるで津軽選挙(注3)じゃない」と冷やかしたのですが、どうも若手先生は津軽選挙をご存じなかったようで、通じませんでした・・・


日弁連会長というのは対外的には弁護士の顔になるわけで、単になりたい人を据えればいいというだけでなく、見識とか人望とかいろんなものを考慮して選ぶ必要があるし、それぞれの弁護士会の利害もあったり、(毎度の弁護士職務基本規定の第2条にもあるように)そもそも弁護士は「自由と独立」の気風のある方々の集まりだったりもするので、選挙運動もなかなか難しいそうです。

もっとも弁護士会の役員というのはなったはなったで時間をとられるので、本業は収入減になるため、なかなか大変なようです。


※ 「津軽選挙」の揶揄は「見張っている」ことについてで、さすがに弁護士会では買収や供応はないそうですので、弁護士先生の名誉のために申し添えます。


余談ですが、商工会議所の選挙になると末端の自営業者のオヤジの集合体では供応は普通のようで、私の父親のような町工場にも年に1回ごちそう(一応会員の飲食店での打ち合わせ名目らしいですが)のお誘いをいただいていたようです(笑)


どんな組織・団体でも役職者を選ぶというのは大変なようです。



PS
「〇〇な弁護士」シリーズですが、タイトルにも無理が目立ってきてネタ的にも苦しくなってきたので、今回でひとまず終わりにしようと思います。



(注1) 一般民事の事務所は事務所の代表者を「ボス弁」雇われている弁護士を「イソ弁」(「居候弁護士」の略称だそうで、「イソギンチャク」ではないそうです)と言います。
渉外系やローファーム系は「パートナー」「アソシエイト」とやはりバタ臭い言い方をしています。最近は一般民事の事務所でも「パートナー」という言い方が増えているようです。

(注2) たとえば東京では3つの弁護士会があるのですが、その中でいくつかのグループがあり、それを「派閥」と言うそうです。具体的に何をやっているのかは存じ上げないのですが、どうしても自民党の「派閥」を連想してしまいます。

(注3) かつて津軽地方は政争が激しく、選挙のたびに買収や供応が横行し、しかも投票を依頼した人が実際に投票するかどうかを監視するために、集落の入り口や投票所にチェックするかかりまで置いていたということがあったそうです。(こちら参照)


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悩ましい弁護士

2006-03-09 | 法律・裁判・弁護士

注:フェロモン系の女性弁護士の話ではありません。
シリーズ風なタイトルを意識して、記事内容と整合しない日本語になっていましたがご容赦ください。


昨日の記事にいただいたコメントや、昨日も紹介した弁護士職務基本規定を改めて読むと、逆に依頼者側の要求にこたえようとするとかえって抵触してしまうような部分もあり、難しい問題がありそうだな、と思いましたので、そのへんを書いてみたいと思います。

第九条 弁護士は、広告又は宣伝をするときは、虚偽又は誤導にわたる情報を提供してはならない。
2 弁護士は、品位を損なう広告又は宣伝をしてはならない。

弁護士の紹介業が弁護士法で禁じられているので、依頼者側からみるとどの弁護士がどのような事件が得意なのかはよくわかりません。なのでホームページ等で具体的にどういう分野が得意かなどがわかるといいのですが、弁護士会のHPなどでも「企業法務・一般民事」程度の書き方にしかなっていません。
「離婚訴訟(特に妻側で慰謝料を取るのが得意)」などと書いてしまうのは品位を損なう行為なのでしょうか。
また、過去の事件については守秘義務があるのでなかなか語りにくいというのもあるかもしれませんね。

もっともこれは医者も同様で、医者は医療法でより厳格に広告内容が規制されていて、診療科目などの事実関係をうたうことしかできなかったと思います。
なので「医療法人慶友会」などと自分の出身校やコネクション(「〇〇病院提携」というのもいけないらしい)を示唆するような名称をつけることにつながっているようです。

第十四条 弁護士は、詐欺的取引、暴力その他違法若しくは不正な行為を助長し、又はこれらの行為を利用してはならない。

詐欺・暴力・不正を助長するのはとんでもないですが、判例がなく学説が分かれているような分野(いわゆるグレーゾーン)でリスクを承知で新しいフロンティアを開拓しようという企業があった場合、それにアドバイスするのも弁護士の重要な役目だと思います(そうでないと進歩がない)なので、この「違法」というのが事後的・かつ形式的にあてめられてしまうと結構厳しいな、と思います。

第二十一条 弁護士は、良心に従い、依頼者の権利及び正当な利益を実現するように努める。

「依頼者の権利及び正当な利益を実現」という部分が微妙ですね。
これは、反社会的な行為により得た利益を法的手段で実現するのに手を貸しては行けない、という例えば昨今従前の業界慣行と比べて厳しい判決が続いている貸金業法のグレーゾーン金利のようなものは「依頼者の正当な利益」といえるのか、という指摘もありえるのではないでしょうか。

第二十九条 弁護士は、事件を受任するに当たり、依頼者から得た情報に基づき、事件の見通し、処理の方法並びに弁護士報酬及び費用について、適切な説明をしなければならない。
2  弁護士は、事件について、依頼者に有利な結果となることを請け合い、又は保証してはならない。
3  弁護士は、依頼者の期待する結果が得られる見込みがないにもかかわらず、その見込みがあるように装って事件を受任してはならない。

これは、依頼者に「大丈夫でしょうか?」と聞かれたときに「負けるかもしれません」と言ってばかりいては商売にならない、という部分とどう折り合いをつけるか、という問題になりそうですね。
依頼者側から見ても、最初から言い訳を探しているような人も困りますが、やたら威勢だけいい人も頼りにならないことが多いのですが、個人相手の受任においては(昨日も述べたように)消費者保護的な考え方に基づいて説明義務が加重されることもあっていいかもしれません。

もっとも、この規定の最後には

第八十二条 この規程は、弁護士の職務の多様性と個別性にかんがみ、その自由と独立を不当に侵すことのないよう、実質的に解釈し適用しなければならない。第五条の解釈適用に当たって、刑事弁護においては、被疑者及び被告人の防御権並びに弁護人の弁護権を侵害することのないように留意しなければならない。
2  第一章並びに第二十条から第二十二条まで、第二十六条、第三十三条、第三十七条第二項、第四十六条から第四十八条まで、第五十条、第五十五条、第五十九条、第六十一条、第六十八条、第七十条、第七十三条及び第七十四条の規定は、弁護士の職務の行動指針又は努力目標を定めたものとして解釈し適用しなければならない。

とあるんですね。この辺かなり柔軟な運用ができるようで、「角を溜めて牛を殺す」ようなことにはならないようになっているみたいです。
まあ、これを骨抜き、と捉える方もいらっしゃるかもしれませんが、一般企業におけるコンプライアンス態勢や内部統制制度と企業活動の効率性・自由度の関係を考えるひとつの参考になるかもしれませんね。

※「弁護士職務基本規程」の逐条的解説が「自由と正義」の臨時増刊号(2005年Vol.56)として出版されているようなので(私はそれを読まずにこのエントリを書いてます)、興味のある方はそちらをご参照ください。


ところで今日ちょっと気になったのが、最近話題の「ライブドア株主被害弁護団」。HPがであったので覗いてみたのですが、「弁護団方針 今後の方向性」として方針らしきものは「はじめに」の

私達は、証券市場の公正さを信じてライブドアなどの株式を購入したところ、ライブドア、ライブドアマーケティング及び堀江貴文ほかの会社役員が虚偽の有価証券報告書などの方法により、イカサマ、インチキをしたことから不当に高い価格で株式を買わされたことによる損害を問題としています。
 株価が下落したことが損害というのではなく、ホリエモンらによる不公正な方法での虚偽情報、いわばイカサマの情報による株価を問題としています。

  また、私達は、株式取引の価格変動についての見込みちがいによる 損害を回復することを目指してはいません。

とあるだけで、これだけでは(少なくとも私は)「虚偽記載により不当に高い価格で買わされた」というのが本当に損害として立証できるのかというのが素人にはわからない一方で

そこで、今回の事件での被害実態を把握するためにも、現時点で原告として参加する意向のある方は、当弁護団で作成した資料を検討された上で、同資料添付の「登録カード」にて、ご登録をお願いいたします。(資料の請求は、資料請求まで)。

  「登録カード」にて当弁護団に被害者として登録して頂いた方のうち、当弁護団が原告としてご参加頂けると判断した方には、改めて当弁護団からご連絡いたします。その後、原告としての参加を希望される方には、当弁護団と受任手続を行って頂きます。
(以下「受任手続きまでの流れ」の説明)

と、何となく「事件の見通し、処理の方法並びに弁護士報酬及び費用について、適切な説明」がないままに依頼者を勧誘しているようにも思えます。
もっともこの説明は規定上は「受任にあたり」求められるものなので勧誘時に説明しなくてもいいのですが、アメリカのクラス・アクションのように完全成功報酬制ならさておき、受任時に着手金等を取るのであればそれらについて一定程度の説明はあるべきではないか、と思いました。(1000円払って資料請求すると3/5の説明会資料が入手できるようですが、そこには書いてあるのでしょうか)

多数の個人投資家相手にトラブルにならなければいいですが・・・



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問題な弁護士

2006-03-08 | 法律・裁判・弁護士
昨日のエントリにコメントをいただき、もう少し考えてみようと弁護士の懲戒処分の事例をググってみました。

***********************

テレビ局の番組制作者の依頼を受け、戸籍謄本や住民票などを不正に取得
2004年1月 東京弁護士会 業務停止4月

毎月数十件受任した債務整理で法律の説明や返済計画立案を事務員に任せ、弁護士任務を怠った。
2006年1月 東京弁護士会 業務停止4月

自己破産などの依頼を長期間放置した上、着手金の返還に応じなかった
2006年2月 熊本弁護士会 業務停止1年2ヶ月

パソコンソフトの説明をさせようと青葉区上杉6丁目の事務所に呼んだ出版社の男性社員に対し、「商品知識が足りない」と腹を立てて暴行を加え、胸に4週間のけがをさせた
2005年8月 仙台弁護士会 業務停止2月

相続放棄の手続きに絡み東京家裁名義の文書を偽造
2005年7月 東京弁護士会 業務停止1年

会社から任意整理を依頼されたが同10月解任され、その後1年近く預かった約3427万円を返還しなかった
2005年7月 東京弁護士会 業務停止2年

依頼人から「連絡がつかない」などの苦情が相次いだ。実際に音信不通となっていたことなどから失踪したと認定
2005年12月 福岡弁護士会 退会命令

上記の業務停止2月の懲戒請求期間中に、タクシー運転手を殴ったとして傷害容疑で逮捕され、起訴猶予処分
2006年2月 仙台弁護士会 退会命令

交通事故の保険金請求手続きで支払われた保険金約5800万円を依頼者に渡さなかった
2006年1月 第一東京弁護士会 除名

訴訟相手から受け取った和解金を依頼人に渡さず着服
2006年1月 横浜弁護士会 除名

依頼者の債務整理に当たり消費者金融から回収した金を無断で引き出したり、依頼者から預かった和解金を流用した
2006年2月 沖縄弁護士会 除名

*************************

googleでヒットした(=新聞報道された)だけでも結構あるものですね(整理していてちょっとめげました・・・)

ざっと見ると、被害金額の大小が処分の軽重に反映されているように見えますね。
でも、被害額の多寡の問題よりは依頼者の無知に乗じたかどうか、という悪性を基準にするほうが、個人的には納得する感じがします。

たとえば企業が依頼人で、相手方から受け取った和解金を弁護士が着服したような場合は、企業であるなら当然訴訟の経緯は見守っているはずですし、和解金が入金されなければおかしいと思うべきです。
一方で、個人が生まれて初めて弁護士に依頼するようなときは、何がどういう順序で進むか分からないのですから、そういう人には特に誠実にサービスを提供すべきではないでしょうか。

つまり、弁護士への依頼についても依頼者の自己責任を問えるケースと、消費者保護的な視点を考慮すべきケースに分かれるのでは、ということです。


でもそうすると、少額の個人事件はなおさら割に合わないので引き受けてがいなくなってしまうのかもしれませんね(労多くして診療報酬は少ない上にトラブルも多い小児科医の減少と似ているような・・・)


ところで上の事例を見ると、2006年になって立て続けに重い処分がなされていますが、これは世の中のコンプライアンスへの注目を反映して厳罰化が進んでいるのでしょうか、それとも悪い弁護士が増えているのかしら・・・


(おまけ)
日弁連のHPで弁護士職務基本規定というものを見つけました。

ご参考まで。
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負けない弁護士

2006-03-07 | 法律・裁判・弁護士

提訴せず「勝訴」判決文偽造、弁護士を業務停止2年 (読売新聞) - goo ニュース
(2006年 3月 6日 (月) 20:18)

依頼者に「勝訴」したとうそをつき、偽造した判決文を渡したとして、東京弁護士会は6日、同会所属の石川勝利弁護士(40)を業務停止2年の懲戒処分にした。

同弁護士会によると、石川弁護士は2003年5月、都内の女性から、勤務先に未払い給与の支払いを求める訴訟の代理人を依頼された。ところが提訴を怠って放置し、女性の再三の問い合わせに、「12月に判決がある」「勝訴した」などと虚偽の報告を繰り返した。  

さらに翌04年1月には、請求全額の約235万円の支払いを命じる内容で、東京地裁の現役裁判官の名前が入った判決文を偽造し、女性に渡した。

石川弁護士は、女性を信じ込ませるため、弁護士費用を差し引いた約203万円を自腹で支払ったが、女性が同年5月、同地裁に判決文の再交付を求めたため、提訴していなかったことが発覚した。

ご本人のお名前といい、嘘のつきかたの脇の甘さといい、最後は自腹を切る気前の良さ(?)といい、ブロガーのために作ったかのようなおいし過ぎるニュースです。


でも、これって嘘のつき方の間抜けさとか損害を補填したことはさておき、依頼者の信頼の根幹を裏切っていると思うのですが「業務停止2年」というのは懲戒のランクで言うとどれくらいの厳しさなのだろうか、と日弁連のHPをみると

弁護士に対する懲戒の種類は、次の4つです(同法57条1項)。

1.戒告(弁護士に反省を求め、戒める処分です)
2.2年以内の業務停止(弁護士業務を行うことを禁止する処分です)
3.退会命令(弁護士たる身分を失い、弁護士としての活動はできなくなりますが、弁護士となる資格は失いません)
4.除名(弁護士たる身分を失い、弁護士としての活動ができなくなるだけでなく、3年間は弁護士となる資格も失います)

懲戒請求事件の処理状況というページもあるので見てみると

懲戒請求事件処理の内訳(弁護士会)

新受 既済
懲戒 不相当 除斥満了 却下・終了
戒告 業務停止 退会命令 除名
1年未満 1~2年
1995 576 17 14 1 5 2 39 422 9 80
1996 485 16 6 1 3 1 27 402 7 52
1997 488 11 19 4 1 3 38 381 9 23
1998 715 19 16 4 2 2 43 440 4 40
1999 719 17 20 7 5 3 52 479 11 24
2000 1030 17 12 4 7 1 41 690 25 26
2001 884 34 20 4 4 0 62 778 19 38
2002 840 28 22 10 3 3 66 674 22 49
2003 1127 27 23 2 3 4 59 822 ※1 却下69
終了23
2004 1268 23 19 2 3 2 49 1023 - 却下1
終了19

※1=除斥満了については2003年より「却下」・「不相当」に含めた。

と、「2年の業務停止」は実際に下された処分の中では重いほうなんですね。
でも、この程度では退会命令とか除名のような「弁護士として失格!」という判断でないのか?というのはちょっと意外でもあります(では退会命令とか除名ってどんなことやったんだろうか、というのは興味がありますね)


ところで、これを見て驚くのは懲戒処分の件数はほぼ横ばいなのに、ここ数年の新規受理件数が急増している事です。

弁護士の先生方も無理筋な訴訟を引き受けたあげくに、敗訴したら懲戒請求されるのではたまったものではありませんね(テレビ番組で庶民の「訴えてやる!」という権利意識を高めた副作用では?)

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住友信託の目論見についての邪推(UFJvs住友信託)

2006-02-15 | 法律・裁判・弁護士
UFJvs住友信託の損害賠償請求事件の一審判決については昨日の記事でちょいとふれたのですが、正確な理解のためには専門家のブログをご覧いただくとして、私としてはtoshiさんろじゃあさんのところで一瞬盛り上がった「法律事務所(弁護士)のビジネス・モデルのありかた」的な切り口から野次馬的な感想を。


法律的な争点としてはすごくざっくり言えば、住信側が履行利益(合意書どおりに経営統合が実現された場合に得られたであろう利益)の損害賠償(2000億は下らない!)を主張したのですが、これは認められず、また、信頼利益(契約の成立を期待して交渉をすすめたのにドタキャンされて無に帰してしまった費用など)については裁判所はこの点についてはUFJの義務違反があるとしながらも、住信側がその賠償および損害額を主張・立証しなかったので、損害賠償を認めなかった、というものです。


今回の訴訟の住信側の弁護団長である升永弁護士は、青色ダイオード事件で中村氏の代理人であるとともに「高額納税者に登場される著名な先生」((C)toshiさん)であり、また何かと記者会見を開いて新聞などに登場することでも有名です(プロフィールはこちら)。
でもそもそも升永弁護士は知財の分野が専門のはずですし、仮処分事件においては住信の代理人にはなっていなかったと思います。

そこで今回の損害賠償請求訴訟に弁護団長として起用した住信の意図についての邪推。


住信としても今回の訴訟は取れて信頼利益(多くて数千万程度?)というのは最初から承知しているはず。
ただ最初からそれだけだと仮処分も却下され、東京三菱との経営統合を止められなかった後の敗戦処理の色あいが濃い訴訟になるので世間体上もみっともない。
なのでここはひとつ升永弁護士の「ケレン」に期待して華々しくぶち上げてもらい、「企業として筋を通した」という形にしたい。
そのために履行利益として2000億という巨額の請求をし、一度は「名誉ある敗北」を甘受する。
そして高裁で信頼利益の主張をして和解で決着をすることで「精一杯やりました」感を出すというあたりを落としどころとして狙っているのではないでしょうか?


PS うーん、言い訳になってしまうのですが、当初この倍くらいの文章を自主検閲した結果「目黒のサンマ」の殿中で出されたサンマのような記事になってしまいました。反省。
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「日本的慣行」の問題?(UFJvs住信判決)

2006-02-14 | 法律・裁判・弁護士

昨日のUFJvs住友信託の東京地裁判決については、事実関係について詳しく知らないので判決を見てから、などという当事者みたいな前置きになってしまうのですが、 Nikkei Net

金融大再編を舞台にした異例の法廷闘争で、基本合意をほごにして旧三菱東京フィナンシャル・グループと経営統合したUFJ側に一定の責任を認めつつ賠償請求を退けた司法判断は、双方の信頼関係を重視し、違約金条項などを定めたがらない日本的契約やビジネス慣行のあり方に一石を投じそうだ。

とあるのは、整理としてどうかなぁ、と。

定型的でない大きい案件について確定的な合意をした場合には違約金条項を含めてきっちり契約書を締結するのは「日本的契約やビジネス慣行」においても同じだと思います。

ただ、交渉の途中においては、当事者間でどこまで拘束力を持った合意をするか、またはどの程度交渉が進んだ時点で契約を締結するかは(特に定型的でない案件においては)ケース・バイ・ケースです。一定の拘束力のある契約を締結しようとする場合も、そこに違約金条項を入れることで契約自体に難色を示されることもあれば、違約金額や違約の定義(=当事者の義務の範囲の明確化)について細かい議論に時間をとられてしまうこともあります。
なので、段階を踏んで徐々に拘束力の強い契約にしていく、とか、共同記者会見をして事実上翻意しにくくさせるとかいろんなことを考えながら商談をすすめていくわけです。

今回も、住信としては違約金条項がないなどの一定のリスクは承知の上で、基本合意書の締結を優先させるという事業判断をしたのではないかと思います。
それを「ビジネス慣行」で切って捨てるのはどうでしょうか。


それから、日経がこういうことを書くと、ただでさえアメリカ流の契約書が流行っている上に、さらに"MOU (Memorundom of Understanding)"とか"LOI (Letter of Intent)"などの用語が流行り、猫も杓子もその用語「だけ」を駆使して、「そろそろLOIを結んだらどうだ」とか「これはMOUなのかLOIなのか?」などという中身がないけど仕事しているように思える会話が飛び交う、という悪影響が懸念されます。
どういう内容の契約書を結ぶか、当事者の合意内容をどうやったら正確に反映できるかが問題なのに、「脱日本的契約」が目的にすりかわってしまっては意味がないですから。


ところで、最近定着した外来用語に「デューディリジェンス(due diligence)」というのがあります。
もともと株式とか不良債権とか不動産などを購入するときの事前の価値の精査をする作業のことを言うのですが、10年前は発音するのに舌を噛んでいた人たちまでもが「デューデリ」とか「DD」などと略称で言うまでに日常化しています。
ところがその一方で、サービスを提供する会社も増えた結果、コンサル会社+会計士+弁護士+税理士などの立派なチームをコストをかけて組成した時点で安心してしまい、デューディリジェンスがdueでも diligentでもない単なる手続き・発注作業になってしまっていることもたまにあるようです。


あまり「なんちゃって専門用語」は増えて欲しくないものです。



PS ちなみに私は仕事においては攘夷派でして、日本人同士の国内取引のときの不必要な英語やカタカナ言葉にはかなり厳しいです。
今日の打ち合わせでも出くわしたのですが、わざわざ「今日のアジェンダ」なんてタイトルをつける奴は許せないと思いませんか?

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弁護士もネットで

2005-10-07 | 法律・裁判・弁護士

弁護士費用、ネットで比較 42人登録「競争サイト」
(2005年10月 7日 (金) 06:08 asahi.com)


 サイトでは、あらかじめ登録した利用者が、解決してほしい借金や借地借家、交通事故、離婚などの問題の事例を書き込んで送信すると、最大5人の登録弁護士から処理方針と見積もり、経歴が返信される。
 利用者はそれを見比べて、選んだ弁護士と面会し、正式に依頼する。中小企業などは、顧問弁護士探しにも使える。見積もりは無料だ。


個人ではそう何度も弁護士に依頼するような紛争はないでしょうから、弁護士探しというのは知り合いでもいないとなかなか難しいのが現状だと思います。
その意味では面白い試みだと思います。

ただ、ネットの書き込みで相談内容をうまく要約するのは難しいので、蓋を開けてみたら思ったより費用(弁護士から見れば手間)がかかった、というようなトラブルは最初は出ると思います。
けど、顧客の新規開拓の必要経費なんでしょうね。


登録弁護士は月5250円、見積もりを通じた面会依頼通知1件につき1万500円を中間法人に払う。弁護士法72条で弁護士に事件を周旋し、手数料をとることは禁止されているが、サイトのシステム開発や維持・管理の実費と位置づけ、多く利用する弁護士の負担を大きくすると元榮氏は説明している。また、法律相談料はすべて弁護士に入り、手数料はとらない。

このへんは弁護士業界的には抵抗がありそうな感じもします(たとえば民間企業が参入した場合など)。
司法書士が小額訴訟の代理人になれるようになり、徐々に職業独占も緩くなってきていますが、職業独占のひとつの目的でもある「事件屋」「示談屋」の排除による法律紛争の適正な処理という観点からはあまりお金一方というのも問題があるかもしれません。


ここでも規制緩和と消費者保護と似たような問題が出てきそうですね。

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