注:フェロモン系の女性弁護士の話ではありません。
シリーズ風なタイトルを意識して、記事内容と整合しない日本語になっていましたがご容赦ください。
昨日の記事にいただいたコメントや、昨日も紹介した弁護士職務基本規定を改めて読むと、逆に依頼者側の要求にこたえようとするとかえって抵触してしまうような部分もあり、難しい問題がありそうだな、と思いましたので、そのへんを書いてみたいと思います。
第九条 弁護士は、広告又は宣伝をするときは、虚偽又は誤導にわたる情報を提供してはならない。
2 弁護士は、品位を損なう広告又は宣伝をしてはならない。
弁護士の紹介業が弁護士法で禁じられているので、依頼者側からみるとどの弁護士がどのような事件が得意なのかはよくわかりません。なのでホームページ等で具体的にどういう分野が得意かなどがわかるといいのですが、弁護士会のHPなどでも「企業法務・一般民事」程度の書き方にしかなっていません。
「離婚訴訟(特に妻側で慰謝料を取るのが得意)」などと書いてしまうのは品位を損なう行為なのでしょうか。
また、過去の事件については守秘義務があるのでなかなか語りにくいというのもあるかもしれませんね。
もっともこれは医者も同様で、医者は医療法でより厳格に広告内容が規制されていて、診療科目などの事実関係をうたうことしかできなかったと思います。
なので「医療法人慶友会」などと自分の出身校やコネクション(「〇〇病院提携」というのもいけないらしい)を示唆するような名称をつけることにつながっているようです。
第十四条 弁護士は、詐欺的取引、暴力その他違法若しくは不正な行為を助長し、又はこれらの行為を利用してはならない。
詐欺・暴力・不正を助長するのはとんでもないですが、判例がなく学説が分かれているような分野(いわゆるグレーゾーン)でリスクを承知で新しいフロンティアを開拓しようという企業があった場合、それにアドバイスするのも弁護士の重要な役目だと思います(そうでないと進歩がない)なので、この「違法」というのが事後的・かつ形式的にあてめられてしまうと結構厳しいな、と思います。
第二十一条 弁護士は、良心に従い、依頼者の権利及び正当な利益を実現するように努める。
「依頼者の権利及び正当な利益を実現」という部分が微妙ですね。
これは、反社会的な行為により得た利益を法的手段で実現するのに手を貸しては行けない、という例えば昨今従前の業界慣行と比べて厳しい判決が続いている貸金業法のグレーゾーン金利のようなものは「依頼者の正当な利益」といえるのか、という指摘もありえるのではないでしょうか。
第二十九条 弁護士は、事件を受任するに当たり、依頼者から得た情報に基づき、事件の見通し、処理の方法並びに弁護士報酬及び費用について、適切な説明をしなければならない。
2 弁護士は、事件について、依頼者に有利な結果となることを請け合い、又は保証してはならない。
3 弁護士は、依頼者の期待する結果が得られる見込みがないにもかかわらず、その見込みがあるように装って事件を受任してはならない。
これは、依頼者に「大丈夫でしょうか?」と聞かれたときに「負けるかもしれません」と言ってばかりいては商売にならない、という部分とどう折り合いをつけるか、という問題になりそうですね。
依頼者側から見ても、最初から言い訳を探しているような人も困りますが、やたら威勢だけいい人も頼りにならないことが多いのですが、個人相手の受任においては(昨日も述べたように)消費者保護的な考え方に基づいて説明義務が加重されることもあっていいかもしれません。
もっとも、この規定の最後には
第八十二条 この規程は、弁護士の職務の多様性と個別性にかんがみ、その自由と独立を不当に侵すことのないよう、実質的に解釈し適用しなければならない。第五条の解釈適用に当たって、刑事弁護においては、被疑者及び被告人の防御権並びに弁護人の弁護権を侵害することのないように留意しなければならない。
2 第一章並びに第二十条から第二十二条まで、第二十六条、第三十三条、第三十七条第二項、第四十六条から第四十八条まで、第五十条、第五十五条、第五十九条、第六十一条、第六十八条、第七十条、第七十三条及び第七十四条の規定は、弁護士の職務の行動指針又は努力目標を定めたものとして解釈し適用しなければならない。
とあるんですね。この辺かなり柔軟な運用ができるようで、「角を溜めて牛を殺す」ようなことにはならないようになっているみたいです。
まあ、これを骨抜き、と捉える方もいらっしゃるかもしれませんが、一般企業におけるコンプライアンス態勢や内部統制制度と企業活動の効率性・自由度の関係を考えるひとつの参考になるかもしれませんね。
※「弁護士職務基本規程」の逐条的解説が「自由と正義」の臨時増刊号(2005年Vol.56)として出版されているようなので(私はそれを読まずにこのエントリを書いてます)、興味のある方はそちらをご参照ください。
ところで今日ちょっと気になったのが、最近話題の「ライブドア株主被害弁護団」。HPがであったので覗いてみたのですが、「弁護団方針 今後の方向性」として方針らしきものは「はじめに」の
私達は、証券市場の公正さを信じてライブドアなどの株式を購入したところ、ライブドア、ライブドアマーケティング及び堀江貴文ほかの会社役員が虚偽の有価証券報告書などの方法により、イカサマ、インチキをしたことから不当に高い価格で株式を買わされたことによる損害を問題としています。
株価が下落したことが損害というのではなく、ホリエモンらによる不公正な方法での虚偽情報、いわばイカサマの情報による株価を問題としています。
また、私達は、株式取引の価格変動についての見込みちがいによる 損害を回復することを目指してはいません。
とあるだけで、これだけでは(少なくとも私は)「虚偽記載により不当に高い価格で買わされた」というのが本当に損害として立証できるのかというのが素人にはわからない一方で
そこで、今回の事件での被害実態を把握するためにも、現時点で原告として参加する意向のある方は、当弁護団で作成した資料を検討された上で、同資料添付の「登録カード」にて、ご登録をお願いいたします。(資料の請求は、資料請求まで)。
「登録カード」にて当弁護団に被害者として登録して頂いた方のうち、当弁護団が原告としてご参加頂けると判断した方には、改めて当弁護団からご連絡いたします。その後、原告としての参加を希望される方には、当弁護団と受任手続を行って頂きます。
(以下「受任手続きまでの流れ」の説明)
と、何となく「事件の見通し、処理の方法並びに弁護士報酬及び費用について、適切な説明」がないままに依頼者を勧誘しているようにも思えます。
もっともこの説明は規定上は「受任にあたり」求められるものなので勧誘時に説明しなくてもいいのですが、アメリカのクラス・アクションのように完全成功報酬制ならさておき、受任時に着手金等を取るのであればそれらについて一定程度の説明はあるべきではないか、と思いました。(1000円払って資料請求すると3/5の説明会資料が入手できるようですが、そこには書いてあるのでしょうか)
多数の個人投資家相手にトラブルにならなければいいですが・・・