一寸の虫に五寸釘

だから一言余計なんだって・・・

コーポレート・ガバナンス議論のご大層さ

2010-11-17 | あきなひ

金融法務事情No.1909の「特集:会社法制の見直しとコーポレート・ガバナンス」にある神田先生の「上場会社に関する会社法制の将来」という記事(講演録のまとめ)は今までの議論の経過をわかりやすく整理していて参考になります。  

参考になるだけでなく、「コーポレート・ガバナンス」論議に関する私の持っている違和感の原因もおぼろげながらわかってきた感じがしました。


神田先生の記事では、まず  

要するに、コーポレート・ガバナンスとは、上場会社等において、経営を牽制するような仕組みを会社がどのように作り上げるかという問いです。

と定義しています。
当たり前のようでけっこうこれが大事で、「内部統制」などとごっちゃになると議論のポイントがずれることが(特に素人同士や、素人を安易に折伏してしまおうという専門家においては)しばしばあるので要注意です。   

話を元に戻すと、

このコーポレート・ガバナンスの概念は、従来は「不祥事の再発防止」だけを議論していたものが、1999年のOECDの「コーポレート・ガバナンスに関する諸原則」制定などを契機に、不祥事防止とともに、企業が業績を上げるためにどのような意思決定の仕組みを設けたらいいか、という「車の両輪論」がグローバルな「標準的な議論」となってきた。日本でも会社法制においては委員会(等)設置会社制度が導入された。 

一方で昨年来のコーポレート・ガバナンスをめぐる「現在の議論」はそれとは別のグローバルな状況との「格差」に対応することを主眼としている。
これはプレゼンスを増してきた外国人投資家などからの指摘を受けたもので、この文脈で不透明な第三者割当増資の是正や独立役員制度が議論されることになってきた。 
そこで、東証の規則で設置が求められるようになった独立役員をさらに会社法制で制度化しようとして、各所でレポートが出されたり、法制審議会などで社外取締役、社外監査役その他もろもろの制度が議論になっている。 

というのが今の状況だと説明されています。


法制審議会の議論についてはbizlaw_styleさんが軽妙な解説とともに紹介しているのでもっぱらそれを参考にさせていただいくと、上の「車の両輪」特に前向きな効果の方についての議論はほとんどなく、経営者に対する監視機能や、欧米(欧と米でも違うようですが)との違いをどう埋めるか、そこついて現行法と整合性をどうとるかの議論が中心になっています。

なるほど、いままでのコーポレート・ガバナンス論議への違和感の根源は、神田先生曰くの「標準的な議論」と「現在の議論」のギャップにあったということが腑に落ちました。 
平たく言えば、その改正の方向が会社の健全な成長に結びつくのか、そもそも何で今その議論をする必要があるのか(外国人投資家が投資判断をしにくい、という理由が法制度を変える理由になるのか)という疑問ですね。  


そもそも企業不祥事についても、既存の会社法に加え、粉飾決算とか怪しい増資についていえば、J-Soxを含む金融商品取引法で対応しているわけです。
このうえに独立役員を増やせば不祥事がさらに減るとか、企業業績が向上するというものでもないように思います。  

また、そもそもコーポレート・ガバナンスの改革云々の前に、既に日本企業は、外国人をはじめとする投資家、株主重視に舵をきっているように思います。 
2002年から2007年のいわゆるいざなみ景気は好調な輸出に牽引され企業業績も過去最高益を記録する企業が続出した一方で、従業員の給料や正規雇用はいざなみ景気の間ほとんど増えませんでした。
とこどがリーマンショックが起きるや否や企業は即座に従業員のリストラに走り、その結果、早速今期の業績見込みを上方修正する企業も出てくるという状態です。

法制審議会で経団連の八丁地委員は繰り返し「立法事実がない」と言っているようですが、「企業は今のままで十分ちゃんとやってるじゃないかよ」とういうことなんだと思います。


またぶっちゃけて言えば、企業自身にプラスになると思われないような形で独立役員制度を無理やり導入しても、結局企業は新しい「お客様」の処遇の仕方を考え出すだけで実効性は伴わないと思います。
たとえば社内役員に対する監視機能だけについていっても、結局社内作成の「ご進講」とか社内から選ばれた「社外役員室」要員を使うだけでは完全に独立したチェックはできないわけです。 
だからといって自らが独立の従業員を指揮して監視活動にあたらせるかというとその費用対効果はどうなのか、逆に日常業務を停滞させるのではないかという問題が出ます。 
今の民主党の「政治主導」と官僚との関係のようなものですね。  

また、よしんば監視を強化したとしても、エンロンのように巨額の利益をあげて急成長している途上の会社に対してストップをかける度胸(万が一それが間違った指摘だったらそれこそ会社の成長を大きく阻害してしまうわけです)があるか、また、社外役員がそこまでの「大役」になったときに引受ける人がいるかどうかは疑問だと思います。 
アメリカではエンロン、ワールドコム事件を受けてSox法が制定されましたが、それが本当に機能しているかどうかは証明不能で、新たな不祥事が起きた場合に「機能していない」ことが明らかになるだけですから。 
少なくともアメリカにおけるサブプライム・ローン問題を見る限り、粉飾決算などの不正には至らないが過大なリスクを負うような企業活動については欧米流のコーポレート・ガバナンスは機能しなかったわけです。  

また、業績が低迷しても経営者が居座ったままでいたときに取締役を解任する機能を社外役員に求めるという議論もありましたが、しかし今日びオーナー企業でもない限り「居座る」というのは例外に近いんじゃないかと思います(富士通も一応社内の取締役が機能したようですし)。 
むしろ本来会社として重要なのは、業績が悪化して新しいことをはじめる資金的余裕が乏しくなる前に、新しい経営陣に引き継ぐことだと思うのですが、これは社外役員がいればできるというものではありません。
(それがなされずに政治の世界で苦労しているのが、二箇所で戦争してるわ財政は大赤字だわで政権を引き継いで取りうる選択肢が限られているオバマ大統領ですね)

ひょっとすると、統計を取ったりすれば経営者が交代すると業績が上がるとかいうデータも出るかもしれませんが、これもたとえば会社が業績回復をかけて新社長を送り込むときは、直前に損を出し切ってジャンプ台を用意しておくということもあるので(たとえば日産自動車のゴーン社長の就任時とか)あまり参考にならないと思います。

それから、民主党の公開会社法案の中に従業員からの監査役選任というのもありますが、給料があがらないからといって従業員監査役が機能するとは思えません。
そのかわり、『日本の安心はなぜ、消えたのか』でも紹介されているように、日本の従業員は別に昔から組織や上司に忠誠を誓っていたわけではないので、上で言ったように社外役員が会社のために役に立たないと思えば体よく棚上げする一方で、経営者がだめだと思えば、「だめ」の態様に応じて、内部で上を突き上げたり、逆に手を抜いたり、場合によっては海上保安官のようにちょっと内情を外に漏らしてみたりということをするわけで(*)、そういうメカニズムが働けば、何も「コーポレート・ガバナンス」なんてご大層な後ろ盾がなくてもいいんじゃないかと思います。
(*) SESCの大森次長のこれなんかもそのひとつですね。


なので、会社法制の改正に関しては、総論としては 

改正を所与の前提として拙速な取り纏めをすることなく、各検討事項につき、改正の必要性、方向性、改正の具体的内容および改正した場合の影響の内容や程度を慎重に検討する。 

ことが必要だと思います。
ちなみに上のフレーズは、日弁連の(2010.6.17理事会)「民法(債権法)改正問題に取り組む基本姿勢」(参照)から拝借しました :-)  


また、各論として何か現状を改善し、上の「標準的な議論」を進め、また「現在の議論」にも一定程度対応するとすれば、  

取締役の報酬について、現状の一定金額以上の開示でなく報酬決定のルール自体を開示して、インセンティブの歪みがないかをステークホルダーが確認できるようにする 。

これだけでいいんじゃないかと思います。
これをやれば経営者も粉飾まがいの益出しや「一発逆転」のような過剰なリスクテイクの事業判断をするにも「悪意」を推定されないように説明責任を尽くすようになると思うので、一番手っ取り早くて実効性があると思うのですが、どうでしょうか。
(でも経団連とかはものすごく反対しそうですけど)。

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スカイマーク

2010-11-10 | あきなひ

株価の乱高下は飛行機の乱高下よりはまだましですが。

スカイマーク株、ストップ安 超大型旅客機導入など懸念

9日の東京株式市場で、スカイマーク(東証マザーズ上場)の株価がストップ安になり、前日比150円安の793円で取引を終えた。前日、国際線参入と超大型旅客機導入を発表したが、リスクが高いとの見方が広がった。  

そもそも機体の購入資金のファイナンスができるのかという話もありますね。 
IFRSでリースは全部オンバランスになった後も投資化側の税務上の取り扱いは維持されて、個人投資家を巻き込んで節税商品として持ちまわられたりするのかな。


ところで前日はこんな話が 
スカイマーク(9204)は急反発 成田空港への国内線就航方針で収益拡大期待が再び高まる

5日の決算説明会において、成田空港に国内線を就航させる考えを明らかにしたことが手掛かり材料に。  

A380の件は適時開示されていますが(こちら)成田の国内線の件はされていません。
決算説明会での情報開示がアナリストと一般株主の情報格差を生んでいるという批判がされそうです。  
(もっとひどいと、あえて誤解を招くような発言をしたんじゃないかとか言われるかもしれません)

一連のトラブルといい、航空会社のイメージとして安心や安定性は大事だと思うのでイケイケの話だけすればいいってもんではないように思います。


ところで一時期運休の原因になったパイロット不足は、JALのリストラのおかげでJALのときの半分の給料で採用できているという話です。
ちなみにこんなレベルのようです(これがパイロットの国際的な給与水準として高いのか低いのかわかりませんが)ので興味のある方はご参考まで。

B737運航乗務員経験者(機長候補者)募集要項
スカイマーク募集要項補足資料(賃金)

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電子書籍をめぐる「異床同夢」

2010-11-07 | あきなひ

「本とマンハッタン BOOKS AND THE CITY」が そもそも電子書籍も出版社の仕事だろ、ってなで池田信夫blogへの批判をきっかけに電子書籍について語っています。  

一方で、ちょうど村上龍が文芸雑誌「群像」に連載した『歌うクジラ』を紙の書籍より前に電子化することをきっかけに電子出版に取り組む件を G2010設立の理由と経緯に書いています。

講談社は、電子書籍への深い理解がある野間副社長の英断により、紙に先行する『歌うクジラ』電子化に理解を示し、しかも制作をグリオに委託することも了解してくれました。

講談社の野間副社長が電子書籍に積極的なことはBooks and the Cityでもふれています。 (その講談社にかみついた池田センセイを切って捨てるというのがブログの本題)  

個人的に、講談社の野間副社長が電子版や海外での事業にも積極的に取り組んできたのを見てきたこともあって、彼が公に自社の本2万点をデジタル化するぞと音頭をとるような宣言をしたことも、評価している。取次や書店や、色々としがらみも多い講談社だからなおさらだ。

ただ村上龍は、電子書籍には出版社はあてにならない、と言います。

わたしは、電子書籍の制作を進めるに当たって、出版社と組むのは合理的ではないと思うようになりました。理由は大きく2つあります。1つは、多くの出版社は自社で電子化する知識と技術を持っていないということです。「出版社による電子化」のほとんどは、電子化専門会社への「外注」です。わたしのアイデアを具体化するためには、まず担当編集者と話し、仲介されて、外注先のエンジニアに伝えられるわけですが、コストが大きくなり、時間がかかります。『歌うクジラ』制作チームの機動力・スピードに比べると、はるかに非効率です。2つ目の理由は、ある出版社と組んで電子化を行うと、他社の既刊本は扱えないということでした。いちいちそれぞれの既刊本の版元出版社と協力体制を作らなければならず、時間とコストが増えるばかりです。今後、継続して電子書籍を制作していく上で、グリオと組んで会社を新しく作るしかないと判断しました。今年の9月中旬のことです。  

その理由としては、出版社の取り組みが遅れていることに原因があるようです。 

電子化のコストは、リッチ化(注:画面の編集やアニメーション・音楽の挿入)の程度で異なりますし、リーダ・ソフトウェアの進歩によって今後下がることが予想されます。G2010は、電子化のコストについて著作者に率直に伝え、協議の上、制作費のリクープ前とリクープ後に分けて売り上げ配分を決めようと思っています。前述したように『歌うクジラ』の場合、リクープ前が、村上龍:グリオ:坂本龍一=2:4:1、リクープ後は、4:2:1でした。制作費リクープ後にG2010が受け取る料率は、リッチ化のコスト・作業量に応じて、「売り上げ全体の(端末仲介料を差し引いたインカムの10%ではない)」10%から30%という数字を考えています。残りは、基本的に、すべて著作権料として著作者に配分します。

普通は雑誌に連載しても電子化の権利は留保する、では出版社は連載をOKしないはずで、今回は講談社の厚意ということなんだと思いますが、上のようなスタイルをとるようになるとそもそも雑誌に載せないぞ、となってしまうんじゃないでしょうか。
村上龍のような人気作家だからできるような感じもします。

このへんは今後雑誌などのメディアを握っている出版社と作家の綱引きになるのかもしれません。

Books and the Cityではこういっています

重ねて私が、電子書籍は出版社がやるべきと考える理由に、電子書籍版は副次権ではないという考えだから、ってのもある。またまた専門的な話になっちゃうけど、普通に考えれば同じコンテンツであれば紙の本も買って、わざわざ電子書籍版も両方買う人はいない。電子書籍版の売上げは確実に紙の本の売上げを食う。従って、映画化権だの、ドラマ化権だのといった副次権に含まれず、いわゆる「プライマリー・ライツ」に含まれると解釈するのが正しいだろう。ということは、出版社が著者と「本を出します」という合意に達したのなら、本来は電子書籍権も出版社のオプションとなっていいはずなのだ。

問題は既刊本。
これはすでに一定の評価を得ているし、電子化すれば一定の売り上げが見込めます。一方で出版社側からは、過去に投入した販促費をどう評価する、という言い分も出そうです。
これについては村上龍はこう言ってます。

8:*既刊本の版元への配分  
たとえばわたしのデビュー作である『限りなく透明に近いブルー』(76 講談社)という作品の場合、当時は出版契約書が存在していなかったということもあり、版元である講談社の許諾および売り上げ配分なしで、わたし自身がG2010で電子化することが、法的には可能なのだそうです。ただ、講談社に無断で『限りなく透明に近いブルー』を電子化して販売することには抵抗があります。  
そこでわたしは、版元に対して、電子化に際し、さまざまな「共同作業」を提案することにしました。たとえば、原稿データの提供、生原稿の確保とスキャン、写真家への連絡と交渉、さらに共著者がいる場合にはその連絡と交渉、そしてリッチ化の1部の作業、およびコストの負担などです。その上で、G2010が版元への配分率を決め、配分率は個別の作品ごとに設定します。たとえば『あの金で何が買えたか』(99 小学館)や『新13歳のハローワーク』(2010 幻冬舎)という絵本は、版元との新しい共同作業が発生しますので20から30%という高率の配分を予定しています。ただし、電子化への共同作業が発生しない場合は、配分がゼロの例もあります。  

既存の契約があいまいという問題は(それ自体は将来的にネックになりそうですが)別として池田センセイが講談社に噛み付いている著者の取り分が少ない、という点についてはBooks and the Cityではこう言っています。

「印刷・製本などの工程がなく間接費の小さい電子書籍」なんだからもっと出せるだろう、俺たちゃ最大50%出してるぜ、という言い分なんだけど、出版社が紙の本を出す場合にかかるコストのうち、印刷・製本は実はたいしたこっちゃない。拙著ではアメリカでのコスト計算を風呂桶風の大雑把な数字でこんな風に紹介している。

1.著者とエージェント(いわゆる印税)  約10%
2.出版社(編集、製本、マーケティング) 約50%
3.ディストリビューション(いわゆる取次業) 約10%
4.リテイラー(いわゆる書店) 約30%

2.の出版社の取り分のうち、印刷代・製本代にかかる費用はそのうちの20%、つまり全体の10%になる。
そして、アメリカでも基本的に新刊のEブックの印税は15%がデフォになりつつある。別にカルテルとかじゃないから。

上で言う3と4の部分は村上龍によれば  

*注:「 7:電子化のコストと基本的な売り上げ配分」と「 8:既刊本の版元への配分」における料率では、店舗側の手数料を、Appleでアプリとして販売する場合の「30%」という数字を前提にしています。

といういうことですから(appleは儲かるわけだ!という点はここでは置くとして)、これを前提とすると残り70%をどう分け合うか、が焦点になります。
村上龍としては、電子化への編集・加工とマーケティングを一番効率的な人がやるべきということで、作家側で70を握った上で貢献度に応じて版元に払うよ、といっているわけです。  

このパターンが広まると出版社はピンチかというと、考えようによっては既存の版権だけあれば社員がいなくても儲かるという知財ビジネスに特化するという選択肢もあるかもしれません。
(この場合、要するに権利が企業価値になるのでファンドがTOBかけて従業員をリストラしちゃって・・・というのが起こりそう。)  
また、このパターンはベストセラー作家とかの「強者連合」なら成り立つかもしれないけど、強者がいつまでも強者でいられるかはわからず、プラットフォームを維持するために新人を発掘していくとなると、結局自分で新たな出版社を作ることになるのと同じじゃないかということになるかもしれません。  

なら、出版社が最初から70%を効率的に使うプラットフォームを作れよというのがBooks and the cityの言い分です。   

まず、電子書籍に関する私の基本スタンスは、電子書籍だって「本」なんだから、基本的には紙の本を出した同じ出版社が率先して出すべき、というもの。特に大勢の著者を抱え、ハンパない刊行点数を手がける大手は、率先して電子版にも取り組み、印刷会社にやらせていた組版データをきちんと保管して、本を出してから契約書を送りつけるような悪習を改善し、ちゃんと著者と副次権について明確にするように、口を酸っぱくして言ってきたつもりだ。  

結局ふたりの違いは70%の取り分の分配をどちらの側からアプローチするかで、結論は違っても、とにかく今はきちんとしたプラットフォームが必要だ、という点では同じなんですね。
「同床異夢」ならぬ「異床同夢」といえましょう。 

まずはそこをきちんとしたビジネスとして確立することは、端末の優劣以上に重要な問題なのかもしれません。

そうすればその次にはAppleの30%の牙城を崩そうとする連中も出てきて、電子書籍がますます便利で手軽なものになるかもしれません。
それとも書籍の取次ぎのように寡占になってしまうのかな・・・

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オフィスグリコ

2010-10-25 | あきなひ

会社にオフィスグリコが置いてあるのだが、ウチの担当の人は月曜の朝にこそこそっと入ってきて、こそこそっと商品を補充してお金を回収し、「失礼します」と小声でつぶやきながら逃げるように出て行ってしまいます。  

菓子のリクエストを受け付けて売り上げ増に貢献したりマーケティングにフィードバックした方がいいんじゃないかとも思ったんですが、実はそうではないみたいです。

「オフィスグリコ」・・・3年かけた仕組みづくり によるとそもそも「単品管理」のようなマーケティングはしていないとか。  

単品情報の入力の手間をかけていると採算が合わないことがわかったからでした。  
また、そもそも「単品管理」をする必要性も低かったのです。
というのも、単品管理の主たる目的は、売れ筋・死に筋 を把握して在庫の適正化を図ることですが、お菓子は飽きられやすい商品であるため、単純に、 売れ筋・死に筋という判断はできないからです。

そこで、オフィスグリコでは年間52週分の商品配置計画を作成し、3回の巡回訪問(商品補充と代金回収のため)ですべての商品が入れ替わるようにしています。

ただ、単品管理をせず、在庫と販売の効率を最大化を目指しつつ、商品を頻繁に入れ替えるという「方程式」を 解くのは相当の難題だったようです。 実際、この方程式を解くために発見した一定の「法則」に ついては、特許申請も行っているそうです。

なので会社に来る人はホントに補充と代金回収だけが仕事なんですね。

オフィスグリコのQ&Aにも  

Q なかなかフォローにきてくれないのですが? 
A 訪問予定日が祝祭日に重なったり、サービススタッフの体調不良による急な休みなどで、どうしても訪問させていただけない場合がございます。大変ご迷惑をおかけ致しますが、訪問日の変更をもってできる限りご不便をおかけしないよう心がけてまいります。  

などとけっこうのんびりしたことが書いてあります。  
求人情報を見ても、時給1000円で「お菓子を届ける」のが仕事で、営業を期待されたり売上げのインセンティブがあったりするわけではないようです。 
勤務時間も平日の9:00~16:30(実働6.5h)なので、小さい子供を持った母親とかなどにはいいかもしれません。(運動不足解消にもなりそうだし。)

同じオフィスでの販売でも歩合が大きいのか良くも悪くもアグレッシブな営業が持ち味の「ヤクルトおばさん」(今でもこの用語は使っていいのだろうか?)と正反対のビジネスモデルですね。
以前ヤクルトの販売所が火事になって、ワゴンに積んだ商品の損失の帰属についてヤクルトと販売員で訴訟になり「販売員はヤクルトから商品を仕入れて売る事業者だ」という会社の主張が受け入れられなかったことがありましたが、(それを契機に今は変わっているかもしれません)それくらいヤクルトおばさんは「自営」度が高いのに比べて、オフィスグリコは単なる配達員でいい、ということのようです。  


置いてある菓子も、自社製品に限らず「office Glico」と印刷してある他社のOEM?品(中小メーカーのものが多い)や純粋な他社製品(カルビーなど)もあってバラエティに富んでいるのがいいです。 
注文をとると人気商品に偏ったり会社の中で喧嘩になったりするかもしれないし、中身がランダムに入れ替わったほうが意外な発見があったりしてかえって楽しめますね。
社内では議論があったんだろうけど、他社製品も入れたのは立派だと思います(でも必ずビスコは入っているのは最後の意地?)。 

この経済状況の中で10年近く発展してきている新商売、学ぶべきところも多いです。


ところで最近ウチに「オフィスグリコから独立して置き菓子の商売を始めたので切り替えないか」という売り込みがあったらしいです。
営業マンが怪しかったので門前払いしたようですが、競合に対しては「グリコ」というメーカーのブランドが強みになると思います。  

ちなみに「置き菓子」はグリコの登録商標だとこちらにあったけど、 ホントだ
よく取れたなぁ。

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右ハンドル車の輸出

2010-10-21 | あきなひ

以前こちらのエントリで紹介した

アメリカでアニメやマンガが売れなくなった本当の理由?Too much expectations and not enough marketing lead to manga slump in US
の続きがup

マンガやアニメが不調…ならどうすりゃいいの?ってんで続き?And what to do about the biz slump in manga & anime  

Mangaへのレクイエム?Sadly, manga will be on the fringe of US market

最後のエントリに象徴的な話が  

2004年にアメリカの最大手ランダムハウスと、日本の最大手である講談社が事業提携したときに、そのプロジェクトの一環としてSF系のインプリント(出版レーベル)であるデル・レイから、CLAMPの「XXXHolic」や赤松健の「魔法先生ネギま!?」など、4タイトルから始めて徐々に少女マンガを中心にアメリカでもマンガが定着しそうな勢いがあった。  

大手出版社から出されて、大手書店に並ぶ、というメインストリームの一部を勝ち得たかのように思えた。当初からデル・レイの編集方針はハッキリしていて、「我々がよく知っているYAの市場から始めて、これはと思うタイトルに絞り、でもやるからには徹底的にマーケティングをする。そしてYAの主力層であるプレティーン?ティーンエイジャーの女の子の反応を見ながら徐々にマンガの幅を広げていく」というものだった。  

何もないところに、ポンッとマンガなるものを出してきて、それが一般家庭に受け入れられるようになるにはそれなりの時間がかかるし、宣伝もしていかなければならない、という決意があればこそ、だ。  

でもまぁ、原作のマンガを送り出す講談社にしてみれば、もっともっとやってもらいたいわけですよ。  

で講談社は典型的なプロダクト・アウトをやってしまい、マーケットを作る前に大量供給した結果、際物になってしまったという話。  


米国のビッグ3の斜陽が言われていた1980年代は、輸入車はフォルクスワーゲンなど一部のメーカーを除いてほとんどが左ハンドルでした。
今や日本への輸入車は原則右ハンドルになっていますが、逆に日本企業は外国に「右ハンドル車」を持ち出そうとしているのかもしれません。



おまけ  こういうのいいよね。  

 
ネタ元はこちら
楽器が盗まれてもiPhoneさえあれば!──NY地下鉄のバンド即興PVが話題に



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ラサ工業と沖大東島

2010-10-14 | あきなひ
尖閣諸島問題にからみ、東シナ海・南シナ海での領土問題がクローズアップされています。

「中国の海洋戦略」を読むと、中国海軍は近海だけでなく外洋(下図の「第2列島線」)まで行動範囲を広げようとしているそうです。

 



ところで、南大東島のさらに南、位置的には台北から東に伸ばした線と鹿児島から南に伸ばした線の交わるあたりに沖大東島という島があります。


 


実はこの島はラサ工業という上場会社(4022)が所有しています(参照)。 

そもそも社名の「ラサ」というのは沖大東島が「ラサ島」と呼ばれていたところから来ています(こちらのエントリ参照)。 


このラサ工業は過去2期営業赤字が続き、事業のリストラでの特損を資本準備金を振り替えてまかなうという土俵際の状態です。
そのため株価も低迷し時価総額は50億を切っています(参照)。


   


一方で、沖大東島はその場所から、領海や200海里の排他的経済水域の面からも重要です。
さらに国連海洋法条約で大陸棚の限界延長が認められたため、海底資源の面からも重要性を増しています(参照)。
(下の図のオレンジのところです。)
   とすると  


   50億円弱で沖大東島が買えると考えれば安い買い物だ


と考えるどこかの国も出てくるのではないでしょうか。  


土地を外国に買われたとしても、日本領土は日本領土ですし現状は米軍の射爆場として使われているのですぐに実効支配は難しいですが、米軍との契約が切れたときに更新せず、さらに住民を20~30年住まわせたあとに独立を宣言し、当該国への帰属を申し立てるとかいう可能性はあるかもしれません(そういうことが国際法上可能なのかはわかりませんが50年、100年単位の計画を立てれば不可能でもないかと)。  


そこで、たとえば某国が背後にあると思しき企業とか転売をもくろむ投資家がいきなりTOBをかけてきたら?  


これに対して国がTOBで対抗するというのも、予算のしばりや意思決定のしくみなどから考えて現実的ではない感じはします(やるとしたら財務省理財局なのでしょうか)  

そうすると、会社は沖大東島の所有権を国に売却するという対抗措置を取るのでしょう。
敵対的買収に対する防衛策のひとつ "crown jewel" ですね(「焦土化作戦」というと既に射爆場なのでストレートすぎるか)。  


このとき、会社の取締役は所有権にいくらの値段をつけるのが適当なのでしょうか。 

善管注意義務という点からは、固定資産税評価額+αであれば大丈夫でしょうが、株主のためという点では、国の足元を見てできるだけ吊り上げるのが筋になります。
ただ、それは社会的には非難ごうごうでしょう。 

また逆に、「株主からはなんでもっと粘らないんだ」と言われるリスクもあります。

普通のM&AのようにFinancial Advisorをつけて価値評価をさせるというのも金の無駄遣いですが、第三者間の公正な取引だと説明するのは難しいですね。 

企業側も銭金だけでなく「国益への配慮は最大のCSRだ」などとと考えると、なかなか難しいところです。  


そうなると、国に土地収用をしてくれ、というのが現実的な解決策になるのでしょうか。 
ただ、収用にあたっては、TOB期間内に土地収用の事業計画(自衛隊の基地を作るとか)を決定しなければならないあたりがネックになるかもしれません。  



法治国家とか企業のCSRというのもいろいろ大変です。



(一応disclaimer)

1.このブログはあくまでネタであり、有価証券の募集、売出し若しくは売買その他の取引若しくはデリバティブ取引等のため、又は有価証券等の相場の変動を図る目的をもってはおりません。 
(それでもこのエントリが「風説の流布」にあたるんじゃないか、と思われた方は、ぜひご指摘ください。)

2.このブログはネタの提供のみを唯一の目的としており、いかなる証券もしくは金融商品に係る売買の広告や勧誘ではありません。当ブログに記載されている情報の正確性、完全性及び信頼性については、明示されていると否とに関わらず、それらを保証するものではなく、記載されている証券、市場、市況についての完全な内容もしくは概要を紹介することを意図して作成されたものでもありません。あたりまえの話ですが、中の人はお客様が投資により利益を得ることを保証いたしません。投資にはリスクが生じますので、投資の判断を行う場合は慎重を期してください。当ブログは皆様の投資判断を代替・軽減するものではなく、投資その他の判断はご自身のご判断・責任でお願いいたします。

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久しぶりに春日電機

2010-10-13 | あきなひ

しばらくフォローしていなかった春日電機ですが、こんな話が。

あの「春日電機」社長だった篠原猛氏らの特背容疑で警視庁が家宅捜索

これは10/10の記事なんですが、このブログの春日電機のエントリへのアクセスはそれ以前の10/8に急に増えてました。
「春日電機 篠原猛」でググるとなぜかこのエントリがトップにくる(10/12現在)からかもしれません。

まあ、それだけマイナーなネタなので、家宅捜索だけではマスコミが取り上げるニュースにはならないのでしょうw

でも世の中には早耳の人が多いと今更ながら感心。



それで、肝心の春日電機といえば、上場廃止、会社更生法適用の後、新たなスポンサーをみつけて新・春日電機として再出発しているようです。

事業譲渡に関するお知らせ

当社は、因幡電機産業株式会社の子会社として設立された春日電機株式会社・・・と事業譲渡契約を締結し、事業譲渡実行に向けた準備を進めてまいりました。
そして、本日、東京地方裁判所から上記事業譲渡契約について、会社更生法第46条第2項の許可をいただきましたので、ご報告いたします。
平成21年11月1日の事業譲渡実行後は、譲渡先会社が当社の事業等を継続し、商品の安定供給と新製品の提供に尽力してまいります。


上場時の株主の方は気の毒でしたし、会社としても資金流出は残念でしたが、営業と従業員は維持できたのは不幸中の幸いだったと思います。

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「ものづくり神話」の弊害

2010-09-09 | あきなひ

日本の「ものづくり」を大事にしよう、という議論を聞くときにそこはかとなく感じるナイーブさは、「いい物を作れば売れる(はず)」という希望的観測(思い込み)を前提にしているからだったんだと改めて認識させてくれたのがこれ。  

アメリカでアニメやマンガが売れなくなった本当の理由—Too much expectations and not enough marketing lead to manga slump in US
(本とニューヨーク-BOOKS AND THE CITY)  

なんで売れなくなっちゃったの?とアメリカ人の人に理由を訊けば、こういう答えが返ってくるはずだ。「The market is over-saturated.」  

これを日本人の人にもっとわかりやすく説明すると、アメリカでも日本みたいに老若男女がマンガを読むのがあたりまえ〜になるんじゃないかと最初から期待しすぎた。どういうマンガが売れそうなのか調べもしないで、日本で一般書を出している感覚で「とりあえず色々ちょこっとずつ出してみた」のが裏目に出た。「マンガブームが起こるんじゃないか」と錯覚した、ということなのだ。ぜーんぶ、日本の供給側の責任だよ、ハッキリ言って。  


ということで、なんで売上げが落ちているのか?という問いの答えは、「ちゃんとマーケティングをしなかったから」ってことに尽きる。アメリカでマンガを売りたいのなら、どの層のアメリカ人がどんな本を読んでいるのか、どんな本なら売れそうなのか、どうやったら売れるのか、ちゃんと下調べをして、計画を練って、売り込む努力をしなければ、そりゃ「日本で売れたんですよ、コレ」なんて言っても売れないよ。  


日本の戦後経済成長を支えたのは「ものづくりの技術」だけではなく「売り込む技術」でもあったはずです。 
日本企業は日本製品が「安かろう悪かろう」で1$=360円のころから外国のマーケットを開拓してきたわけで、現在の日本製品が高品質になった反面円高という局面では営業力・マーケティング力が発揮できないはずはないと思うんですけどね。

でも、上のような話を読むと、「いいものを作れば自然と売れる」という「ものづくり神話」に日本企業が自家中毒を起こしているのではないかと心配になります。

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社長へのガバナンスの難しさ

2010-07-19 | あきなひ

今週号の日経ビジネス「特集 富士通 お家騒動の真相」

富士通側からの取材がメインなのですが、要するに前社長が暴走したのを穏便に止めることができなかったということのようです。

2008年に野副が社長になった時、僕は1年間取締役として残るが、その後は引くと半ば公言した。にもかかわらず昨年残ったのはこの問題(注、野副社長の暴走)があったからです。

野副の首に鈴を付けるというのは外形的には人事に関与しているわけですが、正味はガバナンスの正常化です。院政などという度量の狭い話じゃない。今でもそう思っています。
(秋草直之相談役)


社長の重要な仕事が後継者選びだとするなら、僕は失格です。

自分なりに考えた対策の一つは社長の選任方法。・・・最高権力者を選ぶには、その交遊関係とか人間性とかもちゃんとチェックしなければならない。

もうほとつは社長を組織の機関と見ること。・・・会社って「社長が言ってるから」で動くことがあるでしょ。これをやめさせる。・・・社長の善意を証明するために、性悪説に立った監視システムが必要なのかもしれない。
(黒川博昭相談役-野副氏の前任の社長)

日本に限らずですが、社長・CEOに対するガバナンスをどうきかせるかというのは会社組織の永遠の課題かもしれません。
特に日本の会社は、社長が人事権を通じて取締役会に対してガバナンスを効かせているというのが実情なので、社長の暴走・専横を止めることは難しくなります。

上の秋草相談役のコメントにしても、ご自分は正しい、という前提での発言ですが、その「正しさ」をなんらかの形で担保する必要があるという意識がないように見えます。
この点について、野副氏側も取締役会の解任決議などを踏まずに辞任勧告をしたのは手続的に問題があったと言っているようです。
でも、それなら辞任なんてしなけりゃよかったのにと思うのですが、結局社長は自分を社長にしてくれた前任社長には頭が上がらない、という精神構造は共有していたわけですね。

最後に頼ったのは社長の暴走を可能にした組織のロジックだったというあたりは『ヴェニスの商人』みたいです。




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直輸入の弊害?

2010-07-09 | あきなひ

1年越しの契約解釈の争い。

訴訟の提起に関するお知らせ
(平成22年7月8日 日本エスコン 8892)

(2) 請求原因の概要(当社の主張概要)
平成20年5月28日付で、当社と平和不動産との間で本売買契約を締結し、平成21年3月31日までに当該信託受益権を平和不動産に引き渡し、平和不動産から本売買契約の売買代金の支払を受ける予定となっていました。当社は、平和不動産の意向に従い本不動産のうち土地を取得し、本売買契約を履行するため平和不動産の意向に従った建物を建築しましたが、その後、平和不動産より、本不動産を現物で購入したいとの申入れがあったため、平成21年2月27日に平和不動産への本不動産の引渡をすべく準備を予定通り行っていました。
しかし、当社が平成21年2月20日付で、平成20年12月期決算短信及び有価証券報告書における継続企業の前提に関する事項について、注記(以下、「本注記」という。)する決議を行った旨発表をいたしましたところ、平和不動産より、本注記が、本売買契約における当社の表明保証事項に抵触しており、取引前提条件を欠くことになるため、本売買契約を履行することが出来ない旨の連絡がありました。
当社といたしましては、本注記は、本売買契約における表明保証事項に抵触する事象には該当しないものと考え、平和不動産に対し、繰り返し本売買契約の履行又は本不動産の現物での購入を求めてまいりました。しかしながら、現在に至っても当該取引の履行がなされず、かつ、平和不動産は当該取引の履行を行う意思をみせておりません。

平和不動産が引渡しを受けないのなら、15ヶ月もグズグズやってないで、とっとと契約解除をして損害賠償請求をしつつ物件は別の人に売ってしまえばよかったと思うのですが、時期を考えると平和不動産が高値掴みしたのでこれを逃がすと簿価割れで赤字も出せないという状態なのかもしれません。

当初の信託受益権による売買というのと、土地を取得して建物を建築する--では、信託に入れたのは何?とかいうあたりがリリースからはよくわかりませんが、ファンド仕立てにしていて、市場下落後の価格で売るとエクイティ全損+融資も一部回収不能になるので同意も得られなかったとかいうような事情があるのかも。

一方で、平和不動産もGC注記が契約違反になるならこれ幸いと契約を解除して、自分のほうから損害賠償請求をするのが本来なら得策です。

リリースからは表明保証条項がどのような内容かは不明ですし、表明保証違反の効果が契約上どのように規定されているかもわからないのでここからは推測なのですが、不動産の証券化で一般的になっているアメリカ流の契約書を日本法に当てはめたときのズレが出てきた結果ではないかと思いました。

「表明保証」というのも今まで日本の契約書にはなかったもので、これの日本法における意味については裁判で争われた例もありますし、それについて法律雑誌にも弁護士が論文を書いたりしています(論文書く前に争いのない契約書作れよ、というつっこみをしたくなったのですが、大きなローファームで標準的な書式になっちゃってるとは変えられないんでしょうか)。

この表明保証というのはさまざまな事項に関して契約時およびクロージング時に真実であることを表明し保証しなさい、というようなことが書いてあったり、また、「クロージングの条件」として「表明保証条項がクロージングの時点に真実であること」とかいう条項があったりします。

本件も平和不動産はこのような条項を理由にクロージングをしない(引渡しを受けない)と主張しているのではないかと思うのですが、クロージングの条件が成就しないときのメカニズムがはっきりしていなかったのではないでしょうか?

契約条項のどんな部分が争いになっていたのかも興味ありますが、両方とも1年間何やっていたのかというのも知りたいところです。

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企業の英語公用化

2010-07-03 | あきなひ

Twitter経由のネタ

楽天の英語公用語化がビミョーな理由  

いろいろ説得的な理由が挙げられていますが、僕はここが一番だと思いました。

「英語を公用語化する」なんていうと一瞬ちょっとグローバルで
かっこいい感じがするが、実際は極めて日本的な考え方である。
多くの日本企業が海外進出に失敗している理由は、
無理に日本国内で育てた人材を海外に送ろうとしてることだ。
大人の日本人を何年アメリカに置いたところで、
現地の米国人と同じにはならない。
むしろ現地の人を採用し
業務全体を現地化してしまうことがグローバル化の早道ではないのか。
実際、楽天の海外業務のほとんどの部分が買収によるものである。
経営に携わる一部の人にとっては英語が重要になるが、
全社員に英語を話させる意味は無いように思われる。  

新興企業・オーナー企業以外でもこれを真似をする会社が出てきそうですね。
でもそういうところは大体従業員に英語を学ばせる割に、経営陣は日本語・日本人のままだったりするんですよね。

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IAEAとJ-Sox

2010-06-21 | あきなひ

おとといの原発と会計つながり。  

先日原子力発電所を見学したときに、構内の要所要所にIAEAの査察用のごついモニターカメラがありました。 
IAEAの予算の多くは日本の核施設を監視するために使われているという説明でした。

文部科学省29.IAEA保障措置体制下における日本の保障措置制度の改善・強化(拡充) 【達成目標10‐5‐4】によると 

(2)近年、イラン、シリア、北朝鮮、インド等の国への対応として、IAEAに対する要請がこれまでになく高まってきている中で、IAEA査察資源の3割をも活用している日本は、平成21年度より国内保障措置制度(*1)による評価・認定の事業を開始した。これにより、日本独自の保障措置結論を得られる国内制度を構築し、国内保障措置の信頼性・透明性の向上と、IAEA査察量の削減に取り組んでいるところである。

(4)また、平成21年度以降、プルトニウムをウランと混ぜて、混合酸化物燃料「MOX(モックス)燃料」に加工し、これを現在の原子力発電所の軽水炉で使用するプルサーマル計画により、今後16基~18基で導入を計画(大量の査察需要の発生)しているが、MOX燃料はウラン燃料よりも核兵器に転用しやすいため、より厳格な保障措置が必要となる。(*2)これに伴う立会査察等の増加に対し、我が国として、保障措置の効果を維持しつつ、効率的に対応をしていかなければならない。  

日本人としては日本の核軍事転用に備えて巨額の査察費用を投入するのは無駄なんじゃないかと思うし、しかもIAEAの予算の原資である国連の分担金のうち多くは日本が拠出した(*3)ことを考えるとどうも納得がいきません。 
しかし、憲法で戦争放棄をしているといっても、世界の国々からは軍事転用の技術力は十分にあるし大量の核施設を持っている日本は十分に疑うに値するということなのでしょう。(核開発疑惑の北朝鮮に対しても、拉致問題を前面に出すあたりも「余裕があるのは実は・・・?」と勘ぐられていたりして。)  


この、「悪さをするんじゃないかと疑いの目で見られている者が身の証を立てるために多額の費用をかけて自ら監視・検証の仕組みを作る」というのはJ-Soxとか独立役員などのコーポレートガバナンス(*4)に関する規制に似てます。 
財務報告の数字が正しいか、というのは疑い出せばきりがない話ですし、それを企業が多額のコストをかけて検証するというのも今ひとつ納得感がないのに通じるものがあります。
「独立役員」の「独立性」も同様。そして、完全に独立した取締役でなければいけないというのであれば、昔のソ連軍にいた「政治将校」みたいに、公務員とか証券取引所が勝手に任命すればいいじゃないか、というところに行き着いてしまいます。
 
ところでIAEAは査察手続きの簡素化をしているようですが、J-Soxでも簡素化の動きが見られます。(*5)  
でも、「簡素化」するためにプロセスを変えるのにまたコンサルを入れてなどという費用がかかったりしたりして・・・  

ちなみにIAEA対応では日本側でつぎのような予算措置をしています。

(1)国内保障措置活動による評価・認定体制の確立と査察業務量の低減のためのリモートモニタリングシステムの導入 
1.立会査察の代替として、a.カメラによる監視、b.ネットワークによる情報転送、c.コントロールセンターによる情報管理及び評価の実施
(2)平成22年度要求額:3,309百万円のうち、183百万円(新規) 
評価・認定体制の確立とリモートモニタリングシステムの導入  

核開発をしながらIAEAの査察を受け入れないと世界的に非難を浴びたり疑惑の目で見られるというデメリットはありますが、J-Soxとかコーポレートガバナンス上の規制については上場しなければいいだけの話なので、過度に負担が大きかったり規制自身に合理性にかける部分があると結局証券市場の健全な成長のためにもならなくなってしまうような気がします。(*6) 



(*1)
IAEA アニュアルレポート (p79)にある"Integrated Safeguards"のこと。以下にあるように軍事転用の危険性が低いと判断された国は査察体制を効率化できるようです。  

Integrated safeguards are defined as the optimum combination of all safeguards measures available to the Agency under CSAs and APs to achieve maximum effectiveness and efficiency in meeting the Agency’s safeguards obligations. They are implemented in a State for which the Agency has drawn the broader conclusion.  Integrated safeguards were implemented during the whole of 2008 in 25 States. Safeguards implementation activities were carried out for these States in accordance with the State level safeguards approaches and annual implementation plans approved for each individual State.  
ちなみに25カ国の内訳は 
Australia, Austria, Bangladesh, Bulgaria, Canada, the Czech Republic, Ecuador, Ghana, Greece, the Holy See, Hungary, Indonesia, Ireland, Jamaica, Japan, Latvia, Lithuania, Mali, Norway, Peru, Poland, Portugal, Romania, Slovenia and Uzbekistan.で、日本だけが優等生扱いというわけでもないようです。

 (*2)  
IAEAのProgramme and Budget for 2010を見ると、総予算318Mユーロのうち査察費用が121Mユーロ(その3割が日本に使われているということでしょうか)、さらに The Agency’s Programme and Budget 2010?2011(IAEA)査察予算の明細(p236)を見ると、通常の査察予算に加え"Development and implementation of a safeguards approach for a large mixed oxide fuel fabrication plant in Japan (JMOX)"(プルサーマル監視費用ですね)として2Mユーロが計上されています。

(*3)
外務省2008-10年国連通常予算分担率・分担金参照。 
過去3年の分担率と金額は 
 2008年 16.624%  304.1百万US$  
 2009年 16.624%  405.0百万US$  
 2008年 12.530%  265.0百万US$  
と、いずれも世界第二位です。  

(*4)
「コーポレート・ガバナンス」というのがマジックワード化していて、コーポレートの何を、誰のためにガバナンスを効かせるのかというところがつめきっていないかんじがしますが、そのへんは別の機会に。

(*5)
J-SOX簡素化・明確化の議論開始、内部統制部会を3年ぶりに開催 など

(*6)
ただ企業側の「重要な欠陥」という語感が悪いから変えろ、というのは単なる言葉遊びのような感じもしますけど。  
マスコミに報道されると誤解を招くということかもしれませんが、制度の趣旨を理解していれば動じることはないと思うのですが。
経営者が妙な優等生主義や潔癖症だとそれに伴う無用のコストや負担が組織にかかって良くないと思うんですけど。

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資産除去債務

2010-06-19 | あきなひ

国際会計基準(IFRS)へのコンバージェンス(J-Soxにしろカタカナだらけなのはどうにかしてほしい)として会計基準が変更された中で、資産除去債務(固定資産の除去時に必要な将来費用を見積り貸借対照表や損益計算書に反映させる)が2011年3月期から強制適用されます。
原発のように運転終了して解体すると膨大な費用がかかって、かつ下の記事のように運転期間も変わる可能性があるようなものはどうするのでしょうか。

美浜原発 40年超運転認可へ
(2010年6月18日19時45分 朝日新聞)  

11月に運転開始から40年を迎える関西電力の美浜原子力発電所1号機(福井県美浜町、出力34万キロワット)について、経済産業省原子力安全・保安院は今後10年間の運転継続を妥当と判断し、認める方針を決めた。経産省の審議会で18日、了承を得た。国内の原発で40年以上の運転継続が国に認められるのは、日本原子力発電の敦賀原発1号機に次いで2番目。加圧水型の原子炉では初めて。

原発は明確な寿命がないが、目安は約60年とされる。運転開始から30年を過ぎると、10年ごとに高経年化(老朽化)対策の報告書をつくり、国に認めてもらう必要がある。  

また、将来の解体も実績がないので費用の見積もりも仮定の上に仮定をかさねたようなものにならざるを得ないですよね。
建屋ごと封じ込める(チェルノブイリの「石棺」みたいに)とすると、除去しなくて単なる未稼働資産になるから「資産除去債務」は計上しなくていいとか(そうなると減損しないといけないか)

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檄のコツ

2010-05-26 | あきなひ

① 伝統崇拝とモダニズムの拒否
② 理性・知性への反発と行動主義指向
③ 多様性・異質性の排除
④ 国家・民族へのアイデンティティーの強調
⑤ よそ者への陰謀への妄想的被害者意識

これはウンベルト・エーコ『永遠のファシズム』で指摘されている「ファシズムの典型的特徴」ですが

・昔から我が社は幾多の危機を努力で乗り越えてきた
・今こそ小理屈を並べる前に客のところに足を運ぼう
・組織目標の達成のために一丸となることが大事だ
・このプロジェクトの成否が会社の将来を左右する
・そしてライバル社の攻勢に打ち勝とう

会社でもこんな檄をとばすことがあります。
多分人間の気持ちを鼓舞する一つのツボなんだでしょう。

檄を飛ばす立場の人間が目的と自分を見失ってさえいなければ有効な方法の一つではあります。

 

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ラーメンと割烹

2010-04-27 | あきなひ
全国的にどうかは知らないのですが、身の回りではラーメンブーム再来というくらい、会社や駅の近くでラーメン店が新規開店ラッシュです。

思い出してみると、昨年くらいから増えてきたような。

厨房設備や内装費用が比較的安くて済む
住宅地や狭小店舗でも出店できるので家賃も安い
客単価が安いので不景気にも強い

という特性があるので、不景気になると強いのかもしれません。
あいにくラーメン店の店舗数の統計データが見つからなかったのですが、景気の下降に若干遅れて店舗数が増えているような。


では、景気回復局面で指標になるのはなんだろう、と4,5年前を思い出してみると、井万円未満のコースのあるカジュアルな割烹というのが増えてきた頃だったと思います。

たまにはポケットマネーで贅沢したいという需要がある
内装などには金がかかるが、比較的小規模だったりビルの上の階でもできる
場合によってはスポンサーがついたりする

というあたりが景気上昇局面にマッチしているのではないでしょうか。



ラーメンも好きなんですが、つぎの回復局面は何が出てくるか楽しみではあります。

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