一寸の虫に五寸釘

だから一言余計なんだって・・・

『ストーリーとしての競争戦略』

2010-12-08 | 乱読日記
今住んでいる街は床屋がほとんどない代わりに美容院が乱立しているということもあり、引っ越してからはオジサンながら美容院に通っているのですが、そこで気が付いたのは、同じカットにしても床屋は切った直後の収まりが一番パリッとしていていいが、美容院は髪が伸びた後の収まりも考えてカットしているので長持ちするということ(その結果、通う頻度も少なくてすむので安上がりだったりします)。

経営書を読んだり、コンサルタントとか研修の講師の話を聞いても、今ひとつしっくりこないことは良くありますが、それは内容が「床屋の仕上がり」つまりある状況下での最適解なんだけど、状況の違いや変化に対応できなかったり(=髪の毛が伸びたあとのことは考えていない)、ひどいときには実践しようとしたとたんにハードルにぶち当たってしまう(=翌日自分で髪型のセットを再現が出来ない)からで、そういう話を読んだり聞いたりするたびに「そんなにうまくはいかないぜ」という感想を持ってしまいます。

本書は今まで論じられてきた競争戦略は「ベストプラクティス」だったり「アクションリスト」だったり「テンプレート」だったりひどいときには「ワンフレーズ」だったりという「静止画」(=床屋の仕上がり)だったがそれは有効ではなく、ストーリー(=「動画」)になっている必要がある、といいます。

これは実感できるところで、社長が語る経営方針とかが、あまりに抽象的だったり、単なる数値目標だったり、戦略でなく事業環境の分析だったり、挙句の果てには気合を入れるだけだったりすると、聞く方は眠気をこらえるのに精一杯、ということになりがちです。
逆にそれぞれの持ち場で何をやればいいかがわかるような訓辞は求心力ややる気を生みます。

本書では、静止画の競争戦略は「戦略」ですらないことを語った上で、競争戦略は「動画」である必要性があること、そしてよくできたストーリーをつくるコツを語ります。
その中でひと通りの経営理論の(限界についての)著者流のおさらいもできるのもお得感があります。


著者は、多少自嘲気味に「話が長いけど最後まで読んでください」と繰り返していますが、けっこう楽しく読めるのでオススメの本です。


PS
話が長かったり、語り口も( )を多用したりすぐわき道にそれるたり、同類のにおいを感じる部分も好印象に寄与していることを付け加えておきます。


PS2
昔大塚に住んでいた頃通っていた床屋には、地元のその筋の幹部の方も常連でいらっしゃる(なので奥に個室があった-いろんな意味で隔離する必要があったんでしょう-)のですが、その中に2週間に一度パンチパーマを巻きに来るとても身だしなみにこだわる方がいてとても困ったそうです。

こんな経営者、もけっこういるかもしれませんね。


コメント
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