結論としてはちょっと違和感のある判決。
サッカーボール避け転倒死亡 蹴った少年の親に賠償命令
(2011年6月28日12時9分 朝日新聞)
校庭から蹴り出されたサッカーボールを避けようとして転倒した男性(死亡当時87)のバイク事故をめぐり、ボールを蹴った当時小学5年の少年(19)に過失責任があるかが問われた訴訟の判決が大阪地裁であった。(中略)
判決によると、少年は2004年2月、愛媛県内の公立小学校の校庭でサッカーゴールに向けてフリーキックの練習中、蹴ったボールが門扉を越えて道路へ転がり出た。バイクの男性がボールを避けようとして転び、足を骨折。その後に認知症の症状が出るようになり・・・(中略)・・・死亡した。
少年側は「ボールをゴールに向けて普通に蹴っただけで、違法性はない」と主張したが、27日付の判決は「蹴り方によっては道路に出ることを予測できた」と指摘。「少年は未成年で法的な責任への認識はなく、両親に賠償責任がある」と判断した。そのうえでバイクの転倒と死亡との因果関係について「入院などで生活が一変した」と認定。一方で、脳の持病の影響もあったとして、請求額の約5千万円に対して賠償額は約1500万円と算出した。
判決文を見たわけではないので詳細は不明ですが、転倒と死亡との因果関係は置くとして、転倒した男性側の過失--サッカーボールが転がってきたらブレーキをかければいいので、一般的に危険なハンドル操作による回避を選択したことやその操作の程度に過失はなかったのか--は問われてもよかったのではないかと思います。
たとえば転がり出たサッカーボールを避けようと大型トラックが急ハンドルを切ったとしたら、トラックの運転手側に過失ありとされるでしょう。
また、87歳の男性の自転車走行の安全性を本人の運動能力に関わらず第三者が十全に確保しなければならないものなのか--普通のたとえば家庭の主婦だったらサッカーボールが転がってきても転倒はしなかったのではないか--また、小学5年生が蹴ったボールのスピードとかバウンドの仕方(このへんは判決文を見ないとわからないのですが、ゴールのすぐ後ろに門扉があったとか、フリーキックの練習中なのでむちゃくちゃ遠くに蹴ったとかではないのでしょうから)から、道路に出たときの態様、それがどれくらい危険なものであったのか、というところも検証されるべきだったのではないかと思います。
訴訟を提起するのは国民の権利であるので、そのこと自体の是非とか、(最近の訴訟の期間短縮を考えると)事件後数年たってなぜ、とかは問うべきではないと思うのですが、少年への影響や早期解決を考えれば、学校の(施設)管理者責任を問うて学校の賠償責任保険(多分普通の学校は入ってるんじゃないでしょうか)を付保している保険会社との間で示談による早期解決を図るというのが現実的な紛争解決の方向のように思います。
原告側に感情のこじれとか弁護士がよほど強硬な人だとかいう事情があるのでしょうか。