一寸の虫に五寸釘

だから一言余計なんだって・・・

『中国台頭の終焉』

2013-04-21 | 乱読日記

最近中国の成長の失速・限界について語る本や記事が多いですが、その中には人口オーナスとかルイスの転換点・中心国の罠、はたまた指導部の小粒化など一発芸の切り口によるものが多い中では真っ当な本だと思います。

改革開放政策下の経済成長で当初の「国退民進」が「国進民退」にとってかわられ、その結果、市場競争が減退し、リーマンショック後の4兆元投資や土地開発益が地方政府や国営企業(と、それらとつながりのある一部資本家)の懐におさまる一方で、不合理な税制ともあいまって民間企業の成長が阻害されていること、地方政府間の競争による野放図な投資と財政問題、都市・農村の二元構造問題と農民への戸籍・土地制度上の差別など構造的なひずみが増大してきていると指摘します。

著者は、中国が米国をGDPで追い抜くこうと今の路線を続けても、ひずみが拡大し成長への足かせとなるために、追い抜くことはできない、めざすべきは、中成長路線を目指す中で、分配の不公正の是正を中心とした改革を行うことだ、と説きます。

 「官」の力が強いせいで、中国経済の行方は共産党・政府の政策次第であるが、長く続いた高成長に慢心したせいで、いまは多くの点で「市場経済原理」を大きく逸脱している。何かというと、それを「中国の特色」と修飾したがるが、その少なからぬものは単なるプリンシプルの逸脱であり、「官」のl既得権益の別表現でしかない。いま中国経済はその「逸脱」の罰を受けようとしているように思える。  
 既にみたように、本書で提起した問題意識は、第18回党大会で一部既に取り入れられているが、残る内容、とりわけ「官」の既得権益にメスを入れる「国家資本主義」の逆転が受け容れられるか否かがカギである。このほど発足した習近平政権が担う10年間はこのような課題に取り組むことになる。  

結論よりも過程の議論をじっくり読んだほうがいい本だと思います。

最終章に日本企業は中国とどう取り組むべきかについても触れています。  
そこには起死回生の解決策があるわけではなく、至極真っ当なことが書かれています。それは中国が今後高成長軌道に戻ろうと低迷しようと共通することなのかもしれません。


 

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