中日新聞【地震特集「備える」】 から
避難遅らす「正常性バイアス」 広瀬弘忠・東京女子大教授
避難が遅くなる仕組みは?
現代人は今、危険の少ない社会で生活している。安全だから、危険を感じすぎると、日常生活に支障が出てしまう。だから、危険を感知する能力を下げようとする適応機能が働く。これまでの経験から「大丈夫だ」と思ってしまいがちだ。これが「正常性バイアス」と呼ばれるものだ。
災害でパニックはめったに起こらないと指摘している。
私たちの調査で、災害でパニックが起こったと確認できる例はほとんどない。特に日本のように地域の人同士がつながっている社会では、パニックは起こりにくい。「自分を犠牲にしても」と互いに助け合おうとする心理が強くなるからだ。
現状では、強い正常性バイアスの結果、パニックになる以前、つまり何が起こっているのか分からないうちに災害に巻き込まれる。日本では避難警報が出ても避難率はいつもゼロから数%程度と低いことからも明らかだ。
逃げ遅れないために必要なことは?
いざというときに正常性バイアスを打ち破り、「危険だ」と直感できるような訓練をしておくことが大切だ。そのためにはある程度、災害の恐怖感を体に覚えさせておかなければならない。
災害からまずは身の安全を図る、という初動が大事なのは記事の指摘の通りだと思いますが、難しいのは初動後ひと段落着いた時点で自分の身の安全が図られているのかをどう判断するかです。
たとえば地震や津波から逃れた後に「さらにもっと大きな地震や津波が来るのではないか」ということをどう判断するか-正常性バイアスに注意する一方で、逆に危険性を過大評価してパニックにもならないためにはどうすればいいか-は難しい問題だと思います。
今回でも買いだめは「危険バイアス」(というのかな?)がかかっているように思いますし、原発事故のリスク評価をめぐる混乱は双方入り乱れて事実関係を横においてお互い論者が相手のバイアスを責め合っている感じがします。
そしてこの「正常バイアス」は企業活動とかサラリーマン生活について、より真剣に受け止めたほうがいいかもしれません。
「これまでの経験から「大丈夫だ」と思ってしまいがちだ。」というのは『ブラック・スワン』でも幾多の例が挙げられています。
また、下の引用部分の「現代人」を「40代の正社員」と置き換えてみるのもいいとおもいます(自省をこめて)。
現代人は今、危険の少ない社会で生活している。安全だから、危険を感じすぎると、日常生活に支障が出てしまう。だから、危険を感知する能力を下げようとする適応機能が働く。
そしてさらに問題なのは
特に日本のように地域の人同士がつながっている社会では、パニックは起こりにくい。「自分を犠牲にしても」と互いに助け合おうとする心理が強くなるからだ。
の部分で「地域の人」=「正社員」に、「自分」=「非正規雇用の従業員」に置き換え、しかもそこで安全が確保できて自分には津波が及ばないと思っていることなのかもしれません。
(一度雇用が極端に流動化してみると、企業も人材の安定的な確保のために一定の雇用保障のしくみを作ることになって、どこかに「相場」が落ち着くのかもしれませんね-自分の安全を考慮しないとw)