一寸の虫に五寸釘

だから一言余計なんだって・・・

『企業家たちの幕末維新』

2013-06-09 | 乱読日記
幕末から明治にかけて、江戸時代の商家の盛衰をわけたもの、維新後の企業の盛衰の歴史を、企業家・人材に焦点をあてて書いた軽く読める本。

明治初期は政府の予算が乏しく、資本市場も未発達の中で企業が事業を行うには、少数の発起人とその縁故と信用に依存せざるをえず、必然的に企業でなく個人が注目される時代であった。
その中で、資本家や財界、政府を媒介する役目として渋沢栄一のような「財界人」が登場した。
そういう時代背景から、活躍した企業家-財界人だけでなく財閥を形成した資本家や経営のプロとしての企業家など-を幅広く取り上げている。

「個体発生は系統発生を繰り返す」とすると、新興国でのビジネスは、日本の明治初期のような資本が乏しく個人の信用に依存した時期と、海外での国の資金調達が可能になった日露戦争、世界銀行の融資で新幹線や首都高速ができた第二次世界大戦後、そして金融市場がグローバルにつながった21世紀がギュッと圧縮して、しかも順不同で現出するわけで、一概に「人脈中心の社会で遅れている」などと評価しないほうがいいかもしれない。

逆に本書で取り上げられている明治の企業家達も、資金調達方法が多様にあり、個人資産の海外で有利な運用先があり、安楽で楽しい生活ができる時代であれば、個人資産の事業への再投資をしなかったかもしれない。また逆に、資本側が強い状況では、こういう企業家がは出られないのかもしれない

「明治の人は偉かった」とよく言われるし業績から見ればそのとおりだが、現代に引き直すときには新興国・発展途上国を比較対象にしてみると、何が日本の閉塞感を生んでいるかも含めての頭の整理になると思う。


もっともそんなことを考えずとも、明治初期や江戸時代に創設した歴史のある企業の人と話すときのネタ仕入れという使いかたができる本でもある。




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