『裏切りのサーカス』を観て、改めてジョン・ル・カレを読んでみようと思った。
そこで、代表作の『寒い国から帰ってきたスパイ』と、「スマイリー三部作」の一作目『ティンカー・テイラー・ソルジャー・スパイ』が上の映画の原作だったので二作目『スクールボーイ閣下』から。
1970年代冷戦華やかなりしころの国際情勢についての記憶はほとんどないので、ドキュメンタリー番組や本による後付けの知識しかないのだが、それら以上にリアリティを感じる出来になっている。
綿密な取材と経験に加え、人間性への深い洞察と現実を見据えるシニカルな視線が、作品を魅力的なものにしている。
特に『スクールボーイ閣下』はベトナム戦争時の香港からベトナム・タイ・カンボジア・ラオスが舞台になっており、「悪所」であったころの香港の描写、タイ・ラオス国境の緊張感など、現在へのつながりを考えるのも一興。
『スクールボーイ閣下』には、有名な
“A desk is a dangerous place from which to watch the world.”
オフィスの机は、世界をながめるには危険な場所である。
というくだりが登場する。
IBMのCEOだった時のガースナーも机の上に掲げていたという。(参照)
それ以外にも箴言・警句がちりばめられていて楽しめる。
こんなくだりも。
年寄りは他人の話をするとき、薄れた鏡のなかにそのイメージを追いながら、自分自身のことを語るのが常である。
気をつけよう。