褒めまくる映画伝道師のブログ

映画の記事がメイン。自己基準で良かった映画ばかり紹介します。とにかく褒めることがコンセプトです。

映画 キング・オブ・コメディ(1983) 映画史に遺る最強コンビの傑作

2022年10月27日 | 映画(か行)
 映画史においてよく監督と俳優の名コンビによる作品が多々ある。我が日本においては黒澤明監督と三船敏郎、小津安二郎と笠智衆なんかはその代表であり多くの傑作を生んできた。映画の都ハリウッドでいえば、ジョン・フォード監督とジョン・ウェインのコンビなんかは多くの傑作、名作を生みだしてきた。そんな名コンビでも、たまに失敗作を作ってしまうことがあるが、マーティン・スコセッシ監督と名優ロバート・デ・ニーロのコンビは、名作ばかりで外れがない。特にこのコンビは人間の狂気をあぶり出す作品を多々生み出し、まさに一時代を築いた名コンビと言えるだろう。そして、今回紹介する映画キング・オブ・コメディだが、タイトルだけ聞くと笑えるコメディかと思えたりするが、実は本作こそ人間の狂気をあぶり出し、そして欲望を描き出した傑作だ。
 まあ、俺なんかは目立たないようにコッソリと生きていることに満足しているタイプの人間だが、この世の中には目立ちたがり屋で、必死で寄付金を募ったり、ピンハネをしたりして自分の飲み代にしようとしている馬鹿を見かける。私利私欲に走る人間の愚かさを目の当たりにして、ひたすら驚くばかりの今日この頃だ。

 さて、この世の中には売れない芸人なんか数多と存在するが、売れたいがために狂気に走ってしまう中年芸人のストーリーの紹介を。
 売れない34歳のコメディアンであるパプキン(ロバート・デ・ニーロ)は何とかして自分を売り込もうと、有名コメディアンであるラングフォード(ジェリー・ルイス)に、あの手この手を使って近づこうとするが、突きっ放されてばかり。
 どうしても売れたいパプキンは、ついにラングフォードを拉致して、放送局を脅し、番組に出演してネタを披露することに成功するのだが・・・

 前述した目立ちたがり屋と、この売れないコメディアンの共通点は妄想が大きすぎること。前述した俺の知っている目立ちたがり屋は、偉そうなことばかり言っているが、すっかり本性がバレて仲間がドンドン減るばかり、もしかしたら今でも自分は人気者だと勘違いしているかもしれない。
 しかし、本作のロバート・デ・ニーロ演じる主人公の誇大妄想っぷりも半端ない。拉致するまでに数々の迷惑行為を行っているのだが、コメディアンのくせにシャレが全くわかっていないことに俺はドン引きしたと同時に笑えた。本作を観れば妄想は狂気を呼び覚ますことが理解できる。俺の近くにも妄想に憑りつかれている奴が居るので、俺も被害に遭わないように気をつけないといけない。
 本作品はそれほど怖さは感じないが、古い映画でありながら今でも通じる部分はある。しかし、今なら自分を売り込む方法としてSNSの活用があるし、実際にその活用によって人気歌手がたくさん誕生した。とにかく時代を経ても変わる物があったり、変わらない物があることを再認識させられた映画である。
 なんだかんだ言ってもタイトル通り笑えるシーンもあったり、犯罪映画でもあり、けっこう人を選ばずに楽しめる映画。名監督と名優のコンビによる傑作作品として今回はキング・オブ・コメディをお勧め映画として挙げておこう

 監督は前述したマーティン・スコセッシ。ロバート・デ・ニーロとのコンビ作品ではレイジング・ブルミーン・ストリートタクシー・ドライバーケープ・フィアカジノがお勧め。ロバート・デ・ニーロが出演していない作品ではアフター・アワーズがお勧めです。
 

 

 









 
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映画 勝手にしやがれ(1959)ジャン=リュック・ゴタール監督の長編デビュー作にして最高傑作 

2022年10月12日 | 映画(か行)
 先日ヌーベルバーグの最後の生き残りであるジャン=リュック・ゴタール監督が91歳で亡くなった。他にも面白い映画があったと思うのだが、やっぱり彼を有名にし、最高傑作といわれるのが、今回紹介する映画勝手にしやがれ。元々は映画批評家から出発したのだが、映画を自分で撮ってみたいとの熱い想いが本作を産んだ。ジャンプカットと呼ばれる編集技術は当時の映画界を驚きの渦に巻き込み、街に飛び出してのロケ撮影は当時の映画では珍しくあり新鮮さを与え、そして破滅へ向かって一直線に進む刹那的に生きるジャン=ポール・ベルモンド演じる青年の主人公象は、その後の映画の主人公のあり方にも大きな影響を与えた。そして、主人公が画面越しに観客へ語り掛けるなど、従来の映画の作り方に対して革命を起こしたのが本作。
 これまでの映画の既成概念をぶっ壊し、当時の映画ファンは困惑しながらも大絶賛し、今でも名作として誉れ高い。しかしながら、本作が公開されてから60年以上経った今となっては、果たして本作を初めて観る人はどう思うだろうか?ハリウッド映画の大金を使ったアクションやアドベンチャー映画を見慣れた人が観ると、少しばかりどころか大いに不満を持つ人も出てくるかもしれない。

 さて、早速だがヌーベルバーグの決定打とも言うべき作品のストーリーの紹介をできるだけ簡単に。
 日常茶飯事に車泥棒を繰り返すミシェル(ジャン=ポール・ベルモンド)だが、盗んだ車で飛ばしている時に白バイ警官に追いかけられる。しかし、ミシェルはたまたま持っていた銃で警官を射殺して逃亡。そのままパリに向かって、数日前に仲良くなったアメリカの留学生であるパトリシア(ジーン・セバーグ)と再会し、一緒にイタリアへ逃亡しようとする。仲間から金を返してもらって早くパリを脱出したいミシェルと、記者として成功するためにパリに居続けたいパトリシア。将来に対する考え方の違う2人だったが、燃え上がった愛はパリからイタリアへ向けての逃避行になるはずだったのだが・・・

 愛し合った男女の逃避行の話であり、当時にしてもそれほど珍しい題材ではない。むしろストーリーよりもその撮影方法に当時の人は驚いた。本作でよく言われるのは前述した編集技法であるジャンプカット。正直なところ個人的にはそれがどうした!って感じ。むしろ俺なんかは編集に失敗してるんじゃねぇ、何て勘違いしてしまった。
 それよりも俺が最も面白く思ったのが街中のロケ撮影。ベルモンドとセバーグが街を歩いていたりするシーンの周りの人があからさまに振り向いたり、驚いたり、背中を撃たれてフラフラになりながら走っているベルモンドを通行人がビックリして見ているのに笑えた。また全く関係のない通行人が明らかに撮影カメラに気を取られてたリしていて、そのような適当かつアマチュアっぽさが俺にはウケた。
 男女の会話がずれていてグダグダだったり、その内容も言葉遊びみたいなのが入ってくるが大して笑えないし、また会話のシーンが長すぎたりでダレてしまう人もいるだろう。なんだかくだらないシーンが多いと思いきや、所々では面白いシーンも入ってくる。後半は結構楽しいシーンが多かったような気がする。最初の方でたまたま持っていた拳銃で警官を殺したのと対比して、ラストは拳銃を持たされたせいで撃たれる羽目になってしまうのだが、その辺りはけっこう笑えたし、ゴタール監督の非凡さを感じさせる。
 最初から最後の最後までかみ合わない男女の会話、ダレてしまいそうなくだらない会話があったりするが、ジャンプカットによる副次的産物のおかげで妙にテンポが良かったり、突発的なシーンが多く出てきたりで、映画史に遺る金字塔的な作品ではあるが、なんだかド素人が映画を撮ったらこんな失敗作品が撮れてしまうのかなんて俺は思ったのだが、俺の持っている感覚を超えた作品なんだろうと思う。
 そもそも当時のゴタールは金を持っていないから映画を撮ろうとするのが無理があった。しかし、世の中は何が成功するかわからない。本作がまさかヌーベルバーグの決定打になり、この作品以降はジャン=リュック・ゴタールは売れっ子の花形監督になるのだから何が幸いするかわからない。ある意味では本作が登場するまでフランス映画がいかにマンネリ化に陥っていたかわかるとしたものだろう。
 ジャン=リュック・ゴタール監督の名前をニュースで初めて聞いた人は、まずは本作から観ることをお勧めする。これ以降の作品は殆どが本作の特徴を継承しているからだ。ゴタール監督の映画をこれからドンドン観たい人にはまずは映画勝手にしやがれを見ることをお勧めする。

 ジャン=リュック・ゴタール監督のお勧めだが正直なところ観る人を選ぶが、本作が面白いと思った人には女と男のいる舗道気狂いピエロは楽しめるか。個人的にはゴタール監督がやりたい放題で撮ったようなウイークエンドは面白かった。











 
 
 
 
 








 
 
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映画 崖っぷちの男(2012) 滑ったら即死のサスペンス

2022年07月17日 | 映画(か行)
 タイトル名がまるで俺の日々の状況を表しているような嫌な気分になる映画崖っぷちの男。本作の主人公は超高層ビルの窓の外に出て、幅が約30センチの出っ張りから今にも飛び降り自殺をしようとしている場面が本作の上映時間の多くを占める。飛び降り自殺をしようとしている男を見るために多くの群衆は集まるのだが、なかなかこの人騒がせな男が飛び降りない。果たしてこの男の目的は何か、それともただの狂人か。
 今にも飛び降り自殺しそうな男が出ずっぱりでハラハラドキドキするような展開が続くだけでも面白そうだが、実は本作の裏に隠されたテーマは貧乏人の金持ちに対する恨みが込められている。群衆の野次馬の中に気が狂っているだけに見える奴もいるが、これが中々出番は短くても映画の中で重要な役割を果たしている。

 さて、全く先は読めないし、驚きの連発を味わえるストーリーの紹介を。
 元刑事であるニック(サム・ワーシントン)はダイヤモンド強奪の罪で刑務所に収監されている。そこへ同僚の刑事であるマイク(アンソニー・マッキー)が訪れ、ニックの父親が危篤であることを知らされる。マイクの計らいでニックの父親の葬式のために、その時だけニックを刑務所から出してやる。
 しかし、葬式の場でニックは弟のジョーイ(ジェイミー・ベル)と殴り合いの喧嘩をし、どさくさ紛れに警官の拳銃を盗んで逃亡する。そしてニックは高級ホテルのルーズベルトに泊まると見せかけて、高層階から飛び降り自殺をしようとする。その場に居た群衆が騒ぎ、警察も到着するのだが、ニックは交渉人として女刑事のリディア(エリザベス・バンクス)を呼び出す。ニックとリディアの交渉は単なる飛び降りるか、飛び降りないかの話ではなく、更にはニックは無罪を訴えるためだけにリディアを呼び出したのではなく、その間にニックはある作戦を実行しようとしていたのだが・・・

 卑怯な手に引っかかり、濡れ衣を着せられて刑務暮らしを強いられてしまう崖っぷち男。高級ホテルの高層から脚を滑らせたら人生終わりだが、果たしてこの自ら崖っぷちに飛び込んだ元刑事は、この狭い空間で一体どのような方法で無罪を証明するのか。ニックが崖っぷちの状態はもちろんハラハラドキドキさせるのだが、それ以上にハラハラドキドキさせるのが、弟のジョーイとその彼女のアンジェラ(ジェネシス・ロドリゲス)の方。特にジョーイは見た目からして頼りなさそうなので、こいつらの方が危険な状態がずっと続いているように見えた。
 しかし、本作はスリルはもちろんだが、色々と意外性を見せつけるので驚きの連発。ニックが崖っぷちに追い込まれるほど騙されるのは気の毒だが、観ている我々も最後まで騙される。簡単には権力や金持ちに屈しないアメリカ人の誇り、そしてアメリカ人の家族の結束も頼もしい映画崖っぷちの男を今回はお勧め映画に挙げておこう







 

 

 
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映画 蜘蛛女のキス(1985) 刑務所が舞台です 

2022年02月26日 | 映画(か行)
 アルゼンチンの作家マヌエル・プイグの同名タイトルの映画化作品が今回紹介する蜘蛛女のキス。原作は映画化のみならずミュージカルの舞台劇として、日本でも行われているのでタイトル名を耳にしたことがある人もいるだろう。
 さて、ストーリーは刑務所の獄房の一室でのシーンが殆ど。それも女装している男と拷問を受けた形跡のある男が、何やらグダグダ話しているシーンが前半は続く。正直なところあんまり俺好みじゃなさそうだし、いつ蜘蛛女が登場するんだ?なんて妙なところに俺の興味が惹かれてしまったのだが・・・。

 けっこう古い作品だが、なかなか今風のテーマが描かれているストーリーの紹介を。
 南米の某国において、そこはファシズムの嵐が吹き荒れていて刑務所は囚人がたくさんいる。刑務所の中の一室において、ホモであり少年を誘ったことで性犯罪で捕まって女装しているモリーナ(ウィリアム・ハート)、そして政治犯として捕まっているヴァレンティン(ラウル・ジュリア)が居る。ヴァレンティンはモリーナのことを毛嫌いしているのだが、獄房の中での暮らしがヒマなこともあり、仕方なくモリーナが語る映画の話を聴いていた。最初はその映画のストーリーの内容にも嫌悪感を持っていたヴァレンティンだったが、次第にモリーナが優しい人間だということに気付き、心を開いたヴァレンティンは自分の愛した女性や捕まった経緯をモリーナに語り出すのだが、実はモリーナは・・・

 これ以上、ストーリーの紹介を進めてしまうとネタ晴らしになるのでここまでで。登場人物からテーマとしてLGBT関連の問題を浮き彫りにしているのは明らかだが、他にも色々と深読みが可能だろう。ファシズムが吹き荒れる政治体制において、崇高な様々な愛の形が木っ端微塵に砕け散ってしまう悲劇に泣けてくる。しかも、その悲劇性を増しているのが巧みなストーリー構成。モリーナがヴァレンティンに聴かせる映画の内容が、実は本作のストーリーと密接にリンクしたり、蜘蛛女ってそういうメタファーだったのかと思わさせられたりで、単調なストーリー展開になりそうなのを奥深い内容の映画に仕上げている。
 我が国ニッポンも周囲はロクでもない国に囲まれているが、独裁政権が権力を握ることの恐ろしさが本作を観れば伝わるし、独裁政権を打倒に立ち上がろうとすると尊い命を失ってしまう切なさを感じさせる。そして、単なる悲劇で終わらさせずに愛の尊さを少しばかり感じさせるのが本作の良いところ。そして、出演陣の好演も見逃せないだろう。ホモを演じるウィリアム・ハートは名演技を見せてくれるし、1人三役をこなした女優ソニア・ブラガの存在感も忘れ難い。南米を舞台にした映画を観たいと思っている人、LGBT関連に少々でも興味がある人、決してハッピーエンドではないが暗闇の中にほんの少しの希望の灯が点いているいるような映画が好きな人・・・等に今回は蜘蛛女のキスをお勧めに挙げておこう

 監督はアルゼンチン生まれのブラジル人のエクトール・バベンコ。本作以外ではジャック・ニコルソン、メリル・ストリープ共演の黄昏に燃えてが個人的にはお勧め。

 
 





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映画 コーヒー&シガレッツ(2003) コーヒーを飲みたくなる

2022年02月07日 | 映画(か行)
 大して盛り上がらないオフビートな作風と独特の味わいとユーモアセンスで人気のあるジム・ジャームッシュ監督が送り出す11のエピソードからなるコーヒーと煙草にまつわるオムニバス映画が今回紹介するコーヒー&シガレッツ。ロベルト・ベニーニ、スティーヴ・ブシェミ、トム・ウェイツ、ケイト・ブランシェット、アルフレッド・モリーナ、そしてビル・マーレイ・・・等の癖の強い俳優や歌手達が自分自身の役を演じるという珍しい設定。
 全てのエピソードについて演じている人、時間、場所、ストーリー的な物などは違うが、共通点はコーヒーを飲みながら、煙草を吸いながらグダグダと会話をしていること。しかも、その内容だがハッキリ言って観ている側からしたらどうでも良いようなことばかり。『やっぱりコーヒーは美味い』『煙草の吸い過ぎは体に悪い』といったような当たり前の話が多々出てきたりする。
 全編に渡ってモノクロであり、俳優達も自然体で演じているし、会話の内容と同様に見た目の活劇的な面白さは全くない。そしてカメラの動きは殆ど無いし、場面が変わったと思ったら真上からテーブルに乗っている飲み差しのコーヒーカップや煙草の吸殻が映るだけだったりで淡々としている。ここまで読んだ人はきっとこのように思うはずだ。本当にこの映画は面白いのかよ!

 前述したように11もエピソードがあるのだが、全体の時間は97分に収まっている。しかしながら、心配してしまうのは観ている途中で寝てしまわないかどうか。でも、本作を観る時の心構えをアドバイスしておくと、いつも通りの平常心でいること。間違っても腹が立っている時や、悲しい時のような感情が大きく揺れている時に観ない方が良いだろう。
 だいたい1人でコーヒーを飲みたい時(または煙草を吸いたい時)というのはどういう時だろう。普段の喧騒を忘れて落ち着きたいと思う人が多いだろう。そういうことで本作は観る人に極上のリラックス気分を味わえさせてくれる映画なのだ。よって眠くなったら寝てもかまわないぐらいのつもりで観るのが本作に限っては正しい鑑賞方法だろう。
 特に印象的だったエピソードはケイト・ブランシェットが本人自身の役と従姉妹の二役をこなしている一編。それとアルフレッド・モリーナが人気者のスティーヴ・クーガンに『実は俺たちは、いとこ同士なんだぜ』と話しかける一編。
 今回はストーリー紹介を説明する必要もないので省くが、有名人が普通の会話をしているのに惹きつけられるし、全編が最後にオチがつくのも少しばかり笑える。そして、エンディングに流れる音楽が良い。正直なところ若者にはお勧めしにくいが、少しばかりほろ苦い経験をしてきた大人達に今回は観終えた後にコーヒーが飲みたくなることが間違いないコーヒー&シガレッツをお勧めに挙げておこう

 監督は前述したジム・ジャームッシュ。あんまり感情の起伏が無いような作風は好みが分かれるかもしれないが、個人的にはけっこう好きな映画が多い。大して盛り上がらない青春映画ストレンジャー・ザン・パラダイス、緊迫感のない脱獄映画ダウン・バイ・ロー、タクシードライバーとお客さんを描いたオムニバス映画ナイト・オン・ザ・プラネット、ビル・マーレイが演じる冴えないオジサンが元カノを訪ねていくブロークン・フロワーズあたりがお勧め。



 

 



 

 

 
 









 
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映画 恐怖の岬(1962) サイコパスと善良な市民の対決 

2022年01月18日 | 映画(か行)
 自分で言うのも何だが、俺は善良な市民かつ超人気者。他人から恨みを買うことなんか全くないはず。しかし今回紹介する映画恐怖の岬を観ると、俺の考えが甘いことを思い知らされた。全くもって理不尽な理由でサイコパスからストーカーチックに追い回され、警察や法律が守ってくれるのかと思いきや、そんなものは役にも立たないと嘲笑うか如く恐怖のどん底を味わえる。

 異常なまでに執念深い変質者から、家族を必死で守ろうとするお父さんの戦いを描いたストーリーの紹介を。
 弁護士であるサム・ボーデン(グレゴリー・ペック)は綺麗な奥さんペギー(ポリー・バーゲン)、小学生の娘ナンシー(ロリ・マーティン)の3人家族で平和に暮らしている。しかし、性犯罪者であるマックス・ケイディ(ロバート・ミッチャム)が8年間の刑期を終えて出所してきた。
 マックスは自分に不利な証言をして、刑務所に送られたサムに恨みを持ち、執拗なまでに彼の家族をストーカーする。サムは親しい地元の警察署長マーク・ダットン(マーティン・バルサム)の助けを得てマックスを自分の家族に近づけないようにしようとするが、マックスは法律の網を巧みにくぐり抜けて、サム一家に執拗に付きまとう。このままでは恐怖に怯えて暮らすことになることを悟ったサムはマックスへ対抗措置を取るのだが、それは更なる恐怖を呼び込むことになってしまい・・・

 どことなく無表情なロバート・ミッチャム演じる変質者が冒頭から不気味さを漂わせて登場する。単なるアホのサイコパスかと思いきや、8年間の刑務所暮らしで必死で法律の勉強をしていたようで、法律を逆手にとってサム一家に嫌がらせをする知能的な部分を見せたり、また体も鍛えられていたりで相当厄介な犯罪者。そんな奴から自分の家族を守るために、グレゴリー・ペック演じる弁護士が採った手段が何かと色々と考えさせられる。平和主義を叫べば叫ぶほど戦争に巻き込まれそうな何処かの国を思い出させたり、自らの命を自ら守るという当たり前のことを考えさせられたりした。
 前半はグレゴリー・ペックが家族サービスしている所へ、ロバート・ミッチャムが現れたりするような嫌がらせのシーンがあったりで地味に怖さを感じさせるが、後半の怒涛の展開はスリル満載。サイコパスと弁護士の2人の男同士の執念と命を懸けた戦いは、法律も警察も入る余地が全くないほどの必死さが伝わってくる。
 日頃からスリルを求めている人、昔のサスペンス映画が好きな人、悪役が目立っている映画が好きな人等に今回は恐怖の岬をお勧め映画として挙げておこう。ちなみに本作はマーティン・スコセッシ監督、ロバート・デ・ニーロとニック・ノルティのW主演でケープ・フィアー(1991)としてリメイクされています。また、この作品にもロバート・ミッチャムとグレゴリー・ペックが興味深いキャスティングをされているので、こちらの方も観るのをお勧めします。

 
 
 

 
 
 















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映画 鏡の中にある如く(1961) 神の沈黙シリーズ三部作の第一弾

2021年07月17日 | 映画(か行)
 スウェーデンを代表するというよりも、世界映画史を代表する映画監督であるイングマール・ベルイマン。彼の作風は娯楽性なんか殆ど無く、登場人物達が『あ~でない、こうでもない』なんて台詞を繰り返しながら、人間関係の絆がどんどん離れて行ったり、人間の奥底にある欲望をあぶり出したり、神様にすがっている人間をさらに深い悩みに陥れたりで、観終わった後に気が滅入りそうになったりする。ハッキリ言って暗い映画ばかり撮っている印象があるが、人生の厳しさを観ている者に叩きこむその一切の妥協のない描写、冷酷な表現、ストーリー展開は、何時の間にやら観ている間に様々な想いを想像させる。
 彼が生み出した映画史に遺る燦然とした作品群の中でも今回紹介する鏡の中にある如くは彼の作品の中でも神の沈黙三部作と言われる第一弾(第二弾は冬の光、第三弾は沈黙)。長きにわたり多くの映画を撮ってきたが、その中でも重要な位置づけにある作品だ。
 
 たったの四人しか登場しない映画だが、誰もがもがき苦しんいる様子を描写したストーリーの紹介を。
 海で囲まれた孤島にある別荘が舞台。作家のダビッド(グンナール・ビョルンストランド)はスイスでの仕事の疲れを癒すために、精神病を患っている娘のカリン(ハリエット・アンデルセン)、その夫で医者のマーチン(マックス・フォン・シドー)、そしてまだ高校生の息子のミーナス(ラーシュ・パッスコード)を連れて、孤島にある別荘にやって来た。
 別荘でこの四人は楽しそうにしていると思いきや、実はそれぞれが悩みを抱えているし、身近な家族の関係でありながら相談できない溝が生じている。なかなか寝付けないカリンは父親のダビッドの寝室へ行く。父親の部屋で彼のメモを見てしまったカリンは驚く。そのメモは彼女の病気は治らないこと、そしてダビッドは小説のネタにするために彼女が次第に病気によって衰弱していく様子が書いていた。そのメモを見たことによって、更にカリンはいっそう精神を病んでいく・・・

 娘の病気のことをネタにして、更なる名誉と金を企んでいるクズの父親。どこかの病気をネタにして利潤を追求している大企業やインチキな国家を思わず想像してしまったが、巨匠ベルイマンが凄いのは絶望的な状況を描きながらも、少しばかりの希望を見せてくれること。せっかく楽しい孤島での生活が家族の絆をドンドン壊していく様子はまさにベルイマンの真骨頂。カリンが神の存在を信じていながらも一向に状況がよくならない展開は、まさに神の沈黙シリーズに相応しい。しかし、人間を苦しみから解放するのは実は非常に身近にあるんだと本作を観終えた後に感じることができる。
 本作において一番説得力がない奴が『神とは・・・』なんて哲学的なこと最後に語り出すが、よく考えたら完璧な人間なんて存在しないし、失敗したからこそ教えられることがある。逆に自分を偉そうに見せるために、身の程知らずのことを平気で口にしたり、行動がまるでともなわない政治家は本当に浅ましい。そんな政治家は国民の心をますます傷つけるだけなので思い当たる奴は今すぐにでも辞職するべきだろう。
 たった四人の登場人物だけであるが、それぞれの人物描写が丹念に描かれており、悩みを持たない人間なんてこの世には居ないんだということがよくわかる。孤島という狭い空間、少ない人数の設定だが、実はこの世の縮図であることに気付かせる。今や日本のみならず世界がコロナ禍によって大変な状況。そんな時にデマを流しまくって人々の心を混乱させたり、あらゆる希望をぶっ潰そうとする輩が目立つ今日この頃。本作を観てハッピーな気分にはなれないが、意外に困難な現代を活きる方法の糧となりそうなのが今回紹介した映画鏡の中にある如く。古い映画であるが、今の時代だからこそ本作をお勧め映画として挙げておこう

 監督は前述したイングマール・ベルイマン。好き嫌いが分かれる映画監督であると思うが、人間の欲望をえぐり出し、困難な出来事を通して人生の厳しさを描き、家族でも理解ができない人間の相互不信、そして信じても大して救われない宗教等。暗い映画ばかり撮っている気がするが、そんな中でもほんの少しの希望の灯を見せてくれるのが良い。第七の封印野いちご処女の泉等がお勧め。
 
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映画 傷だらけの栄光(1956) 台詞が身に染みる 

2021年06月23日 | 映画(か行)
 ハリウッド映画のお家芸であるボクシング映画。多くの人はボクシング映画と聞いて思い浮かべるのはシルベスター・スタローン主演の役名がそのままタイトルになったロッキー(及びそのシリーズ)。今の40歳代以上の男性にとって、ロッキーは憧れであり、疲れ切ったオジサン達のハートを奮え立たせる存在であるが、実はボクシングの世界王座としてロッキーは実在した。そんなロッキーこと元ミドル級世界チャンピオンであるロッキー・グラジアノの半生を描いた映画が今回紹介する傷だらけの栄光。主演のポール・ニューマンは本作を切っ掛けに一躍スターダムの座を駆け上がる。
 ロッキーもそうだが、凡そボクシング映画なんてものは社会の底辺から一気に世界チャンピオンに成り上がるパターンが多い。貧乏人でも金持ちになれるアメリカンドリームを表現するのにボクシングというのはうってつけ。本作もまさにそんなボクシング映画の王道を見れる。

 さて、ストーリーも楽しめるが、それよりも本作の原題であるSomebody Up There Likes Me(天の誰かが俺を好いている、ぐらいの意味)の台詞が身に染みるストーリーの紹介を。
 少年時代から窃盗、暴力を繰り返していたロッキー(ポール・ニューマン)は少年院に放り込まれては脱走を繰り返し、刑務所にぶち込まれてもトラブルを引き起こし、軍隊に放り込まれても脱走する。元々パンチ力のあったロッキーにボクシングの素質を見出していたのが刑務所の刑務官。刑務官にボクシングを勧められ、嫌々ながらもボクシングのトレーニングをする。
 そんなかいもあって刑務所を出てボクサーになると、デビュー戦から連戦連勝。これから順風満帆な人生が始まるかと思われたのだが・・・

 ストーリーの前半は素行の悪いロッキーの行いが描かれている。俺なんかは、お前なんか一生刑務所にぶち込まれてろ、なんて思いながら見ていた。しかし、そんなダメダメな奴を決して見捨てない人間も現れる。何度も挫けそうになったりするロッキーが、なぜ世界チャンピオンまで登りつめることができたのか。そんなことを考えながら本作を観ると、こんな私でもきっと誰かに愛されているなんて思えるはずだ。そして、ロッキーが最後に語る原題にもなっている台詞『Somebody Up There Likes Me』が、困難にぶち当たっている人間、暗闇の真っ只中にあるこの世界にたいして、希望の灯になっていることに気付く。
 編集及び構成が巧みなおかげで話がテンポよく進むので観ていてダレルことはないし、それでいて丁寧にロッキーの半生が描かれている。ちょっと残念なのが、すでにポール・ニューマンが少しばかり年を食っているのが気になるし、それ以上に対戦相手のチャンピオンが老けすぎていること。よって肝心のボクシングシーンにおいてハラハラドキドキ感みたいなのが削がれてしまっている。しかし、そんなものを補って余りあるのが何度も繰り返すが『Somebody Up There Likes Me』の台詞の素晴らしさ。たまに英語において感動的な言葉を目にしたり、聞いたりすることがあるが、俺もこの台詞は完璧な英語の発音を駆使して、ちょっと格好をつけたくなった時に使うことに決めた。
 かなり古い映画だが、ボクシング映画がなぜこれほどまでに多く撮られ、そして好きな人が多いのかが理解できる傷だらけの栄光を今回はお勧め映画として挙げておこう

 監督はウェストサイド物語サウンド・オブ・ミュージックといった名作ミュージカルを撮ったロバート・ワイズ。観終わった後に人種差別について考えさせられるサスペンス映画拳銃の報酬がお勧めです。

 
 
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映画 眼下の敵(1957) スポーツマンシップを感じさせる戦争映画です

2021年02月28日 | 映画(か行)
 第二次世界大戦を背景にした戦争映画であり、アメリカの駆逐艦とドイツのUボート(潜水艦)の戦いを描いた傑作だ。アメリカVSドイツという図式ながら、決してどちらかを一方的に悪だと決めることなく、両者を驚くほど公平に描いている。そして一対一の戦いを通して、次第に尊敬の念がお互いに芽生えてくる展開に戦争映画でありながらも、スポーツマンシップを感じられるのが良い。
 
 戦艦と潜水艦の戦いのシーンだけでなく、艦長同士の知略を駆使した心理戦も楽しめるストーリーの紹介を。
 第二次世界大戦中の南大西洋において。航海中のアメリカ海軍の駆逐艦の艦長は民間から登用されたマレル(ロバート・ミッチャム)。しかし、マレルは出発してから一度も艦長室から出てくることがなく、船員達の間では船酔いで起き上がれないんじゃないか、ド素人なんじゃないかとの噂で持ち切り。しかし、レーダーがドイツ軍の潜水艦をキャッチ。そこで現れたマレル艦長は抜群の指導力を発揮して、テキパキと部下に的確な指示をし、次第に信頼を得る。
 そして、一方ドイツ軍のUボートの艦長である歴戦の雄であるシュトベルグ(クルト・ユルゲンス)は、この戦争及びナチスに対して批判的ではあるのだが、祖国から重大な任務を与えられており、遂行することに軍人としての誇りを持っている。
 アメリカの駆逐艦を発見したUボートは慌てて海の中に潜り込む。そして、いよいよアメリカ駆逐艦VSドイツ軍潜水艦(Uボート)及びマレル艦長VSシュトベルグ艦長の男同士の戦いの幕が切って落とされるのだが・・・

 女性が全く出てこない映画なのだが、まさか本作を観て男女平等に反するなんてことを言い出す人はいないだろう。また、戦争映画をゲーム感覚で描くことに嫌悪感がある人も大いに楽しめる映画であるだろう。艦長同士の駆け引き、息詰まるバトルなど娯楽色満載。アメリカ駆逐艦から海に向けての爆雷投下シーンなんかは個人的には盛り上がった。
 もちろん本作は楽しいだけの映画ではない。アメリカとドイツの艦長や、アメリカ軍の軍医が語る台詞の数々が戦争、虐殺が無くならない現代の社会に対しても響くところがある。この台詞を聞いた俺はなぜか希望が湧いてきたのだが、まさか戦争映画からこんなに明るい気分にさせてもらえるとはビックリした。しかし、戦争というと悲惨なことばかり語られるが、もちろん多くの美談だってある。本作のガチで戦い合ったマレル艦長とシュトベルグ艦長がお互いの初顔合わせのシーンなんかはもう感動もの。俺がこの映画にスポーツマンシップを感じられたことの意味がわかるだろう。
 ちょっと古い戦争映画を観たい人、男同士の戦いに熱くなれる人、真っ当なリーダーが出てくる映画が観たい人、何はともあれ面白い映画を観たい人に今回は眼下の敵をお勧めに挙げておこう。

 監督はディック・パウエル。個人的には全く知りませんが、本作以外にも監督作品がありますが、俳優及び歌手としても活躍していたようでマルチな才能を持っている人のようです。
 
 
 
 

 
 
 

 

 
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映画 コールドマウンテン(2003) 南北戦争が題材です

2021年01月19日 | 映画(か行)
 アメリカでは大統領選挙が終わって結果が出ていながらも混乱続いている。トランプ派とバイデン派に分かれてアメリカ国民が分裂しているように見えるが、その様子はまるで150年以上前のアメリカの南北戦争さながら、というのは流石に言い過ぎか。さて、今回紹介するのは南北戦争を舞台にした大恋愛ドラマであるコールドマウンテン。戦争という異常事態の最中において、わずかな希望を愛に託する、そんな美男美女のカップルが出くわすエピソードの一つ一つに対して何かと考えさせられる。

 戦争によって引き裂かれた男女に襲い掛かる過酷な運命とは?それではストーリーの紹介を。
 南北戦争に南軍の兵士として参加していたインマン(ジュード・ロウ)は負傷しながらも、恋人のエイダ(ニコール・キッドマン)に再会するために、軍を脱走して故郷のコールドマウンテンへ向かう。その距離はざっと650キロ。ひたすら徒歩を繰り返し、飢え、寒さはもちろんのこと、時には南軍の兵士にも追いかけられながらもエイダの元へひたすら向かうのだが・・・

 戦争によって引き裂かれた恋人同士や家族が設定の映画なんかは多々あるが、本作のユニークなのはインマンとエイダはお互いに愛し合っているが、出征前にほんの少しだけキスをした程度ということ。それなのにインマンは脱走兵としての罪を被りながらも命を懸けてエイダに会いに行く。しかし、戦争という何が正義なのかわからず、本性を剥き出しにする鬼畜が襲い掛かってくるような時代だからこそ、この小さくとも一途な恋愛に感動する。
 インマンの逃亡劇を見ているだけでもスリル満点で飽きさせないのだが、実はインマンが生きていると信じて待ち続けるエイダのドラマも見所がたっぷりある。良いところのお嬢さん育ちであるエイダには戦時下を生きていく術を全く知らないでいるが、そんな彼女をレネー・セルヴィガー演じる男勝りのルビーがサバイバル術を教えていく過程が良い。戦争期間中においては美人であることなんかは全く役に立たないことを痛感させられるし、全編に渡って女性の逞しさが描かれているのも評価したいところだろう。
 本作を観て戦争の悲惨さだけを感じるのは非常に勿体ない。あの人は生き残り、なぜあの人は死んじゃったのだろうと振り返ると色々なことに気付く。俺自身は善き隣人愛を貫こうと心に決めた。恋愛映画が好きな人、脇役にも勿体ないぐらいの豪華キャストを配している映画が好きな人、大自然が映し出されるとわくわくする人、少しばかりヘビーな気分になる映画を観たい人等に今回は映画コールドマウンテンをお勧めに挙げておこう

 監督はアンソニー・ミンゲラ。けっこう若くして亡くなったのが本当に残念で、もっと多く作品を撮って欲しかったと思える監督。アカデミー賞にも輝イングリッシュ・ペイシエント、名作『太陽がいっぱい』のリメイクであるリプリー、そして悩める人たちを丁寧な描写で描いたこわれゆく世界の中でがお勧めです。

 
  

 

 
 
 
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映画 恋におちて(1984) 大人向きのクリスマス映画です

2020年12月23日 | 映画(か行)
 クリスマス気分を高めるために、サンタクロースが出てくるような子供でも楽しめる映画も良いが、大人向けのクリスマス映画が今回紹介する恋におちて。実際はクリスマスをネタに使った不倫映画と言ったところか。最近はお笑い芸人やスポーツ選手、そして元衆議院議員のおかげで不倫ネタには事欠かない状態が続いており、こいつらはとことん品性の下劣さを露呈しまくっている。しかし、本作の家庭を持っている者同士の男女の不倫の様子はどこか落ち着いた雰囲気を漂わせていて、大人のカップルのたたずまいを感じさせる。

 それでは不倫関係なのに純愛を感じさせるストーリーの紹介を。
 クリスマスイブの日、ニューヨークのマンハッタンは人だかりでごった返している。大型書店において見知らぬ者同士であるフランク(ロバート・デ・ニーロ)とモリー(メリル・ストリープ)はぶつかり合ってしまい、手荷物を散らかしてしまう。その時にお互いに家族のために買っていた本が入れ違いになっていたことに帰宅してから気づく。
 そして3か月後、フランクは通勤中の電車の中で、たまたまモリーを見かける。フランクがモリーに『あの時は・・・』なんて話しかけるのだが、それを切っ掛けに2人の仲は徐々に接近していき・・・

 フランクは奥さんとの仲は順調で2人の息子に恵まれて幸せに暮らしている。モリーの方は医者である旦那がおり、自分もイラストレーターとして仕事を持っていたが2人の仲は少々冷え込んでいる。そんな2人がクリスマスイブの出来事を切っ掛けに、最初は電車の中でお話をするだけの関係だったのが、次第にデートを重ねてしまう内に段々と恋愛にはまり込んでいく。お互いに家族がありながら何をやっているんだと思えるが、この2人は前述した性欲の塊のようなゲス男や有名人にホイホイと付いていく女とはわけが違う。
 この2人のデートは会話は知性を感じさせるし、場所も多目的トイレとは違って健全な場所。そんな2人のデートをするシーンを観ていると、この2人はお互いに尊敬しあっているんだな~と思わせる。危うく最後の一線を越えてしまいそうになるが、その時の男女の違いが描かれているのが好感が持てる。そういえば不倫映画の傑作である旅情終着駅でも最後の女性の選択が、いかにも大人らしさを感じられたが、本作も似たようなことを考えさせられる。
 不倫という言葉からはドロドロした印象ばかり浮かんでくる今日この頃だが、本作はそんな印象は全くない。そりゃ~少しばかり苦味があるが、これが純愛なんだと妙に感心させられた。それにしても今と違って、昔は恋人同士の待ち合わせに電車や駅というのがよくあったと懐かしさが蘇ってきた。
 もうあと数時間でクリスマスイブに突入してしまうが、クリスマスへ向けて気分を高揚させたいカップル、倦怠期に突入してしまった熟年夫婦、今でも主役級で頑張る名優ロバート・デ・ニーロメリル・ストリープの35年以上前の最もノリノリだった時を見たい人、派手さはないがどこか落ち着いた映画を観たい人等に今回は恋におちてをお勧めに挙げておこう

 監督はウール・グロスバード。今回と同じくロバート・デ・ニーロ、そしてロバート・デュバルが主演をしている告白が良いです。


 

 
 
 
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映画 ガントレット(1977) トンデモアクションを観ることができます

2020年02月10日 | 映画(か行)
 傑作、名作揃いのクリント・イーストウッド監督作品の中でも、個人的にお気に入りの作品が今回紹介する映画ガントレット。多くの日本人が?と思うのがタイトルのガントレット(英語Gauntlet)の意味。詳しく知りたい人はググれば良いのだが、とりあえず簡単に説明してしまうと昔からある刑罰の一種。こん棒や鞭を持った兵士が二列に並び、列の間を罰を受ける人間が強制的に通らせられる。その時に一斉に兵士たちが持っているこん棒や鞭でひたすら殴打するというもの。今でも刑罰ではないが結婚式で新郎新婦を友人達が手洗い祝福をする時にその名残りがある。そして、このタイトル名がクライマックスで大いに効いてくるのだ。
 
 それでは早速だが、ストーリーの紹介をできるだけ簡単に。
 アリゾナ州フェニックス市警に勤務するショックリー刑事(クリント・イーストウッド)は夜明けとともに酒場から出てきて酔っ払い運転で市警察前に到着。新しく赴任してきた市警長官ブレークロック(ウィリアム・プリンス)から仕事を任される。それは、裁判の検事側の証人としてラスベガスで勾留されている娼婦のマリー(ソンドラ・ロック)を護送してフェニックスに連れてくること。
 簡単な仕事だと思ってラスベガスへ飛び、マリーを連れ出すがのだが、なぜか地元の警察から一斉に銃撃されたり、途中から邪魔をする奴が現れたりで・・・

 最初はいがみ合っていた男女が次第に仲良くなっていく展開は、まあよく見られる。そもそも本作はストーリーなんか大したことが無い。普通以下の作品の出来だと評価をくだしてしまいそうになるのを、覆して凄い映画を観た気分にさせてくれるのが、タイトル名の想いが込められたクライマックスシーン。
 いつの間にか愛を誓い合ったショックリー刑事とマリーの2人だけが乗り込んだバスで、正面突破を試みるところへ、左右から雨あられのごとく一斉に大量の銃弾を浴びせられる。ハッキリ言ってツッコミどころ満載のシーンなのだが、これが俺の気持ちを大いに奮い立たせる名シーン。途中のシーンなんか吹っ飛ばして、クライマックスシーンだけを観ても大いに楽しめるかもしれない。
 それとマリーを演じたソンドラ・ロックが非常に美人女優なのだが、これが当時のイーストウッド監督の恋人。そのような知識を持って本作を観るとけっこう驚きのシーンもある。今や巨匠として君臨するクリント・イーストウッド監督の初期作品を観たい人、細かい疑問点が気にならないような大らかな人、銃弾が何発も飛び交う映画が好きな人・・・等に今回は映画ガントレットをお勧め映画として挙げておこう。





 監督は前述したクリント・イーストウッド監督。本当にお勧め映画が多数。毎回色々と紹介しているが今回と同じくソンドラ・ロックと共演している映画の中から、なかなか笑えるブロンコ・ビリーをお勧め映画として挙げておこう。
 





  
 
 
 
 
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映画 気狂いピエロ(1965) ゴタール監督らしさが満載です 

2019年10月05日 | 映画(か行)
 1930年代から1940年代にかけてのフランス映画は名作が多くまさに黄金時代。しかし、第二次世界大戦を終えてフランス国民の価値観が大きく変化したのか1950年代半ばに突入した頃にはすっかりマンネリ化ムードが漂う。そんな時に1950年代後半からヌーヴェルバーグ(フランス語で’’新しい波’’の意味)と呼ばれる映画運動が起こり、若い映画監督達が多く現れた。彼らの作品はそれまでの映画の文法、形式といった既成概念をぶっ壊し、斬新な作品が多く生み出されることになる。そんなヌーヴェルバーグを牽引し、その中でも際立った個性を発揮したのがジャン=リュック・ゴタール監督。今やヌーヴェルバーグの生けるレジェンドである彼を敬愛する映画人は現在においても多く存在する。
 そんな彼の映画監督としての集大成的な作品が今回紹介する気狂いピエロ。実はゴタール監督の映画を観たことが無い人が本作をいきなり観ると、頭の中が?だらけになってしまう可能性が大いにある。特に今どきの人は映画に求めることはスリル、サスペンス、迫力、笑い、感動といった気分を高揚させること。しかしながら本作にそのようなことを期待してはいけない。なぜなら本作はゴタール監督の自己満足の映画。きっと彼の頭の中に観客を楽しませようという気は全くないように思えるからだ。

 とりあえずは有って無いようなストーリーを簡単に紹介しておこう。
 金持ちの女房と結婚していたフェルディナン(ジャン=ポール・ベルモンド)だが、仕事はクビになりパリでの退屈な毎日に飽き飽きしていた。そんな時に偶然出会ったのが5年前に知り合った元カノのマリアンヌ(アンナ・カリーナ)。一夜をともにした2人だったのだが、フェルディナンが朝起きたら見知らぬ男性が首にハサミが突き刺さった状態で死んでいるのを見てビックリ。何事があったのかとフェルディナンはマリアンヌに問い質すのだが、彼女は何も気にすることなく飄々としている。
 とんでもない事件に巻き込まれたことを悟ったフェルディナンだったが、退屈な生活を抜け出す絶好の機会だとばかりにマリアンヌを連れて逃亡。犯罪を繰り返しながらも憧れていた楽園のような生活を手に入れることができて充実感を得るのだが・・・

 所々で哲学的な台詞が出てきたり、絵画が出てきたり、有名な人が作ったらしい詩が引用されていたりで、どうもそれらが何かを象徴しているらしいということは感じさせるのだが、それらをハッキリさせようと考え出すと面倒くさい映画。そして、ゴタール監督のインテリ的な趣味が垣間見えてイラっとさせられる。
 何だか小難しいネタを小出しにしてくるので難解な映画のように思えるのだが、ジャン=ポール・ベルモンド演じる男性主人公の微笑ましい馬鹿っぷりが逆に本作を明るい雰囲気の映画にしている。名前はフェルディナンなのだが、一緒に逃亡する元カノからはピエロと呼ばれて腹を立てているのだが、確かに扱いはピエロ同然だ。しかし、案外世の中の男は女性から観ればピエロに見えてしまうのかも?なんて真面目過ぎる俺は大いに考えさせられたりした。特にこの男の猛烈な馬鹿さはラストシーンで観ている者を驚愕させる。
 しかし、本作はラストシーンだけでなく色々と驚く場面を見せてくれる。いきなり死体が出てくるシーンや、突然ミュージカルみたいに歌い出したり、主人公が観客に向けて話だしてきたり、突っ込みどころ満載の編集だったり、アメリカへの風刺が描かれていたり等など、これぞゴタール監督というシーンが多く見られる。しかし、個人的にはそのようなシーンはニヤリとしてしまうのだが、今の人は何かと映画の撮影技術の凄さを目の当たりにしているので、どこまで驚けるのか正直なところ疑問だ。
 そして、マリアンヌ役の主演女優のアンナ・カリーナだが、非常に魅力的。実はこの人はゴタール監督の初期作品を支えたミューズ的な存在であり、元嫁。本作は2人の離婚直後の作品だということを知って観るとなかなか興味深く観ることができる。
 ジャン=リュック・ゴタール監督という名前を聞いたことがある人、ヌーヴェルバーグという言葉に興味を持った人、ゴタール監督の勝手にしやがれは観たことがある人、映画とは何なのか?なんて永遠に答えが出てこないような質問にずっと考えられる人、作者の自己満足に耐えられる人・・・等などに今回はイチかバチかで気狂いピエロをお勧めしておこう

気狂いピエロ [DVD]
ジャン=ポール・ベルモンド,アンナ・カリーナ,グラツィエ・カルヴァーニ
KADOKAWA / 角川書店


気狂いピエロ [Blu-ray]
ジャン=ポール・ベルモンド,アンナ・カリーナ,グラツィエ・カルヴァーニ
KADOKAWA / 角川書店


 監督は前述したジャン=リュック・ゴタール。映画の常識を変えたと言われる長編デビュー作品である勝手にしやがれは一度は観ておいた方が良い。そして、何かとやりたい放題のウイークエンドはインパクトがあってゴタール監督の作風が合わないと思っている人にもお勧めです。



 
 
 
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映画 ゲッタウェイ(1972) ひたすら逃亡するストーリー

2019年06月29日 | 映画(か行)
 車やバイクをスタントマン無しで格好良く乗りこなし、拳銃、ライフルを持たしても様になるアクションスターとして永遠にその名を遺すであろうスティーヴ・マックイーン。俺の個人的な意見として、この人の顔写真を見ただけなら猿顔でどこが良いのかサッパリわからんし、俺の方が女にモテそうだろうなんて思えてくる。しかし、彼の出演する映画を観れば俺の大きな勘違いが直ぐにわかってしまう。特にマックイーンの良さがわかる映画が今回紹介するゲッタウェイ。彼が42歳の時の作品だが、渋くて、クールだし、とにかく銃撃戦になると絵になる男だ。
 しかしながら本作の彼の役は銀行強盗。奪った大金を大事に持ちながら、ひたすら逃げ回る展開だ。ちなみにタイトルだが原題はGetaway。意味は『(犯人の)逃走』。そのままタイトルが映画の内容を表している。

 それでは銀行強盗に頑張れ~と声をかけたくなるストーリーの紹介を。
 テキサス州の刑務所において、まだ10年の刑期の半分も全うしていないのに出所したドク・マッコイ(スティーヴ・マックイーン)。地元の有力者であるジャック(ベン・ジョンソン)と裏取引きをしたのだが、それと引き換えにドクは銀行強盗を強要される。ジャックの部下であるルディ(アル・レッティ)、フランク(ボー・ホプキンス)、そしてドクの妻キャロル(アリ・マッグロー)を引き連れて銀行を襲撃する。ジャックとの約束どおり大金を奪うことには成功するが、独り占めしようと企む裏切り者のルディ、そして自らの計画に溺れて射殺されてしまったジャックの弟とその仲間達、そして警察の三者から猛烈な追跡を受けることになってしまい・・・

 バイオレンス色の強い作品ではあるが、マックイーンとアリ・マッグロー演じる夫婦の描き方がなかなか楽しい映画。男女で銀行強盗をするような映画なんかはこの時代なら『俺たちに明日はない』のような作品もあるが、本作は夫婦関係の浮き沈みが描かれているのが、単なるアクション映画とは違う。最初の方はこの夫婦のラブラブ振りが微笑ましいが、途中は夫婦関係がボロボロに落ち込んでしまう。マックイーンが釈放できたのは奥さんの涙が出るような苦渋の選択のお陰なのに、そんな奥さんを許せないマックイーンは逃亡中に車を止めて奥さんを殴りまくる。このシーンを見て俺は絶対にどんな理由があれ、女性に手を出すようなことはしないと誓った。その後もわだかまりを残しながら一緒に逃亡することになるのだが、素晴らしい名シーンを見ることができる。この夫婦が人間扱いされていないような衝撃的な場面を目にすることができるが、このシーンを切っ掛けに、夫婦間に渦巻くわだかまりを一気に解消し、夫婦の絆を取り戻す。どん底を経験すれば、もう後は上昇するのみ。そんな勇気をもらえる気分になれるのが本作の評価の高いところだろう。
 本作がアクション映画の名作として語り継がる理由である銃撃戦がやっぱり楽しい。マックイーンが購入したショットガンでパトカーに銃弾を何発も浴びせるシーンは迫力があるし、そしてクライマックスでの激しいガンファイト。狭い場所で銃弾が飛び交い、至近距離で撃ち合ったりで見ている者を熱くさせる。この銃撃戦の素晴らしさは流石はバイオレンス映画の巨匠サム・ペキンパー監督。バイオレンスと聞くだけで快く思わない人が多いが、この監督が描くバイオレンスシーンは芸術の域に届いている。
 銀行強盗で人殺しである夫婦の結末に賛否両論あるようだが、個人的には妙な爽やかさが残って気に入っている。そして結局盗んだ大金はいくら残ったんだ?と思わず引き算して考えようとする自分がいることに、本当に俺ってなんだかんだ言ってもカネが好きなんだなと改めて気づかされた。
 アクション映画が好きな人、スティーヴ・マックイーンの名前を聞いたことがある人、綺麗な女性が出てくる映画が好きな人、ひたすら逃げる映画が好きな人・・・等に今回はゲッタウェイをお勧め映画として挙げておこう

ゲッタウェイ デジタル・リマスター版 [DVD]
スティーブ・マックィーン,アリ・マッグロー,ベン・ジョンソン,アル・レッティエリ
ワーナー・ホーム・ビデオ


 監督は前述したサム・ペキンパー。後々のアクション映画に多大な影響を与えた映画監督。彼のお勧めは西部劇の挽歌を描いたワイルドバンチ、ハートフルコメディの砂漠の流れ者、同じくスティーヴ・マックイーン主演だがバイオレンスシーンは無いジュニア・ボナー 華麗なる挑戦、ダスティン・ホフマンが気が小さい旦那さんを演じるわらの犬、死体の首争奪戦が繰り広げられるガルシアの首、ドイツ側の視点に立った戦争映画戦争のはらわたが良いです。


 
 
 

 
 


     
 
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映画 悲しみが乾くまで(2008) ストイックな姿勢を感じます 

2019年05月04日 | 映画(か行)
 せっかく綺麗な女性から家に誘われたのに、「あなたが死ねば良かったのに」なんて面と向かって言われたら、流石に打たれ強い俺でもショックだ。そんな酷い言葉を投げかけないと、やってられね~!と思えるぐらいどん底に叩き落とされた女性と、何を言われても腹を立てないヘロインに溺れた男。ボロボロの事態に直面している2人の男女が浮き沈みを繰り返しながらも、必死に立ち上がろうとする人間ドラマが今回紹介する映画悲しみが乾くまで
 丹念に描き込まれたストーリー展開にも惹かれるが、それよりも本作の特徴はアップの映像が多用されていること。顔の表情をとらえたアップの映像なんかは、どんな映画でもあるが、本作は片目だけだったり、唇だけだったりのような極端な映像表現が見られる。それは台詞からではなく瞳の奥から気持ちをえぐり取ろうとしているように感じたり、嘘を許さないような強い気持ちが現れているようにも見える。

 何はともあれ女性監督ならではのストーリー展開、女性像が見れるストーリーの紹介を。
 オードリー(ハル・ベリー)は愛する夫ブライアン(デヴィット・ドゥカヴニー)と2人の子供に囲まれて幸せな生活を送っていた。ところがある日の夜、ブライアンは男が女に暴力を振るっているのを止めようとして射殺されてしまう。
 夫の葬式にブライアンの親友であるがヘロイン中毒でヘロヘロになっているジェリー(ベニチオ・デル・トロ)が現れる。オードリーは以前からジェリーのことを嫌っていたのだが、子供たちが意外にもジェリーと親しくしているのを見て、ジェリーに自宅の空き家を提供するのだが・・・

 前半は時間軸が色々と飛ぶので少々ややこしく感じるかもしれないが、オードリーが夫のブライアンを愛している様子、オードリーがどれくらいジェリーを嫌っているか、夫のブライアンとジェリーの友情の固さが描かれているのだが、これが徐々に生きてくる展開だ。見た目は何だか危ない人のようなベニチオ・デル・トロ演じるジェリーだが、本当は良い人なんだということがわかってくる。
 オードリーがあれほど嫌っていた夫の親友であるジェリーを自宅に住まそうとする展開からアダルドビデオのような陳腐なストーリーが展開されるかと思いきや、実はここからが本作のストーリーの凄いところ。ジェリーを何かと理由をつけて家に呼んだのは夫を亡くした悲しみを少しでも癒すためだと思うのだが、それが逆効果になっていく展開には感心させられた。特に子供たちがジェリーと親しくなればなるほど腹が立つあたりの件は女性監督ならではの感性が発揮されていると思う。
 いきなり愛する者を失った女性とヘロイン中毒の男の男女の交流がメインに描かれているが、そんな2人を支えるような周囲の人達がまた素晴らしい。人間って協力しあって生きていくんだということが改めてわかる。そして、失うものがあれば、得るものがあるという普遍的な事に触れているのも本作の優れたところ。俺だって思い起こせば飲み代をピンハネされたり、政治活動費を寄付したのに恩を仇で返されたりして無駄にカネを無くした。しかし、その代わりに多くの友情を得た。
 そして、ハル・ベリーベニチオ・デル・トロの両者だが、さすがはアカデミー受賞者なだけあって魅せる。特にベニチオ・デル・トロの方は、その演技はホンモノじゃないとできないだろうというぐらいの完璧さ。他にも褒めたりないところがあったかもしれないが、どんなに辛い目に遭っても頑張って生きようと思わさせてくれる悲しみが乾くまでをお勧め映画として挙げておこう

悲しみが乾くまで スペシャル・エディション [DVD]
アラン・ローブ,アラン・ローブ
角川エンタテインメント


 監督はデンマーク人の女性監督であるスサンネ・ビア。本当にこの女性監督は余韻が残りまくりの映画を撮る。個人的に最も好きな恋愛映画しあわせな孤独、親子とは何か?を問いかけるアフター・ウェディングがお勧めです。


 
 

 

 

 


 









 


 

 



 



  
 
 
 
 
 

 
 

 



 
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