褒めまくる映画伝道師のブログ

映画の記事がメイン。自己基準で良かった映画ばかり紹介します。とにかく褒めることがコンセプトです。

映画 グッドナイト&グッドラック(2005) ジョージ・クルーニー監督作品です

2019年02月10日 | 映画(か行)
 最近はよく周りから『ジョージ・クルーニーに似ていますね』なんて言われることが多い俺だが、渋い大人の男の魅力など共通点が多数あるので否定はしない。そんな恰好良いジョージ・クルーニーだが俳優としては勿論のことだが、監督としても活躍中。政治的発言が多い人物としても知られているが、彼らしさがよく表れている作品が今回紹介するグッドナイト&グッドラックだ。
 1940年代から50年代にかけてのアメリカで吹き荒れた、共産党員やそのシンパ等を次々とつるし上げた上院議員ジョゼフ・マッカーシーによる通称マッカーシーズムこと赤狩り。共産党員やそのシンパを露骨に排除しようとするのも問題だが、自らと意にそぐわない者を勝手に共産党主義者と決めつけて弾劾するその姿勢は、まさに中世の時代における異端者を火あぶりにした魔女狩りそのもの。そんなやりたい放題のマッカーシーに対して、当初は恐れをなして誰も非難しようとする人間が居なかったのだが、言論の自由及び真実の報道を守るために立ち向かった男がアメリカ三大ネットワークの一つであるCBSのニュースキャスターであるエドワード・R・マロー。どのニュース番組を観ても聞いても殆ど同じような内容の放送ばかりしている日本のマスメディア関係の人々に、ぜひ観て欲しい映画。この映画を観れば本当のジャーナリズムとは何かを理解できるだろう。

 それではエドワード・R・マローが番組の最後の締めに使われる言葉がそのままタイトル名になっている映画のストーリーの紹介を簡単にしてみよう。
 1950年代の冷戦時代のアメリカにおいて。マッカーシズムが吹き荒れる中、ある空軍の兵士が証拠も無いのに共産党主義者として軍をクビになる。CBSの人気キャスターであるエドワード・R・マーロウ(デヴィッド・ストラーザン)はプロデューサーであるフレンドリー(ジョージ・クルーニー)やその他のスタッフ達とともにその事件を番組で取り上げることにする。
 番組はなかなかの好評判であったのだが、やはりと言うべきか上院議員マッカーシーからの攻撃が始まった。マーロウは勝手に共産主義者としてでっち上げられ、それはCBS全体にも暗い影を覆いはじめる。しかし、エドワードやフレンドリー達はテレビ界の将来をかけてマッカーシーズムと真っ向から戦いに臨むのだが・・・。

 よくアメリカ合衆国を表す言葉として自由の国と言われることがあるが、本作を観るとそんなのは嘘だということがわかる。まだ60年前のアメリカにも言論弾圧及び思想の弾圧が行われていたのだ。この映画の中でマーロウが演説するシーンがあるが、その中で、物凄く良いことを言っている。悲しいことに俺の暗記力と記憶力では素晴らしい台詞を一字一句をすべて覚えることが出来ないのが残念なのだが、テレビ界を中心とするマスコミの役割、そして自由主義と共産主義の戦いは暴力ではなく議論によって優劣が決することがマーロウが教えてくれる。こういう映画を観ると全く国のために役に立っていない日本のリベラルと違って、アメリカではリベラルの役割がいかに重要かがよく理解できる。
 ちなみに本作はセピア調のモノクロ画面にジャズの音楽を多用しており、煙草の煙がモクモクと吹き上がっている場面が目立つように大人向けの渋めの映画。そしてマーロウだがテレビ番組中でも喫煙しながらの名司会ぶり。何かと煙草を吸う人にとっては不自由な世の中になってきているが、本作はそのような現代社会に警告を発しているような側面が垣間見える。時々、やたらとアドバイスが好きで『アレをやったらダメ、コレもヤッチャ~ダメ』ばかりのダメ出ししか出来ない人と出会うことがあるが、そのような人は本作で見られるマッカーシーズムを推し進めた狭い器量と偏見しか持てない人間と大して変わらないことを自覚する必要があるだろう。
 ちょっと昔の出来事を扱った映画だが、現代に生きる我々は歴史から多くの物を学び、善悪の判断をも歴史に頼らざるを得ない時もある。まさに温故知新という四字熟語の大切さが理解できる映画として本作をお勧め映画として挙げておこう。それでは皆さん、グッドナイト・アンド・グッドラック

グッドナイト&グッドラック 豪華版 [DVD]
ジョージ・クルーニー,グラント・ヘスロヴ
東北新社


 監督は前述したようにジョージ・クルーニー。俳優としても多くの名作、傑作に出演作品が多いですが、監督作品となると他では大統領予備選挙の舞台裏をスリリングに描いた政治映画スーパー・チューズデー 〜正義を売った日〜がお勧めです。

 

 
 
 
 
  

 

 

 
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映画 北ホテル(1938) 昔のフランス映画の良さがわかります

2019年01月23日 | 映画(か行)
 ハリウッド映画のようなテンポが良くてド派手な映画も楽しいが、1930年代から40年代にかけての哀歓を感じさせるようなフランス映画をたまに観るのも、なかなか風流な気分を感じさせてくれて良いものだ。酸いも甘いも知り尽くした大人向けの映画が今回紹介する北ホテル。あの名作グランドホテルはお金をたくさん持っている人が泊まれる高級ホテルを舞台にした映画だったが、こちらは貧しい人向けの安ホテルが舞台。お客さんは近所の人が集まって来て、食卓を囲んでいるがアットホームな雰囲気が漂う。しかし、やはりと言うべきか安ホテルにはすっかり人生に絶望している者や、犯罪者が泊まって居たりする。

 当たり前のことだが、人生なんてものは人の数だけ存在するということが更に理解できるストーリーの紹介を。
 パリのサンマルタン運河の畔に建っている北ホテルにおいて。その夜の北ホテルではお客さんたちが食堂でワイワイガヤガヤ飲み食いしながら楽しい会話が弾んでいた。そこへ若い男女のピエール(ジャン・ピエール・オーモン)とその恋人ルネ(アナベラ)泊まりにきて部屋に案内される。この二人は若いながらも既に人生に絶望しており、心中するためにホテルに泊まりに来たのだ。
 ピエールは持っていた拳銃でルネを撃ち、そして自らに銃口を向けるのだが急に恐ろしくなって自殺するのが怖くなってしまった。隣の部屋にいた身なりの良い渋めのおじさんであるエドモンド(ルイ・ジューヴェ)が銃声を聞いて、部屋に入ってきた。エドモンドはピエールにさっさと逃げるようにアドバイスして去らせる。ピエールは北ホテルを去った後も自殺を考えるが、結局は怖くて死ねず自首する。
 そして、ルネは不幸中の幸いなのか入院先で目を覚ます。彼女は軽傷レベルで済んでいたのだ。ピエールもルネも生き残ってしまい、流石に2人の仲も終わったように思われた。行く当てのないルネは北ホテルで女中として働くようになる。
 ところがそんなルネに惚れてしまったのが、まだ北ホテルに宿泊しているエドモンド。彼にはレイモンド(アル・レッティ)という情婦がいたのだが、何かと面倒くさい彼女とはサッさと縁を切ってルネに近づきたいと思っていたのだが、驚いたことにルネの方もエドモンド事を好きになってしまい・・・

 昔のフランス映画は男女の恋愛関係の描写が優れている映画が多い。時々馬鹿すぎるカップルを見せられることがあるが、本作なんかはバカップルの一歩手前で踏ん張るサジ加減が抜群で、男女の恋愛関係ってこんなもんだよねっと納得できる。男の強がりな気持ち、女性の揺れ動く気持ちの描き方が非常に巧み。恋愛の手引書には全く向かないが、こういう人生を経験している人もきっと居るはずだと思えるの良い。
 そして、ラストの結末が鮮やか。ハリウッド映画ならド派手にお涙頂戴のような感動を煽るような描き方をするところを、観ている者の心に静かに、深く刻み込まれるようなエンディングが全盛期の頃のフランス映画の真骨頂を感じさせる。そして、このエンディングだがハッピーエンドとバッドエンドの両方が同時に描かれているのが良い。
 昔のフランス映画に酔いしれたい人、ハリウッドのド派手な映画に飽き飽きしている人、甘酸っぱい映画を観たいと人、人生経験が豊富な大人向けの映画を観たい人に今回は北ホテルをお勧め映画として挙げておこう。

北ホテル [DVD]
アナベラ,ルイ・ジューヴェ,アルレッティ
IVC,Ltd.(VC)(D)


 監督はマルセル・カルネ。戦前のフランス映画全盛期を支えた監督です。この人の映画は本当に人生の喜怒哀楽を描くの上手い。名作中の名作と言っても良い天井座敷の人々、エミール・ゾラ原作のサスペンス映画嘆きのテレーズ、ジャン・ギャバン主演のボクシング映画われら巴里ツ子、ジェラール・フィリップ主演の記憶喪失ムービーの愛人ジュリエット等がお勧めです。
 
 
 


 

 


 

 


 

 

 
 
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映画 グッドモーニング、バビロン!(1987) イタリア人の兄弟愛が伝わってくる

2018年11月22日 | 映画(か行)
1910年頃のハリウッド草創期において、映画を芸術的分野として高めた監督が国民の創生イントレランスなどで知られるD・W・グリフィス。彼の功績が無ければ、今頃は映画というものが存在していなかったに違いない、なんて言いながら実は彼の映画を観たことがない。
 さて、今回紹介する映画は前述したイントレランスの制作に係わったイタリア人兄弟のストーリーを描いたグッドモーニング・バビロン!。この兄弟だが常に一緒に行動し、苦楽を共にする大の仲良し。固すぎる兄弟の結束に感動するだけでなく、イタリア人の誇りが描かれているのがとても素晴らしい。

 映画イントレランスの舞台裏を描きながら、イタリア人の兄弟愛にきっと多くの人が感動するに違いないストーリーの紹介を。
1913年のイタリアのトスカーナ地方において。ロマネスク大聖堂の修復作業で生計を立てていた棟梁であるボナンノ(オメロ・アントヌッティ)は七人の息子たちや従業員を集めて、不景気のあおりをくらって膨らみ続ける借金を理由に仕事を辞めることを宣言する。七人兄弟の末っ子の二人のアンドレア(ジョアキム・デ・アルメイダ)と二コラ(ヴィンセント・スパーノ)は父親の許しを得て、自らの修行のためにアメリカに渡ることにする。
 当初、2人はアメリカを制覇するぞ!と意気揚々にアメリカにやって来たものの、ロクな仕事にありつけず厳しい現実を思い知らされる。しかし、ひょうんなことからサンフランシスコ万博博覧会のイタリア館建築に向かうイタリア人達と出会い、彼らと一緒にサンフランシスコに向かう。
 その頃、注目を集めていたのが映画監督であるD・W・グリフィスチャールズ・ダンス)。彼は1人で映画館を貸し切りイタリア映画の『カビリア』を観ていた。カビリアに感銘を受け、そしてイタリア館の建造物の素晴らしさに魅了され、構想を練っていた超大作イントレランスの美術セットにイタリア人を加えるように周りに指示をする。
 そのことを聞きつけたアンドレアと二コラは棟梁になりすまし、ハリウッドに行くと彼らはエキストラをしていた美女の二人、メイベル(デジレ・ベッケル)とエドナ(グレッタ・スカッキ)と出会う。アンドレアとメイベル、二コラとエドナはそれぞれ愛し合うようになり、彼女たちの励ましを受けて次第に兄弟たちにも運が向いてきた。D・W・グリフィスから認められイントレランスの美術スタッフとして彼らは参加し、彼らの美術セットの出来栄えは観客たちからも絶賛される。彼らは二人とも彼女たちと結婚し幸せの絶頂を迎えるはずだったのだが・・・

 父親からの言いつけを守り、運命共同体であり、まるで分身のような2人の兄弟。しかも同時期に彼女を作り、ほとんど同じ時期に子供まで生まれる徹底ぶり。絶妙すぎるバランスの上で成り立っていた兄弟だが、運命は二人の境遇を永遠には続かせない。バランスが崩れる瞬間は観る者に大いなるショックを与える。
 さて、この映画の印象的な場面に、兄弟がハリウッドのアメリカ人に馬鹿にされるシーンがある。この時に歴史の浅いアメ公どもにイタリアが芸術の隆盛を極めたルネッサンスの時代を例にだして言い返すシーンがあるが、イタリア人の誇りを大いに感じられる素晴らしい場面だ。なぜか俺も日本人として誇りを感じた。そして兄弟愛や誇りだけでなく、このタイトル名の意図が父と子供の愛情を表し、ラストシーンにおいては映画愛を思いっきり感じさせられる。
 ヨーロッパの建築物が好きな人、イントレランスという映画を観たことがある人またはタイトル名を聞いたことのある人、D・W・グリフィスという名前を聞いて心が躍った人、アメリカが嫌いな人等に、今回は映画グッドモーニング・バビロン!をお勧め映画として挙げておこう。

グッドモーニング・バビロン [DVD]
ヴィンセント・スパーノ,パオロ・タヴィアーニ,ヴィットリオ・タヴィアーニ,グレタ・スカッキ,デジレ・ベッケル
紀伊國屋書店


 監督はイタリアを代表するタヴィアーニ兄弟。もしかしたら本作もこの監督の想いが込められているのかもしれないです。絶対的な父親の支配から自立しようとする父 パードレ・パドローネ、童話的で美しさを感じさせるサン★ロレンツォの夜、ナスターシャ・キンスキーが美しい太陽は夜も輝くがお勧めです。

 
 


 
 
 
 

 

 

 


 
 
 

 

 
 
 
 
 
  
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映画 かくも長き不在(1961) 戦争の悲劇が伝わります

2018年10月10日 | 映画(か行)
 よく主人公が記憶喪失に罹っている映画を観ることがあるが、そのような映画には傑作が多い。その中でも今回紹介する映画かくも長き不在は、派手な場面は無いが観る者に悲哀を感じさせる傑作だ。戦争による悲劇は命を失うだけではない。本作の場合だと幸せな思い出もぶっ壊してしまうのが戦争の悲劇として描かれている。

 ド派手なシーンは無いが、充分に戦争の悲劇を感じさせるストーリーの紹介を。
 パリの郊外で喫茶店を営む女主人のテレーズ(アリダ・ヴァリ)は店をお手伝いの少女を雇い切り盛りしていた。周りの住人が夏休みのバカンスで殆ど人が居なくなり、テレーズも恋人らしきピエールと一緒にバカンスに出かけて、いったんお店を休みにするつもりだった。
 そんなある日のこと、いつも朝と夕方になると歌を口ずさみながら店の前を通る浮浪者(ジョルジュ・ウィルソン)の姿を初めて間近で見る。それは16年前にナチスドイツの秘密警察であるゲッシュタポに強制連行されてから行方不明になっていた夫アルベールとそっくりだった。
 テレーズはアルベールとそっくりの浮浪者を追いかけてつぶさに観察するのだが、実は彼は記憶喪失になっていて今までのことを殆ど覚えていなかったのだ。
 その浮浪者はもしかしたら夫ではないのかもしれなかったが、夫だと確信しているテレーズはあらゆる手段を使って彼の記憶を取り戻さそうとするのだが・・・

 さて、浮浪者は本当にアルベールなのか、それともただ似ているだけの人物なのか?。すでに女盛りも過ぎてしまい独身を貫きとおしたテレーズに希望を抱かせる。前半は大したシーンは無かったように思うが、テレーズがこの浮浪者を見る瞬間から惹きこまれる。彼の記憶を取り戻そうとするシーンは希望と絶望の両方を感じさせる。
 特にテレーズが河辺のボロボロの小屋に住んでいる彼を自分の店に誘い、彼女はドレスアップして一緒に食事をしたり、音楽を聴いたりするシーンは何とか彼の記憶を呼び起こそうとするシーンで美しくも、どこか切ないシーンだ。そして、二人きりでダンスをするシーンにおいてはもう見ていて涙がボロボロ出そうになる。本来なら幸せを感じさせるのがダンスシーンなのだが、ここでテレーズは戦争の現実を知ってしまい、彼の記憶が戻る可能性がゼロに近いことを知ってしまう。
 さて、彼は本当にアルベールだったのか、やはりソックリさんだったのか!最後にそれまでの流れとはうって変わって衝撃的なシーンが訪れるのだが、その時の浮浪者(アルベール?)はいったい何を悟ったのか?
 だけどこの映画が凄いのは最後の最後に語るテレーズの台詞。絶望感しかないような結末だが、それでも暗闇の中にほんの小さな希望の灯をを感じさせる台詞だ。今にも消えそうなぐらいの弱々しい灯だが、それでも生きている限りこの灯は消せないのだ。
 フランス映画の名作を見たい人、映画第三の男を見ている人で、その映画の女優さんが気になった人、当たり前のことだが戦争ってダメだよな~と改めて感じたい人、女の執念を感じたい人等に今回は映画かくも長き不在をお勧めしておこう。

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アリダ・ヴァリ,ジョルジュ・ウィルソン,ジャック・アルダン,シャルル・ブラヴェット
KADOKAWA / 角川書店


かくも長き不在 デジタル修復版 [Blu-ray]
アリダ・ヴァリ,ジョルジュ・ウィルソン,ジャック・アルダン,シャルル・ブラヴェット
KADOKAWA / 角川書店


 ちなみに監督はアンリ・コルピ。監督としては本作しか知られてないようですが、主に編集者として活躍していたみたいです。

 それよりも今回の主演女優のアリダ・ヴァリ。本作に出演していた時は40歳ぐらい。若い頃からそれほど綺麗だと思いませんが、名作に何本か出演しており、しかも息の長い女優さん。彼女が出演しているお勧め作品としてキャロル・リード監督の不朽の名作第三の男、ルキノ・ヴィスコンティ監督の女性の怖さを思い知らされる夏の嵐、ベルナルド・ベルトルッチ監督の1900年が良いです。


 
 


 

 
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映画 クイズ・ショウ(1994)テレビ番組の内幕を暴露する

2018年09月22日 | 映画(か行)
 1950年代のテレビの人気番組の不正を暴き出すストーリーが今回紹介する映画クイズ・ショウ。映画でテレビ番組の不正を扱うとは、ずい分小さなテーマを扱うな~と思ったが、しかし、この時代は丁度アメリカにもテレビが登場してメディアの役割を行っていた時。そして本作はNBCの高額賞金で国民的人気のクイズ番組「21(トウェンティワン)」での不正。人気番組において不正が行われるなど、正義を標榜するアメリカでは絶対にあってはならない出来事だ。しかし、1950年代のアメリカにおいてはテレビ番組の力は偉大で、ヒーローを簡単に作り挙げることができるのであり、逆に自ら作り上げたヒーローを叩き落とすことも簡単だ。テレビ会社は視聴率に一喜一憂しスポンサーも人気番組に乗っかるのが会社の得になる。

 それでは1950年代に実在した人気番組でいかなる不正が行われたのか?そして、その顛末はこれ如何に。
 高額賞金で国民的人気クイズ番組「21(トウェンティワン)」においてユダヤ人のハービー(ジョン・タトゥーロ)は連戦連勝。今や高額賞金を得そうになっていて、街を歩いていても人気者だ。しかしながら、彼が勝ち続けている最初は良かったが、次第に視聴率が横ばい。しかも、ハービーは華がないわ、格好良くないわ、もうユダヤ人のサクセスストーリーはこりごりだろうと、スポンサー企業の社長(マーティン・スコセッシ)が番組のNECの社長にハービーを変えろと指示を出し、番組のプロデュサーも引き受ける。
 そして番組のプロデューサーは、ハービーに次回の出演で問題に対してワザと間違えろと圧力をかけてきた。
 さて、番組のプロデューサーは次期チャンピオン候補にチャールズ・ヴァン・ドーレン(レイフ・ファインズ)に白羽の矢を立てた。チャールズは白人で若くて、男前。そして大学教授で生徒を教え、しかもヴァン・ドーレン家は非常に学問においては優秀な一家だった。チャールズはNECに赴き、番組プロデューサーと面接し、ある問題の答えを教えられる。チャールズはそういうやり方はしないように番組プロデューサーに釘をさす。
 そしていよいよ本番でハービーとチャールズの対決になる。ハービーは間違えろと言われた問題で彼には簡単すぎる問題だったのだが、悩んだ末にワザと間違える。一方、チャールズには教えてもらった問題が勝負を決する場面で出てきた。新チャンピオンの登場だ。それ以来番組の視聴率がまたうなぎ上りのように上がっていく。ところが問題はこんなことで終わらない。
 ハービーは怒り心頭で番組を不正で告発する。そしてその動きに呼応するように立法管理小委員会の捜査官のディック・グッドウィン(ロブ・モロー)は、このクイズ番組は何か怪しいと感じ、本格的に調査するのだが、事態はディックの思った通りに行かなくなってしまい・・・
 
 チョット俺の独り言だが、クイズ番組の不正は恐らく日本でもあるな。ユダヤ人のハービーは夢を掴むことが出来ずに叩き落とされ、チャールズは良心が傷んで不正を自供、そして大学の教授から追い出されてしまう。ディックはテレビ番組とスポンサー訴えるつもりだったのだが、テレビ局もスポンサーも殆どダメージはなし。本作からテレビの権力の凄さがよくわかる。
 日本のテレビ番組のニュースも本当に怖い。政治問題だとテレビ局は殆どが反権力に向かってしまう。これでは視聴者はテレビの言っていることだから、と言うことで信じ込まされたりするがテレビだけでなく新聞も色々な見方で視聴者に伝えなければならないと思う。本当にメディアの恐ろしさがよくわかる映画だ。特に日本人もテレビ、新聞、インターネット等で色々な媒体があるが、どれが正しいか自分自身で判断する力が必要だと感じる。
 テレビ界の内幕を知りたい人、テレビってどこも同じニュースをすることに疑問を感じた人、ちょっと最近のテレビの報道は安倍叩きがひどいんじゃないの?と思った人等に今回はクイズ・ショウをお勧め映画に挙げておきます。


クイズ・ショウ [DVD]
ポール・アタナシオ
ブエナ・ビスタ・ホーム・エンターテイメント


 監督は先日もう俳優は辞めると引退宣言をしたロバート・レッドフォード。大スターであるロバート・レッド・フォードだが監督作品は意外に地味な作品が多い。家族の断裂を描いた普通の人々、自然環境をおとぎ話風に描いたミラグロ/奇跡の地、ブラッド・ピットを大スターにしたリバーランズ・スルー・イットが良いです。



 


 


 
 


 
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映画 キングスマン(2014) ひたすら面白い英国スパイ映画です

2018年09月04日 | 映画(か行)
 イギリスのスパイ映画と言えばジェイムズ・ボンドが活躍する007シリーズが挙げられるが、そんな50年以上も超える化け物シリーズを一瞬にして面白さで抜き去ったのが、今回紹介するキングスマン。007の方は英国政府のお抱えの諜報機関MI6にジェイムズ・ボンドは所属していたが、今回紹介するキングスマンも本拠地は同じく英国でありながら、こちらはどこの国にも属さないスパイ組織だ。
 かつての007シリーズも素っ頓狂なストーリー、小道具など出してきて、大いに楽しめたもののリアリティゼロのスパイに何となく不満を持った人もいた。そんな007シリーズだが最近はリアル路線に変更して、再びスパイ映画の健在を示すことに成功した。
 そして今回紹介するキングスマンはスパイ映画の先輩にあたる007シリーズに敬意を表しながらも、斬新なアクションシーンやビジュアルで観ている我々を大いに楽しませてくれる。先輩がリアル路線に進んでいくのを裏手にとったガジェットの数々。攻防兼用の傘型の銃、手りゅう弾の役割を果たすライター、記憶喪失、麻酔などのモードを自由に変えられる腕時計、猛毒が塗られた刃が出てくる靴など、なかなか楽しい見せ物が出てくるところは先輩のスパイ映画へのオマージュを感じさせる。しかし、先輩シリーズを遥かに面白さで超えるのがアクションシーン。とんでもないバトルで血が吹っ飛ぶかと思いきや、優雅な音楽で次々と頭が爆発していくなど、かなり突き抜けたシーンを見せてくれるのが本作の特徴だ。


 ちょっとお洒落なスパイが活躍するストーリーの紹介を。
 母親はすっかりDVの義父の言いなりで、毎日をチンピラばかり相手にしている自堕落な生活に陥ったしまっていたエグジー(タロン・エガートン)は警察沙汰で捕まってしまう。しかし、そんな彼を保釈したのがスパイ組織キングスマンに属するハリー・ハート(コリン・ファース)。実はハリーは17年前にキングスマンの候補生でエグジーの実の父親に命を助けてもらったことがある。
 ハリーはその恩を忘れておらず、不良少年ではあるがその素質を見込んで、欠員が出たキングスマンの候補生としてエグジーをスカウトする。他の候補生との争いをクリアしていくエグジーだったが、実はその裏で人類滅亡計画がIT企業の大富豪であるヴァレンタイン(サミュエル・L・ジャクソン)の手によって進んでいたのだ・・・

 話は二段構成。エグジー少年がキングスマンに入るための訓練と、ヴァレンタインの野望を阻止するために戦い。けっこう笑えたのが運よく(?)キングスマンに入ることになり、急に服装がオシャレになる場面。任務を遂行する時でもスーツはもちろんのこと、いかした眼鏡までかけて、さすがは英国紳士。間違ってもハリウッドのアクションスターみたいに自らの筋肉を自慢するために裸になったりはしない。
 悪役のサミュエル・L・ジャクソンだが環境問題に熱心というIT企業の大富豪。スマホを世界中の人に配給しまくる素敵なオジサンだ。現実としてIT企業の社長のなかにはロクでも無い奴が多いが、そういう人間を悪役に持ってくることに今の時代を感じさせる。
 さぞかしキングスマンって凄い優秀なスパイの集まりなのかと思っていると、けっこう無様な姿を晒していたりで意外性があり楽しいし、そしてアメリカに対する皮肉だと思うのだが教会で繰り広げられる大バトルはキレキレで非常によくできたシーンを堪能することができる。
 他にもキングスマンの本拠地がロンドンのストリートに面していて、外見は高級紳士服屋さんというのも英国らしさ満載。あんまり小さい子供には見せたくないシーンが多いが、楽しいし笑える。これからはスパイ映画の代表と言えば007でもミッションインポッシブルでもない、と思わせるだけのポテンシャルがある。もうシリーズ化されているだけに人気作ではあるが、とにかく楽しい映画を観たい人には映画キングスマンを今回はお勧めしておこう。


キングスマン [AmazonDVDコレクション]
コリン・ファース,マイケル・ケイン,タロン・エガートン,サミュエル・L・ジャクソン,マーク・ストロング
ソニー・ピクチャーズエンタテインメント


 監督はイギリス人のマシュー・ボーン。この人のお勧めはキレキレのアクションをここでも見れるキック・アス、ファンタジーのスターダストが良いです。

 

 

 
 
 
 
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映画 家族の肖像(1974) ヴィスコンティ監督の引きこもり映画

2018年08月22日 | 映画(か行)
 今や日本人の引きこもりは子供だけではなく大人にも多くみられる。その数は70万人と言われているが、もはや引きこもり大国ニッポンと言われるまでの数字の上昇だ。引きこもりの理由は色々あるだろうが、会社に行く気力がない、何もかもが面倒くさい、嫌いな人と出会うのが耐えられない・・・等あるだろうが、今回紹介する映画家族の肖像バート・ランカスター演じる老教授もこの映画を見ている限りだが、一歩も外に出歩かない引きこもりに見える。しかも、行動範囲が狭い。豪華なアパートに住んでいるが、自分の部屋とその上階をせいぜい行ったり来たり。この老教授の場合は人と会うのがどうやら苦痛。後は静かに本を読み、音楽を聴くことを楽しみ、多くの集められた絵画に囲まれて暮らすことに心の安らぎを感じている。ただ今の日本人の引きこもりと違って、どうやらカネは相当たくさん持っているようだ。
 さて、こんな老教授を主人公にした映画なのだが、果たして本当に面白いのか、そもそも観る価値はあるのか?なんて心配してしまいそうだが、静かに過ごしたい老教授にとっては有難迷惑な無礼者が押し寄せてきてからが面白い。

 それでは、描かれている舞台設計は非常に狭い空間だが、実は当時のイタリア社会を反映している奥深いストーリーの紹介を。
 ローマの中心地の豪邸に住んでいる老教授(バート・ランカスター)は絵画のコレクターを集めて、部屋中に絵画を飾っていた。絵画の中に囲まれて本を読んだり、音楽を聴いて静かに暮らすことに安らぎを覚えていた。しかし、ある日のこと教授と画商が値段の相談をしているところを利用して、大富豪夫人のビアンカ(シルヴァーノ・マンガーノ)が巧みに近寄ってきた。彼女の狙いは老教授の住んでいる上階の部屋を借りること。しかもビアンカの娘リエッタ(クラウディア・マルサーニ)、その彼氏のステファノ(ステファノ・パトリッツィ)、そしてビアンカの愛人であるコンラッド(ヘルムート・バーガー)が次々と現れてくる。
 教授はみずからの生活を壊されることを心配して上階を貸すことに反対していたのだが、あまりにもしつこく頼んでくるビアンカに根負けした教授は部屋を貸すことにする。ところがその日、上階を借りて住んでいたコンラッドは部屋を改造してしまい、下の階にいる教授の部屋は水浸しになる。あまりにも粗暴なコンラッドに手を焼いていた教授だったが、コンラッドが意外にも芸術全般に詳しいことを知り、次第に親近感が湧くようになってきた。
 ある日の夜、上階に住んでいたコンラッドの部屋で騒々しい音が聞こえる。教授が上階へ上がってみると、コンラッドが血まみれで倒れていたのだが・・・

 それにしても老人が住んでいるところに何とも我儘な奴らが侵入してきて、これは相当困った。勝手に部屋を改造するし、約束の晩餐には来ないし、若者三人が音楽をかけながらスッポンポンで踊っていたり、何かと教授を悩ませる。老教授からは考えられないジェネーレーションギャップのせいだと言いたいところだが、さすがの俺もこんな奴らが居候してきたら腹が立つ。
 それでも老教授は家族が出来なかったことへの後悔から、押し掛け四人組を夕食に呼ぶ。ところが老教授のおもてなしをこの四人組がぶち壊し。可愛い女性エリエッタはそれほど害があるように思わなかったが、残りの三人はイデオロギーの違いから言い争いから殴り合いに発展。まさに当時のイタリア社会は共産党主義的な政党が台頭してきたが、左翼が力を持てば右翼も伸びてくる。このようなイデオロギーの対立は世界中で見られるが、この夕食のシーンにルキノ・ヴィスコンティ監督の想いが出ている。ちなみにヴィスコンティ監督はヴィスコンティ家の貴族の末裔でありがら、彼は共産党主義。そのような知識があれば、より一層この映画を興味深く観ることができるだろう。
 ルキノ・ヴィスコンティ監督の名前は聞いたことがあるけれど彼の作品を観たことが無い人、家族というものをもう一度考え直したい人、この映画の制作時は共産主義が盛り上がったのになぜ今はすっかり下火になってしまったのかを知りたい人、自分が引きこもりであると自覚している人・・・等に今回は家族の肖像をお勧めしておこう


家族の肖像 デジタル完全修復版 [DVD]
バート・ランカスター,シルヴァーナ・マンガーノ,ヘルムート・バーガー
KADOKAWA / 角川書店


 当初はネオリアリズモの代表的監督として労働者を描いたこともあったが、貴族の末裔ということだけあって次第にカネが掛かっているような豪華な映画に変遷していく。貴族の滅んでいく様子を描いた映画が多い。けっこう日本でも人気のある監督だが、個人的には嫌いな作品も多い。お勧めは寛容さに心が救われる若者のすべて、女の執念の凄さを思い知ることができる夏の嵐が良いです。




 
 

 
 


 




 


 
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映画 宮廷画家ゴヤは見た(2006)ヨーロッパの歴史の怖さを知る?

2018年05月24日 | 映画(か行)
 先日のことになるが名作中の名作であるカッコーの巣の上でアマデウスを遺したチェコスロバキアが生んだ名監督ミロス・フォアマンが亡くなった。そんな彼の遺作になってしまったのが今回紹介する宮廷画家ゴヤは見た
 ベラスケスと並ぶスペイン最大の画家であるフランシスコ・デ・ゴヤ。まるでホラーを感じさせるような暗い画風の印象があるが、なぜそのような絵画や版画を制作したのか?
 さて、本作だがゴヤが王様に仕える宮廷画家として活躍していたスペインの時代が描かれている歴史映画である。

 本作を観終わった後に真っ先に思ったことは、中世のヨーロッパに生まれなくて良かったということ。改めて何事にも寛容な日本に生まれたことを、この時ばかりは感謝した。さて、マトモな神経では生きていけそうにない暗黒のヨーロッパの時代とはどのようなものなのか?それではストーリーの紹介を。

 1792年のスペインのマドリードにおいて。宮廷画家として名声を得ていたゴヤステランス・スカルスガルド)は、二人から依頼されていた肖像画の仕事中。1人は裕福な商人の娘で天使のような美しさを持つイネス(ナタリー・ポートマン)、もう1人がカトリックの修道僧であるロレンソ神父(バビエル・バルデム)。
 ロレンソ神父は失墜しかけているカトリックの権威を取り戻すために、異教徒たちを片っ端からひっ捕らえて拷問にかける。その中には居酒屋の席で豚肉を食べなかっただけでユダヤ教の疑いをかけられたイネスの姿もあった。
 イネスの父は無実である娘を取り戻すために、友人のゴヤを通してロレンソ神父を自宅に招き、取引をしようとするのだが・・・。

 絶対王政、異端審問、ナポレオンのヨーロッパ侵攻、魔女狩りなど、学生時代の世界史の授業でよく耳にした単語だが、本作を観るとそれらの言葉が持つ重要性がわかり、世界史って実はとてつもなく恐ろしい出来事を学ぶ授業だったことに気づく。
 時の権力者の私利私欲のために、一般庶民ですら理不尽に拷問にかけられ、戦争で命を失ってしまう長いヨーロッパの歴史。良心のかけらも通じない時代を生き抜くには、本作のロレンソ神父のように自らの信念を簡単に曲げ、昨日の友を裏切り、自分の身内さえ遠ざけないといけないのか!とんでもないクズ以下の人間性を見せつけられるが、こんな卑怯者が俺の身近にも見られるのが残念だ。
 ナタリー・ポートマンは綺麗だからレオン以来の彼女のファンは楽しめるだろうし、ゴヤの伝記映画ではないが彼の絵画が好きな人も芸術的な面で楽しめるだろう。少なくとも俺と同じように日本人に生まれて良かったと思えるし、信念のない人間は結局は哀れな結末を迎えるということがよくわかる。それにこれが真実の愛なのか?と思わせるエンディングは賛否両論あるかもしれないが、かなりの余韻を残す。特に世界史が大好きという人に映画宮廷画家ゴヤは見たをお勧め映画として挙げておこう。

宮廷画家ゴヤは見た [DVD]
ハビエル・バルデム,ナタリー・ポートマン,ステラン・スカルスガルド
ソニー・ピクチャーズエンタテインメント


 監督は前述したようにミロス・フォアマン。冒頭の方で述べた2作品が勿論お勧めですが、エロ雑誌のハスラーの創刊者であるラリー・フリントの伝記映画でタイトルもそのままのラリー・フリントもお勧めです。  
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映画 華氏451(1966) 活字離れの人に警告です

2018年03月04日 | 映画(か行)
 最近は読書する時間が減ってしまい、新聞もスポーツ新聞の競馬のコーナーを読むだけの俺。すっかり活字離れが進んでしまっている状態だが、よくよく考えてみると本には昔からの人類の知恵が詰まっている。そして今の日本人の中には想像できない人がいるかもしれないが、時の権力者からの自由の表現への挑戦に対する制約があったっり、思想弾圧の憂き目にあったり、様々な困難な状況に陥ってしまった著者がたくさんいる。そんな血のにじむような覚悟を決めて書かれた本の数々を『面倒くさいから読んでられない』なんて言っていたら人類の進歩が止まってしまう。
 確かに最近は、金儲けのために書かれているのがあからさまだったり、自らのストレス解消のために好き放題に書かれていたり、読者を洗脳してしまおうとする悪企みの意図があったり等々のようなロクでもない本が多く存在しているような気もするが、ある程度の自由の表現が保証されている民主主義国家に生きる者の宿命として、そのような本でさえも少々は読む価値があると認める寛容な精神が必要だ。
さて、タイトルの華氏451の意味だが紙が燃えだし始める温度のことを言うそうだ。

 それでは古今東西においても見られる焚書(ふんしょ)による弾圧の世界をみせてくれるストーリーの紹介を。
 書物を読むことが禁止された世界において。書物を捜索し跡形もなく燃やしてしまうことを仕事としているモンターグ(オスカー・ウェルナー)は今日もセッセト真面目に仕事に取り組んでいた。
 ところが会社へ向かう道中の電車の中でモンターグは綺麗なオネエちゃんのクラリス(ジュリー・クリスティ)に出会った影響で本に興味をもってしまい、チャールズ・ディケンズのデイヴィッド・コパフィールドを読み出し、次第に活字の持つ魅力に取りつかれてしまうのだが・・・

 近頃でもあるSNSに事実を投稿すると危うく名誉棄損で訴えられそうになった人が居るが、何かと言論弾圧が今日でも行われているこの世の中が本当に嘆かわしい。そんな個人的なボヤキは横においておいて、冒頭からいきなり工夫の演出。本作のテーマがオープニングシーンからズバリ込められた珍しいスタイルが非常に巧みだ。俺なんかは見ていたDVDのデッキが壊れたのか心配してしまった。
 そして主人公のモンターグが所属する仕事が非常にブラック過ぎる。特に消防隊の格好をしながら火炎放射しているのには笑えた。

 しかし、小学生の時から親や先生から本をたくさん読みなさいと散々聞かされたが、なんで読まないといけないのか実は大人になってもよくわからなかった。しかし、本作に出てくる多くの有名な書物を見ていると何となくわかった気になった。前述したように本には人類の知恵が詰まっていることに気づく。
 日本人の中にも古事記や日本書紀なんかどうせ嘘だろう、と言っている者が居るがこの映画の後半の部分を観れば自分たちがどれほど恐れ多いことを言っているかがわかるはずだ。

 見た目は安っぽいSF映画だが、大いなる風刺に満ちていてテレビの世界を皮肉るなど内容的に見ごたえ充分。最近なんだが俺と同じように活字離れが進んでいる人、この世の中は本当に表現の自由が保障されているのか不満に感じている人、本が大好きな人等に今回は華氏451をお勧め映画に挙げておこう

華氏451 [DVD]
オスカー・ウェルナー,ジュリー・クリスティ,シリル・キューザック,アントン・ディフリング
ジェネオン・ユニバーサル


 これがレイ・ブラッドベリの原作本
華氏451度〔新訳版〕 (ハヤカワ文庫SF)
伊藤典夫
早川書房


 監督はフランス映画のヌーヴェルバーグを代表するフランソワ・トリュフォー監督。自信を持って映画が好きだという人にはアメリカの夜がお勧め。他には大人は判ってくれない 、突然炎のごとくが良いです。
 
 




 
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映画 キャロル(2015) 同性愛をテーマにした映画ですが・・・

2017年12月11日 | 映画(か行)
 ゲイをテーマにした映画と聞くと、すぐに拒否感を示す人がいるが本作においてはそんな心配は全くの無用。男性同士の恋愛は正直なところ個人的には気持ち悪いが、女性同士の恋愛はなぜかくも美しいのか?それにしても同性愛をテーマにした映画を観て、これほど感動するとは思わなかった。
 ちなみに本作は『太陽がいっぱい』『見知らぬ乗客』などで知られ、映画化も多数されているミステリー作家女史パトリシア・ハイスミスの自伝的小説『The Price of Salt』を原作とする映画化。1952年に出版されているが、実はこの時はパトリシア・ハイスミスではなくクレア・モーガン名義で出版されている。なぜ、自らの名前を隠して出版しないといけなかったのだろうか?
 それは当時の同性愛に対する考え方が大いに関係する。今でこそ同性愛者であることをオープンにする人はいるが、この当時は同性愛を告白すると病人扱い。実際に1950年代を代表するあの二枚目俳優は仕事が無くなる事を恐れてゲイであることを公表しなかった。
 
 さて、1950年代のアメリカにおいて禁断とされている女性同士の恋愛は、いかなる結末を観ている我々にみせるのか?それではストーリーの紹介を簡単に。
 1950年代のニューヨークが舞台。テレーズ(ルーニー・マーラー)は結婚しようと言ってくれる彼氏がいて、将来は写真家になりたいという夢を持っている。公私ともにそこそこ順調なはずだが、どこか満たされない日々を送っていた。
 玩具屋でアルバイトをしていたテレーズは、クリスマス直前のある日に、高貴な婦人の雰囲気を漂わせているキャロル(ケイト・ブランシェット)を見かける。そのことを切っ掛けに二人は親しくなるが、テレーズはキャロルには一人娘がおり、旦那と離婚調停中であることを知る。キャロルの深い悩みを知ったテレーズは、彼氏をすっぽかしてキャロルの誘いに応じて女性二人の旅立ちに出るのだが・・・

 同性愛、そして不倫にも及ぶストーリー。何だか共感できないような2人の女性の行動に思えるが、実際に観ると全くそんなことはない。彼女たちの行動は決して単なる我がままだけでなく、お互いを思いやる優しさに満ち溢れている。そんな優しさが観ている者の身に染みる。そして、本当の愛情とはコレだったんだと理解できる仕組みに本作はなっている。映画の作りはどことなく古さを感じさせるが、1950年代の雰囲気を感じさせる。そして名女優2人の大胆な演技に目が釘付け。こういう映画が誕生するのだから同性愛者は胸を張って堂々と生きていけるし、未来は明るい。
 いつもなら最後にお勧めの対象者を紹介するのだが、本作に限ってはそんなことは意味がないように思える。あえて言うならば、本当の愛に飢えている人にはキャロルはお勧め映画として挙げておこう

キャロル [DVD]
ケイト・ブランシェット,ルーニー・マーラ,カイル・チャンドラー
KADOKAWA / 角川書店


 監督はトッド・ヘインズエデンより彼方にが本作と見比べてみると共通点があって面白く感じられるかもしれないです。





 
 
 

 
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映画 攻撃(1956) 戦争映画ですが・・・

2017年09月19日 | 映画(か行)
 戦争映画において弾丸が降り注ぐ戦闘シーンを期待する人が多いかもしれないが、本作は戦闘シーンよりも人間同士の争いに比重を置いた映画。軍隊内の対立が非情なタッチで描かれており、そこには甘ったるい感傷的な気持ちが入る余地がない。
 次々に味方を犠牲にしてしまう小心者で卑怯な上官と、正義感が強く仲間想いの部下の対立が主に描かれているが、もう一人私利利欲にまみれたトップクラスの人間が登場する。
 無能でもコネさえあれば自分の能力以上に出世し、真面目に働く人間はいつも出世のために利用される。本作に描かれる世界は何も軍隊だけに限らず、我々の社会でも思い当たるような事が描かれている。

 女性が1人も出てこないのでお色気には欠けるが、そんなことはまるで気にならないような骨太の戦争ドラマのストーリーの紹介をできるだけ簡単に。
 第二次世界大戦の末期のヨーロッパ戦線において。戦闘中においてジョー・コスタ中尉(ジャック・パランス)の部下たちは、上官のクーニー大尉(エディ・アルバート)の無能さのおかげで犠牲になってしまっていた。クーニー大尉に対してコスタ中尉は怒りを露わにするが、実はクーニー大尉はバートレット大佐(リー・マーヴィン)という後ろ盾がいた。
 バートレット大佐は戦争終結後に政界進出を企んでおり、彼はクーニー大尉と幼馴染であり、しかも彼の父親が地元の有力者でもあることから、クーニー大尉を出世させて自らの野望を達しようという思惑があった。コスタ中尉だけでなく、他の部下からもクーニー大尉の無能さ知らされるが、私利私欲のために無視するような状態だ。
 さて、再度クーニー大尉は出撃命令をコスタ中尉に下す。あまりにも危険な任務であり、無謀な作戦計画だったために、コスタ中尉は『今度こそ、部下を1人でも亡くしたら殺しに戻る』とクーニー大尉に言い放ち、出撃するのだが・・・

 戦争映画と言えばド派手な撃ち合いを期待する人が多いと思うが、俺ぐらい人生を哲学的に考えるぐらいの域に達すると、戦場の中で生死の極限まで追い詰められた人間性を描いてほしいと思う。本作はそんな俺の期待に応えてくれる傑作だ。
 上司が馬鹿だとわかっていながら最前線で命を投げ捨てて戦う者の悲哀、自分の手を全く汚さずに自らの保身を優先する者、何でも利用しまくって自らの出世につなげようとする強欲な者。戦場じゃなくても俺の身の回りにも、卑怯者で私利私欲のために生きている奴が居る。あ~、いつの時代にも、何処にでもこんな奴が居る事が嘆かわしいと感じながらも、どうすることもできない自分が情けない。

 クーニー大尉を演じるエディ・アルバートがハンパなく人間のクズっぷりを見せてくれるが、コスタ中尉を演じるジャック・パランスの執念が凄い。どんなに負傷しても戦車に轢き殺されそうになっても命の限界を超えても銃口を向ける。
 戦争においては正義もプライドも、そして神への祈りも通用しない。反戦映画の部類に入ると思うが、人間性、男同士の醜い争い、友情、誇りが描かれていて気分が熱くなれる要素もある。モノクロであり、ド派手なアクションがあるわけではない。命を懸けた戦場において極限の人間ドラマが観れるお勧め作品として今回は攻撃を挙げておこう。

攻撃 [DVD]
ジャック・パランス,エディ・アルバート,リー・マーヴィン,ウィリアム・スミサーズ
20世紀フォックス・ホーム・エンターテイメント・ジャパン


 監督はロバート・アルドリッチ。男の熱い争いを描いた映画が多いのが特徴。ゲーリー・クーパー、バート・ランカスター競演の西部劇ヴェラクルス、列車の車掌とただ乗りを企むおっさん同士の熱い戦いが繰り広げられる北国の帝王、女同士の怖い戦いを描いた何がジェーンに起こったか?、砂漠のど真ん中に不時着してしまった飛べ!フェニックス、戦争アクション映画特攻大作戦など、お勧め映画が多数あります。 
 



 

 

 
 
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映画 ガルシアの首(1974) 死体の首争奪戦

2017年07月17日 | 映画(か行)
 ギターばかり弾いて、ロクに働いていないように見えるダメ男が、急に銃さばきが上手くなるアクション映画。バイオレンス映画の巨匠サム・ペキンパー監督が自身の最高傑作と豪語するだけあって、本作はロバート・ロドリゲス監督のエル・マリアッチやシン・シティに多大な影響を与えていることが、よくわかる作品だ。
 それにしてもアメリカ人というのは一攫千金が大好きな国民だ。本作にしても命がけで大金を得ようとする飽くなきその欲望は、もうすっかり貧乏人に慣れてしまった俺としては非常に見習いたいところ。
 しかし、大金を得るのに死体を墓から掘り起こして、首を切断するというのは倫理的な問題としていかがなものか。まあ、そんなことを言ってたらアクション映画なんて成り立たないってか。

 さて、賞金稼ぎ達が、死体の首をめぐって争奪戦を繰り広げるストーリーの紹介を。
 大地主が妊娠中の愛娘を痛めつけて、相手の男性の名前を聞き出す。そいつの名前はアルフレッド・ガルシア。
 早速大地主は生死に関わらずガルシアを捕まえて連れてきた者に100万ドルのボーナスを与えると宣言。そのことは回り回ってしがない店でギター弾きをしているベニー(ウォーレン・オーツ)の耳にも入る。実はガルシアはベニーの彼女であるエリータ(イセラ・ヴェガ)の知り合いでもあり、彼女の口からすでにガルシアは死んでいることを聞かされる。
 一刻を争うベニーはエリータを連れて、ガルシアの故郷へ向かうのだがその道中に、暴漢、殺し屋たちとの銃撃戦に巻き込まれてしまいエリータも犠牲になってしまい・・・

 死体を掘り起こして大金を得ようなんて、俺だけでなく多くの人がドン引き。しかし、こいつが自分の彼女エリータが死んでから、ガルシアの首を持って帰っていく道中、次第にマトモになっていく様子に非常に好感が持てる。
 しかし、バイオレンス描写が多く、観ている最中はけっこう暑苦しい。しかも、乗っていた車は次第にボコボコになるし、ベニーも着ていた白いスーツは泥や血が付いたりして、だんだんみじめな姿になっていくのが、可哀そうでイタイ。
 そして暑苦しいメキシコを車で突っ走るのだが、隣の座席にガルシアの首が入っている汚い袋が置いてある。ハエが飛び回り、画面からも悪臭が漂ってくる感じが観ていて伝わってくる。
 貧乏人がいきなり金持ちになろうとすると、如何に大きな犠牲を払うことになってしまうかが、よく理解できる映画。すぐに給料が良い仕事に転職したがる人が多いが、余程のブラック企業でない限り、転職せずにその仕事を続けた方が、給料は微増でもアップし、そこそこ幸せな人生を送れると思う。

 まあ~、基本的にはバイオレンス描写において見どころが多く、心が熱くなれる映画。本作から上記のような人生訓を感じながらの観賞の仕方は実はナンセンスに近い。銃撃戦を観ていると心が震える人、ダメ男がまっとうな人間になっていくストーリーが大好きな人、格好良い若いイケメンよりもチョッと渋いオジサンが好きな人・・・等に今回はお勧め映画として久しぶりにアクション映画のガルシアの首を挙げておこう

ガルシアの首 [DVD]
ウォーレン・オーツ,イセラ・ベガ
20世紀フォックス・ホーム・エンターテイメント・ジャパン


 監督はバイオレンス映画の巨匠として多くの傑作映画を遺したサム・ペキンパー。なんてったってワイルドバンチは始まりから激しい銃撃戦が繰り広げられ、ハートがとにかく燃える映画として最高にお勧め。他にはスティーヴ・マックウィーン主演の至近距離で撃ち合いが見れるゲッタウェイ、ダスティン・ホフマン主演のこれまたバイオレンス映画の傑作わらの犬、戦争映画戦争のはらわたがアクション系ではお勧め。
 実はこの監督はヒューマン系の映画にも傑作が多い。これまたスティーヴ・マックウィーン主演のジュニア・ボナー/華麗なる挑戦、ハートフルコメディタッチの砂漠の流れ者/ケーブル・ホーグのバラードがお勧めです。 



 
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映画 外人部隊(1933) ラストシーンが素晴らしい

2017年06月13日 | 映画(か行)
 フランスの外人部隊といえば、そこに集まってくる人間の背景は色々。純粋に軍人として入ってくる人間よりも、犯罪者が最後の逃げ場としてやってくるイメージが俺にはある。そんな外人部隊の中で過去に傷を背負った者同士が友情でつながることはあっても、お互いの素性については暗黙の了解で干渉してはならない。今回紹介する外人部隊は、そんな内情が描かれている事にも興味が惹かれるが、実は男女の微妙な心理が描かれている人間ドラマ。
 タイトル名にもなっている外人部隊だが、実は単なる背景としての役割を与えられているに過ぎない。男女の恋愛模様及び男女関係がメインテーマとしてあるのだが、その中でも男の馬鹿っぷりが凄すぎる。しかし、多くの男性はその馬鹿さを自らに照らし合わせ、確かに俺もそうだよな~!なんて妙に納得するだろう。
 本作はメチャクチャ古いフランス映画であり、俺も色々と多くの映画を観てきたつもりだが、ラストシーンが最も印象に残っている映画と言えば本作になる。それは何故か?

 さて、決してラストシーンが素晴らしいだけでなく、人生の厳しさを描いている点にも惹きつけられるストーリーの紹介をしよう。
 ピエール(ピエール・リシャール・ウィルム)はパリでフローランス(マリー・ベル)と贅沢三昧の遊びを楽しんでいる。とことんフローランスに貢ぎまくるのだが、実は会社の金を横領していた。
 そんなピエールの悪行もついにバレてしまい国外へ逃亡する羽目になってしまうのだが、金にしか興味のなかったフローランスは彼の頼みも聞き入れることなく、彼に付いて行くことなく姿を消してしまった。
 すっかり自暴自棄になってしまったピエールはアフリカのモロッコでフランスの外人部隊に入る。地獄のような暑さと厳しい行軍の毎日に嫌気がさしていたが、そんな彼の慰めの拠り所は外国人部隊で知り合い友人になったニコライと行軍中の休憩場として訪れる酒場でいつも慰めてくれる女将のブランシュ(フランソワーズ・ロゼー)。
 ある日のこと、ピエールはニコライと酒場で飲んでいると、フローランスとそっくり顔立ちのイルマ(マリー・ベルが二役)と出会い、二人は愛し合うことになるのだが・・・

 冒頭からダメっぷりを発揮してくれるピエールだが、そんな彼にも幸運が舞い降りる。ようやく外人部隊での厳しい日々をイルマと一緒に抜け出せるかと思ったのに、なぜ神は悪戯な状況をピエールに作り出してしまうのか?しかし、男なら馬鹿丸出しのピエールの気持ちがわかるよな~。昔、愛した女性の面影は男をとことん狂わせる。
 一人二役を髪の色、声、性格を変えて熱演するマリー・ベルのカワイ子ちゃんには確かに惹かれる。
 しかし、それ以上に興味深いのが年増の域に入っているフランソワーズ・ロゼー演じる酒場の女将。実はダメ男のピエールを支えていたのはコッチの女性。彼女の優しさはまるで聖母マリア様のようである。彼女の得意のトランプ占いはイカサマもインチキも無くて当たりまくる。このトランプ占いがラストシーンで抜群の効果を発揮する。そして、観ている者の想像力を刺激するエンディングは本当に素晴らしい。
 1930年代から40年代にかけての甘く切ないフランス映画が好きな人、今まで名作と呼ばれる映画を何本か観たがどれも面白くなかったと感じている人、人生を感じさせる映画を観たい人等に今回は外人部隊をお勧め映画として挙げておこう

IVC BEST SELECTION 外人部隊 [DVD]
マリー・ベル
IVC,Ltd.(VC)(D)


 監督は戦前を代表するフランス映画界を支えたジャック・フェデー。本作にも出演しているフランソワーズ・ロゼーは彼の奥さん。彼女を出演させた作品に名作が多い。ミモザ館女だけの都がお勧めです。 
 

 
 
 
 
 
 
 





 


 

 


 
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映画 危険な関係(1988) 貴族の気分が味わえます

2017年06月04日 | 映画(か行)
 18世紀のフランスの作家であるコデルロス・ド・ラクロの同名タイトル小説を原作とする映画が今回紹介する危険な関係。フランスの貴族社会を描いているが、今まで色々な国で何度も映画化されているように、世界中の映像作家に人気のある古典的小説だ。
 貴族社会を描いているだけに、豪華な衣装は一度は着て身に着けたいと思わせるし、真面目に働かなくても贅沢ができる浮き世離れした生活ぶりは羨ましいと思わせる。そして男性にはナンパの成功方法がわかる非常に有難い映画だ。

 本作で描かれている貴族社会だが、すっかり性の風紀が乱れてしまっている。元カノから『あの生娘の処女を奪って!』と頼まれたり、社交界のプレイボーイである男の口から『俺は今はガードが堅いと評判の美人の未亡人を狙ってるんだ』なんて会話が飛び出す。
 何だかコスプレ衣装の官能小説の映像化を見せられている気分になったりするが、嫉妬、謀略、裏切りが渦巻く不純な愛欲の世界がゲーム感覚で描かれており、見ていてなかなか楽しい映画だ。

 さて、エロスを求めて心理戦が展開されるストーリーの紹介を。
 メルトゥイユ侯爵夫人(グレン・クローズ)は元カレで社交界のプレイボーイとして浮き名を流すヴァルモン男爵(ジョン・マルコヴィッチ)を呼び出し、セシルの処女を奪うように持ち掛ける。
 ヴァルモン男爵はセシルのような小娘とエロスに溺れていたんでは社交界の恥さらしになると断ったうえで、今は社交界の中で美人で貞淑の誉れが高いとして知られているトゥールベル夫人(ミッシェル・ファイファー)を口説き落としてエロいことをする計略があることを打ち明ける。
 当初は思惑の異なる二人だったが、メルトゥイユ侯爵夫人はあらゆる手段を尽くして自らの野望を達成しようとするのだが・・・

 ヴァラモン男爵のナンパの方法だが、貧しい人に手を差し伸べて良い人に見せておいて、狙った女性の前では自らを可哀相な男性を演じて、徹底的な泣き落とし戦術。俺なんかは女性の前では偉そうな人物を装っているのだが、かえって逆効果だったことに気がついた。
 しかし、本当に怖いのはメルトゥイユ侯爵夫人の女の執念。しかも、演じているのが危険な情事でマイケル・ダグラスをとことん追い詰めるグレン・クローズだから恐怖が倍増する。
 しかし、エロスに快楽を求めながらも、男女の仲に次第に恋愛感情が芽生えてくると、そりゃ~、このような結末を迎えてしまうよね~と妙に納得させられた。
 けっこう笑えたのが、エロい関係になったことを証明する手段として手紙のやり取りをしていること。今のネット社会の時代を生きる我々から見ればこのようなやり取りが、どうしても古臭く感じてしまう。原作が今まで本作を含めて何回も映画化されているのだから、ぜひ現代社会に合わせて再度リメイクして欲しいものだ。
 ヨーロッパの貴族生活にあこがれている人、男女のエロスと恋愛に関わる高度な心理戦を楽しみたい人、今でも活躍している豪華キャスト陣の演技を楽しみたい人、若きキアヌ・リーブスのヘタレな役を見たい人、まだ初々しいユマ・サーマンのオッパイを見たい人・・・等に今回は危険な関係をお勧め映画として挙げておこう

危険な関係 [DVD]
ジョン・マルコビッチ,グレン・クローズ,ミシェル・ファイファー,ユマ・サーマン,キアヌ・リーブス
ワーナー・ブラザース・ホームエンターテイメント



危険な関係 [Blu-ray]
クリストファー・ハンプトン
ワーナー・ホーム・ビデオ


 監督はイギリス人で傑作を多く残しているスティーヴン・フリアーズ。詐欺師一家の皮肉な運命を描いたグリフターズ/詐欺師たち、ダスティン・ホフマン主演のハートフルコメディのヒーロー/靴をなくした天使、ロンドンに暮らす不法移民たちを描いた堕天使のパスポートがお勧めです。 
 

  
 




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映画 ゴーン・ガール(2014) フィンチャー節が炸裂です

2017年04月10日 | 映画(か行)
 多かれ少なかれ結婚生活に憧れる人はいるが、今回紹介する映画ゴーン・ガールを観れば、理想的な結婚生活とはどういうものかよくわかる、と言うのは嘘。実はこの映画の主人公達は誰もがうらやましがる様なロマンチックな出会いをし、愛し合いながら結婚したはずの素敵なカップル。幸せになるしかないように思われた夫婦は一体どこで歯車が狂ってしまったのか、偽りに満ちた結婚生活が暴かれた時に、夫婦の絆ってかくも弱いものだったのかと、観ている我々は知らされる。
 しかし、突拍子もない展開をたどって行くのを見せられて、こんな夫婦はいね~よ!なんて思ったりしたのだが、観終わった後に俺の思っていることが180度変わってしまった。夫婦の関係ってこんなものだよね~って。サスペンスタッチの映画の宣伝文句に衝撃の結末というフレーズがよく使われるが、本作の結末は普通の家族が望んでいるところに落ち着いたことに、ある意味で衝撃を受けた。

 次々に驚きの展開が連続するだけにネタバレ厳禁のタイプの映画。実は前述していることですらネタバレの可能性が少々あるのだが、ほんの少しだけストーリーの紹介を。
 ミズリー州の田舎が舞台。非常にめでたい五回目の結婚記念日において、ニック(ベン・アフレック)は家に帰ってみると、その光景に驚く。妻のエイミー(ロザムンド・パイク)が失踪したことに気付いたのだ。警察も直ぐに駆けつけ、エイミーは有名人の娘でもあり、家の中で争った形跡があることから事件の可能性があると捜査を始める。
 ニックは勧められるままにテレビの記者会見に出て、エイミー失踪の手掛かりを呼びかける。しかし、なぜかニックにとって不利になる証拠が次々に出てくる。やがて彼は警察や世間から犯人じゃないのかと疑われてしまい・・・

 外見からして魅力的な美人妻はどこへ消えてしまったのか?というミステリー感で楽しませてくれるのかと思いきや、大体的なマスコミ報道でわかってくるのは、美人妻がどこへ消えてしまったのか?ではなく、ニックのいい加減な結婚生活。マスコミによる1人の人間に対する集中砲火を浴びせるかの如くのような報道の仕方は日本でも最近見られるが、まさにニックがそんな状態。捏造、印象操作、大衆を煽るこの報道の仕方は、もし自分の身にかかったとなると怖い。
 他にも警察は殆んどニックを犯人と決め付けて捜査をするし、雇った弁護士は無罪を晴らすことよりもカネに興味のある奴だったり、社会に対する警報を同時に描いてしまうあたりなんかは、さすがセブンの監督であるデヴィッド・フィンチャー。凶器を使ったシーンも含めてフィンチャー節が炸裂している。しかし、なんて言ったってドン引きさせるのは女性の恐ろしさ。5年間夫婦をやってきて、奥さんの本性を知らなかった旦那のアホさも相当だが、あらゆる面で旦那を上回る頭のキレが凄い。
 サスペンス映画が好きな人を充分に満足させる面白さがあり、大人の男女なら満足できる。それに「俺は女の事は全てわかっているんだ」と豪語している男には特にお勧めできる。更に、あんまりいい加減なことは書けないが、個人的には夫婦で一緒に観るのがお勧めの方法。観終わった後に議論すればきっと白熱すること間違いなし。いずれにしろ最近のサスペンス映画では味わえない余韻に浸ることができるゴーン・ガールを今回はお勧め映画として挙げておこう。

ゴーン・ガール(初回生産限定) [DVD]
ベン・アフレック,ロザムンド・パイク,ニール・パトリック・ハリス,タイラー・ペリー,キャリー・クーン
20世紀フォックス・ホーム・エンターテイメント・ジャパン


 監督は前述したデヴィッド・フィンチャー。凝ったビジュアル、脳ミソを刺激するような作風が俺のお気に入り。セブンファイト・クラブの有名どころはお勧めだし、衝撃的な結末という点ではゲームが良いです。




 
 
 



 
 

 

 
 
 
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