クリント・イーストウッド監督の作品において最高傑作との呼び声が高い映画が今回紹介するグラン・トリノ(主演も兼ねる)。名作とよばれる映画は多くのテーマを内包しているものだが、本作もその例外ではなく、その多様なテーマ性から色々と考えさせられる映画。基本的には偏屈で頑固な古きアメリカ親父を代表する老人と黄色人種でモン族の少年の交流が描かれている。この2人は異なる世代、人種、民族と正反対の間柄であるが、彼らに共通するのは『アメリカ』と『男』。クリント・イーストウッド演じる古きアメリカ人は、これからの時代を担っていくモン族の少年に何を教え、何を遺していくのか
もう少しクリント・イーストウッド演じる老人のキャラクターを説明すると、自動車産業の発展で一時代を築いたデトロイトにおいて、かつて50年間フォード社で組立工員ととして働き、現在はそのままそこで隠居暮らし。そして過去に朝鮮戦争に従軍し、その活躍ぶりから勲章をもらっている。自宅の庭には国旗を上げており、その毒舌っぷりは人種偏見丸出しで、ただ今の共和党の次期アメリカ大統領候補のドナルド・トランプ氏に匹敵するぐらいのウヨクチックな人間。朝鮮戦争での経験が彼をそうさせたのか特に黄色人種が大嫌い。今や奥さんが亡き後は、息子や孫たちとも仲が悪く、飼っている犬が唯一の友。そんな彼の宝物は愛車72年型のグラン・トリノ。
そんな男がなぜモン族の少年と交流するようになったのか?そして、その交流の結末はコレいかに?それではストーリーの紹介を。
朝鮮戦争の帰還兵であり、フォード社の工場でかつて働いていたウォルト・コワルスキー(クリント・イーストウッド)。今や妻は先立ち、子供たちはとっくに家を出ており、愛犬デイジーと一緒にデトロイトで1人暮らし。かつては自動車産業で栄えていてデトロイトも、今ではすっかり日本車ばかりが走っており、しかもこの場所に住んでいるのは移民達ばかりで、治安が悪化。ウォルトはすっかり荒廃してしまったデトロイトの現状を嘆いていた。
そんなある日のこと、隣の空き家に引っ越して来たアジア系のモン族の家族の少年タオ(ビー・ヴァン)が、同じモン族のチンピラグループ達に脅され、ウォルトの宝物である愛車72年型グラン・トリノを盗もうとするのを発見。しかし、驚いたことにこの事件を切っ掛けにウォルトとモン族の隣家の交流が始まり、それはウォルトとタオの師弟関係に似たような友情が芽生える。
タオがモン族のチンピラ達から根性焼きを入れられていることから、ウォルトはチンピラ達に報復。しかし、その事は更にタオの家族にとんでもない悲劇を呼び込んでしまい・・・
デトロイトを舞台にしていながら、これが的確にアメリカという国の現状を描き出している。自国産業の墜落、移民達の流入、銃社会の悲劇、治安がボロボロ、他民族国家における民族間の争い・・・等など、イーストウッド監督の問題だらけのアメリカ社会に対する考えが観ている我々にもよく理解できる。しかも、もうこの映画も2008年制作の映画なのだが、この映画で描かれている問題点が現在においても全く改善されていないことに気付かされる。
しかし、多くの社会的なテーマを盛り込んだ映画は、問題提起はするが、解決策はほとんど示さない。だが、本作におけるクリント・イーストウッド監督が凄いのは、その答えをしっかり描いているところ。この解決方法がまさに男の責任感の重さを感じさせ、自らの落とし前をキッチリつける鮮やかな方法。しかし、悲しいことにアメリカだけに限らず、世界中の各国のリーダーが、けじめのつけ方をわかっておらず、その勇気がない。だから世界は今もどこかで流さなくてもいい血を流している。
他にもイーストウッド演じる老人が朝鮮戦争での経験を若き神父に語りながら逆に説教するシーンは非常に奥が深いやりとりを感じる。イタリア系の散髪屋、アイルランド系の建築士との会話のやりとりは人種差別発言のオンパレードでけっこう笑える。しかも、イーストウッド演じる老人の名前コワルスキーからもわかるようにポーランド系アメリカ人という設定が心憎い設定。そしてダーティー・ハリーでマグナム44を構えていたイーストウッドが手で銃の構えを作るシーンがけっこう出てくるようなファンサービスも上手く活かされている。
最初はダメダメでショボイ男だと馬鹿にしていたタオの中に『けっこう、こいつ良いとこあるじゃん!』と思い、そして未来のアメリカを我が子孫ではなくタオに託すかのようなラストシーンは静寂だが感動的。これだけ色々とテーマを詰め込みながら説得力のあるストーリー運びは、さすがクリント・イーストウッド監督、もう80歳も半ばだがまだまだ映画を撮ってほしいと思わせる映画監督。これまでのイーストウッド監督の総決算的な作品として、また新たなる伝説の始まりかのように、この作品以降も話題作、傑作を連発することになる記念碑的作品としてお勧めの映画です
監督は前述している通り、御大クリント・イーストウッド。彼のお勧め作品は本作のグラン・トリノ以降の作品として、”君の瞳に恋してる”、”シェリー”のヒット曲で知られるフォーシーズンスのミュージカルにして伝記映画のジャージー・ボーイズ、戦争映画の傑作アメリカン・スナイパーが良いです。
もう少しクリント・イーストウッド演じる老人のキャラクターを説明すると、自動車産業の発展で一時代を築いたデトロイトにおいて、かつて50年間フォード社で組立工員ととして働き、現在はそのままそこで隠居暮らし。そして過去に朝鮮戦争に従軍し、その活躍ぶりから勲章をもらっている。自宅の庭には国旗を上げており、その毒舌っぷりは人種偏見丸出しで、ただ今の共和党の次期アメリカ大統領候補のドナルド・トランプ氏に匹敵するぐらいのウヨクチックな人間。朝鮮戦争での経験が彼をそうさせたのか特に黄色人種が大嫌い。今や奥さんが亡き後は、息子や孫たちとも仲が悪く、飼っている犬が唯一の友。そんな彼の宝物は愛車72年型のグラン・トリノ。
そんな男がなぜモン族の少年と交流するようになったのか?そして、その交流の結末はコレいかに?それではストーリーの紹介を。
朝鮮戦争の帰還兵であり、フォード社の工場でかつて働いていたウォルト・コワルスキー(クリント・イーストウッド)。今や妻は先立ち、子供たちはとっくに家を出ており、愛犬デイジーと一緒にデトロイトで1人暮らし。かつては自動車産業で栄えていてデトロイトも、今ではすっかり日本車ばかりが走っており、しかもこの場所に住んでいるのは移民達ばかりで、治安が悪化。ウォルトはすっかり荒廃してしまったデトロイトの現状を嘆いていた。
そんなある日のこと、隣の空き家に引っ越して来たアジア系のモン族の家族の少年タオ(ビー・ヴァン)が、同じモン族のチンピラグループ達に脅され、ウォルトの宝物である愛車72年型グラン・トリノを盗もうとするのを発見。しかし、驚いたことにこの事件を切っ掛けにウォルトとモン族の隣家の交流が始まり、それはウォルトとタオの師弟関係に似たような友情が芽生える。
タオがモン族のチンピラ達から根性焼きを入れられていることから、ウォルトはチンピラ達に報復。しかし、その事は更にタオの家族にとんでもない悲劇を呼び込んでしまい・・・
デトロイトを舞台にしていながら、これが的確にアメリカという国の現状を描き出している。自国産業の墜落、移民達の流入、銃社会の悲劇、治安がボロボロ、他民族国家における民族間の争い・・・等など、イーストウッド監督の問題だらけのアメリカ社会に対する考えが観ている我々にもよく理解できる。しかも、もうこの映画も2008年制作の映画なのだが、この映画で描かれている問題点が現在においても全く改善されていないことに気付かされる。
しかし、多くの社会的なテーマを盛り込んだ映画は、問題提起はするが、解決策はほとんど示さない。だが、本作におけるクリント・イーストウッド監督が凄いのは、その答えをしっかり描いているところ。この解決方法がまさに男の責任感の重さを感じさせ、自らの落とし前をキッチリつける鮮やかな方法。しかし、悲しいことにアメリカだけに限らず、世界中の各国のリーダーが、けじめのつけ方をわかっておらず、その勇気がない。だから世界は今もどこかで流さなくてもいい血を流している。
他にもイーストウッド演じる老人が朝鮮戦争での経験を若き神父に語りながら逆に説教するシーンは非常に奥が深いやりとりを感じる。イタリア系の散髪屋、アイルランド系の建築士との会話のやりとりは人種差別発言のオンパレードでけっこう笑える。しかも、イーストウッド演じる老人の名前コワルスキーからもわかるようにポーランド系アメリカ人という設定が心憎い設定。そしてダーティー・ハリーでマグナム44を構えていたイーストウッドが手で銃の構えを作るシーンがけっこう出てくるようなファンサービスも上手く活かされている。
最初はダメダメでショボイ男だと馬鹿にしていたタオの中に『けっこう、こいつ良いとこあるじゃん!』と思い、そして未来のアメリカを我が子孫ではなくタオに託すかのようなラストシーンは静寂だが感動的。これだけ色々とテーマを詰め込みながら説得力のあるストーリー運びは、さすがクリント・イーストウッド監督、もう80歳も半ばだがまだまだ映画を撮ってほしいと思わせる映画監督。これまでのイーストウッド監督の総決算的な作品として、また新たなる伝説の始まりかのように、この作品以降も話題作、傑作を連発することになる記念碑的作品としてお勧めの映画です
グラン・トリノ [DVD] | |
クリント・イーストウッド,ビー・バン,アーニー・ハー,クリストファー・カーリー | |
ワーナー・ホーム・ビデオ |
グラン・トリノ [Blu-ray] | |
クリント・イーストウッド,ビー・バン,アーニー・ハー,クリストファー・カーリー | |
ワーナー・ホーム・ビデオ |
監督は前述している通り、御大クリント・イーストウッド。彼のお勧め作品は本作のグラン・トリノ以降の作品として、”君の瞳に恋してる”、”シェリー”のヒット曲で知られるフォーシーズンスのミュージカルにして伝記映画のジャージー・ボーイズ、戦争映画の傑作アメリカン・スナイパーが良いです。