褒めまくる映画伝道師のブログ

映画の記事がメイン。自己基準で良かった映画ばかり紹介します。とにかく褒めることがコンセプトです。

映画 北ホテル(1938) 昔のフランス映画の良さがわかります

2019年01月23日 | 映画(か行)
 ハリウッド映画のようなテンポが良くてド派手な映画も楽しいが、1930年代から40年代にかけての哀歓を感じさせるようなフランス映画をたまに観るのも、なかなか風流な気分を感じさせてくれて良いものだ。酸いも甘いも知り尽くした大人向けの映画が今回紹介する北ホテル。あの名作グランドホテルはお金をたくさん持っている人が泊まれる高級ホテルを舞台にした映画だったが、こちらは貧しい人向けの安ホテルが舞台。お客さんは近所の人が集まって来て、食卓を囲んでいるがアットホームな雰囲気が漂う。しかし、やはりと言うべきか安ホテルにはすっかり人生に絶望している者や、犯罪者が泊まって居たりする。

 当たり前のことだが、人生なんてものは人の数だけ存在するということが更に理解できるストーリーの紹介を。
 パリのサンマルタン運河の畔に建っている北ホテルにおいて。その夜の北ホテルではお客さんたちが食堂でワイワイガヤガヤ飲み食いしながら楽しい会話が弾んでいた。そこへ若い男女のピエール(ジャン・ピエール・オーモン)とその恋人ルネ(アナベラ)泊まりにきて部屋に案内される。この二人は若いながらも既に人生に絶望しており、心中するためにホテルに泊まりに来たのだ。
 ピエールは持っていた拳銃でルネを撃ち、そして自らに銃口を向けるのだが急に恐ろしくなって自殺するのが怖くなってしまった。隣の部屋にいた身なりの良い渋めのおじさんであるエドモンド(ルイ・ジューヴェ)が銃声を聞いて、部屋に入ってきた。エドモンドはピエールにさっさと逃げるようにアドバイスして去らせる。ピエールは北ホテルを去った後も自殺を考えるが、結局は怖くて死ねず自首する。
 そして、ルネは不幸中の幸いなのか入院先で目を覚ます。彼女は軽傷レベルで済んでいたのだ。ピエールもルネも生き残ってしまい、流石に2人の仲も終わったように思われた。行く当てのないルネは北ホテルで女中として働くようになる。
 ところがそんなルネに惚れてしまったのが、まだ北ホテルに宿泊しているエドモンド。彼にはレイモンド(アル・レッティ)という情婦がいたのだが、何かと面倒くさい彼女とはサッさと縁を切ってルネに近づきたいと思っていたのだが、驚いたことにルネの方もエドモンド事を好きになってしまい・・・

 昔のフランス映画は男女の恋愛関係の描写が優れている映画が多い。時々馬鹿すぎるカップルを見せられることがあるが、本作なんかはバカップルの一歩手前で踏ん張るサジ加減が抜群で、男女の恋愛関係ってこんなもんだよねっと納得できる。男の強がりな気持ち、女性の揺れ動く気持ちの描き方が非常に巧み。恋愛の手引書には全く向かないが、こういう人生を経験している人もきっと居るはずだと思えるの良い。
 そして、ラストの結末が鮮やか。ハリウッド映画ならド派手にお涙頂戴のような感動を煽るような描き方をするところを、観ている者の心に静かに、深く刻み込まれるようなエンディングが全盛期の頃のフランス映画の真骨頂を感じさせる。そして、このエンディングだがハッピーエンドとバッドエンドの両方が同時に描かれているのが良い。
 昔のフランス映画に酔いしれたい人、ハリウッドのド派手な映画に飽き飽きしている人、甘酸っぱい映画を観たいと人、人生経験が豊富な大人向けの映画を観たい人に今回は北ホテルをお勧め映画として挙げておこう。

北ホテル [DVD]
アナベラ,ルイ・ジューヴェ,アルレッティ
IVC,Ltd.(VC)(D)


 監督はマルセル・カルネ。戦前のフランス映画全盛期を支えた監督です。この人の映画は本当に人生の喜怒哀楽を描くの上手い。名作中の名作と言っても良い天井座敷の人々、エミール・ゾラ原作のサスペンス映画嘆きのテレーズ、ジャン・ギャバン主演のボクシング映画われら巴里ツ子、ジェラール・フィリップ主演の記憶喪失ムービーの愛人ジュリエット等がお勧めです。
 
 
 


 

 


 

 


 

 

 
 
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