アメリカで人種差別といえば黒人に対する差別を思い浮かべる人が多いと思うが、実は白人同士でもある。特にユダヤ人に対しての人種差別の実像を描いたのが今回紹介する紳士協定。白人同士で見た目は違わないので何処を見て偏見が生まれるのかと思うが、実は名前で判断される時がある。ユダヤ人の名前に多いのが、最後に「~マン」とか「~バーグ」と付く名前。例えば俺が大好きな俳優であるポール・ニューマン、現役の俳優ではダスティン・ホフマン、そして有名映画監督のスティーヴン・スピルバーグもユダヤ系アメリカ人。本作が制作されたのが、まさに反ユダヤ主義が問題になっていた時期であり、偽名を使うユダヤ人も少なからずいた。しかし、今日のアメリカでは前述した有名人やユダヤ人自身の努力もあってユダヤ人に対する感情はマシになっているように思うのだが、世界を見渡すと未だにユダヤ人に対する差別感情が残っているようだ。
早速だがユダヤ人に対する人種偏見を真っ向から描いたストーリーの紹介を。
コラムニストであるフィル・グリーン(グレゴリー・ペック)は年老いた母と幼い息子のトニーを連れてカリフォルニアからニューヨークに引っ越す。ニューヨークの編集長ミニファイ(アルバート・デッカー)に招かれたフィルは、反ユダヤ主義についてのコラムを書くように依頼される。もうひとつ乗り気でないテーマだったのだが、息子のトニーからユダヤ人についての説明を求められ、またミニファイの姪であり婚約者となるキャシー(ドロシー・マクガイア)からの後押しもあり、反ユダヤ主義について書くことを決心する。
そして、フィルは自らユダヤ人に成りすまし反ユダヤ主義について調査すると、あらゆる場面で偏見にさらされる場面に遭うことになる・・・
本当はクリスチャンであるフィル・グリーンだが、どうやってユダヤ人に成りすますのか?彼はフィル・グリーンバーグと名前を変える。前述したように名前の最後にバーグを付け加えたのだ。そして、会社の中で自分はユダヤ人であると発表する。瞬く間にそのことは会社内で広まり、周囲の態度もよそよそしくなる。
本作では随所にユダヤ人の偏見に晒される実態が度々出てくる。ユダヤ系の名前だったために就職が出来なかったり、アパートも借りられなかったり、ホテルにも泊めてもらえないし、息子のトニーはユダヤ人の血が流れているということで苛められる。フィルは実体験を通して反ユダヤ主義の実態を味わう羽目になってしまうのだが、彼はそれでもユダヤ人であることを通す。この頑なな態度は婚約者であるキャシーとの仲にも亀裂を生じさせる。キャシーはユダヤ人に対する偏見は無いのだが、犠牲を払ってまでユダヤ人に執着する必要を感じてないのだ。
本作が凄いのは単にユダヤ人差別を描いているだけでなく、どうしたらユダヤ人差別を無くせるのかを描いているところ。口よりも行動が重要であることを知らされ、1人だけで100歩を歩くのではなく、100人が1歩を踏み出すことの重要さを本作の最後に教えてくれる。そして、フィルとユダヤ人であることを隠している秘書とのやり取りから民族の誇りがいかに大切であるかも知らされる。ちなみにタイトルが意味する紳士協定の意味ですが、悪いルールだと理解していても見て見ぬ振りをすること。まさに本作の最大のテーマを言い当てています。
社会派な映画を見たい人、ユダヤ人だけでなく人種偏見について興味がある人、本当に世の中を良くしたいと思っている人等に今回は映画紳士協定をお勧めに挙げておこう
監督は名匠エリア・カザン。ホームドラマの傑作ブルックリン横丁、ジェームズ・ディーン主演のエデンの東、マーロン・ブランド主演の波止場、伝記映画が好きな人なら同じくマーロン・ブランド主演の革命児サパタもお勧め
早速だがユダヤ人に対する人種偏見を真っ向から描いたストーリーの紹介を。
コラムニストであるフィル・グリーン(グレゴリー・ペック)は年老いた母と幼い息子のトニーを連れてカリフォルニアからニューヨークに引っ越す。ニューヨークの編集長ミニファイ(アルバート・デッカー)に招かれたフィルは、反ユダヤ主義についてのコラムを書くように依頼される。もうひとつ乗り気でないテーマだったのだが、息子のトニーからユダヤ人についての説明を求められ、またミニファイの姪であり婚約者となるキャシー(ドロシー・マクガイア)からの後押しもあり、反ユダヤ主義について書くことを決心する。
そして、フィルは自らユダヤ人に成りすまし反ユダヤ主義について調査すると、あらゆる場面で偏見にさらされる場面に遭うことになる・・・
本当はクリスチャンであるフィル・グリーンだが、どうやってユダヤ人に成りすますのか?彼はフィル・グリーンバーグと名前を変える。前述したように名前の最後にバーグを付け加えたのだ。そして、会社の中で自分はユダヤ人であると発表する。瞬く間にそのことは会社内で広まり、周囲の態度もよそよそしくなる。
本作では随所にユダヤ人の偏見に晒される実態が度々出てくる。ユダヤ系の名前だったために就職が出来なかったり、アパートも借りられなかったり、ホテルにも泊めてもらえないし、息子のトニーはユダヤ人の血が流れているということで苛められる。フィルは実体験を通して反ユダヤ主義の実態を味わう羽目になってしまうのだが、彼はそれでもユダヤ人であることを通す。この頑なな態度は婚約者であるキャシーとの仲にも亀裂を生じさせる。キャシーはユダヤ人に対する偏見は無いのだが、犠牲を払ってまでユダヤ人に執着する必要を感じてないのだ。
本作が凄いのは単にユダヤ人差別を描いているだけでなく、どうしたらユダヤ人差別を無くせるのかを描いているところ。口よりも行動が重要であることを知らされ、1人だけで100歩を歩くのではなく、100人が1歩を踏み出すことの重要さを本作の最後に教えてくれる。そして、フィルとユダヤ人であることを隠している秘書とのやり取りから民族の誇りがいかに大切であるかも知らされる。ちなみにタイトルが意味する紳士協定の意味ですが、悪いルールだと理解していても見て見ぬ振りをすること。まさに本作の最大のテーマを言い当てています。
社会派な映画を見たい人、ユダヤ人だけでなく人種偏見について興味がある人、本当に世の中を良くしたいと思っている人等に今回は映画紳士協定をお勧めに挙げておこう
監督は名匠エリア・カザン。ホームドラマの傑作ブルックリン横丁、ジェームズ・ディーン主演のエデンの東、マーロン・ブランド主演の波止場、伝記映画が好きな人なら同じくマーロン・ブランド主演の革命児サパタもお勧め
ディープインパクトさんが熱烈に述べて居られますように、この映画は、ユダヤ人に対する偏見差別と闘う姿勢に満ちていると思います。
それを現在の我が国の沖縄問題にも適用したご意見。ごもっともだと思います。日本にも昔からいろんな差別がありますね。戦時中、軍部の言論統制と闘った人が蒙った残酷被害は数知れません。
思えば、アメリカでは、黒人差別の長い歴史もありました。オバマ大統領に到り、表面的にはその呪文も解けたようです。でも一部の共和党には…?どうでしょうかね。
此の世に戦争が絶えない如く、差別も絶えないのでしょうか。
でも、私は絶対に世界中から戦争、紛争の無い世の中が来ると思っています。
そして差別もこの世の中から消えると思っています。
そのときは僕は死んでいると思いますが、素晴らしい世の中が来ることを信じています
勤務先の美濃加茂ICから東へ16キロ。
「人道の丘」はユダヤ人の恩人のモニュメント。
自宅から3キロの世界一のバラ園は平和のシンボル。ドライブにどうぞ。
そしてオードリー・ヘップバーンもドイツのナチス政権の被害者だったことは知っております。とても彼女の映画作品からそのようなイメージは浮かびませんが、しかし彼女がユニセフ親善大使として、活躍していたころの子供たちに対して愛情を持って接した姿に、映画では見せない彼女の不幸な生い立ちを少しだけ理解したものでした。
今回レビューされている「紳士協定」は、様々な事を考えさせてくれる社会派映画の秀作だと思います。
>タイトルが意味する紳士協定の意味ですが、悪いルールだと理解していても見て見ぬ振りをすること。まさに本作の最大のテーマを言い当てています。
⇒まさしく、その通りだと思います。
この1947年のエリア・カザン監督の映画「紳士協定」の紳士協定とは、成文化した約束ではないが、暗黙のうちに関係者が互いに認め合っている約束事なんですね。
この映画の場合は、アメリカにおける"ユダヤ人差別"がそれに当たります。
ユダヤ人を差別していいとは誰も言わない。
保守的な南部ならともかく、特に進歩的でリベラルの人の多い東部のインテリ層の社会ではそうでしょう。
ところが、現実には厳然とした差別が存在しているんですね。
ユダヤ人だと分かると就職や結婚が難しい。
予約しておいた高級ホテルが、ユダヤ人だと分かると解約されてしまう。
うわべでは差別は否定されているから、本当の理由は決して言わない。
何かと他の理由をつけて断るんですね。
主人公のルポルタージュ作家(グレゴリー・ペック)は、雑誌社から、そうしたユダヤ人差別についてのルポルタージュを依頼されるが、どのようにしてその実態に迫ろうかと考えた末に、自分はユダヤ人だと名乗る事にする。
彼の名前はグリーンだが、グリーンバーグと変えてみる。
このグリーンバーグというのは、典型的なドイツ系ユダヤ人の姓なんですね。
こうして名前を変えただけで、彼はいろんな差別を経験する事になり、子供もいじめられる事になるのです。
ユダヤ人差別を告発しようと言っているその雑誌社自体が、実はユダヤ人だと採用されず、彼の秘書をする人になった女性は、実は自分はユダヤ人である事を隠して入社したのだと打ち明ける。
妻に先立たれて子持ちのまま独身でいる主人公のグリーンは、この仕事を通じて社長の姪のキャシー(ドロシー・マクガイア)と親しくなり、恋仲になる。
彼女はユダヤ人差別問題を取り上げる事を社長に提案した女性であり、当然、偏見のない進歩的な女性だと主人公は思っている。
ところがある日、主人公の息子がユダヤ人の子だと思われていじめられると、彼女は「ユダヤ人でなんかないのに!?」と言うのだ。
まるで、ユダヤ人だったら差別されても仕方がないとでもいうように。
また、彼女の別荘を主人公が、親友のユダヤ人に貸して欲しいと頼むと、断るのです。
自分はユダヤ人を差別はしないが、近所の人たちは、暗黙のうちに差別をしているので、後でいろいろトラブルが起こるに決まっており、厄介だと言うのです。
そこで主人公の怒りが爆発し、あからさまに差別するものだけが差別しているのではなく、他人が差別をしている時、自分は関係ないというフリをして知らん顔をしている者もまた、差別をしている仲間なのだ、と。
この映画は、現在の視点、立ち位置で観ると、少し古くさく見えてしまいます。
その理由のひとつは、今日のアメリカではユダヤ人差別は大幅に改善されているために、これは昔の事というふうに見えるからです。
もうひとつは、この主人公が実に理想主義的で、常に妥協なく正論を主張し、昂然と肩をそびやかせているためなのです。
かつて古き良き時代のアメリカ人は、こんな風に差別問題などを内に抱えながらも、つまり、いくらかの欠点はあるにしても、総体として自分たちは、正義に根差して理想を追求している国民だという自信を持っていたのだと思います。
そして、映画でこんな風に、自分たちの社会の矛盾、不条理を堂々とさらけ出して"自己批判"できる事自体、自分たちが自由で勇気のある国民である証拠だと信じていたのだと思います。
そして、この主人公を演じたグレゴリー・ペックは、そういう時代のアメリカの、そういう自信に満ちた姿を演じた俳優たちの中でも、代表的な俳優であったと思います。
たんに真面目そうというだけでなく、意志が強そうで、曲がった事が大嫌いで、いつも相手に対して真っ向から正論をぶつけていくだけの信念と、悪びれない闘志を持っている人間なのです。
グレゴリー・ペックは、そんなポーズの一番似合う俳優であり、この「紳士協定」では、まさにそういう信念の人物を見事に演じていると思います。
この彼の演技スタイルが、後に彼がアカデミー賞の最優秀主演男優賞を受賞した「アラバマ物語」での名演に繋がっていったのだと思います。