名門貴族の末裔である名匠ルキノ・ヴィスコンティ監督。生涯を裕福な暮らしができる境遇でありながら、イタリア共産党に入党(後に離党)したり、私生活もバイセクシャルであることを公言するなど何かと二元性を抱えている人物として知られている。戦後間もなくの頃は、他のイタリア人の世界的有名な監督と同様に貧しいイタリア社会を描いたネオリアリズモから出発しながらも、元々が金持ちなので他の監督と違い次第に豪華絢爛、そして耽美的といわれる作風に変貌を遂げていき、数々の名作をこの世に遺した。
そんなヴィスコンティ監督が遺作として辿り着いた映画が今回紹介するイノセント。ちなみにイタリア語の原題はL'innocenteであり、意味は『罪なき者』。タイトル名だけから内容を想像すると、清廉潔白な俺のような人間が主人公かと思いきや、貴族階級に属し、傲慢、我儘、女たらしであるダメ男が主人公。
ヴィスコンティ監督が死を間際にして、自らの出自である貴族を容赦なく叩きのめすストーリーの紹介を。
20世紀初頭のローマ。トゥーリオ伯爵(ジャンカルロ・ジャンニーニ)は妻のジュリアーナ(ラウラ・アントネッリ)とは愛が冷めており、今は未亡人である公爵夫人であるテレーザ(ジェニファー・オニール)と不倫の真っ最中。しかしながらトゥーリオは妻とは別れたくないし、愛人とも離れたくない。誰に何と言われようと我さえ良ければ満足している。
ある日のこと、トゥーリオが愛人テレーザと旅行に出かけている最中に、実家へ弟のフェデリコ(ディディエ・オードパン)が友人で作家のフィリッポ(マルク・ポレル)を連れてくる。そこへ出合わせたジュリアーナとフィリッポは見つめ合った瞬間から互いに惹かれていく。
トゥーリオは愛人テレーザとの不倫旅行から帰ってきて、妻のジュリアーナの様子から不倫相手いることに気付くのだが、そのことはトゥーリオに自分が本当に愛していたのはジュリアーナだったとを気づかせる。トゥーリオとジュリアーナは再び愛し合うことになるのだが、既にジュリアーナはフィリッポの子供を妊娠しており・・・
昔の西欧の貴族の世界は俺のような底辺の社会で生きる人間には憧れたりするが、いやいや本作を観てそんな想いは吹っ飛んだ。このトゥーリオ伯爵だが男として相当なダメっぷりを発揮してくれる。妻に対しては妹扱いで、しかも俺には愛人が居てもオッケーだと力づくで認めさせている。しかも、この男は西欧の人間には珍しく無神論者。何かと傲慢で強がりな奴だ。
妻に近づいてくる男に対して毛嫌いするのは理解できるが、愛人に近づいてくる男でさえケンカ腰になる。そして俺は自由人だから何をしても良いんだと妻のジュリアーナに、わざわざ話すとは余計なお世話。最初から最後までこんな調子でストーリーが進む。そりゃ~、他の男との子供を妊娠してしまうジュリアーナは罪が深いかもしれないが、悪いのは罪を犯していなくてもトゥーリオ、お前だ!
無神論者の人間に天誅が降されるだけの結末だったら観終わった後は確かにスッキリしたかもしれない。しかし、映画史にその名を轟かすルキノ・ヴィスコンティ監督は、そんなありきたりのエンディングに逃げない。この天才監督はバイセクシャルなだけあって女性の気持ち、恐ろしさをよく理解している。そして、典型的なダメ男についてもよく理解している。
生涯にわたり駄作知らずで、名作及び傑作を撮り続けていただけに、本作は彼の監督作品の中で特に優れている方でもないと思うのだが、画面から伝わる映像は流石だと感じさせる。そして、遺作にして彼の作品の中で最もエロいシーンを見せつけられる。奥さんの役のラウラ・アントネッリだが、どこかで見たことがあるな~なんて思っていたら、何と青春エロ映画の『青い体験』、『続・青い体験』に出演していた女優さんだった。確かにあのエロシーンを撮りたいと思えば、この女優を大監督が引っ張り出してきたのも大いに納得できる。
そして、ダメンズを演じるジャンカルロ・ジャンニーニだが、この人の目力が凄い。顔の表情だけでもアカデミー主演男優賞級の演技だと感心させられる。
ルキノ・ヴィスコンティ監督と聞いて心が躍る人、ヨーロッパ映画の名作に触れたい人、『青い体験』を観ている人、金持ちが嫌いな人等に今回はイノセントをお勧め映画として挙げておこう
監督は前述したルキノ・ヴィスコンティ。前述したように名作ぞろいですが、個人的なお勧めはアラン・ドロン主演の若者のすべて、女の恐ろしさを思い知らされる夏の嵐、女装、幼児性愛、近親相姦、虐殺等、何でもありの地獄に堕ちた勇者ども、時間に余裕があればルートヴィヒも観て欲しいです。
そんなヴィスコンティ監督が遺作として辿り着いた映画が今回紹介するイノセント。ちなみにイタリア語の原題はL'innocenteであり、意味は『罪なき者』。タイトル名だけから内容を想像すると、清廉潔白な俺のような人間が主人公かと思いきや、貴族階級に属し、傲慢、我儘、女たらしであるダメ男が主人公。
ヴィスコンティ監督が死を間際にして、自らの出自である貴族を容赦なく叩きのめすストーリーの紹介を。
20世紀初頭のローマ。トゥーリオ伯爵(ジャンカルロ・ジャンニーニ)は妻のジュリアーナ(ラウラ・アントネッリ)とは愛が冷めており、今は未亡人である公爵夫人であるテレーザ(ジェニファー・オニール)と不倫の真っ最中。しかしながらトゥーリオは妻とは別れたくないし、愛人とも離れたくない。誰に何と言われようと我さえ良ければ満足している。
ある日のこと、トゥーリオが愛人テレーザと旅行に出かけている最中に、実家へ弟のフェデリコ(ディディエ・オードパン)が友人で作家のフィリッポ(マルク・ポレル)を連れてくる。そこへ出合わせたジュリアーナとフィリッポは見つめ合った瞬間から互いに惹かれていく。
トゥーリオは愛人テレーザとの不倫旅行から帰ってきて、妻のジュリアーナの様子から不倫相手いることに気付くのだが、そのことはトゥーリオに自分が本当に愛していたのはジュリアーナだったとを気づかせる。トゥーリオとジュリアーナは再び愛し合うことになるのだが、既にジュリアーナはフィリッポの子供を妊娠しており・・・
昔の西欧の貴族の世界は俺のような底辺の社会で生きる人間には憧れたりするが、いやいや本作を観てそんな想いは吹っ飛んだ。このトゥーリオ伯爵だが男として相当なダメっぷりを発揮してくれる。妻に対しては妹扱いで、しかも俺には愛人が居てもオッケーだと力づくで認めさせている。しかも、この男は西欧の人間には珍しく無神論者。何かと傲慢で強がりな奴だ。
妻に近づいてくる男に対して毛嫌いするのは理解できるが、愛人に近づいてくる男でさえケンカ腰になる。そして俺は自由人だから何をしても良いんだと妻のジュリアーナに、わざわざ話すとは余計なお世話。最初から最後までこんな調子でストーリーが進む。そりゃ~、他の男との子供を妊娠してしまうジュリアーナは罪が深いかもしれないが、悪いのは罪を犯していなくてもトゥーリオ、お前だ!
無神論者の人間に天誅が降されるだけの結末だったら観終わった後は確かにスッキリしたかもしれない。しかし、映画史にその名を轟かすルキノ・ヴィスコンティ監督は、そんなありきたりのエンディングに逃げない。この天才監督はバイセクシャルなだけあって女性の気持ち、恐ろしさをよく理解している。そして、典型的なダメ男についてもよく理解している。
生涯にわたり駄作知らずで、名作及び傑作を撮り続けていただけに、本作は彼の監督作品の中で特に優れている方でもないと思うのだが、画面から伝わる映像は流石だと感じさせる。そして、遺作にして彼の作品の中で最もエロいシーンを見せつけられる。奥さんの役のラウラ・アントネッリだが、どこかで見たことがあるな~なんて思っていたら、何と青春エロ映画の『青い体験』、『続・青い体験』に出演していた女優さんだった。確かにあのエロシーンを撮りたいと思えば、この女優を大監督が引っ張り出してきたのも大いに納得できる。
そして、ダメンズを演じるジャンカルロ・ジャンニーニだが、この人の目力が凄い。顔の表情だけでもアカデミー主演男優賞級の演技だと感心させられる。
ルキノ・ヴィスコンティ監督と聞いて心が躍る人、ヨーロッパ映画の名作に触れたい人、『青い体験』を観ている人、金持ちが嫌いな人等に今回はイノセントをお勧め映画として挙げておこう
イノセント ルキーノ・ヴィスコンティ DVD HDマスター | |
ガブリエレ・ダヌンツィオ,スーゾ・チェッキ・ダミーコ,ジョヴァンニ・ベルトルッチ | |
アイ・ヴィ・シー |
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監督は前述したルキノ・ヴィスコンティ。前述したように名作ぞろいですが、個人的なお勧めはアラン・ドロン主演の若者のすべて、女の恐ろしさを思い知らされる夏の嵐、女装、幼児性愛、近親相姦、虐殺等、何でもありの地獄に堕ちた勇者ども、時間に余裕があればルートヴィヒも観て欲しいです。