今の人々にとってホローコスト(ユダヤ人大虐殺)と言っても、ずい分と昔のような気がするだろう。しかし、本作が公開された1964年と言えば多くのユダヤ人にとってホローコストに対する恐怖を拭いされていない時代。今回紹介する映画質屋はユダヤ人大虐殺をテーマにし、ナチスによるホローコストを生き延びた主人公のお話し。家族や仲間が目の前でナチスに殺され、自らは生き残った罪悪感に苛まされながら質屋を営みながら生活している。しかし、彼はあの日以来すっかり感情を無くしてしまったようで訪れるお客さんに対して常にぶっきら棒で接し、事あるごとに脳裏に家族がナチスに殺されたり、ユダヤ人の強制収容所やそこに運ばれるギュウギュウ詰めの列車や、仲間を見殺しにしてしまった出来事などがフラッシュバックされ、あの時の恐怖が頭から離れないでいる。そんな彼が信じれるのはカネだけだったのだが・・・
前半はひたすら陰気臭い質屋のオジサンの様子を見せられるが、後半は少しだけ盛り上がる?ストーリーの紹介を。
ドイツ系ユダヤ人のソル・ナザーマン(ロッド・スタイガー)は郊外の住宅地で亡き妻の妹の家族と一緒に暮らしており、そこからニューヨークの貧民街で黒人のロドリゲス(ブロック・ピーターズ)の支援を受けて質屋を営んでいた。もう一人の店員はラテン系の少年で母親と2人暮らしのヘズス(ハイメ・サンチェス)。彼はソルとは逆によくしゃべり、将来は自分でも店を構える夢を持っていた。そして非常に物知りなソルから色々と学ぼうとしていた。しかしながら、物知りなソルと色々と哲学的な話をしたいために訪れるお客や、彼に好意を寄せる青年福祉局の夫人マリリン(ジェラルディン・フィッツジェラルド)のようなお客さんも訪れたりするのだが、その様な人達に対しても彼は心を決して開こうとしなかった。
そんなある日のこと。質屋の経営は実のところ赤字経営。スポンサーであるロドリゲスが赤字の補填と店の改装のための5,000ドルを部下を通してソルに渡し、しっかりと金庫に保管する。しかし、ソルはヘズスの恋人であり娼婦のメイベル(セルマー・オリヴァー)が店を訪れたことを切っ掛けに、ロドリゲスが売春や賭博に手を染めるこの街の暗黒街のボスであることを知ってしまう。ソルはロドリゲスの所へ自ら乗り込んで行き、お前のカネなんか受け取れないと凄んでみせるのだが・・・
ソルだが常に表情は暗く、殆ど喋らないし、見た目もオッサンそのもの。こんな人に親しく話しかけようとする人が居るわけないだろうと振り返った今も思ってしまう。この映画でソルとロドリゲスが口論しているシーンがあるが、ユダヤ人のことを「私達」と訳されているが、この時に急に猛烈と語り出すソルがユダヤ人の歴史を話してくれるし、そしてなぜユダヤ人は金儲けが上手なのか説明してくれる。この場面は今も巻き戻して見たいと思うぐらい俺的には興味が惹かれた。
不愛想なソルだが、今でもユダヤ人の収容所で見殺しにしてしまった親友に対する負い目、自分だけが生き残ってしまった事に対する懺悔の想いからかもしれないが、親友の妻のテッシー(マルケータ・キンブレム)や一緒に暮らしていて病弱なお父さんの面倒を見続ける等、義理堅い面もある。しかし、そのような面倒が見られるのも誰のお陰なのかをじっくりと考えた時にソルが受けるショックの大きさの度合いが、観ている我々にも少々わかってしまう。今までカネしか信用できなかったソルの信念が脆くも崩れ去るのだが、これは辛い。俺も色々な飲み会でピンハネをされたのだが、そいつからカネを返してもらおうかと考えた時があったりしたが、そのおカネがもしかしたら市民の税金が紛れ込んでいるかもしれないと思うと、返してもらう気が失せた。
すっかり人間もカネも信用できなくなってしまったソルだが、果たして彼の苦悩は晴れることがあるのか?キッツイ結末が待っているが、ほんの一瞬だが彼を癒すような希望の灯が点される。
クインシー・ジョーンズの音楽はニューヨークの雰囲気にばっちりだし、モノクロとセピア調の画面の使い分けは見事だし、ストーリー展開は流石の一言。楽しい気分になりたい時に観る映画ではないが、人間のトラウマ、後悔、悲哀といった心の闇をえぐり出すような作品が好きな人に今回は映画質屋をお勧めに挙げておこう
監督はシドニー・ルメット。社会派作品の名作を多く生み出した巨匠として映画界にその名は燦燦と輝き続ける。彼を有名にした十二人の怒れる男、原爆への恐怖を描いた未知への飛行、テレビ業界の裏側を描いたネットワーク、猛烈な軍隊批判をした丘・・・等などお勧め多数です。
前半はひたすら陰気臭い質屋のオジサンの様子を見せられるが、後半は少しだけ盛り上がる?ストーリーの紹介を。
ドイツ系ユダヤ人のソル・ナザーマン(ロッド・スタイガー)は郊外の住宅地で亡き妻の妹の家族と一緒に暮らしており、そこからニューヨークの貧民街で黒人のロドリゲス(ブロック・ピーターズ)の支援を受けて質屋を営んでいた。もう一人の店員はラテン系の少年で母親と2人暮らしのヘズス(ハイメ・サンチェス)。彼はソルとは逆によくしゃべり、将来は自分でも店を構える夢を持っていた。そして非常に物知りなソルから色々と学ぼうとしていた。しかしながら、物知りなソルと色々と哲学的な話をしたいために訪れるお客や、彼に好意を寄せる青年福祉局の夫人マリリン(ジェラルディン・フィッツジェラルド)のようなお客さんも訪れたりするのだが、その様な人達に対しても彼は心を決して開こうとしなかった。
そんなある日のこと。質屋の経営は実のところ赤字経営。スポンサーであるロドリゲスが赤字の補填と店の改装のための5,000ドルを部下を通してソルに渡し、しっかりと金庫に保管する。しかし、ソルはヘズスの恋人であり娼婦のメイベル(セルマー・オリヴァー)が店を訪れたことを切っ掛けに、ロドリゲスが売春や賭博に手を染めるこの街の暗黒街のボスであることを知ってしまう。ソルはロドリゲスの所へ自ら乗り込んで行き、お前のカネなんか受け取れないと凄んでみせるのだが・・・
ソルだが常に表情は暗く、殆ど喋らないし、見た目もオッサンそのもの。こんな人に親しく話しかけようとする人が居るわけないだろうと振り返った今も思ってしまう。この映画でソルとロドリゲスが口論しているシーンがあるが、ユダヤ人のことを「私達」と訳されているが、この時に急に猛烈と語り出すソルがユダヤ人の歴史を話してくれるし、そしてなぜユダヤ人は金儲けが上手なのか説明してくれる。この場面は今も巻き戻して見たいと思うぐらい俺的には興味が惹かれた。
不愛想なソルだが、今でもユダヤ人の収容所で見殺しにしてしまった親友に対する負い目、自分だけが生き残ってしまった事に対する懺悔の想いからかもしれないが、親友の妻のテッシー(マルケータ・キンブレム)や一緒に暮らしていて病弱なお父さんの面倒を見続ける等、義理堅い面もある。しかし、そのような面倒が見られるのも誰のお陰なのかをじっくりと考えた時にソルが受けるショックの大きさの度合いが、観ている我々にも少々わかってしまう。今までカネしか信用できなかったソルの信念が脆くも崩れ去るのだが、これは辛い。俺も色々な飲み会でピンハネをされたのだが、そいつからカネを返してもらおうかと考えた時があったりしたが、そのおカネがもしかしたら市民の税金が紛れ込んでいるかもしれないと思うと、返してもらう気が失せた。
すっかり人間もカネも信用できなくなってしまったソルだが、果たして彼の苦悩は晴れることがあるのか?キッツイ結末が待っているが、ほんの一瞬だが彼を癒すような希望の灯が点される。
クインシー・ジョーンズの音楽はニューヨークの雰囲気にばっちりだし、モノクロとセピア調の画面の使い分けは見事だし、ストーリー展開は流石の一言。楽しい気分になりたい時に観る映画ではないが、人間のトラウマ、後悔、悲哀といった心の闇をえぐり出すような作品が好きな人に今回は映画質屋をお勧めに挙げておこう
監督はシドニー・ルメット。社会派作品の名作を多く生み出した巨匠として映画界にその名は燦燦と輝き続ける。彼を有名にした十二人の怒れる男、原爆への恐怖を描いた未知への飛行、テレビ業界の裏側を描いたネットワーク、猛烈な軍隊批判をした丘・・・等などお勧め多数です。
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