枇杷の葉なし

枇杷の生育や、葉・花芽・種のことを日々の生活のなかで書いていく。

物語の行方

2010年11月01日 | Weblog
 宮部みゆき氏の『人質カノン』を読んでいくと、最後の編で、2・26事件のことが出てきた。その内容は、いじめに合った同級生を、助けられなかった主人公が、結局は追いかけられて、片足を失う。そして祖父の死。遺品の中から出てきた遺書。それがきっかけになり、抜け殻のようだった主人公は、生きる意味を問い直す。祖父のお葬式にも出なかった自分を恥じて。図書館に母親に連れて行ってもらい、資料を調べる。

 小題は『8月の雪』。その本は、返却期日が来て返す。その後、『蒲生邸事件』を借りた。これはSFのようでもあり、然しながら、2・26事件の、加えて人間の性を書いたような小説。生まれたくて産まれたのではないが、普通でない能力を持ってしまった、人間の哀しみが伝わる。その一字、一章に心が共感する。サラサラと流れる小川のせせらぎのような、それでいて山瀬の谷を流れて来た厳しさを、胸の奥から吐き出すようにさせる。

 体の震えが止まらないのは何故。あの時に聴いた声や、私の体を掴もうとした大勢の手が、再び甦る。日航機の事故の時には、幼い子どもらが、しがみ付くほどの声で叫んでいた。それも絶叫に近い声で。怖いなどというようなものではない。金縛りに遭い、心と体が引き裂かれるような、凄まじい力が作動していた。あれはなんだったのか?厭だ!逝かない!!と叫んだことを、今もはっきり覚えているもの。

 私は、何処から来て、何処に往こうとしているのか?何も見えない、わからない。私が誰なのかも忘れてしまった。この世界に居ることも定まらない。私は、誰に命じられて、今を生かされているのだろうか?何だかとても心許無い。不安と疑いの気持ちで、写るものは何もない。謎解きをしているようで、罠に填まっていくようで、夜の来訪も朝の明けていくさまも、信じ難い思いがする。

 勤務先の空気が俄然変わった。ああ・好い感じがする。澱んでいた黒い霧のような感じが消えた。まだ爽やかとは言い難いが、妙に納得してしまう。流れが渦を巻いているように、光が暗闇の中に吸い込まれていくのだが、新しい光に転じて生まれ変わる。何とも不思議な光景なの。棘のある言葉よりも、柔らかでやさしい言葉がいいね。大きな声より、小さく和やかな響きがいいね。

 クリスマスローズの新芽が出たところ。枇杷葉の木の、葉陰ですくすく成長しています。何ヶ月も咲くので、冬から初夏まで楽しめます。リエさん、書き込みありがとう♥
コメント (2)
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