龍はユノーです。魔法使いに封印されていた力が戻り、娘に由って解き放たれたのです。ユノーは龍の姿を恐がることもなく、心を亘らせる娘に力を授け導こうと想いを深めます。遠い昔には幼い男児一人、この姿を畏れず訊ね来た懐かしさが想われました。琉球国で暴れて、小さな虫に難渋した時は鶏に援けられたな。
ユノーは龍の中でも、人間が困る様子が面白くて暇を玩んでいました。それが天帝の知るところとなり、地上に追放寸前を観音菩薩と弥勒菩薩の嘆願で魔法使いの弟子にさせられたのです。『何事も修行也』ユノーは萎れて暫くいましたが、誰も咎めず諭されることもなく見守ってくれたのはありがたい想いに尽きます。
自らを律し、顧みることを怠らず庭の仕事に励みました。娘が生まれた時、育っていく過程も知っていましたが修行中の身では傍へ近づけません。その娘には、不思議な力がありました。祖母だけが気づいていて、力の均整を保てていました。ところが祖母が亡くなると、その力は暴走して小さな世界をも破壊し始めた。
娘の棲む世界さえ壊れてしまうと、魔法使いは呪縛を解きユノーを遣わせたのです。娘は、走馬灯に魅せられながら、そこに写し出される景色は見覚えのあることばかりでした。娘の過去が未来へと、躊躇なく展開されていきます。「あたし、生まれてきてはいけなかったの?」『なぜ、そう思うのか』「あの人が…」
娘の顔には、絶望と深い哀しみとが見えました。『知ってしまったんだね、時間を止めることもできないし事実を変えられもしないよ』「あの人を忘れないように」ユノーはしたくありませんでしたが、娘を守るために呪文をかけてやりました。心に留め置き、制御するのが精一杯でした。娘は、頷いて膝を突きました。
ユノーは龍の中でも、人間が困る様子が面白くて暇を玩んでいました。それが天帝の知るところとなり、地上に追放寸前を観音菩薩と弥勒菩薩の嘆願で魔法使いの弟子にさせられたのです。『何事も修行也』ユノーは萎れて暫くいましたが、誰も咎めず諭されることもなく見守ってくれたのはありがたい想いに尽きます。
自らを律し、顧みることを怠らず庭の仕事に励みました。娘が生まれた時、育っていく過程も知っていましたが修行中の身では傍へ近づけません。その娘には、不思議な力がありました。祖母だけが気づいていて、力の均整を保てていました。ところが祖母が亡くなると、その力は暴走して小さな世界をも破壊し始めた。
娘の棲む世界さえ壊れてしまうと、魔法使いは呪縛を解きユノーを遣わせたのです。娘は、走馬灯に魅せられながら、そこに写し出される景色は見覚えのあることばかりでした。娘の過去が未来へと、躊躇なく展開されていきます。「あたし、生まれてきてはいけなかったの?」『なぜ、そう思うのか』「あの人が…」
娘の顔には、絶望と深い哀しみとが見えました。『知ってしまったんだね、時間を止めることもできないし事実を変えられもしないよ』「あの人を忘れないように」ユノーはしたくありませんでしたが、娘を守るために呪文をかけてやりました。心に留め置き、制御するのが精一杯でした。娘は、頷いて膝を突きました。