ときめか・ナイト

　ひろ子さんには、最近恋人ができたんですの。それもイケメン青年、まあ・好みの問題でもあるかと思える節も。だってねぇ、飼い猫のケレスが何気に『俺の方がイケてる』ってさ。ひろ子さんの好みを疑ったあなた、問題は顔じゃありません。青年は、ひろ子さんにとってやさしいから。同居して？無論オムロンです。

　イケメン青年に気づいたのは、夜半のことでしたから思わず悲鳴をあげそうになりました。するとね青年は、ひろ子さんの唇に人差し指をあてて「し・ず・か・に」真ん丸目の茫然となったひろ子さんを抱きしめました。ふわっと冷気がしたのまでは覚えていますが、気づいたら布団の上で朝の陽が射していましたのよ。

　ああ・何という失態でしょう、イケメン青年と一夜を共に等読者以外には話せません。えっ？そこんところは、ひろ子さんの勘違いなんですが咄嗟には思えたんです。青年は朝になると何故か、正体不明になり向こうまで透けて見えました。お分かりかしらん？そうなのよ、イケメン青年は想いがこの世に留まった霊魂。

　ひろ子さんの家に、迷い込んだのが運の始まりでしてケレスにとっては迷惑千万となったの。魂だけですから、食べ物は一切口にしませんがケレスのチュールをかっぱらうんです。ケレスはひろ子さんが封を切らないと、じっと待っていますが青年はどうやるのか開けない儘。年金暮らしのひろ子さん、困りましたわね。

　財政計画の立て直しです、何を倹約して節約も兼ねて回そうか？工夫も知恵もありません。イケメン青年のお陰で、冷房を点けなくとも涼しいのですが湿気も多い。ひろ子さん、自分の食品を減らす算段にして1週間に1本と決めました。其処の詳しい事情は省きますが、イケメン青年も理解はしてくれたようで安堵です。