娘は、ユノーについて薬草の煎じ方や処方を学びました。煎じた液を冷まそうとして、うっかり火傷をした時は青い葉を当てていれば傷が癒える。小さな擂木と鉢で生葉を砕き貼るのも、覚えました。痒みや腫れには、ユノーが浸しておくことでエキスができます。娘は、ユノーのやり方を丁寧に繰り返し学びます。
幾年が流れたでしょうか、龍の庭は永遠の時間が保たれていますので娘の姿は変わりません。けれども下界では、何十年も或いは百年の月日が廻っていました。ユノーは娘を地上に下ろそうとして、一人の若者の許にやりました。娘は若者と仲睦まじく暮らしていましたが、薬草のことばかりで距離が生じたのです。
若者は或る日、買い物に行くと出かけて帰ってきませんでした。町で見つけた美しい女人に、一目で虜になったのです。娘の心は、粉々に砕け散りました。茫然と佇む娘を視て、ユノーは雷を下そうとして思い留まりました。ユノーを見上げる娘は静かに首を振り、清んだ瞳で「あの人を傷つけないで」見つめます。
ユノーには直ぐと判りました、娘が若者をどんなに大切に想っているかが。泣くことさえ忘れ、若者のことを愛せるのか?嫉妬もしないで。ユノーは娘を掌に包み込み『時の必要なだけを与えてやろう』娘は頷くと、ユノーの掌に丸く身体を埋めます。哀しみや裏切りを覚え、幾年の時を超えて廻り遇うが佳かろう。
娘は新しい命になって、地上へと降りて行きました。ある時には短く、とある時代には長寿を授かりながら刻の狭間を行き来するのです。娘の心の底には、誰にも気づかれることなく若者が棲んでいました。ユノーはその想いに触れてから、消し去るには忍びないと留め置いたのです。娘さえ忘れる時が経とうとも。
幾年が流れたでしょうか、龍の庭は永遠の時間が保たれていますので娘の姿は変わりません。けれども下界では、何十年も或いは百年の月日が廻っていました。ユノーは娘を地上に下ろそうとして、一人の若者の許にやりました。娘は若者と仲睦まじく暮らしていましたが、薬草のことばかりで距離が生じたのです。
若者は或る日、買い物に行くと出かけて帰ってきませんでした。町で見つけた美しい女人に、一目で虜になったのです。娘の心は、粉々に砕け散りました。茫然と佇む娘を視て、ユノーは雷を下そうとして思い留まりました。ユノーを見上げる娘は静かに首を振り、清んだ瞳で「あの人を傷つけないで」見つめます。
ユノーには直ぐと判りました、娘が若者をどんなに大切に想っているかが。泣くことさえ忘れ、若者のことを愛せるのか?嫉妬もしないで。ユノーは娘を掌に包み込み『時の必要なだけを与えてやろう』娘は頷くと、ユノーの掌に丸く身体を埋めます。哀しみや裏切りを覚え、幾年の時を超えて廻り遇うが佳かろう。
娘は新しい命になって、地上へと降りて行きました。ある時には短く、とある時代には長寿を授かりながら刻の狭間を行き来するのです。娘の心の底には、誰にも気づかれることなく若者が棲んでいました。ユノーはその想いに触れてから、消し去るには忍びないと留め置いたのです。娘さえ忘れる時が経とうとも。