枇杷の葉なし

枇杷の生育や、葉・花芽・種のことを日々の生活のなかで書いていく。

龍の庭・13

2023年07月20日 | Weblog
 ユノーは、娘が想い続けている面影に気づきました。遠い記憶の中に閉じ込めていて、思い出すこともしない姿をです。娘に慕われ約束していたのを他の者に、心変わりして。娘との約束には、幾度生まれ変わっても誓いは守られると。ユノーはそのことでも、天帝から過ちを説かれていたのに封じ込んでいたのだ。

 娘は、ユノーの想いには気づきません。時空を超える度に、捜している者に遇えないのは至らなさと励んでいます。訓えには忠実で、疑うことなど微塵もなくユノーを信じ切っています。それに龍の姿なのはどこから見ても変わらず、『娘よ、我が怖く無いのか』「あなたを恐がるなら、修行ができませぬ」微笑む。

 ユノーは、時が来て赦されたなら打ち明けようと決めました。来る日のすべてが学びなのも、娘の心には薬草への気持で満たされていくのでした。娘の身体中に魔力が宿り、呪文を唱えると共に薬草の効力が増し異世界も行き来ができるようになりました。ユノーに訓えることは見つからず、娘は庭を出て独立です。

 その日は、娘への祝福に天帝も魔法使いもやって来ました。龍の庭が華やぎ、娘は天帝から贈られた衣装に身を包んで微笑んでいます。その衣装は、紫や青の彩が重なり合い光の加減で濃くなったり薄くと波打ちます。ユノーは驚きのあまりその場を動くことができず、龍の姿だった体が音立てて壊れていきました。

 ユノーの姿を見た娘は、瞬きも忘れて瞳を瞠っています。ユノーは、真の姿となり深い想いに捉われました。赦されたことで後戻りはできそうにありませんが、言葉が何も出てこない。娘はユノーを見つめ「あなたなの、ユノー」と呟きました。いつしか天帝と魔法使いの姿は見えず、二人は手に触れ想いを渉せた。
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