枇杷の葉なし

枇杷の生育や、葉・花芽・種のことを日々の生活のなかで書いていく。

龍の庭・5

2023年07月08日 | Weblog
 ユノーはその朝も、薄紫に立ち込める中を起き岩清水で顔を洗い背中の羽を震わせます。忍び足で庭園に入ると、真っ先に莉羅の花がお辞儀をして『オーロラが目覚めます』ユノーは百年の年月を懐かしむ眼差しになり『魔力を侮らず、心の話し合いを祈ろう』送り出しました。お互い憎むのは、心の消失につながるよ。

 莉羅は、誰かを憎んだり妬む気持ちがありません。仲裁役には適任で、きっと寂しいだけの魔女の心を温めてくれるでしょう。それにあの声には凍った心の中を、溶かしてしまう秘薬が隠されています。どこかで莉羅の歌声を耳にしたら、お母さんに抱かれた産まれた時に還るのです。ユノーは、莉羅に信頼を籠めます。

 庭の中ほどに来た時、萎れてしまった勿忘草を見つけました。ユノーは、そうっと掌に乗せてエネルギーを分けてやりました。白に薄桃も清んだ青さえ、一体どうしたのでしょう。勿忘草が話すのは、少女のことです。初恋の人に置き去りにされたと言うのに、ユノーはにっこり淡い気持ちは新しい恋への出発になるよ。

 ユノーの心が分った勿忘草たちは、たちまちしゃんとして『信じましょう・励ましを贈りるわ・嘆きを去らせて』そこにはよろこびが広がりました。ユノーには少女の明るい気持ちが視え、背筋を伸ばしての先に待つ人が。大切なのは、悲しむだけではありません。流されず・弛まずでありながらも、未知をすすむこと。

 ユノーは、その日も庭を心籠めて見回りました。龍の庭には、たくさんの植物が植わり命を育んでいます。名もないものも、派手さと豪華さのもですが其々に諍うことはしません。高い樹も低く咲く木もあり、彩も微妙に異なっていて何一つ同じではないのです。ユノーは比べたりをせず、溢れる想いを行き渡らせます。
コメント (2)
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