シー・シェパードのおかげでまたまた脚光を浴びた日本の捕鯨。
鯨は日本古来の食文化だなんだといっても、実のところあんまり腑に落ちなかった。
というか、「鯨、うまいか?」と思っていた。 外国からあんな頭のいい動物を食うなんて野蛮だと言われたら腹も立つし、意固地に守ってやらあと思うけど、これまで一度たりとも「旨い、恐れ入りました!」と思った経験がないのだから、反対も賛成も議論自体に力など入りようがなかった。
というわけで、今回ははたして、心底に響くだろうか。
かぼちゃ豆腐 だし醤油
造り4点盛り 赤身(ミンクの生・宮城産)、鹿の子、尾の身、本皮(皮下脂肪)、さえずり(舌)
生姜醤油で。ふむふむ…という感じ。生姜を使うということは身体を冷やすのかな。でもま、大騒ぎするほどのことはない。マグロやらトロに近い。
尾羽毛 酢味噌
映画「居酒屋ゆうれい」で、尾羽毛出てたなぁ。
子供の頃は、皮くじらやころはキライだった。あの独特のクセが。
大人になってからは、酒場でもあればちょっと食べてみたい。
百尋 (小腸) 湯引き 酢味噌
なるほどホルモンしてる。さすがは最大の哺乳類だ。
ひと一人が両腕を左右に広げた寸法が一尋(ひとひろ)。
その百人分という長さの小腸。
白髪三千丈としても、相当な長さなのだろう。
竜田揚げ
給食で食べた竜田揚げ。好きな人もいるようだけど、いい思い出ないなぁ。
なんか昔のは頑固なスジがあって。いつまでも噛み続けた嫌な記憶がある。
商標登録 はりしゃぶ鍋
鹿の子は冷凍にしてあるのを、主人が手切りにして出す。
しばらく空気に触れると、鮮やかに発色し始める。
急がなければ脂が室温で溶けだす。
鹿の子ではりはり(水菜)を巻いて、鍋へ。サービスのお姐さんがやってくれる。
だしは秘伝とかいうが、ベースはかつおと昆布。
それにほのかな鯨の香りとうまみ。鯨のアラなどを使っているのか。
それを上品なスープにするために、厭味やクセを抜く技を凝らしているとみた。
生姜やコショーは入っている。
これはイケる。残したくないだしだ。
このだしに合うように、水菜も細く柔らかいものを求めているという。
悪いが、鯨も旨いには旨いが、圧倒的にだしの方が旨い。
大阪風の細うどん 大阪のうどんって元来細いものだったそうだ。
このだし、旨いので最後まで残したくないなぁ・・・
シメはぞうすい え~っ、鯨の雑炊なんてとお思いか?
しかし、くえ・てっちりと並び、日本三大ぞうすいと呼ぶお客も。
仕上げに主人がわさびを入れた・・・結構な量が入った。
しかし、これがひとつも辛くなく、なんともいいアクセントになる。
なるほど鯨、端倪すべからざるものがある。
ただ、経験値のいる食べ物だけに、捕鯨反対国の外人に食わせたところで理解できぬ。「旨い」とはリップサービスで、話題にはなっても、捕鯨推進賛成に転じる人はいるまい。
正直申すと、あんまり自由化などになって鯨肉が世に出回ると、こうした専門店が生きていけなくなる逆説もある。
某くじら専門店に行った際、お腹いっぱいになった時に店内に鯨のニオイが漂っていて、やな感じがしたが、今回はそんなニオイもなく。予想以上に旨かった。自分のためぢゃなく、知らない人を連れて行って驚かせたいなという気はする。
店は地下鉄肥後橋から西南に下がった路地にある。
食わず嫌い言ってないで、一度は鯨食べて来てもらいたい。安くはないけどね。やはり食べてからでないと鯨問題、いつまでも対岸の問題なのだ。
ただね、ここまで大衆の食卓を離れてしまったものを、食文化だからと主張するのは無理があるような気もしたり・・・食べることを国家間の問題にするとどうしたって硬直してしまうのだ。
むらさき 大阪市西区江戸堀1