マーベラスS

King Of Western-Swing!!
歌と食と酒、それに声のページ。

大阪スタンダード

2011-12-20 13:24:18 | Weblog




しっかりと甘く煮含めた油あげ。焼きどおしのかまぼこ
葱は昔ながらの細かい斜め切り。柚子が一かけ
これぞ大阪名物、きつねうどん





大阪船場にある「うさみ亭マツバヤ」。
先代の時代までは「松葉家本舗」という立派な名前があったのに、
息子さんたちに内紛か何かが生じ、今までの名前が名乗れなくなったという、
失礼だが冴えないことになってしまった

柔らかい船場ことばを操った、先代宇佐美辰一さんは職人の鏡みたいな人で、
麺とだし、具にとどまらず、丼も特注で焼かせ、着るものについても一家言あった。
塩のふり方一つで、塩味の立ち方が変わると目の前でやってくれ、マジックのようだった。



さて、きつねうどんにも食べ方というものがある。
まず、丼を正しく手に持ってもらいたい。

まず、全体を見回して、無駄のない調和を目で味わっていただきたい
そして香りだ。だしの豊かな香り、だが決して出過ぎることはない。
次にきつねを何度か箸で押さえるようにして、だしの中におあげさんの甘味とコクを
浸み出させて、だしをいただこう。

大阪伝来のだし。あっさりとしながら、まったりとした味わい。
これが「大阪の味です」と先代は言ったものだ。




そして麺へ行く。讃岐系のような力強い麺ではなく、柔らかく優しいのが信条。
讃岐に目覚めた麺食いにはたよりない、と感じることだろう。
こちらでは手打ちではなく、手もみうどんという。

麺をすすり、おあげさんを齧ると甘い煮汁がしみ出す。
違う食感が欲しくなれば、かまぼこがいいアクセントになる。
こいつも鈴廣や釜せいの分厚いかまぼこではだめで、
関西風のかまぼこで、薄手で一口半ぐらいでなくなるのがよろし。

美味いが、ガーン!な、なんだこれは!!とくるような漫画的な美味さではない。
えっ…ふつうやん…という美味さ。





大いなるスタンダード。どギツイことのない良心のうどん。きつねうどんはこの店から始まったのだ。

余りに古い話なのでもしかしたら違うかもしれないという思いもあったのか、
強硬に元祖を主張なさることはしなかった。
大阪寿司の老舗「たこ竹」は昔、うどん屋もされていたとかで、
初代はそこの出身。うどんを出す時に、小さな竹かごにきつねの甘煮を
付けて出したそうな。客の方で、それをうどんに浮かべて食べ始めたのが最初だという。

でも、しみじみ、きつねうどんとはよくできた食べ物である。
無駄というものがない。抜群のコンビネーションで、この他に何が入ってもバランスが崩れる。





丼もこれぐらいのサイズ。つまりはこれ一品で腹いっぱいにするのではない、
ちょっとした虫養い。そこがいい。 今日びの丼は熱くて持てない場合も多い。
木製のレンゲでも付いて来た日にゃ、犬食いするしかないではないか。
若いモンに言っておこう。丼は手に持った方がかっこよく見える。 だしは丼から直にすすれ。



店のたたずまいは昔と同じ。出前の自転車が並んでいるのも昔風。
名店なのだが、ただのうどん屋でござい…という立ち位置は先代から変わっていない。
めったに通らないのだが、きつねうどん抜きにこの店の前を通り過ぎることができない。

 

コメント (2)
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