水曜日、カトちゃんが発熱してダウンした。
「あれは、水曜日だったかな・・・休みの筈のカト先輩が仕事しに来たんですよ!僕、ホントにびっくりしました!今朝は来てませんでした」
今朝、康永君の話を聞いてほっとした。「今日は、何が何でもゆっくり休むように!」と念を押していたし、まさかとは思うが、仕事熱心なカトちゃんのこと。病気を押して様子を見に来るのではないかと、一抹の不安があったが、康永君の話を聞いて一安心。今日は、おとなしく寝てるよね。
「カト君、熱があるんだって?もう、ほんと、みんなに心配させてから!」
冷凍食品を出した後、バックへ下がりながら矢木さんが言った。すると、カトちゃんは一言、
「落とし前・・・」
「これ、裏の業界用語よ!」
お嬢ちゃんからヤクザの世界のお嬢へと華麗なる変身を遂げた矢木さんが笑った。
休日の今日は、おとなしく寝ていたらしいカトちゃん。
(メールを信用します。隠れてお店の様子を見に来たりしてないよね?)
明日には又、再び元気な姿を見せてくれることでしょう。
「店長を訪ねて三千里・・・」
そう言いながらバックへやってきたのは康永君。
さっきから店長を探し回っているらしいが、見つからないそうだ。
「呼び出せばいいじゃない!」
末永さんは、そういうと、休憩中の精肉の江原チーフを呼びに言った。
「すみませ~ん。店内放送、お願いできますか?」
「はい、いいですよ」
その後、店長がバックへ現れた所は目撃していないが、パソコンの横の机の上に新規の商品が置かれているのが目に入った。
これは、確か、康永君が先ほどから手に持ち、店長を訪ねて三千里の旅のお供をしたアイテムだ。その商品には、大きな字で何か書かれた紙が貼ってある。なになに・・・?
「あ い て む な し」
「・・・?!?!相手・・・虚し??なんじゃ、こりゃ?」
意味不明な「ひらがな」の羅列をもう一度、読み直した。
「あいてむ・・・なし? ああ、分かった!アイテム無し!ね!」
私、ほんの数日前に康永君には売価チェックしてから店頭に出さないと、アイテム無しの場合もあるから・・・と言ったのを思い出し、更に可笑しくなった。
まさか、こんなに早く、その『あいてむなし』と康永君の出会いがあるなんて!
「大丈夫だと思う・・・」
と言いながら、まさか、そのまま、康永君が、これを出したんじゃ・・・?この商品、飲料っぽいけど。
「でも、どうしてカタカナでアイテムって書かず、ひらがなで書いたんでしょうかね!?あ・い・て・む・・・って、最初、何かと思いましたよ!」
「誰ね、それ、書いたのは?」
と、矢木さんが聞くので、
「康永君です、きゃはははっ~~」
と、私は笑いながら答えた。康永君、まさか、カタカナが書けないなんて事は、ないでしょうに。
「純日本人なんよ!」
「ぎゃははははっ~~~」
私と矢木さんの笑い声に誘われて?発熱中のカトちゃんも、『あいてむなし』を覗きに来た。
あ・い・て・む・な・し!
紙が貼られた商品は、店長の登場を待ちわびて、ほんと、虚しそうに横たわっていた・・・。
康永君、お笑い道場9段の矢木先生に、
「康永君には、天然の面白さがある!」
と、お墨付きを貰いましたね、おめでとう!
今後も私達を笑わせてくれるよう精進して下さいね~。