今、世の中はゴールデンウィークの真っ只中。
とあるスーパーの面々も、世の流行に遅れまいと、この上なくゴールデンな環境の中にいる。
私が補充をしていると、60前後の男性のお客様に声を掛けられた。
「ぬかは、何処ね?」
「はい、こちらです。ご案内します」
商品出しに超忙しい私だったが、手を止め、お客様を「ぬか」売り場までご案内した。カップラーメン売り場からは、遠く離れているが、他のお客様とぶつからないようにしつつ、相手の歩行に合わせながら、ご案内。「ぬか」の前にようやく着いた。
「こちらです」
99%のお客様は、ここで「ありがとうございます」という。
80%のお客様は、更に、「お忙しいところ、すみません」とも言う。
50%のお客様は、「あちこち探したけれど、見つからなくて、本当に助かりました。いつもありがとね、お嬢さんetc」
などなど、更に感謝の言葉を述べて下さるか、世間話をする方も30%。
そして、この日に御案内したお客様は・・・。
ごく稀に、わずか1%の確率でしか遭遇しない、極めて珍しい例のお客様。
特に「ありがとう」という言葉を期待していた訳ではないが、無言で「ぬか」の前に立ったままのお客様を残し、立ち去ろうかと思ったその時である。
「この ぬか、味が付いてるんね?」
と、ぶっきら棒に聞いた。
「いいえ、付いていません」
お客様は「ぬか」をわし掴みすると、ひっくり返し、裏の説明書きに目を通した。
「何処にも、味が付いてない!とは書いてないやないか!」
漬ければ味が付く「ぬか」は、その下段だ。
多少、むっとしながらも、たまたま通りかかった岸辺さんに、私は声を掛けた。
「ねえ、岸辺さん。これ、味付きじゃないですよね!」
すると、お客は大声で、
「客に聞いて、どうするかあ~~~!」
と、叫んだ。
更に、ムッとした私は、
「お客じゃありません、スタッフですっ!!」
と、言い返してしまった・・・。
岸辺さんは、下段の「ぬか」を指し、
「味が付くのは、こちらですね」
と、答えた。ほらあ、そうじゃない!
私は「ぬか」を何に使うのか、聞いてみたら、「たけのこ」だという。
最近、竹の子掘りの後、「ぬか」を使用するのだと知った。私の父も毎年、この時期、竹の子掘りに友人達と出かけ、竹の子を持ち帰ってくるが、母は「ぬか」など使わない。米のとぎ汁を使うので、それが普通だと思っていた。私の祖母も、そうしていたし・・・。矢木さんも、そうするという。
しかし、4月中旬頃から「ぬか」が急に売れ始めた。「竹の子掘り」が理由らしい。このお客も、そうだろうと思ったので、安心させるつもりでこういった。
「竹の子に使うから・・・と、みなさん、この『ぬか』を買って行かれますよ」
すると、何と、そのお客は、「ぬか」のパッケージの絵を差して言うではないか!
「なすびとキュウリの絵しか、描いてないやないか!!何処に竹の子の絵があるか!」
先ほどは、味付けではありませんという説明が書いてない!と言い、今度は、竹の子の絵が描いてない!という。だから、私の言うことは信用出来ないのだとか。
これを聞いた岸辺さん、
「竹の子専用のぬか・・・は、ありませんからねえ」
店員に質問しておきながら、自分で「違う!」というのであれば、最初から聞かなければいいものを・・・。そう思っていると、お客様、岸辺さんには何も言わず、私に向き直り、
「勉強不足じゃ!」
「・・・カツン」
「そう・・・ですか。では、今から、メーカーに電話で問い合わせて確認します!」
私がこういうと、ちょっと待て!と、爺は言い、それはするなと合図したのち、結局は「ぬか」を手にし、私に背を向け、歩き出した。数歩、進んだ所で、再び振り返り、最後に私を睨み、とどめの一言。
「勉強不足じゃ!」
「・・・・・???」
突っかかるのが目的としか、思えないのですが・・・。
問題は、「私の勉強不足」もさることながら、「お宅の人間不信」にあるのではないですか?よっぽど人を信頼できない裏切り行為ばかりが続いた人生だったのか、それとも・・・。
私、この人に、以前、何かしたっけ???
「貴方が安い!というなら、信用出来る!買おう!」
・・・と数え切れないほどの日本人観光客に毎日言われていたシドニー時代と比べると、えらい差だわ。
一体、今の私の何がイケナイのかしら・・・!?!?
(このブログ、シドニー時代の友人、知人も読んでくれてるので、気が付くことがあったら、後でメールしてネ)
こうして、私の黄金の週の初日は、「ぬか」騒動で幕が開いた・・・。とほほ・・・である。(泣)
その翌日。
「ビルサービスさん、ビルサービスさん、米売り場まで!」
先ほどから何度も流れる桃木車副店長の店内放送。
バックでバッタリ会った桃木副店長は、ほうきと ちりとりを急いで手にし、困ったように私に言った。
「店内放送で呼んでも、ビルサービスさん、(掃除の人)来てくれない」
しばらくすると、今度は、
「グロッサリー、カト君、米売り場まで!」
お米の袋にねずみが噛み付いたのかな。袋に穴があいて、お米をばら撒いた・・・とか!?
お米売り場で事件勃発のようだが、私も忙しい。
それに、前日の「ぬか騒動」が尾を引き、元気がなかった私であった・・・。
その後、たまたま、「ふりかけ」と、「きざみのり」の補充をする為、米売り場の方角へ向かった。
「ふりかけ」の横は、「米売り場」だ。
その向かい側は、岸辺さん担当の「カン詰め売り場」。
「ふりかけ」の補充をしていると、岸辺さんが私に話しかけてきた。
「桃木副店長、頭から「ぬか」だらけになってるよ!お米に付いている「ぬか」を竹の子に使うから、タダでくれって言う、訳 分からん客が来たらしいよ!」
なぬ?「ぬか」・・・じゃと??
「ぬか」と聞いただけで、思わず身震い。
ふと、米売り場の方へ目を向けると、そこには、桃木車副店長とカト君が疲れ果てたように立っている。
岸辺さん曰く、
全身、ぬかだらけ。。。(涙)
「ちゃんと、鈴木ちゃんの所に「ぬか」は売ってるんだから、ケチらずに、買えばいいのにねえ。ああいう客に限ってお金、持ってるんよ!ほんのちょっとのことに・・・ねえ。かわいそうに、桃木副店長、頭から「ぬか」をかぶって・・・」
「ぬか」って・・・「黄金色」なんですよね。
ゴールデンな週に、ふさわしい色してる。
私の心はゴールデン・ハート・ブレイク。
桃木車副店長は、全身ゴールデン。
ついでに岸辺さんとカトちゃんも、ゴールデンにお付き合い・・・。(泣)
これぞ、とある街のとあるスーパーの黄金の週。
鈴木鈴子と、さくら通り店の面々は・・・。
その名のとおり、
世間並みか、それ以上にGWにふさわしい週の真っ只中にいた。
黄金の週は、ぬか漬けウィーク。
さあ、君も、とあるスーパーの中心で叫ぼう!
「ぬかなんて、嫌いだあ~~~」
おしまい