ワシントン大学と東京大学などの共同プロジェクト「2010年の世界の疾病負担研究」が世界21地域と187か国の死亡と障害の原因を性・年齢・階級別に分析した結果、過去20年間第1位を維持している日本人の健康寿命が、偏った食習慣、心の健康、喫煙、高齢化を放置するといずれトップから陥落することが明らかになったそうです(QLife Pro)。また、長寿でも病気や障害に苦しむ年数が増大していることも明らかになったそうです。日本人の健康上の負担は半分以上がわずか16の原因に限定されるそうです。最大の脅威は脳卒中で腰痛、虚血性心疾患、下気道感染症、その他の筋骨格疾患が続くそうです。死因となる疾病、傷害のタイプに変化がある。三大死因の脳卒中、下気道感染症、虚血性心疾患は従来どおりだそうですが、肺がん、結腸直腸がん、慢性閉塞性肺疾患は順位を上げ、胃がんが順位を下げ、慢性腎疾患がランクインしたそうです。自殺は1990年以降増加してトップ10内で、15~49歳の死亡の約27%、若者の死因第1位に。うつ病、不安神経症など関連する危険因子も増加傾向にあるそうです。日本人は平均寿命、健康寿命とも世界で最も高いことはよく知られています。ある意味、日本人の自慢でもありますね。一方で健康に生きることができる年齢は女性が75.5年(平均寿命は85.9歳)、男性が70.6年(平均寿命は79.3歳)だそうです。長く生きることで下気道感染症、変形性関節症、うつ病、その他の筋骨格障害を発症するそうです。なかでもアルツハイマー病は障害の原因で第8位(1990年には23位)と深刻化し、失われた健康的生存年数は他よりはるかに大きいそうです。伝統的な日本食は塩分が多いそうで、果物・ナッツ・全粒穀物などの重要な要素を欠く上に欧米の不健康な食習慣の影響で、いまや栄養が偏った食事になっているそうです。同様に高血圧、喫煙、運動不足、肥満も課題の残る生活習慣であるとも指摘しています。さて、実際のところはどうなるでしょうか。
先日、非常に興味深い研究成果が発表されていました(QLife Pro)。サルの損傷した脊髄を人工的につなぐ人工神経接続技術を開発したというものです。脊髄損傷したサルは、その手法で大脳皮質からの電気信号で麻痺した手を自在に動かすまでに回復したというのです。脊髄が損傷すると脳と手足をつなぐ神経の経路が途絶え、脳からの電気信号が届かないために手足が動かせなくなります。脊髄損傷では脊髄の神経経路が途絶えているだけで、機能の残る脊髄に大脳皮質からの電気信号を伝えることができれば手を健常に動かせると考え、脊髄の損傷部位をバイパスし、大脳皮質の信号を脊髄の運動神経に人工的につなげて送る「人工神経接続」の技術を開発したそうです。まず脳の局所電位を記録して、そこから腕の運動に関わる電気信号を抽出。信号にあわせて損傷部位より下部の脊髄に刺激を与えたところ、刺激にあわせて腕の筋肉が収縮したというのです。さらに手を動かしてレバーを押すことができたとも。人工神経接続の電子回路をオフにすると手は動かなかったそうです。従来のロボットアームによる機械の手(義手)を自分の手の代わりにするのと異なり、今回の技術は麻痺した手を自分の意思で制御できるまでの回復に成功している点が新しいです。素晴らしい技術であると思います。
性決定を担う性染色体が男性はXYに対して女性はXXとX染色体が2本あることはよく知られています。これでは読み取られる遺伝子情報が多くなり、どちらか1本が休止状態でなければ生存できないそうです。そのため女性の細胞には小さく折りたたまれて凝縮した不活性のX染色体、すなわち「バー小体」が観察されるそうです。そして今回、バー小体を形成するタンパク質HBiX1を発見したそうです(QLife Pro)。バー小体は60年以上前に報告されているそうですが、具体的な構造や働きは解明されていなかったそうです。ヘテロクロマチンという構造をとり、タンパク質HP1が構成するそうです。研究では、HP1に結合するタンパク質の種類を質量分析器や遺伝情報解析装置で特定を試み、その結果、不活性X染色体にタンパク質HBiX1が多く存在することがわかったというものです。HBiX1が他のタンパク質と連携してヘテロクロマチン構造を形成することやこれらのタンパク質の働きを阻止するとヘテロクロマチン構造自体が消滅することも明らかになったそうです。X染色体以外の染色体にもHBiX1などが存在するそうですが、これは染色体上のさまざまな領域の凝縮に関わっていることを示唆するものだそうです。凝縮した染色体構造は発生・分化に関わる遺伝情報の読み取りを抑制して細胞間の違いを生む遺伝子の発現パターンを規定すると考えられるそうです。つまり凝縮した染色体構造が正しく作られないと疾患の原因になる可能性があり、実際にある種の筋ジストロフィーやがんの発症に関与するという報告もあるそうです。人為的にタンパク質を操作して細胞の性質を改変する方法に発展すると考えられ、すでにiPS細胞作成技術、染色体トリソミーによる障害の緩和、筋ジストロフィー治療への応用が期待されているそうです。すごい発見ですね。
これまでの研究で、加工肉や赤身肉を頻繁に、大量に消費すると心血管疾患のリスクが上昇することが示唆されています。でも、その詳しいメカニズムは不明でした。今回、赤身の肉に比較的豊富に含まれるL-カルニチンがその原因であることが明らかになったそうです(QLife Pro)。カルニチンは、生体の脂質代謝に関与するビタミン様物質で、アミノ酸から生合成される誘導体。脂肪燃焼が促進されることから、ダイエット分野や栄養補助食品として利用されているそうです。今回の研究では、消化管内にいる特定のバクテリアがL-カルニチンをTMAO(トリメチルアミンN-オキシド)と呼ばれる別の代謝物質に変え、これがアテローム性動脈硬化症を促進させることを発見したというのです。被験者は約180mgのL-カルニチンが含まれるサーロインステーキと250mgのL-カルニチンカプセルを摂取したところ、その後の血液検査で6人中5人が血液中のTMAO濃度が大幅に上昇したそうです。変化のなかった被験者は、ビーガン(絶対菜食主義者)だったとも。そこで、ベジタリアン・ビーガン23人と肉食者51人を調査したところ、同様の結果が得られたそうです。さらに、心臓病患者約2500人を調査し、カルニチン血中濃度と冠動脈疾患との間に関連性を見出したそうです。血液中のTMAO濃度が高ければ高いほど、3年以内に心血管疾患や心臓発作、脳卒中を発症したり、死亡したりする可能性が高いことが明らかになったそうです。サプリメントの広告では、カルニチンが持久力の向上や筋肉痛の軽減に役立ち、また、ダイエットのサポートとして脂肪を減少させ、体重を減らすとうたっているそうです。しかし、これまで長期的にカルニチンの安全性を調べた研究はほとんどないそうです。一方で、魚には多くのTMAOが含まれており、定期的に魚を食べることは、心臓発作や脳卒中を含む心血管疾患のリスクを大きく下げると言われています。したがって、心血管疾患のリスクにはまだまだ未解明な謎が残されています。
先日、体内時計に制御される分子C/EBPαがマウスの肝臓で発見され、体内時計が肝臓のグリコーゲン貯蔵や脂質代謝制御に関連する可能性があることが発表されました(QLife Pro)。メタボリックシンドロームは食生活の西洋化で摂取カロリーが増加したことが原因と考えられていますが、最近の研究でそれだけでは説明がつかないとわかってきています。特に、生活の夜型化による生活リズムの乱れが新たな原因として注目されています。今回の研究では、肝臓で糖・脂質代謝の中核的な役割を担う鍵分子C/EBPαが存在することが明らかとなり、さらにこのC/EBPαの遺伝子配列を調べると、時計遺伝子がC/EBPαの発現を制御していることが明らかになったそうです。したがって、時計遺伝子が正常に機能すればC/EBPαも正常に機能するというのです。体内時計の制御には日光が関係しており、規則正しい生活なら体内時計は正常なリズムを保ち、そして肝臓などの臓器も正常に働くというのです。しかし、体内時計が狂うとコントロールされている代謝遺伝子も正常に機能しなくなってしまうそうです。夜間はエネルギーを蓄積するように代謝が働くため、夜間に食事をとると、体内時計の変調が代謝に影響して太りやすくなるとなります。つまりC/EBPαが正常に機能しないと、メタボリックシンドロームや肝硬変などの影響を与えると考えられるというのです。
大豆製品は、健康に良い働きをすることが多く、これまでも様々な効果がうたわれてきています。特に、女性の健康と大豆製品の摂取には、様々な関連があり、例えば更年期の女性が、大豆製品を摂ることで、心臓血管系の病気を防止する効果が高い、骨粗しょう症の進行を防ぐなどのが報告されているそうです(QLife Pro)。そして、女性の肺がんの進行を遅らせることができるのではないかということが発表されたそうです(QLife Pro)。444人の肺がんの診断を受けている中国人女性を対象に、大豆製品の摂取と、がんの進行の度合いを13年間にわたって観察したところ、平均的な大豆摂取量は16グラムだったそうです。大豆製品を21-31グラムと多く摂っている人の方が、13年後に死亡の転帰を摂っている割合が7-8%低いことが分かったというのです。そして、大豆製品の摂取が1日8グラム以下の人たちでは、13年後の死亡率が、16グラム摂っていた女性に対して40%も高くなっていたそうです。
痛みが不快ですね。でも、なぜ痛みが不快感を起こすのか、そのメカニズムは明らかではありませんでしたが、その実体が明らかにされたそうです(QLife Pro)。痛みは体の危険を告げる警告信号で、痛みによる不快感が危険を防御し回避するものです。ですが、警告信号後も痛みの続く慢性痛は生活の質を損なう上に、痛みによる不快感が長く続くと、うつ病や不安障害などの精神疾患を発症し、痛みを悪化させる悪循環が報告されているそうです。疼痛治療には感情的な側面を考え、不快感の神経機構を解明する必要があるとされてきました。研究では、不快な体験をした場所に近づかなくなる動物の習性を利用して、分界条床核という脳の部位でCRFとNPYという2つの神経ペプチドが、痛みの不快感の生起に逆の働きをすることをラットの実験でつきとめたそうです。また、2型神経細胞と呼ばれる神経細胞の活動をCRFは亢進しNPYは抑制すること、分界条床核2型神経細胞が痛みによる不快感に関わる「不快神経」であることも明らかになったそうです。分界条床核の「不快神経」の活動亢進が「快神経」として働いているドパミン神経の働きを抑制することも明らかになってきたそうです。「快神経」の抑制で痛みが不快感を引き起こしたり、痛みのために楽しく感じられない、やる気が出ないことが考えられるそうです。さらに「不快神経」は痛み以外にも、苦み・酸味・悪臭、暑さ・寒さなどの感覚刺激、精神的なストレスなどに反応し、活動の亢進で不快感を引き起こすと考えられるとも。この神経細胞の活動の異常がうつ病や不安障害に関与するなら、これら疾患の解明、治療薬の開発につながる可能性があるそうです。
肥満に伴って発症する糖尿病や動脈硬化に関わるタンパク質AIM (Apoptosis Inhibitor of Macrophage)が自己免疫疾患の発症でも重要な役割を持つことが明らかになったそうです(QLife Pro)。 自己免疫疾患は体の細胞を攻撃する抗体(自己抗体)ができ、最終的に臓器に炎症が生じて機能が損なわれてしまう疾患ですが、肥満に伴う疾患群の一つともされている。たとえば甲状腺機能低下、インスリン分泌不全、不妊症などはいずれも肥満によって発症するそうです。しかしそのメカニズムはこれまで不明だったそうです。研究グループは、これまでに血液中のAIMの量を制御することで肥満の進行を抑え、糖尿病や動脈硬化を抑制する可能性を提示してきたそうです。肥満が進行すると血液中の脂肪酸の増加で免疫細胞は活性化、免疫グロブリンIgMが増加するそうです。これが過剰になると脾臓で自己抗体を作る悪玉の免疫細胞が生み出されるそうです。AIMは血中でこのIgMに結合して脾臓で長時間働ける支援し、肥満でIgMが増加してもAIM量が少なければ脾臓でIgMは機能しないというのです。もちろん、悪玉の免疫細胞は増えないことを実証したそうです。ですので、過度の肥満でも血液中のAIMの量を抑えれば糖尿病などと同じく自己免疫疾患も抑制し得るということが示されました。今後、AIMは肥満に伴う幅広い疾患の統一的な治療のターゲットになるかもしれません。
遺伝的な睡眠障害の一つが、脳内にある「時計細胞」のリズムの乱れによって生じることが明らかになったそうです(どうしんウェヴ)。時計細胞は脳内で24時間周期のリズムを刻み、体内時計の中心的な役割を果たしています。実験では、ある遺伝子の欠損により睡眠と覚醒を不規則に繰り返すマウスと、正常なマウスの時計細胞のリズムを比較したそうです。その結果、正常なマウスは複数の時計細胞が同調して24時間周期のリズムを刻んでいたが、睡眠障害のあるマウスは細胞によって周期がばらばらだったというのです。
歯周病は体内に大量の活性酸素を生み出すために老化を促進する要因になるという記事を見つけました(マイナビニュース)。歯周病患者は健常者の約2倍の活性酸素を放出しているというデータもあるようです。この活性酸素は、細胞のタンパク質、脂質、糖質、DNAを構成している核酸などにダメージを与え、まるで金属がサビつくように細胞を破壊すると考えられています。例えば、皮膚のタンパク質に取り付いた活性酸素は、細胞を壊して皮膚のハリ、弾力を失わせ、シワを作り出す原因の1つと考えられています。、関節では活性酸素に対抗する酵素が少ないため、免疫力が低下してくると、白血球が活性酸素を産生して関節炎の痛みが憎悪するとされています。さらに活性酸素は、胃の粘膜などを傷つけるため、消化不良を起こしたり、胃潰瘍や胃ガンにかかりやすくなってしまったりするだけでなく、悪玉コレステロールを酸化させて、血液のスムーズな流れをせき止め、次第に血管内を詰まらせ動脈硬化を引き起こすことも。こうした病態は、老化現象で起こりやすいとされているもので、活性酸素が増えると症状が出てくると考えられるというのです。ある調査では、20代でも約20%近くが、中高年になると約半数が歯周病であるという報告も。さらに、日本の成人の約8割が歯周病もしくはその予備軍であるとも。まずは、歯周病のチェックと治療をしてみますか。