米国の100万人以上を対象とした10年に及ぶ調査に基づく研究で、50歳未満の人々の間で、大腸がんが増加傾向にあるとの結果が発表されたそうです(AFPBB NEWS)。この年齢グループでは、がんが進行した段階で診断されるケースが多いことも分かったそうです。調査期間の10年間で、50歳未満のグループでは大腸がんの患者数が11.4%増加。新規患者が毎年約136人発生した割合に。一方、大腸がん全体の罹患率は近年、減少傾向にあり、50歳以上でも同じ期間内で罹患率は2.5%減少していたそうです。また、大腸がんは50歳未満の年齢層で増加傾向にあるものの、患者の圧倒的多数は依然として50歳以上で発病しているとも。大腸がんは、米国で患者数が3番目に多いがんで、2015年の新規患者数は13万2000人以上。また、がんによる死亡原因では、肺がんに次いで2位だそうです。
世界的な金融危機により、2008~2010年にがんで死亡した人が50万人増加した可能性があるとする研究論文がLancetに発表されたそうです(AFPBB NEWS)。失業や医療保障の削減により患者が治療を受けられなかったためだということです。2008~2010年のがんによる死者数のうち、経済危機と関連しているとみられるのは、経済協力開発機構(OECD)加盟国だけでも計26万人以上に上ると推定されるそうです。研究では、世界保健機関(WHO)と世界銀行(World Bank)による70か国以上を対象とした統計を用いて、1990~2010年の傾向を分析。その結果、失業率が1%上昇するごとに、がんによる死者数が10万人当たり0.37人増加するなど、失業の増加とがんによる死者数の増加には関連性があり、医療保障制度が金融危機の影響から人々を保護していることが明らかになったということです。
先日開催された先進7か国(G7)科学技術相会合では、高齢者ケアのための脳科学研究や、女性研究者の活躍などを促進することを確認した共同声明が採択されたそうです(YOMIURI ONLINE)。4月の熊本地震などを受け、自然災害のリスク軽減に向けて国際協力を進めることも盛り込まれたそうです。声明では、高齢者が元気に活動できる社会を実現するには、科学が重要な役割を果たすと強調。認知症などの治療や予防につながる脳科学の研究の連携を強化することや、身体の動きを支援するロボットの活用などを進めることを掲げたそうです。また女性の活躍促進では、女性研究者の国際的なネットワーク化を支援することや、教育現場や職場での偏見をなくす行動をすることなどを挙げたとも。
抗生物質への耐性が上昇している問題で、世界の国が一丸となってこの問題に取り組むことができなれば、2050年以降に耐性獲得菌が原因で死亡する人の数が毎年1000万人に上る恐れがあるとする報告書が発表されたそうです(AFPBB NEWS)。細菌が耐性を獲得した場合、一般的な感染症も致死性の病気となり得るそうです。英国政府が委託した「Review on Antimicrobial Resistance」は、細菌が既存の薬剤への耐性を持ち、些細な傷や一般的な感染症から死に至る可能性がある「スーパーバグ」の発生と闘うための方策を提示。報告書は、家畜に大量投与される薬剤の削減、処方薬を必要以上に出さないための診断の向上、世界的な啓蒙活動などにより、抗生物質の過剰使用を減らせると指摘しているそうです。また、研究のための世界規模の基金設立や新薬開発への報酬などを通じて、新たな抗生物質の開発を奨励すべきとも。対策費用は、10年間で400億ドル(約4兆4000億円)と推定され、これは悪化し続けるこの問題に対処しなかった場合にかかる費用よりもはるかに少額だそうです。またこの費用をめぐっては、各国の保健予算や、抗生物質の研究に投資しなかった製薬会社に対する課税でまかなうことができるとも。
中国とインドでは人口の3分の1以上に精神上の問題があるにもかかわらず、そのうち医療支援を受けている人々はほんのわずかだという研究結果が、The LancetとLancet Psychiatryに発表されたそうです。人口ランキングで1位と2位の両国で、精神的および神経学的問題がある人や薬物・アルコールなどの乱用・依存問題のある人の数は、高所得国すべてを合わせた該当人数よりも多いそうです。この傾向は今後数十年でさらに深刻化する見通しで、特にインドでは、2025年まで増加の一途をたどるとの予想とのこと。一方、中国は35年以上前に導入された厳格な産児制限政策による影響の一つとして、人口の高齢化が進むとともに認知症の急増が問題となっているそうです。そうした中、どちらの国もメンタルヘルスのニーズに対して適切に対処する体制が整っていないことを指摘した。新興大国の両国と先進国の違いは、メンタルヘルスケアへの支出額でも同様に鮮明で、両国の医療関連の国家予算のうち、メンタルヘルスに充てられる予算の割合はそれぞれ1%に満たないそうです。米国では同6%近く、ドイツ、フランスでは同10%以上だそうです。中国とインドの医療制度でこの差が埋まるには、あと数十年かかる見通しだそうです。ただし、インドのヨガや中国の伝統薬など、数多くの伝統療法専門家らを、メンタルヘルス上の問題を把握・治療できるよう訓練することは可能としているそうです。
米国科学アカデミー( US National Academies of Science)は、遺伝子組み換え作物に関する大規模調査の結果を発表し、これらが危険な食べ物であることを示す証拠は見つからなかったと報告したそうです(AFPBB NEWS)。ただ、害虫や雑草の薬剤耐性獲得など深刻な問題はあるとしているそうです。調査は、遺伝子組み換え作物に関する幅広い研究を対象に行われたそうです。過去20年間の研究が対象とされ、その報告書では、規制機関に対し、新種植物の栽培や遺伝子操作の過程よりも、最終の生産物をより詳細に調べることを求めたそうです。50人以上の科学者が参加した今回の研究では、商品作物として代表的なトウモロコシ、大豆、綿における遺伝子組み換え特性に関する約900の研究論文などを考察。報告書は、健康および環境に対する微妙な影響、もしくは長期の影響を見つけ出すことの困難さを認識しながら、人体への危険性においては、現在市場に出回っている遺伝子組み換え作物と伝統的栽培による作物との間に、実質的な違いを示す証拠は見つからなかったとし、また遺伝子組み換え作物に起因する環境問題を裏付ける証拠も見つけ出すことはできなかったとしているとのことです。しかし、その一方で報告書は、害虫および雑草への耐性を含め、現在の作物における遺伝子組み換え特性への耐性の発生が、大きな問題となっているとしながら、バイオテク作物の多くが耐性を持つように改変されている除草剤のグリホサートに対して、雑草も耐性を持つように進化していると説明。報告書は、遺伝子組み換え作物とがんや糖尿病との間につながりは見つからなかったとしており、また病気や慢性疾患と遺伝子組み換え食品の摂取にも関連性はないとしているそうです。遺伝子組み換え作物は、店頭で長持ちし、ビタミン含有率が高く、一般的な病気に対して耐性を持つとの理由から、1980年代から開発。今回の研究によると、米国では、遺伝子組み換え大豆、綿、トウモロコシ収穫量の増加率に変化は見られなかったとも。遺伝子組み換え作物は農家の生産量を増加させるという長い間信じられてきた説と矛盾するようです。
注意欠陥多動性障害(ADHD)は、子どもに影響する障害と広く考えられていますが、一部の患者は、大人になってから初めてADHDを発症する可能性もあるとの研究結果がJAMA Psychiatryに発表されたそうです(AFPBB NEWS)。英国とブラジルのそれぞれの研究チームによる独立した2件の研究論文によると、子どもの時にADHDと診断されなかったにもかかわらず、若年成人になって初めてADHDと診断されるケースが多いため、遅発型のADHD自体が独自の疾患である可能性があることが示唆されるそうです。成人がADHDと診断される場合、注意欠如、活動過剰、衝動的行動などの症状が、子どもでみられるよりも重くなることが多く、交通事故や犯罪行動などの増加を伴う傾向がみられるそうです。またADHDは、成人の約4%でみられると考えられているとも。ADHDは、12歳未満の子どもに、通常の活動や発達に支障を来す不注意または衝動的な行動が6種類以上、6か月連続でみられる場合に診断すると定義。2000組以上の双子を対象に実施した調査では、合計166人が成人期ADHDと診断されたそうですが、その内の68%は小児期にはどの検査でもADHDの基準を満たしていなかったことが明らかに。この調査では、5歳、7歳、10歳、12歳でそれぞれ収集した母親と教師からの報告に基づいて、子ども時代のADHDを判定。調査の時点で18~19歳の成人では、自身の症状や行動について被験者と話し合う面談を基に診断。調査の結果、成人では、子ども時代から続く「持続性のADHDは少数派」であったそうです。小児期発症型と遅発型の成人期ADHDは、それぞれ異なる原因で発症すると考えられるそうです。
80歳を超える男性の約5人に1人は血液細胞からY染色体が欠失しており、このことがアルツハイマー病の発症リスク上昇と関連しているとする研究論文がAmerican Journal of Human Geneticsに発表されたそうです(AFPBB NEWS)。Y染色体の欠失(LOY)は、がんのリスクを上昇させることや喫煙者により多くみられることがこれまでの研究で分かっていたそうですが、今回の研究では、より幅広い健康問題を予測する生体指標として利用できる可能性が指摘されているとのこと。研究では、平均年齢73歳の男性3200人以上を対象にLOYの状況を調査。その結果、このうちの約17%に血液細胞中のLOYがみられ、すでにアルツハイマー病と診断されている人々では、LOYの値がより高かったというのです。また、認知症と診断されてはいないがLOYの症状がみられる人々は、その後数年以内にアルツハイマー病を発症するリスクがより高かったとも。Y染色体が欠失しているからといって、がんやアルツハイマー病を100%発症するわけではないとしながらも、血液細胞中のY染色体欠失は将来、疾病リスクの新たな生体指標となる可能性があり、問題の早期発見・治療に効果を発揮するとしているとのことです。
米国海洋大気局(NOAA)は、先月18日に、今年4月の世界の月間平均気温が14・8度で、過去137年間の4月の観測記録として最高だったと発表したそうです(YOMIURI ONLINE)。月間平均気温が過去最高となるのは12か月連続だそうで、この1年間の世界はすべての月が最も暑かったことになるそうです。地球温暖化の進行に加え、エルニーニョ現象が原因とみられるそうです。4月の平均気温は、これまで最高だった2010年よりも0・28度高かったそうです。また2015年は、年間の平均気温が過去最高だったそうです。
人の体温やパソコンなど小さな熱源を利用して発電し、ねじったり折り曲げたりできるシートが開発されたと先日報道されていました(YOMIURI ONLINE)。開発されたのは、筒状になった炭素分子「カーボンナノチューブ」で作った布に「クラウンエーテル」という液体の有機化合物と塩化ナトリウムなどを染み込ませ、樹脂でパッキングした厚さ約1ミリのシートだそうです。カーボンナノチューブと有機化合物の相互作用で、太陽電池と似た性質を持つ有機半導体ができ、光の代わりに熱(温度差)に反応して発電するそうです。実験の結果、150度の高温に1か月間さらしても、ほとんど劣化せず発電できたということです。発電効率は、今のところ太陽電池の10分の1程度だそうですが、センサーなど弱い電力で動く機器は稼働し、さらに改良可能ということです。体温で稼働し、心拍数や血圧の変化などを連続測定できる小型の医療機器、パソコンの熱を再利用して動く周辺機器などで、活用が見込めるそうです。これまでも同様の技術は開発されてきたそうですが、非常に高価な原料や大型の装置が必要だったり、耐久性に問題があったりしたため、用途が限られていたそうです。カーボンナノチューブなら安価で量産可能なので、生活用品や医療機器、工業用プラントなど、幅広い分野で応用できる可能性があり、数年後の実用化を目指すそうです。