Haa - tschi  本家 『週べ』 同様 毎週水曜日 更新

納戸の奥に眠っている箱を久しぶりに出してみると…
買い集めていた45年前の週刊ベースボールを読み返しています

#213 スター選手変遷史 ④

2012年04月04日 | 1981 年 



「個人が集団を引っ張って行く。だが個人は決して集団のノリを越えない。その個人が『モーレツ』であればあるだけ集団の業績は伸びていく」戦後高度経済成長の思想そのままにプロ野球界でも再び個人に光が当たった時代。江藤慎一村山実江夏豊野村克也張本勲 らは西鉄のサムライ野球時代の名残りだ。江藤は王と壮絶な首位打者争いをしていた時、「酒だよ、酒。この苦しみは酒を飲まなきゃ耐えられん」と毎晩のように一升瓶を空にしタイトルを手にした。野村や張本は人気の無いパ・リーグにいる事の悲哀を胸に押し殺して黙々と打ち続け数字で長嶋や王に対抗した。

ON砲が両雄並び立ったのと対照的だったのが村山と江夏だった。「俺と江夏のどちらがエースなんだ?誰が見ても俺だろ。エースとして扱ってもらわなかなわん」と村山は憮然として言い放った。若造を可愛がるのは構わないが自分がコケにされるのは許さない、それが連投時代の正論なのだが江夏も負けていない。「村山さんの勝ち星のうち、俺がリリーフしたものも結構あるし。お互い様じゃ」と19や20歳の若造も言い返す。生きるか死ぬかの戦場で年齢なんか関係ないのもまたこの時代の正論なのだ。

川上が築いたONを中心とする頑強な組織野球の牙城をサムライ時代の残党が完全に崩す事は出来なかった。名将・三原率いる大洋も巨人に対峙できたのは1度きりだった。巨人は昭和40年以降に他球団がサムライ時代の鎧を纏い戦いを臨んできても常に一歩も二歩も先を進み完膚なきまでに蹴落とした。しかし常勝・巨人軍も変革の波は避けられない。長嶋が球団を去り王も現役を引退した今年から新たな時代を迎える事となる。現代のヒーロー像は男臭い、厳つい選手ではなく「アイドル」の時代らしい。

ある女子高の全校生徒によるアンケートによれば
北別府学高橋慶彦篠塚利夫真弓明信牛島和彦
水上善雄梨田昌崇らに人気が集まっていると言う。彼女らによると、ただ顔が「カワイイ」だけではダメなのだそうで、ある種の悲劇性を兼ね備えている必要があるらしい。高橋は自慢の足を怪我して欠場、水上は不人気球団ロッテ在籍、梨田は実力はあるにも拘らずベテラン有田との併用の為に出場機会が少ない。極めつけが篠塚で大物新人・原の加入で窓際へ追いやられた不遇を跳ね返した大ブレークが女心を揺さぶるそうだ。


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