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たかがオープン戦、されどオープン戦。所詮は給料に関係ないゲームと言われればそれ迄だがルーキーそして今季一軍入りをかける新戦力たちにとっては1球たりとも疎かに出来ないのがオープン戦。寧ろ本番より辛く厳しい戦いかも。オープン戦で拾った新戦力候補生たちの泣き笑いである(記録は3月11日現在)。
3月11日付けの各スポーツ紙の見出しの多くが「巨人・西本5回をパーフェクト」だった。これを見た竹田光訓(大洋)は舌をペロリと出して「あぁ良かった。お蔭で目立たなくて済みます。西本さんアリガトウ」と言った。しかしスポーツ紙の扱いが大きかろうが小さかろうが竹田がロッテ打線にKOされた事実は変わらない。竹田が現実逃避したがるのには理由がある。打たれた相手が横田(駒大)、小川(青学大)で自分と同じく大学からプロ入りした新人だったからだ。小川は投手であるので真剣勝負と言うには程遠く犠飛で失点したのは御愛嬌と言えるが、横田の場合は違う。大学時代は格下だと思っていた相手に強烈な2ラン本塁打を浴びた。「誰に打たれても悔しさは同じ」と話す竹田の表情は明らかに狼狽していた。
初回こそ無難に抑えたが2回にあっさり捕まった。「得意のフォークボールを投げる前に打たれている。これじゃ苦しいね」とは本誌でもお馴染みの小林繁氏。落合に至っては「速球もフォークも大した事ない。とても使えんよ」と手厳しい。試合が行われた長崎は大洋漁業の関連会社が集中しており大洋にとっては準フライチャンズとも言える大切な地域。一塁側スタンドには地元後援会のメンバー約350人が陣取った。中には竹田見たさに出漁を1日遅らせたファンもいたという。しかし竹田は期待に応えられず3回で6安打・3失点。「何が何だか分からないうちに失点してしまった。どうしてあんなに簡単に打たれちゃうのかなぁ…」と早くもプロの壁にぶち当たっている。
竹田とは逆に西本のお蔭で目立ってしまったのが広沢克己(ヤクルト)だ。オープン戦初戦こそ安打を放ったものの、その後は竜頭蛇尾。名誉挽回とばかり挑んだ巨人戦だったが西本にいいように遊ばれて二ゴロと三振に終わった。計15球のうち7球がシュート。「僕の時だけ突然シュートが多くなった。あんなに内・外と揺さぶられたら、よほど上手く狙い球を絞らないと打てませんよ(広沢)」と完全に脱帽。最後の打席では橋本の荒れ球が左肩を直撃し痛~いプロの洗礼を受けた。この試合まで通算10打数1安打・5三振と打てない悩みのせいかユマキャンプ入りした時の体重103 kg が今は90kg そこそこ。評論家の森昌彦氏は「広沢は打てなくてもフル出場させるべき」と長い目で見る必要性を説いてはいるが、このまま不振が続くようだと土橋監督の尻もムズムズしてきそうだ。
前評判が高かった今年の新人はおしなべて成績がふるわない。新人王の本命と言われていた佐々木修(近鉄)も登板の度にKOの憂き目にあっている。デビューした3月7日のヤクルト戦では2回もたずに4失点。10日の日ハム戦でも2回1失点。「球は走っていると思うけど打たれちゃう。考えが甘かった(佐々木)」と。もっとも近鉄自体が7連敗中と東映が持つ昭和40年のオープン戦連敗記録に並んでしまった体たらくでは新人の事ばかりを責めるのは気の毒だ。また前述の小川博(ロッテ)も抑えたり打たれたりを繰り返して掴み所がない。10日の大洋戦は4回5奪三振までは良かったが7四死球と荒れ気味で「4回で100球…大学時代なら1試合の球数」と頭を掻いた。
今年のオープン戦前半は同一チーム内からコンビやトリオなど複数の新戦力が現れている特徴がある。3月7日の近鉄戦の先発マウンドに立ったのは3年目の阿井英二郎(ヤクルト)。紅白戦15イニング・2失点と成長し土橋監督がオープン戦の開幕投手に指名した期待の若手である。初回、先頭打者の大石に安打を許したが以降は得意のスライダーを駆使して3回を無失点に抑えた。「点は取られませんでしたが70点の出来。僕の力はこんなもんじゃない(阿井)」と投手にはうってつけの気の強さを持つ。尾花、高野、梶間に続く第4の投手に名乗りを上げた。この阿井の力投に触発された同期入団の荒木大輔(ヤクルト)の初登板は10日の巨人戦。ベストメンバーを揃えた巨人打線を相手に5回を4安打・1失点と好投した。
昨年までは典型的なアイドル選手で、肉体的にも精神的にも甘さが抜けきっていなかった荒木の顔は一段と大人びて見えた。昨季の巨人戦は5試合に登板して防御率 5.40 と打ち込まれた。「走者を出しても慌てない投球を心がけた(荒木)」というように昨季までのマウンド上でおどおどした態度からうってかわった落ち着いた投球ぶりで敵将の王監督を切歯扼腕させた。今年やらなければ忘れられてしまうという危機感が荒木を逞しく変身させたようだ。この荒木の好投の引き立て役にされて苦虫を噛み潰した感じの王監督だが、その巨人にも強力トリオが派手に出現した。
胸膜炎の治療の為に昨年は任意引退まで追い込まれた岡崎郁(巨人)がその筆頭。3月8日、地元・大分での対日ハム戦、3対3の同点で迎えた9回裏に佐藤誠投手がカウント2-3から投じた6球目のシンカーをすくい上げると打球は右翼席に飛び込むサヨナラ本塁打を放った。チームメートから「出来レース」と冷やかされてホームイン。「泳いだけど上手く芯に当たったのでいけると思った。もう6年目だし今年がラストチャンスだと思ってプレーしている(岡崎)」と一軍入りを大きくアピールした。翌9日には4年目の仁村薫と3年目の石井雅博が揃って本塁打を放った。二軍のキャプテン格の岡崎が導火線となってヤングジャイアンツに火を点けた格好だ。
一方、パ・リーグでもV奪回を目指すレオ軍団に若獅子たちが出現した。ポスト田淵の一番手の秋山幸二と2年目の渡辺久信だ。秋季キャンプ以降、尋常ではない打ち込み量で周囲を驚かせた秋山はオープン戦12打数6安打・2本塁打と順調に成長している。また渡辺は防御率こそ見劣りするが3月2日の南海戦、10日の広島戦に勝利しローテーション争いをしている台湾の英雄・郭泰源に一歩リードした。西武にも新旧交代の波が押し寄せている。今年のヤング台頭は集団でやって来るのが特徴のようだ。まるで一昨年の巨人の " 50番トリオ " の再来である。その槙原・駒田・吉村は今や巨人の看板選手である。今年は各球団に「〇〇コンビ or トリオ」が誕生するかもしれない。