Haa - tschi  本家 『週べ』 同様 毎週水曜日 更新

納戸の奥に眠っている箱を久しぶりに出してみると…
買い集めていた45年前の週刊ベースボールを読み返しています

# 519 パ・リーグをダメにした男たち ①

2018年02月21日 | 1985 年 



8月9日現在、首位・西武と2位・近鉄のゲーム差は「12」。はっきり言って今季のパ・リーグは終わりである。昨季の阪急もブッチギリだったが今季ほどのシラケたペナントレースではなかった。" 熱パ " ・ " 混パ " からは程遠い。どうして今季のパ・リーグはこんなにダメになってしまったのか?よ~く考えてみた結果、5人の名前が浮かんできた。

今井雄太郎(阪急):立ち上がりに必ず崩れる " 初回病 " は不治の病?雄ちゃんがまともなら西武を走らせずに済んだのに…

今季の今井投手はまさしく不思議そのものと言っていい。昨季、両リーグで唯一の20勝投手(21勝)で最多勝と最優秀防御率の二冠に輝いた投手として自信に満ちた姿を見せたかと思えば、まるで高校出のルーキーのように初回から落ち着かず力を出せぬまま滅多打ちにあうのも一度や二度ではない。連覇を目指した勇者軍団も崩壊寸前で宿敵・西武の後塵を拝している。8月4日のロッテ戦(西宮)は今季の今井投手の " 不思議さ " を象徴するかのような試合だった。先頭の西村を四球で歩かせると後続の横田、リー、落合、有藤に4連打され一死も取れないまま4失点。

このままなら上田監督も今井投手に見切りをつけられる筈だが、右中間適時打を放った有藤が三塁を欲張り憤死し一死・無走者となった以降は別人のような投球を見せた。立ち上がりの頼りなさは影を潜めて打者の内角をビシビシ突いて、なんと8回一死まで無安打に抑えてしまった。試合は初回の4失点が響いて完投むなしく11敗目。これで先発した試合の初回失点が12試合目という初回病に憑りつかれてしまっている。「自分でも知らんうちに意識してしまって慎重になり過ぎた。もっと大胆に行かな、と自分でも分かってはいるんやけど…」と首を傾げる今井投手。そこには昨季、チームを力強く牽引しリーグ優勝に貢献した男の姿はない。

実は元々今井投手は精神的な弱さが最大の欠陥だと言われていた。長い二軍暮らしもそのせいで、度胸をつける為にビールを飲んでマウンドへ上がったエピソードがあるくらい。だが一昨年の15勝、昨年の21勝、また通算100勝もマークし弱気な今井投手は過去の話だと周囲は思っていた。なのに36歳にして昔の今井投手に戻ってしまうとは。キャンプで右肩を痛めて満足な投球が出来ないまま開幕を迎え、自身は6連敗。加えてエース・山田投手の出遅れも今井投手にプレッシャーを与えた。「彼(今井投手)の調子はマウンド上の姿を見れば分かる。昨季はつっかえ棒が必要なくらい反り返っていたが今はオドオドして下ばかり見ている(上田監督)」今井投手が昨年並みに胸を張る日は来るのだろうか?



鈴木啓示(近鉄):球界を去るのは勝手ですが、もうちょっと近鉄やパ・リーグを考えてくれてもいいのに…

それはそれは見事な引き際だった。「草魂の魂が抜けてワシはただの草になってしもうた」との名台詞を残してユニフォームを脱いだ鈴木啓示氏。歴代3位にあと3勝と迫った通算勝利も、また約半年分の給料にも未練を見せずシーズン途中で身を引いた潔さに全国津々浦々から「男前や」と称賛された。近鉄球団の計らいで三千万円の功労金に加えて背番号「1」がパ・リーグでは初の永久欠番となる事や球団初の引退試合を来春のオープン戦で行う事が発表されるなど致れり尽くせり。「これ以上の引退はないで。まるで引退の三冠王や」と鈴木氏本人もビックリだ。ところがここにきて残された人達から恨み節が聞こえ始めた。

後半戦を7勝1敗と好スタートを切り、逆転優勝へ一縷の望みをかけた8月6日からの首位・西武との直接対決3連戦。だが西武の東尾、高橋直の両ベテラン投手に抑えられ連敗を喫し万事休す。感激屋らしく鈴木氏を男の涙で送り出した岡本監督だが改めてベテラン投手の必要性を思い知ったのではないか。東尾には直近の3試合で立て続けに1点差の完投勝利を許している。「西武打線が良いと言ってもやっぱり野球は投手次第。西武にとって東尾の存在は大きいね(岡本監督)」。西武とは対照的に自軍には鈴木氏が抜けて頼りとなるベテラン投手は不在となった。衰えたとはいえ昨季は殆ど完投で16勝をあげた鈴木氏の穴は大きかった。

セ・リーグは阪神が優勝争いに加わり観客動員数も増えているがパ・リーグは西武の独走でシラケムードが漂っている。また近鉄球団も10億円を投じて藤井寺球場を改装したがその効果は観客動員数増加には結びついていない。そこに看板選手の突然の引退は痛い。梨田ではトウが立ち過ぎているし、大石では一枚看板には小粒。両外人は真面目で面白味に欠け、監督も地味で人気対策の面では八方塞がりの感がある。口八丁・手八丁で幅広いファン層を持っていた鈴木氏を失った事は余りにも大きかった。8月3日から約3週間の予定で大リーグ視察で日本を離れている鈴木氏。帰国後は評論家として再出発するそうだが自らが残したパ・リーグのシラケムードをどう論評するだろうか?
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする