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納戸の奥に眠っている箱を久しぶりに出してみると…
買い集めていた45年前の週刊ベースボールを読み返しています

# 566 ペナントレース総括・阪神タイガース

2019年01月16日 | 1985 年 



21年ぶりの優勝も波瀾万丈だった
巨人戦の後にはやはりダメ虎に
21年ぶりに優勝したと言うのに相変わらずだったのが巨人戦直後の試合の弱さである。いわゆる伝統の一戦が終わると気が抜けるのか、直後の試合に弱いのは今年に限った話ではない。昭和58年は4勝6敗1分け、翌59年は3勝7敗、今年は何と1勝9敗だった。過去10年で勝ち越した年は2回だけというダメ虎ぶり。これではいくら巨人戦に頑張って13勝12敗1分けと勝ち越してもペナントレース全体を考えると厳しい。

G投にバッサリ斬られた三冠王・バース
チーム本塁打数219本でセ・リーグ記録を更新し、打点もバース・掛布・岡田が揃って100打点以上を記録した阪神打線。その中心はやはり三冠王のバース選手。1試合平均の得点は「5.6」だがバースが無安打に抑えられた試合だと「3.4」に落ち、勝率も.370 にガタ落ちしてしまう。それだけに各球団もバース封じに躍起になるが是非とも巨人のバース対策を参考にしてみてはどうか。打率.350・54本塁打・134打点のバースを打率.210・4本塁打に抑え込んだ巨人投手陣。特に後楽園球場では打率は1割台で本塁打は1本も許さなかった。山倉捕手はバース対策について多くは語らないが打席での立ち位置に注目しているという。

完封された後に連勝した猛虎の奮起
猛打を看板にした阪神だが完封負けが4試合あった。しかし完封されると奮起するのが今季の阪神打線。5月23日の広島戦で北別府投手に完封されると次の試合から6連勝。8月3日の巨人戦で江川投手に完封された時も次の引き分けを挟んで5連勝。更に9月3日の中日戦で小松-市村-鹿島の継投で零封されると6連勝だった。

番記者が選ぶベストゲーム
4月17日の巨人戦(甲子園)。7回表まで槙原投手に抑えられ0-3とリードされていた。このままズルズルと負け試合パターンだったが、7回裏にそれは起きた。先ずバース選手がバックスクリーンに放り込んだ。続く掛布選手もバックスクリーンへ。負けじと岡田選手までが続き、バックスクリーン3連発の快挙。この回一気に5得点して逆転した。「今年の阪神は何かドデカイことをやるかも」という予感が虎キチに広まった。試合後のベンチから引き揚げる3人の顔は上気し、ペンを握る番記者の手は汗でビッショリだった。

岡田のちょっとマズイ話と中西のちょっとイイ話
エッ、あの話を書くんですか?勘弁してくださいよ、と岡田選手に言われそうだがもう時効で笑い話で済まされそうだから書いちゃいます。例のFF事件が起きたのは7月の事。ゲイバーのホステス?ホスト?との一夜をバッチリ写真に撮られた時、世間に公表される前にカミさんや母親に言っといた方が罪が軽くなるかも…と岡田なりに淡い期待を持ち電話で報告した。息子の告白に母親のサカヨさんは「あんたみたいな人騒がせな子を産んで情けない。もうウチの敷居は跨がせません。(若手合宿所の)虎風荘で寝泊まりしい!」と叱責。受話器の向こうの岡田はショボン。事件はあっという間にナインの耳にも入り「お前ホントに男と分からんかったのか?」とニヤニヤ。

だが岡田は大物?なのか何事も包み隠さない。「いやホンマに綺麗かったで。男やったとは今でも信じられへん。綺麗やった…」と。この岡田の「キレイ」がナインの間で流行し木戸選手や平田選手は岡田と目が合うと「今日の岡田さんキレイ」と冷やかした。その度に「頼むからそのキレイ言うのやめてくれへんか。メシでも驕るからさ」と平身低頭だそうな。これを聞いた他の選手たち、特に懐が寂しい若手選手を中心に「岡田さんキレイ」を連発したという。身内には怒られ、チームメイトには揶揄われ一夜の遊びの代償は大きかった。

9月4日、ナゴヤ球場でアキレス腱を部分断裂し直ちに大阪大学付属病院へ入院した山本和投手を何度も見舞ったのは中西投手。足繁く通ったのは怪我の見舞いは勿論だが優勝を目前にして抑え役を一手に引き受ける事となり大先輩に抑えの教えを請う為でもあった。「和さん、こんなピンチな時はどう対処したらよいのですか?」と中西は山本に問うた。孤高の人と呼ばれる山本も意外と情にもろい。「抑えて当たり前。打たれたら罪人扱いされるキツイ仕事や。そんな時はこの勝負は俺の腕ひとつにかかっている、俺が抑えられないなら誰が投げても抑えられんと自分に言い聞かせるんや」と答えた。「和さんの教えを肝に銘じて投げ続けました」と中西の活躍の裏に山本ありだ。
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