Haa - tschi  本家 『週べ』 同様 毎週水曜日 更新

納戸の奥に眠っている箱を久しぶりに出してみると…
買い集めていた45年前の週刊ベースボールを読み返しています

# 561 KKドラフト ⑧

2018年12月12日 | 1985 年 



甲子園通算20勝(3敗)は新学制になってからの最多勝記録であり、恐らくこれからも破られることはないだろう。桑田真澄が技術を超えた何かを持っているのは明らかだが本当に即戦力として来季充分な活躍が出来るかとなると異論がある。巨人は桑田をどう使おうとしているのか?専門家たちは桑田の実力をどう見ているのか?

王発言に匂う内野手転向。キャンプが始まっても、投打どちらか決まらない !?
何本も差し出されたマイクに向かって延々と答える桑田。取り囲んだ報道陣の方から「ありがとう桑田君。もういいよ」と声をかけられるまでジッと寒空の下で対応する姿にマスコミの視線も変わってきた。自分達の前から逃げ隠れしなくなった桑田。「これで今回の桑田騒動も一段落だね」との声が報道陣から漏れた。この様子を伝え聞いた王監督は「大した子だね。指名した後の反響が大きくて心配したけど結局、自分の力で切り抜けてしまった。17歳の少年がなかなか出来ることじゃないよ」と感心した。この精神的なしたたかさに王監督が魅せられたのは今春のセンバツ大会だったそうだ。「僕の気持ちは春から(桑田指名で)ずっと変わっていない。そんなヒントもちゃんと言っていたよ」と王監督は話す。

王監督のヒントとは何だったのか?王監督はドラフト指名に関して「高校生を獲るなら絶対投手がいいよ。特に1位指名の場合はね。僕も川上さんも柴田も皆投手だったろ。投手はツブシが利くんだよ。1位指名されるくらいセンスのある投手は他のポジションをやらせても一流になれるんだ」と常々口にしていた。これを聞いていた報道陣は今ドラフトでは高校生野手の清原を指名せず、即戦力の伊東投手を指名したいとの伏線ではと勝手に解釈していた。甲子園で桑田がバント処理で信じられないような身のこなしでトリプルプレーを完成させた場面を見て「あの運動神経ならたとえ投手で使えなくても野手でいける(王監督)」と確信したという。

しかし決して桑田が投手として通用しないと言っている訳ではない。堀内前投手コーチを見い出し入団させた沢田スカウト部長は「堀内の方がもう少し身体にバネがあったかな。でも手首の柔らかさ、胸の張りは桑田君が上かな」と桑田を堀内クラスと評価。桑田が145km 前後の直球と落差の大きなカーブを外角低目に制球よく決めた時は高校生では打ち崩せなかった。準決勝、決勝と進むとこれにシュートを織り交ぜるシーンも見られた。皆川投手コーチは「充分プロでも通用する。水野のようにズドンという球ではなく伸びとキレで勝負するタイプ。先ずは中継ぎでスタートして夏場以降に先発というケースもあり得る」と。

投球内容についてはこんな話もある。「桑田投手は全体練習後の個人練習でフォークボールを試し投げしている。試合で投げたのを見たことはないが充分使えるレベル」とヤクルトの片岡スカウトは明かす。ただ気になる点もある。それは指にマメができやすい体質だということ。躯体、頭脳、持ち球、野球センスなど、どれをとっても投手として一級品で首脳陣も即戦力と考えているが、意外とこのマメ体質が落とし穴になるかもしれない。「投手をやる前は遊撃手もやってたそうだ。ミートの巧さ、振りの速さも素晴らしく甲子園で6本塁打でしょ。野手でも充分やっていけるよ」と王監督は桑田の野手転向を否定しない。

さて、本誌がある筋から得た情報によると球団は最初から投手をやらせない方針であるという。王監督の発言からも分かるように「野手・桑田」への期待は大きい。それは何故か?そこには巨人というより読売上層部の意向があるという。巨人軍の歴史上、投手で本当のスター選手となったのは沢村栄治ひとり。過去に大投手と呼ばれた投手は確かにいた。史上初の完全試合を達成した藤本投手や剛腕・別所投手、九連覇のエース・堀内も川上や王・長嶋あってこそという考えで、あくまでも野手が主役と考えている。数試合に一度しか登場しない投手ではなく毎試合に出場する野手、それもファンに近い内野手にスター選手が必要なのだ。そこで桑田を2~3年後にはクリーンアップを任せられる遊撃手に育てようと読売上層部は考えているという。




コメント    この記事についてブログを書く
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« # 560 KKドラフト ⑦ | トップ | # 562 KKドラフト ⑨ »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

1985 年 」カテゴリの最新記事