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納戸の奥に眠っている箱を久しぶりに出してみると…
買い集めていた45年前の週刊ベースボールを読み返しています

# 644 黒人差別 ?

2020年07月15日 | 1976 年 



一連の差別問題の余波で過去にMVPを受賞した複数のメジャーリーグの元スター選手たちが、MVPのトロフィーからケネソー・マウンテン・ランディス(初代コミッショナー)の名前を削除するよう求めていることが明らかになった。同氏がコミッショナーを務めた1920年~1944年に黒人選手がメジャーの舞台でプレーすることはなく、差別主義者であるというのが理由であるが、過去にも黒人選手を巡って騒動が起きたことがあった。


今シーズンの首位打者争いは両リーグとも熾烈を極めたが、現在のアメリカン・リーグでは今回のタイトルを巡って大問題が起きている。その発端となったのはリーグ戦最終日の10月3日、ロイヤルズスタジアムで行われたKC・ロイヤルズ対M・ツインズの試合。この試合まで毛差の打率争いをしていたのがロイヤルズで同僚のジョージ・ブレッド選手とハル・マクレー選手だったのだが、ツインズのスティーブ・ブリエ外野手が見せた " らしからぬ " 凡ミスを犯した。ロイヤルズは2対5とリードを許した9回裏・二死の場面でブレッド選手が放ったレフトへの打球は平凡な飛球で試合終了と誰もが思った。ところがブリエ選手が目測を誤ったのか打球は目前にポトリと落ちた。

この安打でブレッド選手の打率はマクレー選手を抜いて首位打者に躍り出た。続いて打席に入ったマクレー選手が安打すれば再び首位に返り咲いたのだが結果は遊ゴロで試合終了し、首位打者のタイトルも逃した。ブレッド選手の打率は3割3分3厘3毛、対するマクレー選手は3割3分2厘6毛で僅か7毛差で涙を飲んだ。問題が起きたのは試合終了後。マクレー選手が三塁側ダッグアウトに乗り込みツインズのモーク監督に対して何やら激しく喚き始めたのである。マクレー選手は「モーク監督がブリエ選手に指示してブレッド選手の打球を捕球させなかった。白人選手に首位打者のタイトルを獲らせる為の陰謀だ」と主張したのだ。

マクレー選手はアメリカンリーグでは屈指の指名打者と称される黒人選手。そのマクレー選手の抗議に対してコミッショナーも調査に乗り出さざるを得なくなり、関係者を集めて意見を聞くこととなった。もしもマクレー選手の主張通りモーク監督が実際にブリエ選手に指示を出していたと認められたらブレッド選手の安打は取り消されて首位打者のタイトルはマクレー選手のものとなる。確かにブレッド選手が放った打球はブリエ選手の守備範囲に飛んでおり、故意に安打にしたという主張も否定は出来ないが真相は藪の中だ。モーク監督とブリエ選手は共に疑惑を否定しており、マクレー選手の主張が認められる可能性は低い。

ところで現時点では生涯初の首位打者のタイトルを獲得したと言っていいジョージ・ブレッド選手はピッツバーグ・パイレーツに所属するケン・ブレッド投手の実弟で右投げ左打ちのアベレージヒッター。早くからその素質を認められており、いずれは大リーグを代表する打者になると言われていた。1971年にロイヤルズにドラフト指名されて入団した生え抜き選手で地元ファンの支持も絶大。プロ入り2年目の1973年のC・ホワイトソックス戦でデビューし、3年目の昨年に打率3割をマークするなど順調に成長してきた。今回のタイトル獲得で一層の飛躍が期待される若きスター候補選手だ。

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