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納戸の奥に眠っている箱を久しぶりに出してみると…
買い集めていた45年前の週刊ベースボールを読み返しています

# 643 ストーブリーグ ❸

2020年07月08日 | 1976 年 



昨年、セ・リーグは巨人と阪神が中心となりトレード戦線で活発に動いていた。阪神は江夏を放出し巨人は張本を獲得した。今年注目されるのはヤクルトである。ヤクルトはトレードを殆どやらない球団だ。チーム全体をファミリーに例えて結束している。だが血の入れ替えをしないとチーム内での競争意識は減り、向上心も欠けるようになる。広岡監督は監督就任の条件としてトレード解禁の約束を取り付けたと思われる。今年のヤクルトは今までにない思い切ったトレードを敢行する可能性が高い。

巨人:目玉商品は末次
優勝目前の巨人で注目されるのが末次選手。「末次の動向がカギだね。他球団へ行けば充分四番を打てる選手だから欲しい球団は多い」と巨人番記者は話す。巨人としては末次を出す以上は勝ち星を確実に計算できる左腕投手を希望している。だが勝てる左腕はパ・リーグでも少ないだけに候補は限られる。ズバリ狙いは近鉄の鈴木投手。巨人としては長嶋監督 - 西本監督の立教大学ラインを頼りにする腹づもりだがこのトレードが実現する確率は相当低い。

末次以外では高橋・小川両投手。2人とも杉下投手コーチと上手くいっておらず浮いた存在となっている。またジョンソン選手の退団は必至。問題児・ライト投手も新外人次第だが貴重な左腕だけに残留の可能性もある。いずれにせよ過去の中日や広島がそうだったように優勝するとトレードにブレーキがかかるのと、土井や柴田といったV9戦士はプライドが高いだけにトレードは難しく、今年のトレードは活発にならないというのが多くの見方だ。


阪神:一線級放出辞せず
オールスター戦後の凋落ぶりから吉田監督は「こんな調子ではトレードを活発化してチームの体質を変えなければダメだ」と公言しただけに今年の阪神からは目を離せない。特に投手陣に対する吉田監督の不信感は相当なもので、例え一線級でも不平分子はトレードの俎上に載るに違いない。昨年はあの江夏でさえ放出した吉田監督だけに投手陣は戦々恐々状態だ。ようやく主戦クラスに成長した古沢投手、リリーフに回り成功した山本和投手ですら安泰とはいえない。

ただ投手陣にも不平不満の理由はある。他球団の投手に比べて阪神の投手の年俸は安いのだ。山本和の年俸が仮に30%増となっても300万円という安さなのだ。球団は阪神という人気チームにいるお蔭で副収入を多く得られて他球団の投手と遜色ない筈であると言うが、実力を正当に評価してくれという投手たちの主張はもっともな話だ。狙いは日ハムの新美投手、巨人の淡口選手だ。阪神としては兵庫県の三田学園出身の淡口は是非とも欲しい選手で、一線級の放出も考えている。


中日:野手放出、投手移入
とうとう人工芝の後楽園球場で1勝も出来なかった中日。あまりの惨状にチームに同行していた中川球団代表が「これじゃ今年のオフは全員がトレード候補だ」と冗談を飛ばしたが、一部スポーツ紙が『代表がトレードの最後通告』と書いたもんだから選手全員が凍りついた。昨季数々のワースト記録を書き替えた巨人が張本獲得のショック療法で蘇ったのを目の当たりにしたフロント幹部がその気になっても不思議ではない。事実、シーズン中のトレード期限前までに幾つかの球団に接触していた。オフになれば更に積極的に動くであろう。

5月・6月頃に阪急や近鉄に対して火の車状態だった投手陣にトレードでテコ入れを画策したが、シーズン中ということもあり阪急や近鉄が用意した交換要員は主力ではなく一軍半クラスの投手だったので中日にとってプラスにはならないと判断しトレードは成立しなかった。この時の中日は第一線の中堅クラスの放出も止む無しという立場で、それは今も変わっていないので今オフはダブついている野手を交換要員に投手獲得を第一に活発なトレードを持ちかけると思われる。


大洋:ぬるま湯はやめる
Aクラスには全くといっていいほど顔を出さず、中部オーナーならずとも「個々の選手はそれなりに実力を持っているのにどういうことだ」と嘆きたくもなろうものだ。ぬるま湯にドップリと浸かっている選手を放出して新しい血を入れて体質を改善することが急務である。横田球団社長を筆頭とするフロント陣は「反対する意見もあるだろうが現状のままでは来年もBクラスだ。今年こそ思い切ったトレードを敢行してチームの再建を図りたい」と言うが、その台詞は少々聞き飽きた感は拭えない。

昨年のオフに表面化しなかったが横田球団社長と秋山監督が揃って「平松をトレードの交換要員にしてもいいか」と中部オーナーにお伺いを立てていた。 " 腐っても鯛 " の言葉通り平松は入団以来、大洋のプリンスとして今なおチームの顔である。その平松を放出する事とは一大改革を意味する。平松といえば中部オーナーのお気に入りであることを承知の上での陳情だった。実際にトレードは実現しなかったが球団社長や監督がそこまでして何とかチームを立て直したいという姿勢は評価できる。

昨年に続いてトレードに関しては今年も同じ方針のはずである。今のところトレード要員にリストアップされていないのは松原選手、山下大選手、シピン選手、奥江投手らで、あとの選手は条件さえ整えば話し合う余地は残っている。前述の平松も然りである。こうした大洋の動きを察したのかロッテ、日ハムの関係者がネット裏から早くも狙いをつけた選手の動きに目を光らせている。球界内では今年のストーブリーグの主役は大洋であるという意見は多い。


ヤクルト:守りの野球実現へ
「新しい血を注入しなければチームは強くならんでしょう」と佐藤球団社長。勿論、監督就任の条件として広岡監督が求めたトレード解禁を指しての発言だ。トレードに関しては荒川前監督も松園オーナーに直訴していたがチームの一体感を大事にするオーナーに却下されていた。だが3年越しの要請で誕生した広岡政権では球団としてバックアップは約束されている筈。まだシーズン中なので広岡監督は未だ具体的なチーム作りは語ってはいないが「トレードはどんどんやる。球団の理解が得られれば僕の理想は実現する」と明言している。

6月にこんな噂が流れた。日ハムの新美投手とヤクルトの榎本選手のトレード話だ。2人ともチーム内では余剰戦力なのであまり話題にならなかったが、両球団のフロント陣同士の繋がりを表す噂話だった。球団フロント幹部も苦笑しながらも否定しなかったことから単なる噂話の域を出ていたと思われる。今オフの目玉商品は浅野投手とシーズン前から阪急が欲しがっていた益川選手だ。浅野は今季はまだ1勝と不調だが他球団による評価は高い。益川も現在は二軍落ちしているが環境さえ変わればまだまだ戦力になると見ている球団は多い。

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