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■河口真哉インスタレーション作品展『言葉の雨はこころの中でいつも降っていた。(後編)=2022年11月22~27日、札幌

2022年12月28日 22時15分19秒 | 展覧会の紹介-現代美術
 「河口真由美個展 夢の通ひ路」とおなじギャラリーで同時開催されていた個展。
 アップが遅れたのは他意は無く、申し訳ありません。

 河口真哉さんは、絵画ではなく、言葉や映像、立体造形などを用いてインスタレーションをがっちりと作り込む若手作家。
 まあ、半世紀前ならいざ知らず
「インスタレーションだから新しい、すごい」
という時代でもないし(ただ、近年は札幌の作家で少数であることは確か)、これまで何度か、新さっぽろギャラリーなどで彼の展示を見てきたにもかかわらず当ブログで取り上げることなくここまできたのは、筆者が、「言葉」の取り扱いに厳しいというのが、最大の理由だと思います。自分でもなんだかなあと思いますが、絵画や書道で技術至上主義を振り回すことにははなはだ懐疑的ながら、詩歌についてはどうしても技巧にばかり目が向いてしまうくせがあるのです。自分の目には、造形や映像のキレにくらべると、河口さんの言葉の並べ方がどうにも凡庸なものに映っていたのです。 

 
 今回は、言葉はDMに記し、会場から省くことで、全体がすっきりしたと思います。

 入り口附近の床にはトンネルの中を行く、短い動画が映し出されていました。

 また、奥の壁にも、故郷の芦別の風景が投影されていました。
 20秒の映像が3本。
 芦別といっても、テーマパークや炭鉱ではなく、農地や道路、電柱、空、踏切など北海道のありふれた風景です。
 筆者も道民なせいなのか、見ていてなんだか落ち着きます。
 
 
 会場には、発泡スチロールに、建材屋で入手したパテを塗った立体18個が、天井からつるされて空調の微風にゆれています。

「浮遊するものが命だったり心だったり…」
と河口さんは話しますが、そのあたりは見る人が自由に見ればいいのでしょう。
 ドット絵の雲みたいに見えます。

 また、中央にはブランコがつり下がっていました。
 男性のオトナがすわるにはいささか小さいような気がしますが、河口さんによると、鑑賞者の目線を下げる効果も狙っているそうです。

 ちなみに、案内DMに印字されていた『届かないものたち』という詩は次の通りです。

夜が逃げるように朝が少しだけ遅く
来るような青い日に

『死なないように努力する事が
生きるという事なんだよ』と

淀んだ瞳の兎は呟いた

僕は部屋の片隅で縮こまり息を潜め

過ぎ去っていくものに想いをはせ

手を伸ばしてももう届かないものたちが

とても愛おしく感じて少しだけ悲しくもあり

大切な思い出たちが浮かんでは積み重なって

もうなにも零さないように揺れる心ですくい

そしてゆっくりと歩いていく

そしてゆっくりと消えていく


 今回の個展について河口さんは
「次につなげられる気持ちになれた。『次』は悩みどころではありますが」
と話していました。


2022年11月22日(火)~27日(日)午前10時~午後6時(最終日~5時)
コンチネンタルギャラリー(中央区南1西11、コンチネンタルビル地下)

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さっぽろ雪像彫刻展 (2019)

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