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田園都市線(東京07-番外)

2007年12月17日 22時34分31秒 | つれづれ読書録
 ことし4月に出版された原武史著「鉄道ひとつばなし 2」(講談社現代新書)を読んで、いちばん衝撃を受けたのは、あとがきだった。

 いまやこの線(東急田園都市線)は、五分や十分の遅れは、「遅れ」と見なされない。二十~三十分遅れることも、珍しくなくなっているからである。
 車掌いわく、どこどこで車両故障が発生した、どこどこで人身事故が発生した、どこどこで具合が悪くなった客の手当てをした、どこどこで混雑のためにドアが閉まらず、発車に手間取った……。東京地下鉄半蔵門線を介して東武伊勢崎線や日光線と相互乗り入れするようになってから、「どこどこ」に入る駅の数はがぜん多くなった。

 日本の鉄道は時間の正確さについては世界一であり、2、3分遅延した程度でいちいちアナウンスをしてわびるのは日本だけである-と、自分はばく然と信じていた。
 しかし、すくなくても現在の首都圏では、まるで事態が違っているようなのだ。

 実際に、東京へ行ったら、ほんとうにダイヤは乱れていた。或るメトロの駅では、人身事故による列車の遅れを告げるテロップが流れていた。
「世界一時間に正確な日本の鉄道」
は、完全に神話になっていた。
 たしかに、殺人的な混雑や、複雑きわまる乗り入れ制度が、遅延の原因になっていることは否めない。でも、それは、何十年も前からのことだ。
 ダイヤの乱れは、東急田園都市線だけではなく、地下鉄の東西線でも常態化しているという。自殺者の多い中央線もよく遅れるらしい。

 原氏は、返す刀で、ロンドンの郊外急行が時間通りに運行されていることを記し、しかも車窓風景が絶景であることに賛嘆のため息をもらす。

左右の丘陵地の斜面に茶色の屋根で統一された家々が並ぶニューバーネットは、ロンドンの典型的なベッドタウンといった感じで、ここからトンネルを抜けると、シラカバやポプラの林が線路際に迫り、馬や牛が遊ぶ牧草地が次々に広がるようになる。  (87ページ)
 

 ここまでわずか10分。「東京から10分で道北か道東に出たよう」と、原氏はおどろく。

 もっとも、思うに、札幌のJRの車窓も相当なものだと思う。

 十数分乗れば、小樽方面であれば海が線路のすぐそばまで近づき、広がるし、千歳方面であれば野幌の原始林が車窓にひろがる(千歳を過ぎればもっと原始の風景だ)。当別方面は雄大さには欠けるが、30分も乗れば、石狩原野と、長大な鉄橋、大河が望める。おもしろくないのは江別方面ぐらいなものである。
 札幌圏は、まあ先日はいっせいにストップしてミソをつけたが、だいたいダイヤは正確だし、原さんも転勤してきてはどうでしょうか。


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