
伊藤啓子さんは札幌の染織作家。
会場にあった資料によると、地元での個展はじつに13年ぶりとのことです。
大小18点が展示されています。
綿やウールなど多様な素材を用いながら実にカラフルな色に染めています。
しかし、ご本人によると
「少し色を抑えた」
とのこと。
「不特定多数の人が通るところですし、あまり派手すぎても…」
という意味のことをおっしゃっていました。
ただ華やかなだけではなくて、人間の心の奥深くに潜む感情のざわめきのようなものを表現しているように感じました。
タピスリーといえば、壁掛けの平面が一般的でしょう。
伊藤さんの場合は、作品によっては、太いひものようなものが絡み合うなどして、全体に動感をあたえています。
「色が着いた糸も売っているのですが、やはり自分の色を出したくて染めています。(染めると水を吸って)重さが倍になるので大変ですが」

会場に入ってすぐの壁に掛けられた「№1」です。
その横、バックライトで照らされたショーウインドーの中は、逆光になって作品の表面が夜はよく見えません。
「フリンジのかたちが見えるのでこれもいいかな、と思いました」
と伊藤さん。

会場にある大きな窓の左右には、かなり高い位置に作品が取り付けられています。大作が向かい合った格好です。
エントランスアートのスタッフの意見を取り入れた展示だそうです。
とくに夜間は道行く人からもよく見えそうです。

伊藤さんは全道展会員で、日展にもたびたび入選していました。
2000年に全道展を退会。その後、日本現代工芸展もやめたので、道内での発表は、札幌市民ギャラリーで昨年ひらかれた「札幌を彩る作家たち」ぐらいしかありませんでした。筆者が知らないのも道理です。東京ではときおり発表しているとのことです。
2008年11月10日(月)-30日(日)9:00-18:00(土・日曜-16:00)、期間中無休
STV北2条ビルエントランスアート(中央区北2西2 地図A)