北海道美術ネット別館

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■いとうみなこ写真展 十一月「記憶と記録」 (11月30日まで)

2008年11月28日 23時38分46秒 | 展覧会の紹介-写真
 いとうみなこさんの写真展は、昨年に引き続きまたしても会場の「十一月」がテーマである。
 ただし、昨年の写真が、そこに写っているものが「十一月」の店内であることを、明瞭に伝えていたのに対し、今年は違う。
 被写体がいったい何なのか、一見してよくわからないものが多いのだ。

 もちろん、古い釘を積み上げた山や、古いめがね、ねじなどは、わかる。さびた歯車を組み合わせた器械は、いったい何に用いるのかは不明だが、写真の前の机に実物が置いてあるので、なんとなくとっつきやすい。

 しかし、東側の壁にある一連の縦写真は、あまりにシンプルで、いったい「十一月」のどこにレンズを向けたのか、判然としない。
 たとえば、画面上方に、やはり用途のよくわからないさびかけた骨組みがあり、下の方に植物の蔓が這っている1枚がある。壁は白。
 なんだか、ミニマルアートのような簡素な世界なのだ。
(わからないからダメだと言っているのではもちろんなくて、むしろ、わからないから面白い-ということです。29日追記)

 いとうさんの視線は、被写体が何であるか分かるように向き合うことをやめて、ただそこにある物体の存在それ自体だけに向かっているように感じられる。

 そのうちに、いとうさんの写真がおもしろいのか、あるいは「十一月」という空間がおもしろいのか、だんだん判断がつかなくなってくる。

 「十一月」の入り口の近くに、まるで半世紀ほど前に学校の医務室に置かれていたような、白い木枠のガラスケースがある。
 中には、針が取れてしまった時計の文字盤や、なにかの機械の部品などが並び、下の段には、瀧口修造「夢の漂流物」という白い書物が置いてある…

 できすぎだと思いませんか?

 こんな空間が現実に存在するなんて、とても信じられなくなってくる。
 不鮮明な山田勇男の初期映画作品に登場する店のようであり、ジョゼフ・コスースが奥で掘り出し物をさがしていてもちっとも不自然ではない場所のようなのだ。
 足踏みミシンの残骸? 何を書いた紙? 
 ここだけ、時間が止まっている。

 もちろん、狸小路の8丁目に、ほんとうにあるお店なんだけど。


2008年11月15日(土)-30日(日)13:00-19:30 月、火曜休み
古物 十一月(中央区南2西8 FAB cafe2階 地図C

□自転車日和 http://www15.plala.or.jp/nanakumi/

いとうみなこ写真展「十一月」 (2007年)
風のない午後 ハーフサイズで見たムロラン(2007年)


「東京巡回展 2009年2月 予定
CONTEXT-S(東京都杉並区阿佐ヶ谷南1-47-4)
期間中CONTEXT-Sに喫茶十一月がOPENします。」
とのことです。


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