
岩見沢市栗沢町に住む堀さん。
東京出身で、発表もほとんどが東京でしたが、昨年に札幌芸術の森美術館でひらかれた「北の創造者たち Lovely」に出品。道内デビューが美術館という、めずらしい登場でした。
昨年はアリアンス・フランセーズ札幌でも個展を開催しています。
「人形作家」であることはまちがいないのですが、かわいさが前面に出ることの多い布製の動物の人形にしては、どこか陰があるというか、ふしぎさと不気味さをたたえているようです。
といって、残虐性とかおどろおどろしさを強調した作品ではもちろんありませんし、リアリティー勝負の人形でもありません。
形容しがたい魅力がある-としか言いようがないと思います。
今回も、ウサギの人形がほとんど。ほかの動物は、ウサギがまたがっているロバ1頭だけです(これは、アリアンス・フランセーズ札幌の個展で発表済み)。
あまり大きくないので、会場がとてもすっきりして見えます。
冒頭の画像でわかるでしょうが、アリアンス・フランセーズの個展と同様、1匹だけが黒いウサギです。
もともとの羊の毛のちがいのようです。これは、刈りたての毛のようで、わらやふんがまだ附着しています。
堀さんは、とりたてて、おぞましさを出そうとしているわけではないそうです。
でも、とくにご年配の女性から、そのことを言われる場合が多いとのこと。
以前もおばあさんから
「戦争を思い出すねえ。いやだねえ」
などと言われたそうです。
「そのことがあってから一切題はつけなくなりました。もともと人形っておしつけがましいところがあるし」

この作品も、アリアンス・フランセーズの個展に出品されていたもの。
金属のタグにあるとおり、動物記で名高いシートンの本が、ほんとうに中に入っているのです。
シートンの本は紀伊國屋書店の出版。
もう1冊、個展会場のカバーのなかにある本も同書店の出版です。
堀さんは、制作活動を始めた当初からウサギをモティーフにすることが多く、筆者にウサギについての熱い思いを語ってくれました。
ウサギについてはそれぞれの民族で言い伝えなどがぜんぜん異なっていて、純潔の象徴とみなす場合もあれば、多産ゆえに淫乱のシンボルとして見られることもあるのだそう。
英国の狩猟者が、狩りへ行く途中にウサギを見れば、悪いしらせとして、行くのをやめてしまうそうですが、北米のネイティブアメリカンの間では、ウサギは吉兆とされているとのことです。

いまは岩見沢の郊外に住んでいるので、家の近くに、野うさぎがいるそうです。
東京在住のころにくらべて、やっとほんとうにウサギがまわりにいる環境にこられたとの感慨があると話していました。
「北海道に住めるのはとてもうれしい。ただ、話し相手が夫しかいなくて…、こないだも家のまわりで草むしりをしていてやれやれと思っていたんですが、ひょいと見るとエゾリスがわたしのほうをじっと見ていたんです。そうか、ここは人間はいないけれど、動物の密度でいえば渋谷に負けないんだなと気がつきました」
これからも、ウサギをテーマにした作品になりそうとのことです。
07年11月23日(金)-29日(木)10:00-19:00(最終日-18:00)
紀伊國屋書店札幌本店2階ギャラリー(中央区北5西5)
■堀かをり展(06年10月)
ファーを素材にされているので温かみがあって、触ってみたい気持ちになります。
触れたいという気持ちにさせるのは、人形にとって幸せなことでしょうね。
出来ればこの目で見てみたい!(^^)
まだ紀伊國屋で開かれていますから、ぜひ見に行ってはいかがでしょう。
筆者は「触りたい」という気持ちはあまり起きませんでした。にょろにょろして、ちょっと気味悪い感じだったです。
キャプションのない展示もすっきりしてかっこよかった~
静かでいて、でも妙に印象に残る展示会でした。
木のくずを固めて作ったと言うロバも、何故か・・・気になりました。
札幌に行く際には、ギャラリー情報・コメントいつも参考にさせて頂いています。
参考にしていただいている由、とてもうれしいです。
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