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1937年に設立。戦前戦後、日本の前衛美術の一角を担い、現在も公募展をつづけている「自由美術協会」の北海道支部展。
ずっと以前、東京都美術館で見た展覧会は、渋い抽象画が多いなーという印象だったので、道内勢はかなりバラエティーに富んだ作品で会場をにぎわせているといえると思う。
ただ、今回は、欠席者が多い。
昨年の出品者のうち、佐々木俊二、永野曜一、山本昇、和田義雄の4氏の作品が見あたらない。
画風は少しずつ変わっている人が多いので、見てる分にはなかなかたのしい。
画像が多いため、会場の時計台ギャラリーのA室とB室にエントリをわけて紹介する。
冒頭の画像、手前の細密な抽象画は工藤牧子「萌芽I」「萌芽II」。
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左は佐藤泰子「さくらさくら finish」。
網膜の残像のような、鮮烈な光を感じさせる作品。
純粋な抽象でありながら、わたしたちの記憶や生とむすびあう確固たる「なにか」が秘められているようだ。
右は比志恵司「浮遊する種子」。
派手でむつかしい色の組み合わせをすることのある比志さんだが、今回はあまり冒険をせず、きれいにまとめていると思う。
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この1年、2度の個展に全道展と、大忙しだった高橋靖子さん。
左から「’08 記(II)」「’08 記(I)」。
文字と絵画が一体化したような画面は、まさに彼女の日常が紡がれているといえる。このたゆみない営みこそが、わたしたちの「生」であるのだろう。
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「’08 記(II)」の部分拡大図。
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架空の獣を横から見たシンプルな絵を描いている杉吉さん。
ここ数年は、わりと、笑いや空想の要素を封印しておとなしめの絵が多かったように思うのだが、今回の「時空」は笑える。
魚から突き出た人間の脚-という図柄は、第2回 野外オブジェ展in栗沢(03年)で発表した「魚座の終り」をほうふつとさせる。
画面下部に曲線をひいたら、対象が宙に浮いているように見えるのもおもしろい。
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枯れた木の幹を描いているのに、どこか人の立像に見える、澤田弘子さんの絵。
今回の「風音」は、一度発表したことのある作品で、そのときはもっと暗い色調だったという。
じぶんでは気に入っている作品で、今回、暗い絵の具をそぎ落として、空の部分にペインティングナイフで色を塗りなおしたとのこと。
背後に、難民のような人の列が見え、絵の世界にひろがりをあたえている。
もう1点の「夜の風音」は、複雑に曲がった木の幹を大きく描き、背景には深い青を重ねた、シンプルな構図の作品。茶と青というむつかしめの組み合わせだが、破綻なくまとまって、作者の思いをつたえている。
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宮崎亨「マイナスを糧に生きる」。
スポットライトが画面上部にかぶってしまい、すいません。
もっとマンガ的な表現が特徴だったが、今回は色をフルに使っている。
絵としての完成度は上がったと思うが、公募展的になったという感じもして、ちょっとフクザツな気分。
A室にはほかに
森山誠「memory08-3」
大崎和男「イランカラプテ」
北島裕子「五月」
森山さんは現在、深川のアートホール東洲館で個展を開催中。
「いい絵はみんなそっちに行ってるから、写真は撮らないで」
とのこと。
(この項つづく)
08年7月21日(月)-26日(土)10:00-18:00(最終日-17:00)
札幌時計台ギャラリー(中央区北1西3 地図A)
□自由美術協会 http://www.jb.vis.ne.jp/
■07年
■自由美術/北海道 2006年(画像なし)
■2003年
■2002年
■2001年(画像なし)
□ザッキ(宮崎さんのサイト) http://www8.ocn.ne.jp/~zakki/
■森山誠個展(02年)
■森山誠個展(04年)
■森山誠個展(06年)
■森山誠個展(08年6月)
■杉吉篤個展(2000年)
■杉吉篤個展(01年)
■杉吉篤個展(02年)
■杉吉篤個展(03年)
■第2回 野外オブジェ展in栗沢(03年)
■杉吉篤個展(07年)
■佐藤泰子展(01年)
■佐藤泰子展 さくらさくら(02年)
■佐藤泰子展(03年)
■佐藤泰子展(05年)
■佐藤泰子さくらさくら展(06年)
■高橋靖子展(01年、画像なし)
■札幌の美術2003
■高橋靖子展(03年、画像なし)
■高橋靖子展(05年)の出品作品
■高橋靖子展(07年9月)
■高橋靖子 記憶の淵にて(08年3月)
■芸術団Jam.(宮崎さんが出品)
完成度はものすごく低いのですが…(そういう意味ではないのでしょうが)
実質四日しかかかっていません。全く自慢になりません。
グループ展が終わった後、また手を加え続けます。
美術の表現は作者が何を作品に込めるかよりも伝わるものが全てなので、重く受け止めたいと思います。
いろいろお忙しいのでしょうね。
手を加える-ということなので、今後の変貌に期待しております。