こころの文庫(つねじいさんのエッ!日記)

家族を愛してやまぬ平凡な「おじいちゃん」が味わう日々の幸せライフを綴ってみました。

しょぼくれてられるかい!

2015年12月03日 00時40分16秒 | 文芸
若い頃はアマチュア演劇に打ち込んだ。仕事の寸暇を惜しんで都合四十数年にわたる活動は、生きる原動力でもあった。脚本を書き、演出、メインの役者、美術……やることは無限にあった。自分で主宰の劇団は二十年近く続き、若者たちと切磋琢磨し合った。

 六十で定年を迎えると、自然に劇団活動と距離を置いた。何より身体の衰えを自覚した。「舞台の表現は観客にはとても不可能なものでないと感動を呼べない。動きも声も、観ているものの何層倍でなければ駄目だ」が持論だった。だから、舞台芸術に携わる限界を悟ったのだ。体調不安がそうさせた。

 劇団活動から身を引くと、他に何もないと気付いた。パートの仕事は一日四時間程度。家でゴロゴロしているのもウンザリである。

それに気力が萎えているのを自覚すると、(もうオレも高齢者か)と諦めの境地に走った。

「なにお年寄りやってるの?」

 妻だった。劇団活動を通じて結婚相手に選んだ。十三も若い。彼女に高齢者の気持ちが分かってたまるかい。

「何もやる事ないと思ったら、もう人生終わりだよ。それでいいの?生活優先で諦めた好きなことやるチャンスじゃない。人間死ぬまで夢を見続けなきゃ。頑張れ!私の惚れた男がショボクレてんじゃないよ!」

 妻の言葉はきつかった。それに優しかった。

こうなれば妻の期待にきっちり応えなければ。やるしかないのである。

 試行錯誤の末、残ったのは文章創作。時間さえあれば気楽に打ち込める。劇団活動の中で脚本を何作も書いている。これしかない。

 新聞の読者欄への投稿から始めた。面白いように採用された。調子に乗ると、週刊誌や月刊誌にもチャレンジした。

 本を出版しよう!やっと夢が生まれたのは、新聞の文芸欄で小説やエッセーの入選が続いたからだった。そして全国公募のエッセーで最優秀賞に選ばれた。賞金もさることながら、トップに手が届き自信に繋がった。あの若い頃の野望すら蘇った。

『本を出版する!』もう揺るぎない夢となった。余生を賭けた夢の実現に走り出した。

 新宿御苑駅近くの出版社を訪問した。出版相談会で出版のノウハウを学ぶのだ。持ち込んだ原稿を読み、適切な助言を与えてくれるスタッフの言葉に全神経を総動員させ訊いた。

 夢は生きがいに直結する。忘れていたが、もう大丈夫。人生最後の夢挑戦は始まった。




 
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