難聴者の生活

難聴者の日々の生活から、人工内耳など難聴者のコミュニケーション、聴覚障害者の制度改革について語る。

ユニセフの障害者権利条約の本「わたしたちのできること」

2009年01月01日 17時54分36秒 | 権利
081231-アンジェラ221459.jpg国際児童基金ユニセフが、障害者権利条約の内容を児童に理解するための本を発行した。
http://www.dinf.ne.jp/doc/japanese/rights/rightafter/unicef_jp_Lo.pdf

障害者の権利条約は、障害を持つ人が持たない人と同等の権利、人権を有することを宣言しているが、もちろん障害を持つ子供も含まれている。

この障害者権利条約は障害者に何か特別な権利を与えるものではないこと、障害者のための条約でもなく、一般市民の人権に関する条約として、理解することが重要なことを考えれば、児童に対して、子供の人権条約も合わせて、その目指すところを実現していく必要がある。

難聴の子供の問題を言えば、親も教育関係者も「聞こえの問題」としてか見ていないようなのが気になる。

子供にしてみれば、同世代の子供の社会にいる中で、難聴が元でいろいろな問題を抱えているのだ。思春期の心身の発達の問題、友だち関係、学校の学習、テレビや携帯の利用などの問題だ。「聞こえ」の問題を解決するのではなく、子供の心身発達の問題に聞こえの問題がどう影響しているかを考えながら、対応することが必要だ。

自分の体験を振り返っても、中学生になって補聴器を与えられてもそのことで、友だちとの関係、授業の理解、生理的発達の問題がどう解決されるのか分からないままで、1年間補聴器を使用しないでいた。


ラビット 記
------------------------------------
感謝(かんしゃ)をこめて
この本(ほん)を書(か)いたのは、ビクター・サンチャゴ・ピネダという人(ひと)です。ビクター・サンチャゴ・ピネダは、ビクター・ピネダ基金(ききん)を作(つく)った人ひとで、障害者(しょうがいしゃ)権利条約(けんりじょうやく)の内容(ないよう)を考(かんが)えた特別(とくべつ)委員会(いいんかい)に、最年少(さいねんしょう)の政府(せいふ)代表(だいひょう)として参加(さんか)しました。
この本(ほん)を作(つく)るプロジェクトを始(はじ)めたのはユニセフで、ユニセフの児童(じどう)保護(ほご)セクションのヘレン・シュルツが、最初(さいしょ)から中心(ちゅうしん)になって進(すす)めてきました。それを手伝(てつだ)ってきたのが、ユニセフの青少年(せいしょうねん)開発参加(かいはつさんか)ユニットのVoices of Youth(青年(せいねん)の声(こえ))コーディネーター、マリア・クリスティーナ・ガレゴスです。そして、これを本(ほん)としてまとめたのは、 ユニセフのコミュニケーション・ディビジョンです。

(同書から)






放送アクセシビリティと「合理的配慮」

2009年01月01日 01時20分59秒 | 放送・通信
081231-221556.jpg12月21日のCS障害者放送統一機構設立10周年記念「シンポジウム」で、障害者権利条約と放送アクセシビリティが大きな焦点になった。

実は、放送アクセス保障は、障害者権利条約第2条の定義で言う「ユニバーサルデザイン」の問題だ。
社会のインフラとして、視聴覚障害者などすべての障害者に放送のアクセスが保障されなくてはならない。

障害者権利条約の「合理的配慮」は何に当たるのだろうか。
合理的配慮とは、障害者権利条約第2条の定義にあるように「特定の場合に必要とされるものである」。これは、JDFのフォーラムで、ティナ・ミンコウィッツ(世界精神医療ユーザー・サバイバーネットワーク(WNUSP)共同議長/弁護士)さんが強調されていた。
つまり、障害者の個別具体的な事案ごとに配慮するためのものだ。
http://www.nivr.jeed.or.jp/download/houkoku/houkoku87_03.pdf
38ページ参照

字幕放送が聴覚障害者が放送にアクセスするためのユニバーサルデザインとしたら、テレビ受信機も字幕放送回路を内蔵したユニバーサルデザインでなければならない。
手話放送はほとんど実施されていないが、これは手話を言語とするろう者にとって、障害者権利条約の第9条情報アクセスにも、第30条の文化的アクセスにももとることになる。
手話放送の字幕放送に当たるクローズドサインニングが
地上デジタル放送の規格上、あるいはテレビ受信機の構造的な問題で実施できないならば、それの実施は放送事業者にとって「過度な負担」に当たるかも知れない。

しかし、「目で聴くテレビ」がPIP機能で手話放送を実施していて、テレビ放送の視聴者であるろう者が放送事業者に対して、合理的配慮として手話放送の実施を求めた場合、現実に手話放送を個別的に実施しているサービスがある以上、放送事業者は合理的配慮をせねばならないのではないか。
このことは、サービス提供事業者が1時間の放送コストとして10万円を請求したとしても、それは1時間の放送に数千万円以上
のコストをかけている放送事業者にとって、過度な負担とは言えず、放送事業者は実施しなければ差別に当たるのではないか。

放送事業者が聴覚障害者と真摯に解決策を検討しなければ、BPOに訴えたり、放送の消費者として消費者庁に問題を持ち込むことも出来る。民放のスポンサー団体である広告主協会、電波産業会ARIBも真剣に対応を求める。

シンポジウムでは、下級審では障害者権利条約も法的根拠になるという指摘もあった。


ラビット 記