Mちゃん(中2):
先週「来週、すごーく上手に弾いて!」と約束した ブルクミュラーの「つばめ」。
さて、出来栄えはいかに。
できましたよー
生き生きした急速なテンポで、きらめく右手の分散和音の上を縦横無尽に飛び交う左手のつばめ!
ピアノの横では、M3ちゃんが、レッスン室の隅っこから見つけ出したボンゴを、曲に合わせて叩き始めた。
♪ぼんぼこぼん、ぼこぼこぼこ。
「やめてよ~」と言いながらも止まらず、ボンゴといっしょに軽やかなつばめ。
先生は大受けです。
大熱演のうちに演奏終了。
「やったね!すごいじゃん。おまけに全部暗譜だ!」
と、文句なしの大きな花マルをつけてもらって
「わーい、やった~」とMちゃんも大喜びです。
ほんっとに、久々の会心の名演奏だったねえ・・・
集中すればこんなもんだ!
次はいよいよ、ブルクミュラー最後の曲「貴婦人の乗馬」です。
「馬術の馬が、トッ、テッ、トッ、テッ、て並足で誇らしげに歩いてる感じから始まるよ。
次の所はダダダダダダダ!って、助走をつけて障害を飛び越す。また並足で調子整えたあとは、優雅に滑走・・・」
「うん、そんな感じだね!」
Mちゃんは最初の方を弾いてみました。
両手も大丈夫そうだ。
来週、がんばってきてね。ブルクミュラーのラストスパートだ!
「バーナム」のルーレット弾きでは、音階のパターンが当たりました。
音階の上昇、下降と速いテンポで弾き、最後にカデンツをつける。
ひさしぶりに弾いたのに、このパターンは完璧でした。
「このパターン(カデンツ)覚えちゃった!」と言ってますが、これを覚えるのがけっこうみんな大変そうなので、さすがにMちゃんの感覚はGOODだと思います。
「上手だからもう一回弾いてよ。もっと速く!もっともっと速く!」
せっかくの上手なスケール(音階)なので、テンポを上げて何度も弾きました。
実はかなりピアノがうまいMちゃんなのであった。今さらだけど。
このうまさを生かせるかっこいい曲を、早くいろいろ体験してもらいたいもんです。
M3ちゃん(中2):
ブルクミュラー「天使たちの合唱」が合格しました。
途中、テンポがダレてしまうところがあったので、全体に少しテンポを上げるように指示し、拍をとりながら遅れないように弾いてもらって完成です。
こういった美し系の曲が好きなM3ちゃんなので、演奏も安心して聞くことができました。
次は♭だらけの「舟歌」です。
どちらかというと子どもにはとっつきにくい曲に入ると思いますが、M3ちゃんは「宿題」を待たず、すぐにメロディーの最初の方を弾いてみています。
早く弾いてみたい期待と意欲が伝わってきます。
「私、学校のレポートに、ブルクミュラーのこと調べて書いた!」
M3ちゃんは言いました。
へー、そうなんだ。
これまで、ブルクミュラーの曲を21曲やってきたM3ちゃんですが、それらの一つ一つを、充分味わい、愛することができたからこそ、レポートの題材に取り上げようという気持ちになったのでしょう。
「ブルクミュラーって、バレエの曲とかも作ってるんだね。『ジゼル』とかにも曲入ってるって。そして、弟はピアニストだったけど、早く死んじゃったんだって・・・」
M3ちゃんは、遠い昔のブルクミュラーの人生や作品へと思いを馳せています。
「ブルクミュラー」。
それは、最初は単なるピアノ教則本の名前であったかもしれない。
けれど今、その名は実在した一人の音楽家の名前として、M3ちゃんに生き生きと語りかけているに違いありません。
作品を愛し、その作者への想いを馳せる。
そうしてまた、さらにその作者を深く知り、その作品世界を広げていく。
芸術を味わうとは、まさにそういう歓(よろこ)びを言うのではないでしょうか。
この小さな教則本「ブルクミュラー」のレッスンをすることで、子どもたちの心に 芸術への小さな発端をつくることができたら。
それは、私にとっても大きな喜びです。
学校の合唱の伴奏をするかもしれないということで、課題曲の「翼をください」の伴奏譜を持ってきました。
Y子ちゃん自身よく知っている歌だし、小学校の頃 合唱したこともある歌ですが、歌の伴奏となると、
また勝手が違うようです。
一応最後まで、楽譜通りに弾いてみてはあるのですが・・・
先生:「この伴奏じゃあ、ちょっと歌えないねえ・・・じゃない?
Y子:「うん、歌えないね・・・
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ここで、「歌いやすいうたばん」とはどういうものか、解説しましょう。
1.まず、絶対止まらないこと。それには、完璧に曲やコードをマスターしてなければいけません。
2.テンポやリズムをバッチリ安定させること。
もう少し突っ込んだところでは、
3.今回の楽譜のようにメロディーを弾かず伴奏形だけ、という場合は、リズムを刻む右手よりも ベースの役目である左手の方を強めにハッキリ弾く。
4.ダイナミクスやアーティキュレーション(強弱やニュアンスなど)をはっきり弾き、歌う人の気持ちやテンポ感をリードできるように。
など、なかなか伴奏も奥が深く、ソロ演奏とは違った難しさがあります。さらには、曲の内容をよく把握して、聞いている人に伝わるように演奏しなければいけません。
Y子ちゃんは学校でダンス部に所属しているので、
「この曲で、ダンスの振付をしたらどうなるかな」と問いかけてみました。
「たとえば、最初の静かな部分・・・暗転の中、ダンサーたちがポーズしてて、前奏と同時にゆるやかな動きの踊りが始まり、中間のリズミカルなところから、ダンスもガラリと派手なステップに変わるとか。または、ここからばーん!と照明が変わるとか・・・ ダンサーが大勢に増えるとか、いろいろできそうじゃない?」
「うん、確かに!」
Y子ちゃんも、はっきりイメージできたようです。
「そんな感じで、気持ちよく踊れるように、弾いてきてね」
「うん、わかった」
音楽は「歌えるように」「踊れるように」弾くのが鉄則!
Y子ちゃん、来週はどんな風にイメージして弾いてきてくれるかな。